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2018-06-18

「愛着障害(アタッチメント障害)」を問い直す

子どもの反応性愛着障害(抑制型・脱抑制型)は、DSM−IV−TRまでは、幼児期、小児期にはじめて診断される障害として、精神遅滞、学習障害広汎性発達障害、ADHD、行為障害などと同じカテゴリーで考えられていました。
DSM−5で「反応性アタッチメント障害」および「脱抑制型対人交流障害」は、「社会的ネグレクトとしての養育の欠如」が診断基準として明記されていることから、小児期に出現する他の疾患(自閉スペクトラム症やADHDなど)とは区別されることになりました。

発達の遅れ(認知および言語の遅れ)、常同症や他の重度のネグレクトの徴候(低栄養状態または不十分な養育の徴候)は、、特定の養育者と一度もアタッチメントを発達させられなかった子ども(「反応性アタッチメント障害」および「脱抑制型対人交流障害」)にみられる関連特徴とされています。

しかし、「自分は愛着障害ではないか?」「愛着障害だから対人関係がうまくいかないのではないか?」とおっしゃる方が後を絶ちません。(『愛着障害と発達障害の真の問題』参照)

反応性アタッチメント障害(以下RAD)と脱抑制型対人交流障害(以下DSED)はともに、小児期の不十分な養育体験が原因で起こる行動障害である。
RAD、DSEDの有病率は重度のネグレクトを受けた子どもの中でも少ないと言われている。つまり、RADもDSEDも稀な障害であり、診断がつく機会はそう多くないと言える。

しかし、書店に行けば愛着障害という言葉は専門書ならずとも目にする機会は多く、以前と比べるとわれわれの生活に身近になりつつあるように思われる。
日々の臨床の中ではいわゆる「愛着の問題」を抱えた子ども達に出会うことは多く、「愛着障害」と「愛着の問題」は混同されやすい。
そもそも「愛着」という概念の定義は多義的であり、「障害とは何か」についても概念化の不一致が重なることから、愛着障害には概念的な混乱が生じやすいと言える。


山口・細金「反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害(DSM-5)の概念と診断」 in特集「愛着障害」精神療法 vol.42 (4), 486-498, 2017


このように「愛着障害」という言葉は、精神科臨床の中でも混乱をもたらしているわけですから、一般向けの書籍では言わずもがなでしょう。「不安定型アタッチメント」は「愛着障害」ではないのです。

私たちはどうしても安定型が一番いいと考えてしまいますが、アタッチメントは今の環境に適応するためにどの攻略法を用いるかということですから、安定型がよくて不安定型はよくないと言うことではないのです。本来、不安定型は回避型(回避/軽視型)であれ、アンビヴァレント型(とらわれ型)であれ、それぞれの親に対して適応的だから発達させたということなのです。しかし他の文脈、他の対人関係では、不安定型は、もしかしたらうまくいかなくなる可能性もあるかもしれないというだけのことです。
今年10月に出る『愛着障害』の論文でも書いたのですが、ジーナーも安定型と不安定型(回避/軽視型とアンビヴァレント/とらわれ型)は適応的に分類しているのです。

そして、いまや、「愛着障害」という言葉は「発達障害」と同じように広く流布しつつある。
しかし、本特集の中で田中理香氏が指摘しているように、医療福祉や教育などの現場に携わる人たちの間でさえ、その意味を正確に理解していない可能性がある。
それには、たとえば、山口貴史氏らが指摘したように、「愛着障害」と「愛着の問題」とは、あるいは「愛着の状態」とが混同されている可能性も含まれる。


平島「特集のねらい——「愛着障害」の流布と、概念の混乱——」 in 特集「愛着障害」精神療法 vol.42 (4), 463-466, 2017


「社会的ネグレクト(養育の欠如)」の結果としての「反応性アタッチメント障害」では、「持続的な対人交流と情緒の障害」をもたらしますが、「持続的な対人交流と情緒の障害」があるからといって「愛着障害」ではないのです。
診断基準でも「持続的な対人交流と情緒の障害」が自閉スペクトラム症(いわゆる発達障害の主症状と重なり合うことが指摘されています。

私たちが愛着という言葉を使う時、多くの場合Bowlbyのいうところの愛着ではない。
多くは親子の愛情がどのように交流しているかどうかについてで、専門家でもBowlbyの名前は記憶にありつつ原著はあまり読まれていない。
専門家が愛着障害という専門用語を正確な定義より幅広く使うことにあまり躊躇しないことは、彼ら自身の投影を受けた(専門用語もどきの)『愛着障害』という用語が、専門家の数だけあるかもしれない。


田中「女性の精神科臨床における愛着の問題」 in特集「愛着障害」精神療法 vol.42 (4), 533-537, 2017


ボウルビィのいうところの《愛着(アタッチメント)》とは、「危機的状況に際し、恐れや不安といったネガティヴな感情が経験された時に、特定他者にくっつこうとする心理行動傾向、および確実にくっつき得る、保護してもらえるという主観的確信・見通しの上に成り立った、その他者に対する情緒的絆(信頼に満ちた感情的態度)」であり、あくまでもネガティヴな感情に結びついた心理行動的および神経生理学的な制御システムのことなのです。

「愛着(アタッチメント)障害」は、「社会的ネグレクト(養育の欠如)」により発症します。「愛着(アタッチメント)障害」が定義された歴史的背景を知っておくことで、「愛着(アタッチメント)障害」の症状をイメージしやすくなります。

まず、Bowlbyによるマターナルデブリべーション(註:母性剥奪)提唱以降、主要なアタッチメント対象との関係の剥奪や障害が、子どもの行動、認知情動の障害を引き起こし得ることが認められた。
剥奪については、乳幼児期に親密なアタッチメントを形成しなかったこと、応答性の悪い歪んだ世話や虐待を受けること、確立された関係を喪失すること、の3通りがあげられた。


北川恵「アタッチメントと病理・障害」in 桜井みゆき・遠藤利彦『アタッチメント——生涯にわたる絆——』pp.245-275, ミネルヴァ書房


19世紀おわりから20世紀初頭にかけて、施設(孤児院)入所している子どもの死亡率が高いことが問題になりました。これは感染症栄養の問題ではなく、施設での養育のあり方が問題であると考えられたのです。
その中には、マターナルデブリべーション(母性剥奪)による「愛情飢餓(誰からも愛情を求め、注意を求めたがる)」という脱抑制型対人交流障害と一致する状態も記載されています。

第二次世界大戦直後にはスピッツが施設の養育の違いで「発達指数」に違いがあることから、母子関係の重要性を指摘していますまた、スピッツは、養育者にケアされずに育った子どものビデオ撮影を行い、精神的な症状を説明し「依存抑うつ」として紹介しています。

スピッツは、施設という環境の中で、何もない空間をじっと見つめたり、揺れたり、左右に動いたり、長期間とろんとした表情で横たわり続けているといった、耐えがたい行動を見せる乳児を撮影した。
この乳児らは、人との接触を期待するのを諦めており、接触することが非常に困難な自己包容の世界へと退却していた。

スピッツの示した見捨てられた孤児たちは、期待される最低限の基本的インプットが届かなければ何が生じるのかという例である。
社会的インプットが全くないか非常に少ない乳児は、通常の言語や他のさまざまな能力が発達しない。彼らは期待するべきインプットの経験を受けることができていない。
(中略)
多くの子どもに深刻な認知発達の遅れが見られ、その多くは後年まで遅れが続いた。また、情動的、もしくは自己刺激的行動にふける子どももいた。


ミュージック『子どものこころの発達を支えるもの——アタッチメントと神経科学、そして精神分析の出会うところ誠信書房


「反応性アタッチメント障害」の子どもは、「自閉(自己包容の世界へと退却)」と「言語発達やさまざまな認知能力の遅れ」を引き起こすのです。「反応性アタッチメント障害」の鑑別診断として、自閉スペクトラム症ASD)、精神遅滞、学習障害などが挙げられているのは、こういう所見からなのです。

さらに、このような施設(孤児院)でも「反応性アタッチメント障害」は10%未満、「脱抑制型対人交流障害」は、20%未満にしかみられない、極めて稀な状態なのです。

いかがでしたか?
「自分は愛着障害かもしれない」と思っていらっしゃる方、あるいは「愛着障害」と診断されている方は、5歳以前に【社会的ネグレクト(養育の欠如)】があって、上記のような【自閉(自己包容の世界への退却)】や【言語発達やさまざまな認知能力の遅れ】が今現在まで続いていますか?



三田こころの健康クリニックの新宿「専門外来」『聴心記』では『摂食障害と幼少期の養育者との関係』というタイトルで、「食行動障害および摂食障害」が女性に多い理由について説明しています。

女性には、情緒的問題として自己の内的な苦痛を生じる「内在化障害」が多く、「過食症(過食嘔吐をともなう過食症)」「過食性障害(むちゃ食い症)」「大食をともなう排出性障害」などは、内在化障害に分類されます。

摂食障害などの内在化障害は、アタッチメント欲求の表現を最小化する試みと同様に「心理的孤立」と「無力感」を引き起こし、それをなだめるために「食べ物」や「食べる行動」で解消しようとする外向次元の障害(自身の感情や苦悩から注意を食行動に向ける試み)でもあるのです。

青年期から成人期の摂食障害治療では、まず治療者との関係を「安全(安心)基地」として、自分自身の心と身体とつながること(自分自身との関係の改善)、そして、その安心感は本来、パートナー関係などこの時期のアタッチメント対象によってもたらされることを実感すること(二者関係の改善)が重要なのです。

過食症や過食嘔吐で通院されていらっしゃる方の中には、うつ病とか抑うつ状態といわれて、抗うつ薬抗不安薬を服用している方も多いと思います。

しかし、過食や過食嘔吐はネガティブな感情を制御(回避)する手段であることを考えると、薬がネガティブな感情をやわらげるとしたら、摂食障害治療で必要な「自分自身との関係を改善する(ネガティブな感情を抱えておけるようになる)」といった馴化に逆行するだけでなく、薬は回避あるいは逃避の選択肢となる可能性が高いのです。

薬を出されるだけで治った感じがしない、と感じられていらっしゃる方は、Akoさんの「摂食障害が教えてくれること」や、梅こんぶさんの「梅こんぶの幸せごちそうさま」で、対人関係療法による治療ではどんなことに取り組んでいくのかを参照してみてくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2018-06-11

愛着(アタッチメント)に対する理解の混乱を整理する

思春期・青年期、そして成人期のアタッチメントスタイルの測定・評価には、大きく分けて、半構造化された面接法(AAIやASI)と質問紙を用いたもの(RQやECR)があります。

それぞれ、評定している対象や評価法が異なりますから、幼少期の母親とのアタッチメントを測定するストレンジ・シチュエーション法(SSP)との一致率は60〜70%といわれています。つまり、アタッチメントスタイルは成長につれて変化していくもので、乳幼児期に決まってしまうという考えは現在では否定されているのです。

そして、その変化過程で、子どもの頃にアタッチメント対象であった養育者とは異なる、新たな対象との新たなアタッチメント関係の体験が大きな意味を持つ。
また、アタッチメントの内的作業モデルは、相手により異なることがある。
(中略)
養育者との関係と、現在のアタッチメント関係とが大きく質的に異なる例もしばしば見られる。


小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


上記のアタッチメント評定法のうち研究で多く用いられている質問紙法は、現在の一般他者もしくは恋愛関係をはじめとしたパートナーとの関係を、回答者の主観的な報告によって分類します。成人アタッチメント面接は無意識的プロセス(養育者に対する内的作業モデル)を測定しているのに対し、質問紙法は意識的評価(一部無意識的なプロセスも含むパートナー関係)とされています。

そのため、成人アタッチメント面接を初めとした面接法と、質問紙法による愛着スタイルの相関はみられないことも多く、相関が見いだされたとしても中程度であるとされています。みているものが違うのですから、これは不思議なことではありませんよね。

またアタッチメントの測定・評価法の違い(面接か質問紙か)によって、評定されるアタッチメントの分類に異なる用語が使われています。

f:id:ipt-therapist:20180423101759p:image:w420

質問紙法では、一般的な対人態度についての記述文を3種類提示し、その中からひとつ、被調査者に、自らに最も当てはまる文を選ばせ、近接関係を享受することの快適さ(安定型 or 回避型)と、関係を維持することに対する不安(不安/アンビヴァレント型か否か)の2つの次元で成人のアタッチメントの特質を質的に表現します。

質問紙法の代表的なものが、バーソロミューらの4カテゴリー・モデルにもとづくRQ(愛着スタイル尺度:Relationship Questionnaire)やECR(成人愛着スタイル尺度:The Experiences in Close Relationship Inventory)です。

バーソロミューによる4カテゴリー・モデルでは、自己モデル(依存/見捨てられ不安)と、他者モデル(親密性の回避)の2つの次元の得点によって、4つのカテゴリーに分類します。

f:id:ipt-therapist:20180423101714p:image:w560

質問紙法(愛着スタイル尺度)による日本人のアタッチメントスタイルは、安定型24%、軽視型(回避型)9%、とらわれ型38%、おそれ型29%とされています。

つまり、安定(安心)型と不安定(非安心)型に分けると、日本人の約3/4が現在の一般他者もしくは恋愛関係をはじめとしたパートナーとの関係で不安定(非安心)型を示すということです。

精神病理と愛着パターン4分類の関連について、安定型は抑うつや不安といった神経症水準にとどまるものとの関連があるが、重度の精神障害を患う可能性は低い。
軽視型は誇大的な自己愛、強迫性障害、心気症、摂食障害との関連、とらわれ型はヒステリー境界性パーソナリティ障害との関連が指摘されている。おそれ型は過敏型の自己愛や抑うつとの関連が想定されている。


田附『二者関係のこころ京都大学学術出版会


〔安定型〕および〔軽視型〕〔とらわれ型〕〔おそれ型〕などの不安定型は、固定化しているものではなく、環境や対人関係によって変化するものです。ですから面接法や質問紙法によって測定・評価されたアタッチメントスタイルは、今現在・当面の特徴をあらわしているととらえるのが妥当なところのようですね。

一方で、乳児期のアタッチメントが後の精神病理へのリスクとなるという過度に単純化したモデルには注意が必要である。
つまり、リスクは不安定なアタッチメントだけではなく、子どもや家族がおかれている環境に属する他の要因も含めた文脈の中で捉えられる必要がある。
(中略)
アタッチメントと精神病理との関連は、親子をとりまく環境を含めた広い文脈で理解することが必要である(Greenberg, 1999)。


北川恵「アタッチメントと病理・障害」in 桜井みゆき・遠藤利彦『アタッチメント——生涯にわたる絆——』pp.245-275, ミネルヴァ書房


一般向けの本には、アタッチメントスタイルが不安定型だから生きづらいとか対人関係に困難をきたすとか、さまざまな心の病気を発症するように書かれていることがほとんどなのですが、それは誤った理解だということです。

なぜなら、アタッチメントは幼少期の親(養育者)との関係で決まるものではなく、その後の対人関係やさまざまな環境要因の影響を受け、変化していくものだからです。
現に、養育者(親)以外、たとえば異性や教師との安定した関係性によって、不安定型から安定型へアタッチメントスタイルが変化する「獲得安定型」がよく知られていますよね。

一方、安定型のアタッチメントスタイルは盤石なのか?というと、そうでもないようです。

一方、安定型から不安定型への移行には、アタッチメント対象の喪失などの否定的な出来事が深く関与するようである。
先にも見たWaters et al.(2000)の研究では、親の死や離婚、親や自分の生死に関わる病気抑うつなど親の精神障害、18歳以前の身体的・性的虐待などのストレスフルな出来事を一度でも経験したことのあるグループにおいては乳幼児期に安定型だった子どもの約3分の2が20歳段階において不安定型に移行していた(ストレスフルな出来事のないグループでの安定型から不安定型への変化は15%のみであった)。

しかしながら、現段階において、こうした環境の変化に応じたアタッチメントの変質が生涯にわたって同水準に維持されるものなのか、それとも、あくまで青年期くらいまでの比較的まだ未成熟なタイムスパンに限定されたものなのかについては、容易に結論を下すことができない。

(中略)

もっとも、ひとつ確実に言えることは、個人が加齢に伴い成育家庭から離れるにつれて、より自律的に自らの対人関係や環境を選択肢構築するようになるということである。
見方を変えて言えば、自らの内的作業モデルにとって異質な要素を排除し、それを強化するような同質の要素を選択的に自らの周りに引き寄せることを通じて、徐々に環境の変化そのものが相対的に生じにくくなるということである。


安藤智子・遠藤利彦「青年期・成人期のアタッチメント」in 桜井みゆき・遠藤利彦『アタッチメント——生涯にわたる絆——』pp.127-173, ミネルヴァ書房


ストレスフルな出来事のないグループでも、安定型から不安定型へのアタッチメントスタイルの変化が15%にあり得ること、それはもしかすると対人関係や環境に対する「自律性(主体性)」の違いによるものかもしれないということですよね。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では『摂食障害の治療で取り組む「心の状態の変化についての気づき」』というタイトルで、「食行動障害および摂食障害」の患者さんたちの心の中でなにが起きているのか、そして、どうすればその状態から抜け出せるのかについて、専門外来で行っている対人関係療法による治療の進め方を解説しています。

対人関係、つまり二者関係は、関わる二人の主観が交流することによって作り出される間主観的な場のことです。その形成には言語による表出(いわゆるコミュニケーション)以上に、非言語的なメッセージが大きな役割を果たします。

「自己を見つめること」、つまり自己内省能力が発達することで、新しい学習が起きます。
これは、乳児期に母親にまなざされることによって心が能動化したときと同じように、治療者の内省的こころによって「自分が抱えられている」と感じ、同様に自分自身と他者をこころの中に抱えることができるメンタライジング能力でもあるのです。

摂食障害対人関係療法による治療では、まず「心の状態の変化についての気づき」からスタートしていますよね。
摂食障害からの回復で必要な2つのこころの状態、つまり、食べることや食べ物で気持ちを紛らわす必要がなくなることと、心の中で気持ちを抱えておくことができるようになるために、最初は治療者との二者関係からその練習をしていくのですよ。

ずいぶん長く通院しているけど摂食障害が治らない、薬を出されるだけで治った感じがしない、と感じられていらっしゃる方は、Akoさんの「摂食障害が教えてくれること」や、梅こんぶさんの「梅こんぶの幸せごちそうさま」を参照して、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

すぐに治療に取り組みたい方は、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』と『摂食障害から回復するための8つの秘訣』の2冊を読み込んでおいてくださいね。

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2018-06-04

自己愛の病理としての愛着回避と気分変調症および自閉症スペクトラム

苦痛な情動状態のときに安心となぐさめを求めて他者に依存することができない「愛着の回避」は、「心理的孤立と無力感」を「食べる」という単独行動で解消しようとする摂食障害(とくに過食症(過食嘔吐を伴う)や過食性障害(むちゃ食い症))でよく見られます。

その背景には、親の期待や願望に同一化した自己や、恥体験の補償として形成された到達困難な「理想自己」があって、ありのままの自分に対して常に批判的で厳しい評価を下していますよね。

さらに、期待した承認や称賛の反応が他者から返ってこないと、傷つき、自尊感情が低下し、抑うつ的になると同時に、怒りが引き起こされるなどの特徴があるため、対人関係から距離を取って安心を得ようとします(遠ざかり境界性自己障害≒対人恐怖性回避型アタッチメント)。

愛着回避は、肝心の問題に触れない表面的語り、弱い自分と関連する情動(感情)に触れない語り、知性化された理屈っぽい語り、茶化したような深刻さのない語り、「〜べきである」という当為にこだわる語りなどとして出現します。

上地『メンタライジング・アプローチ入門——愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


対人関係から距離を取る対処方略は、愛着回避だけでなく、自閉症スペクトラム(ASD)でもみられますし、上記の語りも似てきます。

自閉症スペクトラムの子どもたちは、相手の気持ちの理解が難しく、場の空気を読むことができないために、幼少期から仲間集団の中に入っていくことに困難をきたすことも多い。

青年期になると、同世代の仲間の関心は、友達関係や恋愛など対人関係の領域に移っていくので、同世代の仲間との交流はさらに困難になる。

このような発達上の問題を抱えながら青年期の発達課題に直面した自閉症スペクトラムの若者は挫折を経験することも多く、それを契機にさまざまな精神症状や行動上の問題を示すことも少なくないのである。

不登校になることも多く、家庭で親に暴力を振るう場合もある。神経性食欲不振症(現在は神経性やせ症と呼ぶ)の状態になる場合もあるし、自傷行為を繰り返すようになる場合もある。すでに述べてきた青年期に多く診られる病態の頻度は、自閉症スペクトラムの若者では特に高いと考えられる。


生地「思春期・青年期」 in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


自閉症スペクトラムの人たちは、他者意識が生まれにくい(心の中に他者がいない)ため、自分の心と相手のこころが地続きだと捉えてしまいがちです(想像力の障害)。

相手の立場に立って、相手が理解できるように言葉で伝えていない、あるいは相手に言葉で質問していないにもかかわらず(コミュニケーションの障害)、なぜ相手は自分のことを理解しないのか!、普通はわかるだろう!、理解しない相手が悪い!と憤慨してしまいます(自己愛忿怒)。

アスペルガー症候群の夫をもつ妻(カサンドラ症候群)の面接のときによく聞くパターンで、夫の憤慨(不機嫌)による恐怖から夫のこだわりに支配されてしまうのです。

あるいは、気分変調症の人のように、「自分はダメだと思われていると感じたから、周りの人は自分をダメだと思っているに違いない」という確信を抱いていたりします。

心理学的にはメンタライゼーション(自己・他者の行動の背景にある心理〔考え、感情、欲求、願望、信念〕を理解しようとすること)の機能不全によって、他者の意図を誤解する状態であり、自分を客観視、相対化できなくなっていると考えます。
心理療法的なアプローチを行うときには、メンタライゼーション機能の獲得が目的になります。

自己対象転移または愛着による安全基地がないと、クライエントは自分の心に対する探索を安心して行うことができません。自己対象転移または愛着による安全基地は、心理療法的作業が行われるための前提条件です。

この前提条件を実現するためには、まずセラピストがクライエントの心をメンタライズすることから始めるしかありません。
クライエントの精神状態を取り出すことができる状況的出来事に焦点を合わせ、とくに、その中でクライエントが体験したこと(感情)を丹念に聞いていくことが必要です。


上地『メンタライジング・アプローチ入門——愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


しかし、回避型の人が獲得安定型に移行する際に、回避型愛着パターンによって覆い隠されていた愛着欲求と不満・怒りとの葛藤が表面化し、一時的におそれ型(未解決−無秩序型)やアンビヴァレント型(とらわれ型)のような状態が出現することがよくあるのです。
このような心理的な葛藤を避けるために、クライエントが愛着関係およびそれによって得られる安心・慰めだけを心理療法に求め変化を起こせなくなることも多いのです。
これを「愛着のパラドックス」と呼びます。

患者さんの代弁者と豪語される精神科医は、家族に患者さんの病的症状への協力を指示し、巻き込み型の強迫によって支配・コントロールされ、奴隷のようにこき使われている家族が相談にいらっしゃることもあるのです。
あるいは、患者さんが苦手と感じている父親あるいは過干渉な母親を強制的に別居させ、患者さんの病的自我の歓心を得るものの、病気は治らず、家族は離散したまま、すがるような思いでその治療者の元に通いつづけて、最後にもう治ったと見放され絶望の淵に追い込まれてしまったケースも見聞きしています。

また、精神病的パーソナリティ構造や自閉症スペクトラム(先天的なメンタライジングの機能不全)では、精神状態の探索が心の統合を崩壊させてしまう危険があります。
愛着回避と似た状態を呈する気分変調症、自閉症スペクトラムについては、心理療法を始める前に診断ではない病態水準の診立てが必須だということですよね。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では『摂食障害から回復するためにはどのような治療者を選べばいいのか』というタイトルで、摂食障害の精神病理の深刻さを十分に認識していて、治療者自身が自らのアタッチメント・スタイルだけでなく、抑圧・回避などの心の蓋や、ナルシシズム(自己愛)の病理にもとづくメサイア・コンプレックス(救世主願望)に向き合った経験がある治療者を選ぶ必要があることを説明しました。

これらは、教育分析を受ける過程で克服していくプロセスですから、治療を受けるなら正式なトレーニングを積んだ治療者を選ぶことが非常に大切なことですよね。

一人前の治療者として独り立ちするまでに直面化してきたこのようなプロセスが、「乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)」が回復までにたどる道のりと重なりあうことで、治療者が「モデル(目標と感じることができる人)」「メンター(経験に基づき助言してくれる人)」「サポーター(アタッチメント対象としての心理的な支え手)」として機能するわけです。

長い間カウンセリングを受けているけど摂食障害が治らないと感じられていらっしゃる方は、梅こんぶさんの「梅こんぶの幸せごちそうさま」やAkoさんの「摂食障害が教えてくれること」などを参照して、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

また、専門外来ではカサンドラ症候群かもしれないなどの「夫婦/パートナー関係の相談」も受けつけています。

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2018-05-21

アタッチメントと対人関係での「かかわり」

今現在、愛着障害についての論文を依頼されて書いている最中です。その関連で『発達心理学の新しいパラダイム』という本を読んでいて、「関係性(二者関係)」について深く考え直す機会になりました。

乳児期におけるかかわることと心への気づき』で、かかわりは「魅力(呼び込み)」/「興味(惹き入り)」がどちらの側にも必要であり、それには「応答する能力」と「相手の応答を知覚する能力」がなければならない、と説明されています。

また、『こころは孤立しているか?』の母子間のエントレインメントを、「新生児の身体運動は、オトナの語りかけに同期している。発達は孤立した状態で始まるのではなく、初めから「相互作用で構成される」と説明しています。
*相互性:母親が赤ちゃんの注意を引き影響を与え行動を変化させるだけでなく、赤ちゃんの側も母親に影響を与える

エントレインメント」は母子共感とか母子相互作用と訳されるわけですが、禅語の「啐啄同時(そったくどうじ)」とか『星の王子さま』のキツネの「飼いならす(絆を結ぶ)」と同じような意味合いのようです。

アタッチメントを「エントレインメント」や「かかわり」と考えることもできますよね。
アタッチメント・システムにより、他の個体に接近する行動をアタッチメント行動、接近する相手をアタッチメント対象と呼びます。
多くの場合、アタッチメント対象は、アタッチメント行動による接近を受けると、保護システムを活性化して、接近してきた個体に対して保護行動を行います。

青年期前期(前思春期)、青年期中期(思春期)、青年期後期(青年期〜成人期前期)に分けてそれぞれの発達課題を「かかわり」という視点でみていくと、「自分自身との関わり」と「他者との関わり」の2つの相がみえてきます。

この時期(青年期前期)には、第二次性徴や成長のラスト・スパートに伴う身体の変化を受け入れること、親への依存を減らしていくこと、同性の仲間との親密な関係を作ることなどの発達課題に直面する。
(中略)
青年期前期の発達課題における挫折や失敗は、学童期や幼児期への退行を招き、その結果、若者が親に過度に甘える態度を示すことがある。この時期の若者は、劣等感と自惚れ(自己愛)の間を揺れ動いている。適度な自惚れは、この時期の若者が不安を克服していくために必要な側面がある。

(中略)

この時期には、自分の性(ジェンダー)役割を受け入れて異性と接近すること、職業選択など自分の人生の方向性を決めること、言い換えると自我同一性を確立していくことが発達課題となる。
自我同一性の確立と平衡して、青年期前期に肥大する自己愛や劣等感は、じき解消し、等身大の自分を受け入れて自己中心性を抜け出す方向(脱中心化)へ向かう。
異性との交際は、自分の性的な欲求に動かされる部分もあるが、お互いに甘えたり、甘えられたりする相互的で対等な関係を作る方向に向かっていく。

(中略)

青年期中期に続く青年期後期は、家庭を作るためのパートナーを得ること、社会人として責任を持つ能力を身につけることが発達課題となる。
しかし、青年期中期から後期にかけて、職業同一性の獲得に失敗することで、いわゆるモラトリアムに陥る者もいる。
また、異性との親密さを持てないまま、女性としてあるいは男性としての同一化を確立できずに、親元で親に甘えたまま生活する者もいる。


生地「思春期・青年期」 in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


最近はアスペルガー症候群や広汎性発達障害などの発達障害(自閉症スペクトラム:ASD)が注目されていますよね。何でもかんでも、誰でも彼でも発達障害と診断してしまう精神科医もいらっしゃるようですが。。。

前出の本の下條先生は「症候といわれているものが相手に依存している。情動脳は他者の行動と直接リンクしているのではないか」との見方を提示されています。その観点に基づき、自閉症スペクトラムについて「関係性」の視点で考えてみましょう。

自閉症スペクトラムの子どもたちは、生得的な要因から育てにくい特性を持っており、そのために早期の親密な親子関係が形成されにくい。
乳児期は、関わりを求めてくる力が弱いため、手のかからない子、反応のない子と思われることもある。

幼児期になると、外からの刺激に敏感で変化に弱く、好きなことをしているとおとなしいけれども、しつけのしにくい扱いにくい子になることが多い。穏やかな甘えに基づいた交流ではなく、気持ちが通じにくく、親を便利な道具のように扱ったり、小さなことでかんしゃくをおこしたりするために、親子関係はお互いにつらいものになりがちである。

彼らは、5〜6歳になってから、ようやく親に甘え始めることもある。
そして、青年期には、親に十分甘えられないまま親離れを求められることになる。


生地「思春期・青年期」 in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


上記を読むと、発達障害(自閉症スペクトラム:ASD)の子どもの母子間のエントレインメントやかかわりが乏しいことがわかりますよね。
対象関係学派では妄想—分裂ポジションと呼び、他者意識が生まれないため、人と人とのやり取り(エントレインメント)ができないと説明されます。そのため「絆を結ぶ」歴史を築くことができないとされています。

このように母子間の共生期で発達が固着してしまったことが、後に集団との関係や二者関係をうまく構築できないことにつながっていくようです。発達障害(自閉症スペクトラム:ASD)の青年や成人が、「対人関係が苦手な自分は、愛着障害ではないか?」「小さい頃の親との関係が問題ではないか?」と考えてしまう原因は、このあたりにあるようですね。

思春期・青年期の心の成長を助けるこの本⇩は、大人にも役に立ちそうですよ。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では『自己欺瞞を克服して摂食障害から回復する』というタイトルで、「自己欺瞞(周囲の人々と自分への二重のウソ)」に対して、治療者が回避を適切にブロックする必要があることについて説明しています。

摂食障害から回復するために必要な最初のステップは、「食べる」という強迫的な衝動行為の背景にある一人ひとりの「乱れた食行動に悩む女性対」の固有の感情に気づいてもらうことです。

そして、心の準備状態の「熟考期」から「準備期」へのステップ・アップを通して、止まってしまっていた発達段階から成長し、新たな生き方を手に入れていくプロセスに進んでいくのです。

そのために治療者は、このブログに書いてきたように摂食障害の精神病理の深刻さを十分に理解し認識して、「自己欺瞞(周囲の人々と自分への二重のウソ)」という回避行動をブロックする必要があるのです。

この取り組み方は、「食べたいという願望のきっかけになるのが何なのかを知る」「自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学ぶ」「自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善する」という対人関係療法での治療のすすめ方なんですよ。

過食症」「過食性障害(むちゃ食い症)」などの摂食障害から回復したいと思っていらっしゃる方は、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。
また、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている対人関係療法による治療の内容については、Akoさんの〔摂食障害が教えてくれること〕や、梅こんぶさんの〔幸せごちそうさま〕などを参照してみてくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2018-05-14

思春期・青年期の発達課題とアタッチメント

アタッチメントは関係特異的で、また発達過程において成熟していくことが知られています。

幼年期においても成人期においても、人は、一方の親に対しては愛着が安定しているがもう一方の親に対しては不安定(回避的またはアンビヴァレント)ということがありえます。
同様に、ある異性との関係においては愛着が安定していたが、別の異性との関係では不安定になるということもありえます。

さらに、同一の愛着関係に関して、互いに相容れない複数の愛着パターンまたは内的作業モデルが存在し、どれかが防衛的に排除されたり、それぞれが分離したまま併存する場合があります。


上地『メンタライジング・アプローチ入門———愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


幼少期のアタッチメントが不安定であったとしても、教師や近所の大人、親戚のおじさんやおばさん、あるいはパートナーとの関係の中でアタッチメントが不安定型から獲得安定型に変化することも知られています。
ただし、注意していただきたいのは、“安定”“不安定”という用語は価値判断を含んでおらず、安定安定型がよくて不安定型はよくないということではなく、環境に適応した結果、そのタイプのアタッチメントが形成されたということなのです。

現在では、アタッチメントの幼児期決定論的はほぼ否定されていて、複数の他者との関係性のあり方(それぞれの他者とのアタッチメントの経験の蓄積)が統合されて、関係特異的なアタッチメント・スタイルが形成されると考えられているのです。

アタッチメントの安定した発達を妨げる要因として、虐待(身体的・性的・心理的)とネグレクトが挙げられています。
また、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む「不適切な養育」を「マルトリートメント」と呼ぶこともあります。

親子関係だけでなく対人関係はすべて相対的ですから、たとえば親にそのつもりがなくても子が傷つけられたと感じたのなら不適切な養育(マルトリートメント)に相当するのかもしれません。

被虐待児の中には、他者が示すさまざまな表情のうち(悲しみや苦痛には鈍感である一方で)怒りの表情だけには敏感であったり、また特定の表情が浮かんでいない真顔を悪意ある怒りの表情と誤って知覚してしまったりする子どもが相対的に多いということが実証的に示されている。

これが示唆するところは、たとえ自身に対して温かいケアを施してくれるような他者が眼前にいたとしても、被虐待児は、多分にその他者から歪んだ形で自身に対する無関心や悪意を読み取ってしまいがちであるということである。


遠藤「アタッチメント理論における基点と現代的展開」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」10-16, 2018


三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている対人関係療法による摂食障害治療の中で、他者の表情を読み取れない患者さんは割と多いようです。とくに、過食症や過食嘔吐の患者さんたちには、対人関係過敏があって他者(相手)の顔色を過剰に読みすぎるあまり、読み間違えてしまう、「特定の表情が浮かんでいない真顔」を怒りの表情と誤って認識されていることがわかってきました。

過食やむちゃ食い、過食嘔吐で通院していらっしゃる患者さんたちには、社会的に問題となるような虐待の既往がありませんでした。ある患者さんは、小学校低学年の時に、思春期に差しかかる姉が両親と衝突している姿を見ていて、姉も両親も怖いと感じたことがきっかけかもしれないと話してくださいました。そして自らが中学生になった時に摂食障害(神経性やせ症→過食嘔吐を伴う過食症)を発症されたのです。

このケースは虐待でもマルトリートメントでもありませんでしたが、不遇な養育環境に起因する幼少期の不安定(非安心)なアタッチメントのパターンが、その後の対人関係すべてに適用されてしまい、成人期まで維持されてしまうのはなぜなのでしょう?

それはアタッチメントの問題ではなく、発達課題の問題と考えられますよね。

青年期には、発達課題と関連して、さまざまな精神病理が発生する。
一方、さまざまな精神疾患に罹患した若者やいわゆる「発達障害」を持つ若者は、青年期の発達課題に直面したときに、困難に陥りやすい。

いずれにしても、この時期の精神病理や精神疾患は、青年期の発達を遅延させ、その結果として退行が生じることも多い。
退行は、文字通りに「甘えた声や赤ちゃん言葉で話す」「家の中で親にまとわりつく」「親と一緒のふとんで寝たがる」などの子どもっぽい行動の形で現れることもあるが、不登校や摂食障害、転換性障害、自傷行為など、さまざまな臨床症状の形で現れることもある。
退行という現象は、甘えと密接に関連している。
また、反対に、親への甘えの絆を断とうとする早急な試みが、暴力や非行につながることもある。


生地「思春期・青年期」 in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


青年期前期の発達課題に直面して不安が高まっていることや、その課題の達成におけるささいな挫折体験が引き金になり、強い不安と絶望感(心理的孤立感と無力感)が高まる中で、さまざまな精神病理や精神疾患が現れてくるようです。

前思春期から思春期・青年期では、乳歯が永久歯に生え替わるように生得的なニューロン・ネットワークが刈り込みを受け、個特異的な神経細胞ネットワークが形成される時期に当たります。

それまでの対処法が使えなくなり、さまざまな情動の渦に呑まれて翻弄されたり、情動を抑えるのに必死で動けなくなってしまったりする疾風怒濤の時期(思春期危機)です。

多くの子どもたちは、自分や周囲の資源を使ってこの危機を乗り越え、その体験を、個性の衣として、あるいは、成長の糧として身につけていく。

一方、危機を乗り越えられなかった子どもたちは、さまざまな症状や問題行動を表して、臨床の場に現れることになる。もちろん、臨床の場に現れる子どもの中には、思春期危機以外の、内的、外的な要因から不適応になっている子どもたちもいる。


林「アタッチメントと思春期臨床」in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


ある精神科医は、思春期から青年期に誰しも経験する疾風怒濤を、失恋のトラウマ、受験に失敗したトラウマ、友達と喧嘩したトラウマと、何でもかんでもトラウマと位置づけて医療化しようとされます。
そのような対応は行き過ぎというか言語道断なのですが、次回は思春期危機を乗り越えることが困難な時に問題となりやすい状態を考えていこうと思います。

思いこみやとらわれから抜け出したい人には、以下の書籍がお勧めです。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では『摂食障害から回復するための治療関係』というタイトルで、人とのつながりを求め、人からの援助を期待してみたものの、拒絶され、傷ついてきた「乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)」は、一見〔対人恐怖的回避型アタッチメント・スタイル〕のような対人関係を作っていますが、その下には認めてもらえない恨みや不満、怒りが〔無秩序な愛着パターン〕として潜んでいることを解説しました。

〔回避型〕が〔獲得安定型〕に変容していく時には、かならず〔おそれ型/混乱型〕から〔アンビヴァレント型(とらわれ型)〕を経由することが知られています。そのため、治療者がアタッチメントの「モデル(目標と感じることができる人)」「メンター(経験に基づき助言してくれる人)」「サポーター(アタッチメント対象としての心理的な支え手)」として機能することが必要になるのです。

ですから、精神療法や心理療法のやり方を知っている、という表面的なレベルではなく、患者さんの内的体験に沿って、このような時に心はどう動くのかを実体験に基づいて示してくれる治療者が必要なのですよね。

それによって、「乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)」は、「心理的孤立と無力感」をなだめるための「乱れた食行動」を手放し、自分自身と他者に対する基本的信頼感を培っていくことができるのです(獲得安定型)。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症」「過食性障害(むちゃ食い症)」の対人関係療法による治療は、このようにアタッチメントの観点から行っています。
三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている対人関係療法による治療の内容については、Akoさんの〔摂食障害が教えてくれること〕や、梅こんぶさんの〔幸せごちそうさま〕などを参照してみてくださいね。

また、「カサンドラ症候群」や「夫婦/パートナー関係」に対しても、アタッチメント(成人期の課題であるパートナーシップ)を中心に、対人関係療法による治療を行っています。

薬を使わない摂食障害治療や、夫婦/パートナー関係の改善を希望される方は、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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2018-05-07

アタッチメント関係の発達

ある精神科医の先生は、口数の少ないだけの健常発達者の父親(70歳すぎ)は発達障害だから30代の娘の摂食障害治療に悪影響があるからと、父親を強制的に別居させ、母親(60代後半)は、杖をつきながら毎日何度も娘の過食のための食材の買い出しをするように医師から指示され、もう10年以上も泣く泣く従わされています。

自称・専門家(?)の指示によって、このように発達段階を無視した悪性退行を促す治療(?)が行われているのは、アタッチメントの問題と発達課題の未達成の問題が混同されているからなのかもしれません。

このような「悲しい専門家(?)」は、子どもの精神的な不調を不安定なアタッチメントだと断定し、親に発達障害がある、親が不安定な愛着スタイルである、親にうつ病などの精神疾患がある、などと親の育て方の問題だと位置づけます。
本当にそうなのでしょうか?この「専門家(?)」は、「子育ては完璧であるべきだ」との幻想を抱いているのではないでしょうか?

もう1つは完全な育児なんてものは存在しない、ということである。
70%うまくできれば上出来だと吉本は述べている。吉本は自分自身の育児を“私の育児は55%だった”と振り返っている。


宇田『吉本隆明『心的現象論』の読み方』文芸社


「完全な育児なんてものは存在しない」ことは、ウィニコットのいう「ほどよい母親」ということですよね。

また最近では、自閉症スペクトラム(ASD)児がどのようなアタッチメントを形成するか?という研究もなされています。

アタッチメント研究では、安定したアタッチメントと親の敏感な養育行動がかかわることがわかっている。

先のオランダでの大規模研究では、子どもの信号に対する親の敏感性は、発達障害の場合でも通常発達と変わるところがなかった。しかしながら、ASDに限っては、親の敏感性は子どものアタッチメントと関連しなかった。

敏感性の評価では、子どもの発信信号に対する応答が調べられるが、ASD児ではそもそも発信をしないため、評価が厳しいことが問題となった。

最近、成人の高機能ASDにおいて、成人アタッチメント面接を行った研究が出された。
それによると、安定したアタッチメント表象を示した者は通常発達と比べて少なかったが、他の精神疾患と比べてASDがアタッチメント表象の問題を多くもたらすとはいえないという結論であった。


近藤「発達障害とアタッチメント」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」56-59, 2018


ASD児はアタッチメント希求行動を表現することが少ないため、親の情緒応答性を明確に測定できない、しかし、測定できた研究では健常発達者もASD児もアタッチメントには差がないということで、先に挙げた「専門家(?)」の先生がおっしゃるように、親に発達障害があること(毒親であること)は、子の不安定型アタッチメント・スタイルの差とは関係がないということですよね。

現今のアタッチメント研究では、アタッチメントの幼児決定論的はほぼ否定され、複数の他者との関係性のあり方(それぞれの他者とのアタッチメントの経験の蓄積)が統合されて、その子どもに固有の内的作業モデルが形成されると考えられています。

たとえ不遇な養育環境に起因する幼少期のアタッチメントが不安定であったとしても、幼少期から青年期・成人期にかけてアタッチメントが不安定型から安定型へと変化した、いわゆる獲得安定型の存在が明らかにされているのです。

つまり、子どもたちは、保育者や教師などともアタッチメント関係を構築し、人と人との“信頼”の中で成長していき、今の安定した異性等との関係性が不安定型から安定型(獲得安定型)への変化に関与している可能性も示唆されているのです。
ということは、問題は幼少期のアタッチメント・パターンが青年期・成人期まで持続すること、つまり他者との関係が構築できないことは幼少期のアタッチメントとは無関係ということですよね。


発達段階とアタッチメントの成熟を考えてみると、勤勉性を発達課題とする学童期の対人関係の発達位相はギャング・エイジとよばれ、集団との関係(集団同一性:場や行動を共にすることでつながる)がテーマになります。ギャング・エイジの対等な親友との対称的で非互恵的な関係をコンパニオンシップと呼ぶこともあります。

小学校高学年頃の前思春期から中学生頃の思春期にかけて、身体・対人関係・自他の認識などさまざまな相(Phase)が変化します。

対人関係においては、養育者との関係が依存から自立に変化したり、仲間関係も、場や行動を共にすることでつながるギャング・エイジ関係から、相互同一視により特別な絆を感じるチャム関係へと変化したりすることが多い。

さらに認知能力と知識の爆発的な増大により、世界の認識が急激に拡大し、自他が相対化されるとともに、幼児的万能感の限界を認識し、世界の中心ではなく、しかも孤独な自己の存在を抱えるという課題に直面する。

自らが何ものであるか、あろうとするかという、いわゆる自己同一性も、周囲から与えられたものがゆらぎ、周囲の価値観とか必ずしも一致しない、みずから選びとるものへと変化し始める。


林「アタッチメントと思春期臨床」in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


思春期には、アタッチメント対象との関係が変化してきます。
幼少期には非対称的で非互恵的であった縦の関係(両親との関係)で、まだ自立が完成していないため非互恵的であるものの、対称性をめぐる争い(いわゆる反抗期)が起きてきます。

思春期において、アタッチメント対象との関係が、縦の関係から横の関係へと変化し始める。
思春期以前におけるアタッチメント対象は、親や先生など、自分よりも身体、情報処理能力、社会的地位の上で力が優っている、文字通り目上の存在である。
それが、思春期以降になると、ほぼ対等な能力や権力を持つ友人や上級生やきょうだい、時には恋人などがアタッチメント対象として登場する。


林「アタッチメントと思春期臨床」in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


思春期から青年期には、対等な能力や権力を持つ友人や上級生やきょうだいなど、相互同一視により特別な絆を感じる「チャム関係」や、恋人など対称的で互恵的な「ピア関係(パートナーシップ)」が発達してきます。そして、それらの関係性が統合されることによって、青年期から成人期にかけてのアタッチメント・スタイルが確立されてくるのです。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では『愛着トラウマと摂食障害』というタイトルで、「いい子」を演じてきた乱れた食行動で悩む女性たちが心の中で蓋をしている「認めてもらえなかった恨みや不満、怒り」について解説しました。

「いい子」を演じるという対人関係スタイルは、親(特に母親)との関係で培われたアタッチメント・スタイルが雛形(テンプレート)になります。
他者を遠ざけ、十分な「対人学習」がなされていないと、関係特異的なはずのアタッチメント・スタイルや対人関係のテンプレートが、アタッチメント対象ではない他者にも過剰に適用されてしまうのです。

心の中の蓋の下にあるのは、アタッチメントの傷であり、自分らしく生きられなかったインナー・チャイルドなのです。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症」「過食性障害(むちゃ食い症)」の対人関係療法による治療では、このようにアタッチメントの観点から「自分自身への基本的信頼感」を取りもどす治療を行っているだけでなく、そのプロセスでインナー・チャイルドのワークを取り入れることもあるのです。

また、「カサンドラ症候群」や「夫婦/パートナー関係」に対しても対人関係療法による治療も行っています。

摂食障害を本気で治したいと思っている方や、あるいは夫婦/パートナー関係の問題をなんとかしたいと考えていらっしゃる方は、akoさんの「摂食障害が教えてくれること」や、梅こんぶさんの「梅こんぶの幸せごちそうさま」を参照にして、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2018-04-23

獲得安定型のアタッチメントに関与する要因

アタッチメントは人との関わりの中で活性化される要因であると同時に関係特異的ですから、それまでの対人関係の記憶に基づいています。

この関係特異性は、対人関係に柔軟性をもたらす土台になると同時に、治療関係では関係における安定性を促進するような敏感な情緒応答性が必要になります。

そしてこの治療関係で培われた安定した対人関係が他の人との関係性にも般化していくように、摂食障害治療だけでなく、カサンドラ症候群の治療で行っているようなカップル・セラピーや、摂食障害の思春期の娘さんを持つ親御さんに行うような家族療法も併用して三田こころの健康クリニック新宿の専門外来治療をしているのです。

これらの関係性にもとづく治療法に共通する治療要因について、治療者が患者の「安全の基地」として機能することの重要性が指摘されています。

治療における患者の「安全の基地」として機能することを述べ、ウィニコットの「ホールディング」、ビオンの「コンテイニング」は非常によく似ていると述べている。

玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


ウィニコットは母─赤ちゃん関係を、それ以上分割不可能のユニットととらえ、セラピスト-クライエント関係のメタファーとしています。
ビオンはクラインの対象関係論を洗練した精神分析家です。
一方、自己心理学の創始者コフートは、人の心(の健康)を、心の各部分のつながり・まとまり・融和性・凝集性から考え、関係性を「自己対象(関係)」ととらえました。

コフート(Kohut 1977, 1984)によれば、人が一方の親(例えば母親)との関係で(愛着)トラウマを体験し、自己の中にそれによる損傷部分が生じたとしても、もう一人の親(父親)との関係から、その損傷の影響を打ち消すことができる自己の部分(補償的構造)が形成された場合、人は健康に生きていくことができます。
そして、この補償的構造は、ある面では外傷的であった親の「外傷的でない」(成長促進的な)面からも生じると、コフート(Kohut 1977, 1984)は考えています。

例えば、普段は不適切な応答の多い母親が、実家で長期間過ごすときには適切な応答を示し、それが子どもの自己に健康な部分を成長させたというような場合です。


上地『メンタライジング・アプローチ入門———愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


「補償的構造」は、ミクリンサー(Mikulincer)のいう「安定性の島」と言い換えることができます。
「安定性の島」とは、愛着トラウマを抱えている患者であっても、多少のポジティヴな愛着の記憶があるということです。
セルフ・コンパッションの文脈では「慈しみの泉」とも言いますよね。

補償的構造は、具体的には、良い自己対象として機能した親との関係から育つ自尊感情、野心的目標、理想・価値、興味・関心、才能・技能、同じ人間であるという同類意識などを示しています。

精神分析においては、患者は、(愛着)トラウマにある程度触れた後には、トラウマから離れ、補償的構造を強化することで回復へと向かうのであり、精神分析は補償的構造の機能的リハビリテーションであると、コフート(Kohut 1977)は言います。
そして、補償的構造が修復されるプロセスでは、補償的構造を育ててくれた親とのポジティヴな体験の記憶がよみがえります。

コフート(Kohut)の言う自己の構造を内的作業モデルと重なるものと考えてよいなら、補償的構造の修復による自己の機能的リハビリテーションとは、患者の全体としてネガティヴな内的作業モデルの中に島のように存在する補償的な内的作業モデルを踏み台にして、中心的な内的作業モデルが獲得安定型に移行することに他なりません。


上地『メンタライジング・アプローチ入門———愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


セルフ・コンパッションで言う「自分への優しさ」「当たり前の人間性」そして「マインドフルネス」そのものが「補償的構造」を構成する要素であり、それが愛着トラウマの傷を癒す土台である「安定性の島」になりうるということですよね。

「内的作業モデル」は内的な対人関係のテンプレートのようなもので、内的作業モデルは、他者との過去の経験に基づいて、他者との交流や会話をシミュレーションすることを可能にしてくれる表象システムなのです。

「安定性の島」は、心理療法が有効に機能するためには不可欠であり、不安定なアタッチメントを「獲得安定」(earned security)に変容させていくプロセスで、最も重要な役割を果たすと考えられています。

無秩序な愛着パターンは四六時中みられるものではなく、それが出現していないときの愛着パターンは安定型、回避型、アンビヴァレント型のいずれかであるということです。

上地『メンタライジング・アプローチ入門———愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


一般の人や生半可な知識しかない精神科医が理解しているように、ある人は安定型、この人は回避型と、個人のアタッチメント・スタイルが決まっているわけではないのです。
アタッチメントはAさんとは安定型だけど、Bさんとは無秩序のように関係特異的であるだけでなく、Bさんとの関係の中でも、安定型だったり回避型だったり、あるいは無秩序型だったりと、同じ関係の中でも変化しうるということなのです。

夫婦/パートナー関係を考えてみると、相手との関係が蜜月期、安定期、倦怠期、離別期と変化しているのがわかりますよね。

実は、このことがアタッチメントが「獲得安定型」に変容していくときにたどるプロセスも示唆しているのですよ。

みんな「夫婦」で病んでいる

みんな「夫婦」で病んでいる



三田こころの健康クリニックの『聴心記』では『[ttps://wp.me/p8s70U-Z7:title=「食行動障害および摂食障害」という苦しみの始まり]』というタイトルで、さまざまな生きづらさから生じる負の感情への対処法であったエモーショナル・イーティングが、人との分離・断絶という心理的孤立を生み出し、自己破壊の行動パターンである「食行動障害および摂食障害」という障害に進展していくプロセスを解説しました。

他者に対して「期待しない」「信じない」「愛されるなどと思わない」と自分に言い聞かせ、自らの依存感情を抑え込んでいる(崔『メンタライゼーションでガイドする外傷育ちの克服』星和書店「乱れた食行動で悩む女性たち」は、他者と距離をとるか、逆に過剰に他者に合わせ、自己評価を低くし、主体的に自体に取り組むことを避けることで、人と人とのつながりをより快適なものに修正しようとします。

現実の他者を遠ざけている一方で、頭の中では想像上の他者が大活躍している(ある患者さんはこの状態を「脳内劇場」と名づけてくれました)ので、過食症に対する対人関係療法では「対人関係上の役割をめぐる不和」や「役割の変化」ではなく、「対人関係の欠如(評価への過敏性)」で治療を行った方がうまくいくのです。
(梅こんぶさんの「梅こんぶの幸せごちそうさま」を参照してくださいね)

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症」「過食性障害(むちゃ食い症)」の対人関係療法による治療では、このように患者さんに治療法を合わせていくスタンス(鑑別治療学)を重視しているのです。
また、アタッチメントの関係特異性の視点から、「カサンドラ症候群」や「夫婦/パートナー関係」に対しても対人関係療法による治療も行っています。

摂食障害心療内科やメンタルクリニックに通院しているけど、薬を出されるばかりで改善しない、あるいは夫婦/パートナー関係の問題をどこに相談していいかわからないと感じていらっしゃる方は、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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2018-04-16

愛着トラウマの世代間伝達をストップする

身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト、面前DVなどの持続的な有害体験(不適切な養育)は、子どものアタッチメントの不安定性の要因になるだけでなく、子どもに「愛着トラウマ」や「発達性トラウマ障害」を引き起こします。

青年期(初期成人期)から成人期にかけてのアタッチメントはパートナーとの親密性がテーマになり、さらにパートナーと家族を形成すると自分自身が子どものアタッチメント対象になるため、幼少期の親(養育者)とのアタッチメントそのものを治療の主題とすることはほとんどありません

パートナー・シップを構築するとき、また自分が親(子どものアタッチメント対象)となるときに問題になってくるのが、「愛着の世代間伝達」です。

虐待におけるトラウマと愛着障害はニワトリとタマゴのような関係である。
愛着障害を抱える子どもは何らかのトラウマをもっている可能性が高く、そのトラウマは世代を超えて受け継がれていくことがある。

(中略)

トラウマが適切な愛着の形成を阻害し、愛着が築けないことが新たなトラウマを生む。
このようにしてトラウマは世代間伝達を引き起こし、次世代へとつながっていくことになる。


三ヶ田「児童心理治療施設における愛着障害への治療的アプローチ」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」75-79, 2018


ある本には「不安定な「愛着スタイル」を変える」として「母親になる、父親になる」ことが挙げられていますが、アタッチメントのことを知らずによくこんな無責任なことを書けるなぁと憤りを覚えてしまいました。

個人的なことで恐縮ですが、私自身もかなり悲惨な幼少期を過ごしたんです。
思春期から成人期のかなりの時期まで、父親を憎んでました。十年以上、断絶してた時期もありました。
なので、この親の血は子どもに伝えてはいけない、自分の代でストップしようと、かなり早い時期から子どもを持つことを断念したんです。

虐待を受けた子どもが虐待を行う親になる割合は30%程度との報告もある。
7割近くの人が、虐待を受けても虐待親になっていないことに救われる思いもあるが、トラウマの世代間伝達を食い止めることが私たちに課せられた責務だと考える。


三ヶ田「児童心理治療施設における愛着障害への治療的アプローチ」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」75-79, 2018


こんな生育歴のまま自分が親になってしまうと、父と同じような振る舞いを子どもにしてしまう可能性が高い。私自身は自分が親になることを断念して、自分の人生を賭けてトラウマの世代間伝達を食い止めようと決心したんです。

それだけではありませんでした。
自分の深部と向き合うために、教育分析(トレーニング・アナリシス)を3年以上受け、インナーチャイルドのワークを繰り返し行い、次第に自分自身の子どもの頃の体験と記憶を慈しみとともにこころの中で抱えておけるようになり、父が亡くなる前に父と直面したことで、ようやく父を憎む気持ちに終止符を打つことができたんです。今でも不適切な養育をされたことは許していません。かといって、思い出しても怒りが湧いたりはしないんですけどね。

トラウマがある人は、他者の行動や情動シグナルに意味を見出す際に重篤な支障をきたし、メンタライゼーション(自己・他者の行動の背景にある心理〔考え、感情、欲求、願望、信念〕を理解しようとすること)がうまくできず、他者の意図を誤解する。
その結果、基本的対人関係が成立せず、子どもの愛着障害へつながると考えられる。


三ヶ田「児童心理治療施設における愛着障害への治療的アプローチ」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」75-79, 2018


虐待の世代間伝達をご存じなく、「許す」を「手放す」と言い換えてお茶を濁している先生もいらっしゃいますが、虐待や不適切な養育を受けた経験のある人にとっては、その程度の言い換えでは解決にならないくらい人生を賭けた問題なんだけどなぁ、と自身の経験からも釈然としない気持ちを抱いてしまうんです。

ボウルビィは、成人期においてアタッチメント理論から治療を考える場合の治療者の重要な役割として

  1. 内的な探索をするための安全基地を提供すること
  2. 患者が現在の重要な対人関係について考えることを促すこと
  3. 現在の治療関係を通じて自身の内的作業モデルを認識できるようにすること
  4. 内的作業モデルが過去の対人関係の影響を受けていることを理解できるようにすること
  5. 自身の内的作業モデルの妥当性について現実に即して認識できるようにすること

を挙げ、治療における患者の「安全の基地」として機能することを述べ、ウィニコットの「ホールディング」、ビオンの「コンテイニング」は非常によく似ていると述べている。

玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


成人に対してアタッチメント理論から治療を行って行く場合には、まず安全な環境(治療環境)を構築することが何よりも重要になります。

そして治療者との関係の中で、現在の重要な対人関係(成人期には親との関係は扱わず、パートナーとの関係を扱う)を内省し、自身の幼少期における養育者等との関係に由来する自己や他者に対する主観的確信(例えば、自分は愛される存在か、他者は助けてくれる存在か)の対人関係のテンプレート(内的作業モデル)を認識できるようになることに取り組んでいきます。

そして、パートナーや子どもを守るために、経験の内省の仕方と新たな意味づけ方によってリスクの認識と新たな対処法を身につけていくのです。
夫婦/パートナー関係やカサンドラ症候群の治療など、成人期の不安定なアタッチメント・スタイルが関わっているときの治療は、こんな感じなんですよ。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている、【自己志向(自己受容+価値や目的の創造と行動など自己の次元での成長)】から【協調性(関係性の次元での成長)】を目指していく対人関係療法的なやり方と同じですよね。

夫婦という病:夫を愛せない妻たち

夫婦という病:夫を愛せない妻たち



三田こころの健康クリニックの『聴心記』では『習癖(クセ)になった乱れた食行動がいろいろ狭くする』というタイトルで、ガマン(感情の抑圧)と気分解消行動(感情体験の回避)を繰り返していると、感情回避の行動パターンが自分自身のアイデンティティになり、精神的・物理的にいろいろな制限がでてくることを解説しました。

「自分は過食症だ」「自分はダメだ」の考え方から、他者と自分を比較しますます気持ちが落ち込み、さらに、どうして自分は過食を止められないんだろう?、どうして私はできないんだろう?と「なぜ?」「どうして?」の原因探しでますます自分を責めてしまいますよね。

8つの秘訣』では、摂食障害と自分自身を同一化することに注意を促してありますよね。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症」「過食性障害(むちゃ食い症)」の対人関係療法による治療で、自己の次元の成長である「自己志向」のうち、どんな自分も認めることができる「自己受容」を高める方法としてセルフ・コンパッションの方法を指導しています。

また「カサンドラ症候群」や「夫婦/パートナー関係」に対しても対人関係療法による治療を行っていますので、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2018-04-09

愛着障害と発達障害の真の問題

「愛着障害かもしれない」と治療を求められる方のほとんどが、何に困っているのか?を言語化できないことがほとんどなんです。
中には「人付き合いが苦手」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、「虐待やネグレクトを受けていらっしゃらないので、愛着障害とは違うと思いますよ」と説明しても、「あぁ!よかった!」と安心されるどころか、逆に「私は愛着に問題があるんです!」と、あたかも愛着障害との呼び方が自分の苦悩をすべて表している免罪符であるかのように固執されることが多いのです。

一般に知られている愛着障害の呼称の一番の問題は、その呼び方にしがみついて親が原因だと責任転嫁をし、発達課題が未達成であるという自分の本当の問題と向き合おうとしないことにあるのかもしれないと考えています。

「愛着障害」とは、一般の人が考えている「不安定型アタッチメント」のことではなく、重度の虐待やネグレクト(例えば戦争孤児など)を背景にして起きてくる子どもの情緒行動上の障害のことです。

自分で「愛着障害かもしれない」と思っていらっしゃる人は、診断基準で言う「愛着障害」とはどんな感じなのか、以下の本を読んでみてくださいね。



「愛着障害は」、乳幼児期においてすでに介入が必要なほど障害が明らかな極端なアタッチメントの逸脱であり、不安定なアタッチメント・パターンとは識別され、「反応性アタッチメント障害」は、養育者に対して情緒的な関わりが乏しく、苦痛時でも接近して安心を求める反応が少ないこと、他者との交流や情緒的な反応が乏しいことが特徴とされます。
また「脱抑制型対人交流障害」は、見知らぬ人に対しても過度になれなれしく、不慣れな状況でも養育者に接近を求めないことを特徴とするとされます。

これらはいずれも重度のネグレクトや主要な養育者が頻繁に入れ替わる、子どもに対して養育者の数が極端に少ないなどの劣悪な環境を背景とした障害であり、重度のネグレクトを受けた集団の中でも前者(反応性アタッチメント障害)は10%未満、後者(脱抑制型対人交流障害)は20%未満の有病率の稀な疾患であり、特定のアタッチメント対象をもたない状態像である。

玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


つまり狭義の「愛着障害」は重度のネグレクトを受け児童養護施設などに収容された子どもたちでも、10〜20%未満にしかみられない非常に稀な疾患なのです。
さらに、これらの障害は、発達の遅れのみではうまく説明されず、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の基準も満たさないことが条件です。つまり、自分で「愛着障害かもしれない」と感じられる方は、まず「発達障害(自閉症スペクトラム)」を疑うことが必要なのです。

「反応性アタッチメント障害」「脱抑制型対人交流障害」に加えて、ジーナらは養育者に選択的にアタッチメントを形成しているものの、安定性が低く非適応的な行動を取る「安全基地の歪み」を合わせて「愛着障害」と呼んでいます。

これはアタッチメントの安定性をスペクトラムとして捉え、最も安定している者をSSP(ストレンジ・シチュエーション法)における安定型、最も不安定なものを反応性アタッチメント障害(アタッチメント対象をもたない)とし、その間に、安定性の保たれている順に非安定型(回避・両価型)、非安定型(未組織)、そしてアタッチメント対象はもつもののアタッチメント行動に歪みがみられる「安全基地の歪み」を位置づけるもので、反応性アタッチメント障害と「安全基地の歪み」を含めてアタッチメント障害と捉えている。

玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


「安全基地の歪み」も含めた「愛着障害」は、診断基準上、「自閉症スペクトラム(ASD)」や「注意欠如多動症(ADHD)」との鑑別が問題になるだけでなく、両者の重なり合いもかなり多いことをラターらが報告しています。
発達障害(ASDやADHD)は家族集積性が高いため、親が発達障害だとその子も発達障害である可能性が高くなるということです。

いずれも小児期において行動上の特徴がみられるだけではなく、ASDやADHDの子どもがもつ「育てにくさ」は虐待のリスクとなり、安定しないアタッチメントは発達障害類似の行動特徴をもたらすことから、両者の区別は容易ではなく、臨床では両者が重なりあう場合も少なくない。

滝川は、アタッチメントを関係への能動的な志向性として整理し、養育者の養育行動(マザリング)を引きだす力とみなした。その志向性の弱さがASDの素因であるとし、子どもの素因と養育行動の総和として関係性の障害を説明している。


玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


ラターらは「未統合型アタッチメント・パターン」と、一般人口で広く見られるアタッチメントの安定-不安定型とは異なる発生メカニズムがあり、世代間伝達の機序についても異種性が想定されるとしています。

つまり、重度の虐待やネグレクトによりアタッチメントの選択性や不安定性と、施設収容レベルではない一般的な機能不全家族で見られる安定型や不安定型のアタッチメント・スタイルとは、別ものと考えられているわけです。


一般的によく見られる「いわゆる虐待」、つまり「愛着トラウマ(ヴァン・デア・コークのいう発達性トラウマ障害)」における「有害体験」への曝露とは、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトがよく知られていますが、心理虐待の中でも面前DVが増加しているものの表面化しにくいことに注意を促されています。

直接の暴力を受けていなくても、血縁関係のある親がもう一方の誰か(実親あるいは片方の親と同居関係にある者)から暴力を受ける、大声で怒鳴られるなどの場面を目にすることは、子どもの精神に大きなダメージを与える。

水島・友田「マルトリートメントを受けた子どもの生物学的研究」こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」31-37, 2018


以前、このブログで「カサンドラ症候群」のことを書いたことがありましたよね。
「カサンドラ症候群」の妻たちは、アスペルガーの夫をもつ妻に起きてくるさまざまな自律神経症状や不安・抑うつなど、フラッシュバックを欠いたPTSDに似た症状を呈します。

「カサンドラ症候群」は、単にアスペルガーの配偶者が情緒的な相互関係が築けないことや、コミュニケーションの問題ではないのです。
家庭内の話を聞くと、パワハラや面前DV、子どもに対する虐待まがいの対応など、機能不全家族の様相をていしているのです。

妻に対する夫の言葉は、ナイフのように鋭く突きつけられる夫自身の信念やこだわりの押しつけであり、それに従わない妻や子に対する容赦ない攻撃で、そのこだわりが家庭生活を徐々に埋めつくし、妻も子も夫(子にとっては父親)の顔色を見ながらビクビク怯えながら、まるで暴君の支配下に服従させられた生活になってしまうのです。
そしてそのような緊迫した家庭環境は、子どもの脳に計り知れない悪影響を残してしまいます。

こういう実例を知っていて実際に治療をしているだけに、ある先生が考えもなくつぶやかれた「親がどんな障害(多くは発達障害)を持っていようと子供は許す天才です。人間として豊かに生きると同時に、制限はあっても親子関係を享受してもらえば〜現在は削除されています」は、ことの重大さや子どもの将来への影響を全く無視されているか、ご存じないんだろうなぁと暗澹たる気持ちになったんですよ。

無理に許さなくていいんですよ。自分の心の中に「許せない」という気持ちがある、ということをただ認めるだけで。
(「許さなくていい」参照)

毒父家族 ―親支配からの旅立ち

毒父家族 ―親支配からの旅立ち



三田こころの健康クリニックの『聴心記』では『ガマンと感情の解放の繰り返しで乱れた食行動がクセになる』というタイトルで、「人」のいる「我慢の戦場」と、そこから解放されたときの気分解消行動の繰り返しで、次第に乱れた食行動が習癖(クセ)となっていくプロセスを説明しました。

過食症」や「むちゃ食い症」、あるいは「過食嘔吐(食べ吐き)」を繰り返している女性たちは、何もなかったのに、あるいは、何もすることがないと余計に、食べることや吐くことを繰り返し、クセになったと感じていらっしゃいますよね。

乱れた食行動が習癖(クセ)となるプロセスを考えてみると、気持ちを「感じなくする」、あるいは、ネガティヴな感情(苦痛)を「なかったことにする」行為(気分解消行動)が乱れた食行動につながっていますよね。
ですから摂食障害過食症や過食性障害)の治療では、感じないようにした気持ちやなかったことにしたネガティヴな感情(苦痛)を、しっかりと正面から見ていく必要があるのです。

この取り組み方が、対人関係療法では「過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。」と説明しますし、『8つの秘訣』では「秘訣6 自分の行動を変えるということ」p.209にある「衝動の波に乗る」というやり方です。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている対人関係療法による治療では、「思考、感情、情動のコントロールについての気づき」の段階、つまり「自分との関係を改善する」ができるようになった患者さんに、「心の状態の変化についての気づき」としてこの「行動の仕方を改善する」に取り組んでもらっていますよね。

いま現在、三田こころの健康クリニック新宿の摂食障害専門外来治療に取り組んでいらっしゃる患者さんが、【摂食障害が教えてくれること】というブログを書いていらっしゃいます。
治療が終結して摂食障害から回復された梅こんぶさんが、対人関係療法を受けていた頃のリアルタイムな体験をまとめてくださっています。

薬を出されるだけの一般的な精神科心療内科での治療で、過食や過食嘔吐、あるいはむちゃ食いが改善しないと感じられている方は、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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2018-04-02

アタッチメントの形成と変化

アタッチメント(愛着)は、不快な情動をなだめるために他者に接近する行動で、アタッチメント対象をもたない「アタッチメント(愛着)障害」では、他者に慰めてもらおうとする接近願望がみられないのが特徴です。
ですから「愛着障害かもしれない」「愛着障害を何とかしたい」と治療を求められる人は、「アタッチメント(愛着)障害」ではないのです。「気分変調症(持続性抑うつ障害)かもしれない」と思える人は、気分変調性ではない、という関係とよく似ていますよね。

このような混乱が起きてしまう原因は、アタッチメント(愛着)に関して、「愛着障害(戦争孤児などの養育者の剥奪や、それに類する重篤な虐待やネグレクト)」「愛着の問題青年期・成人期以降では夫婦/パートナー関係など二者関係の問題)」「愛着の状態(アタッチメント・スタイル)」が区別されずに乱用され、生きづらさや対人関係困難の原因が、すべて乳幼児期のアタッチメントにあるかのような誤解が蔓延しているからなのでしょうね。

アタッチメントをご存じない先生方は、幼少期に養育者(親)との関係で培われた「不安定な愛着スタイルを変える」という言い方をされますよね。
ところが、アタッチメントの研究では、幼児期の親子関係でアタッチメントが決定されそれが生涯続くという幼児期決定論は誤りとされているのです。

実のところ、現今の研修者の多くは、いわゆる幼児期決定論的な見方をほぼ捨てていると言っても過言ではない。
むしろ、ほとんどの論者が、乳児期のアタッチメントが、その後の生育過程において、個人がさらされることになる養育の質や、貧困や親の教育歴なども含めた家族の生態学的条件と絡み合う中で、個人の発達の道筋や適応性に複雑に影響を及ぼすという見解を摂るに至っている。

別の言い方をすれば、比較的多くのケースで、幼少期のアタッチメントの質がその後もそのまま保たれるのは、個人がそう大きくは変化しない家族環境の中で育ち、また同じ養育者の下で相対的に等質の養育を受け続けるからであると言い得るということである。


遠藤『生涯発達と発達臨床の視座から見るアタッチメント理論の現在』 in 小林・遠藤『「甘え」とアタッチメント』遠見書房


幼少期に親との関係が良くなかったからアタッチメントが不安定型になった、ということではなく、アタッチメントが不安定型のままなのは、たとえば、不登校や引きこもりなどによって家族以外の他者との関係や環境の変化が起きなかったために、個人の中に変化が起きなかったということなのです。

現在までに得られている実証的知見が物語るのは、子どもが、家庭外において、親以外の他者と安定したアタッチメントを取り結ぶ中で、先にみた自律性や自他に対する基本的信頼感を十分に身につけうるということであり、そしてまた、それらを土台に、生涯にわたるウェルビーイングや心理社会的適応を高く具現しうるということである。

遠藤「アタッチメント理論における基点と現代的展開」in こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」10-16, 2018


アタッチメントの適応とは、内省が統合されていて、首尾一貫した語り(ナラティブ)ができる「あり方(プロセス)」のことなのです。
ですから悲惨な生育歴をもっていたり、安定した対人関係を構築できなかった、ということを含め、そのような状況と自分の内面で起きていたことを、主観的にかつ客観的に振り返って語ることができることが、現状に適応するアタッチメントということです。

成人期におけるアタッチメントの問題は、広範囲の社会的な問題を引き起こす。
たとえば暴力的なパートナーとの関係の中にいる女性が、危険であるにもかかわらず繰り返し虐待関係に戻ってしまう行動を、アタッチメント理論では次のように説明する。
すなわち、この女性のパートナーとの関係は、間違ってできてしまったアタッチメントではあるが、この女性に接近に対する高いニードがあるためにパートナーとの関係に戻ってしまうのである。
(中略)
また、パートナーとの関係でひどい目にあった経験を持つシングル・マザーが、また拒絶されるかあるいは虐待されるのではないかと考えて新しい関係を始めることを怖がっているのは、恐れ型のアタッチメント・スタイルのためかもしれない。
(中略)
以上のようなケースにおいては、アタッチメントの歪みがその人を傷つけるような人間関係に敢えてとどまるとか、肯定的なものになる可能性がある人間関係まで避けてしまうという行動につながっていると考えられる。


ビフィコ&トーマス『アタッチメント・スタイル面接の理論と実践』金剛出版


アタッチメントの観点から大切なことは、「安定型」なのかどうかということではなく、不安定型のアタッチメント方略は、特有の文脈の脅威に対して学習された脅威を減少させるための適応であり、発達と相互作用する文脈において、どのアタッチメント方略が最も適応的であるか決まるのです。(『アタッチメントを関係性から見る』参照)
虐待する親にさえアタッチメントが形成されるのは、アタッチメントが生き延びるために必要な方略だからなのです。

結婚前後でAAI(アダルト・アタッチメント・インタビュー)のアタッチメント・タイプを比較した研究では、結婚前後での一致率は高い(78%)ものの、変化した者の多くが不安定型から安定型への変化だったこと、また必ずしも一致したAAIアタッチメント・タイプ同士がカップルを形成する訳ではないことが示された。

このことは、みずからと異なる他者との密接な関係を築くことによって、アタッチメント・タイプが成人においても安定型に変化しうることを意味している。

つまり、成長の過程で養育者とは異なる他者との関係においてアタッチメントの質が変化する可能性があり、逆境的な環境で成育した子どもにおいても信頼できる大人との関係を通してアタッチメント・タイプが安定型に移行することが期待できると言えるだろう。


玉岡・田中「精神科臨床においてアタッチメントを考える」 in こころの科学 No.198 (3) 「現場から考える愛着障害」38-45, 2018


「みずからと異なる他者との密接な関係」の中でアタッチメント・スタイルが不安定型から安定型に変化することがありますが、その他者は「安定型」である必要はないのです。
なぜなら、『アタッチメントを関係性から見る』にも書いたように、アタッチメントのパターンは「関係特異的」ですから、「安定型」の人が常に安定型のスタイルを表出する訳ではないからなのです。

矛盾した愛着行動が同時的・継続的に出現する無秩序型の愛着パターンにおいては、無秩序なパターンは秩序化されたパターンに取って代わるものではなく、秩序化されたパターンに上乗せされるものだということです。

言い換えれば、無秩序な愛着パターンは四六時中みられるものではなく、それが出現していないときの愛着パターンは安定型、回避型、アンビヴァレント型のいずれかであるということです。


上地『メンタライジング・アプローチ入門———愛着理論を生かす心理療法』北大路書房


さらに、アタッチメントをご存じない先生方には書けない部分があります。それは、アタッチメントがどのように変化していくのか?のプロセスです。

摂食障害治療も同じで、こうすれば治ると書いてある本はありますが、『8つの秘訣』にある体験談のように、実際にどんな体験をしていくのかについて説明されている本はほとんどないですよね。
いつか、三田こころの健康クリニック新宿での自験例を交えて解説しますね。

不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫)

不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫)



三田こころの健康クリニックの『聴心記』では『回避型アタッチメントと摂食障害』というタイトルで、他者に対する信頼障害を抱えている回避型アタッチメントと乱れた食行動に悩む女性たちは、対人関係の取り方は似ていますが、心の内面の充実感や自分自身への信頼感が正反対のようだということを解説しています。

「拒絶回避型」のアタッチメント・スタイルの人は、アタッチメント対象を避け、ストレッサーやその影響から距離をとり、脅威に近づいたことにより生じた感情を防衛して「締め出す」という非活性化ストラテジー(方略)を用いることを学んで生きてきました。

一方、「孤立感・孤独感」と「無力感」を抱えた乱れた食行動に悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)は、他者の顔色を読み、他者に合わせ、自己評価を低くして他者から高く評価されることを拒絶しています。
見捨てられ不安が活性化することを恐れて、本当はすがりたい、頼りたい気持ちを我慢して、他者から距離をとって人嫌いのように振る舞っている「対人恐怖的回避型」なのです。

そして、その孤立感・孤独感と無力感をなだめ、感じないようにし、なかったことにするために、過食や嘔吐という食行動(単独行動)にしがみついてしまいます。

「過食」や「むちゃ食い」「過食嘔吐」の治療で、まず、「感情・考え・情動のコントロールについての気づき」に取り組み、自分自身の心に正直になることで「自分との関係を改善する」プロセスから開始しますよね。

摂食障害の人も健康な人もライフイベントの数には違いがないものの、摂食障害の人は日常的な出来事をストレスだと感じやすいこと、つまり、出来事に対する解釈(思考)に反応した不安やネガティブな感情などの感情に気づくことができず、心の中で抱えられないため、現実は何も変わらないのに摂食障害症状を使って解消しようとすることに取り組む必要があるからなのです。

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来では、「過食症」や「むちゃ食い症」、「過食嘔吐」などの摂食障害、「カサンドラ症候群」や「夫婦/パートナー関係」に対する対人関係療法による治療の中で、アタッチメント・スタイルに対する「内省的自己機能」を高めることを目指していきます。

これまでの治療や現在通院中の医療機関での治療に効果が感じられない方や、「夫婦/パートナー関係」をどこに相談していいかわからない方は、三田こころの健康クリニック新宿の専門外来に申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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