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2008-11-07
■[地方行政]市来一般廃棄物利用エネルギーセンター問題続報
5月1日のエントリー「いちき串木野市(鹿児島県)ごみ発電問題」,5月26日のエントリー「東京工業大教授の責任」,8月9日のエントリー「東工大吉川教授のごみ発電技術続報」に関連する一件。
11月7日に,会計検査院は平成19年度決算検査報告を内閣に報告しました。
その中に,いちき串木野市の市来一般廃棄物利用エネルギーセンターの件も「不当事項」の一つとして指摘されています。→指摘事項原本はこちら(pdfファイルです)
−環境省−
廃棄物処理施設整備事業の実施に当たり、仕様書で定めた設備能力についての確認が十分でないまま施設の引渡しを受けたなどのため施設が所期の機能を発揮できず不当
1件 不当金額(支出) 2億4793万円1 補助事業の概要
廃棄物処理施設整備費国庫補助金は、廃棄物の円滑かつ適正な処理を行うことにより生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、ごみ処理施設等の廃棄物処理施設の整備を行う市町村等に対して交付されるものである。
本件補助事業は、鹿児島県日置郡市来町(平成17年10月11日以降はいちき串木野市)が、14、15両年度に、新技術を導入して一般ごみと肉骨粉を混合して処理する廃棄物処理施設を総事業費 860,788,765円(補助対象事業費 745,566,560円、国庫補助金 247,938,000円)で整備したものである。同施設は、一般ごみと肉骨粉を混合して処理することにより燃料ガスを発生させるためのごみ処理施設と、発生した燃料ガスを主燃料、軽油等を補助燃料として発電するための発電施設(最大 900kW)から成るものであり、本件補助事業は、これらの施設のうち、ごみ処理施設及び発電した電力をごみ処理施設の自家消費に充てる分(252kW)の発電施設の設置に必要な経費の一部を補助するものである。2 検査の結果
市来町が16年2月に発電施設の引渡しを受けた際には、ごみ処理施設で生成された燃料ガスを使った引渡し確認試験は実施しておらず、また、同年3月にごみ処理施設の引渡しを受けた当時もごみ処理施設からは発電が可能となる燃料ガスが生成されていなかったことから、生成ガスの燃料としての適格性を確認できていない状況であった。
そして、同町では、上記のとおり設備能力の確認ができていないのに、施設が完成したとする検査調書を添付するなどして、鹿児島県に実績報告書を提出していた。
また、施設の引渡し以降、ごみ処理施設は低調な稼働状況となっており、ごみ処理施設から生成される燃料ガスは燃料としての適格性を欠いていて、発電施設は燃料ガスによる稼働ができない状況となっていた。
このような状況において、いちき串木野市は、本件施設の改善に向けた取組を行うとしていたものの、改良工事の費用が多額に上り、確実な効果も見込めないこと、基本設計業者等の協力が得られないことなどから、改良工事等を行っておらず、全く改善のめどが立たないため、依然としてごみ処理施設の稼働は低調であり、発電施設は稼働しないままとなっていた。
したがって、本件補助事業で整備した施設は、一般ごみと肉骨粉を混合して処理することにより燃料ガスを生成して、これを主燃料として発電するという補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金 247,938,000円が不当と認められる。
会計検査院が今回,環境省に対して,補助金支出が不当であると指摘したことから,今後は環境省はいちき串木野市に対し補助金の返還を求めることになってくるものと思われます。
会計検査院の指摘の中に,当該施設が所期の機能を発揮できなかった原因(補助金を受託した側の不適切な処理)が触れられています。整理すると次のとおり。
- 町は、設備能力の確認ができていないのに、施設が完成したとする検査調書を添付するなどして、県に実績報告書を提出していたこと。
- 引渡し以降、ごみ処理施設は低調な稼働状況となっており、施設から生成されるガスは燃料としての適格性を欠いていて、燃料ガスによる稼働ができない状況となっていたこと。
- 市は、施設の改善に向けた取組を行うとしていたものの、改良工事の費用が多額に上り確実な効果も見込めないこと、基本設計業者等の協力が得られないことなどから改良工事等を行っておらず、全く改善のめどが立たないため、依然としてごみ処理施設の稼働は低調であり、発電施設は稼働しないままとなっていたこと。
ですね。そして,おおもとの原因(不適切な処理)は,表題にもなっていますが,
- 仕様書で定めた設備能力についての確認が十分でないまま施設の引渡しを受けたこと。
と指摘されています。
そもそも,仕様書で定めた能力を達成していないのに引き渡しを受けてしまったことにおいて,いちき串木野市(当時は合併前ですから,市来町ですね)には瑕疵があったということです。
追記 南日本新聞で報道されています
いちき串木野ごみ発電 補助3億円全額「不当」−検査院指摘、返還へ
会計検査院は7日、2007年度の決算検査報告を公表した。鹿児島県関係では、いちき串木野市川上のごみ処理発電施設「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」について、当初計画通りの発電が出来ず補助の目的を達していないとして、環境省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金全額3億268万円を「不当」と指摘した。同市は今後、補助金の返還を求められる。補助事業に伴う市債4億2000万円の繰り上げ償還も求められる可能性がある。
補助金の内訳は環境省分が2億4793万円、開発機構分が5475万円。報告は不当の理由について、同施設を建設した当時の市来町が施設の能力を十分に確認しないまま、施設が完成したとする検査調書をつけて県に実績報告を提出し、請負業者から引き渡しを受けたことや、改善のめどがまったく立っていないことを挙げ、「補助の目的を達していない」としている。
会計検査院によると廃棄物処理施設で補助金全額を不当としたケースは異例という。
同施設は東京工業大学の吉川邦夫教授が考案し、市来町が建設。ごみ処理で発生したガスを燃料に発電する仕組みで、年間最大2000万円の売電が可能との触れ込みだった。
しかし、04年4月の完成以来不具合が続き、すでに発電は断念。ごみ処理も不調だが、市町村合併後、施設を引き継いだいちき串木野市は「補助金全額返還を避けるには使わざるを得ない」として操業を継続。総事業費9億9385万円のほか、維持管理費などに4年間で約4億円を投じている。
同市は吉川教授や建設業者に対し、10億4700万円の損害賠償請求訴訟を起こす方針を決めている。
11月20日追記
ごみ発電施設廃止へ いちき串木野市長「改善は無理」
当初計画通り発電できていないことから、会計検査院が国の補助金は不当と指摘したいちき串木野市川上のごみ処理発電施設「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」(エネセン)について、田畑誠一市長は19日、市議会全員協議会で施設を早急に停止する意向を示した。
田畑市長は全協後、南日本新聞の取材に対し「今の技術では改善は無理」と説明しており、施設は事実上の廃止となる見通し。停止理由については、会計検査院が補助金全額を不当としていることや、同市の別の焼却施設「串木野環境センター」が可燃ごみ1トン当たり約1万7000円で処理できるのに対し、エネセンでは30万円以上かかり非効率である点などを挙げた。
施設の停止時期は今後、管理業務を委託している業者と協議して決定するという。停止後の施設をどうするかは未定。
同市の可燃ごみ処理量は2007年度8923トン。串木野環境センターで8601トンを処理し、エネセンの処理量は全体の3.6%に当たる322トンだった。同市は環境センターの処理能力に余裕があるため、エネセン停止による支障は生じないとしている。
エネセンは02年、旧市来町が着工し合併(05年10月)前の04年4月から稼働したが、当初から発電できず不調が続いていた。市は環境省と協議しごみ処理のみの操業を続けていた。
7日の会計検査院の決算報告は「工事完了時の性能確認が不十分だった」として、環境省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金3億268万円について全額を「不当」と指摘した。
市は今後、国から補助事業に伴う市債4億2000万円の繰り上げ償還も合わせ、約7億円の返還を求められる見通し。
12月4日追記 いちき串木野市へ少し朗報
市来ごみ発電施設 不当補助金返還、7000万円減額見通し
いちき串木野市のごみ処理発電施設「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」が当初計画通り稼働せず、会計検査院が国の補助金約3億円全額の支出を「不当」とした問題で、環境省が同市に求める返還額が約1億8000万円となる見通しであることが3日分かった。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金は5475万円。環境省分(2億4793万円)の一部減額により、同市の返還額は合わせて2億3500万円程度になるとみられる。県や同市によると発電はしなかったものの、廃棄物処理施設として使用したことが考慮された。返済方法は無利子で10年間の分割返済となる見通しという。
約6500万円の減額及び無利子返済は,小さな自治体の財政に影響を与えることへの国側の配慮ということでしょうか。
廃棄物処理施設として使用されたことが考慮されたということのようですね。
個人的には,自然科学にしても,科学技術にしても,幾多の失敗の上にこそ成り立つものであるから,小規模自治体の廃棄物エネルギーの発電への利用実験・実用化実験として考慮する方が本来は妥当のようにも思いますが。
いちき串木野市にとって少し朗報ですが,もしかしたら吉川邦夫教授らにとっても少し朗報ともなるのかもしれませんね(損害賠償金額算定上)。市債の繰り上げ償還分など,損害額は依然として大きいのですけれども。
2009年2月16日追記
いちき串木野市、ごみ処理施設損賠提訴 [02/16 18:02]
いちき串木野市のごみ処理発電施設が計画どおり稼動していない問題で、いちき串木野市はきょう、施設を設計・施工した業者らを相手どり総額9億8000万円あまりの損害賠償請求訴訟を鹿児島地裁に起こしました。
これは2004年に稼動したいちき串木野市のごみ処理発電施設が稼動直後から、発電やごみの処理が出来ないなどのトラブルが続き、去年12月に稼動を停止したものです。
いちき串木野市では改善のための工事を発注しましたが、発電はほとんど行えず、ごみ処理能力も予定の30パーセント程度にとどまっており、この改善費用や環境省からのおよそ3億円の補助金を含め、これまでに10億5000万円以上の費用がかかっていました。
これを受け、いちき串木野市はきょう、施設の設計などを行った神奈川県のエコミート・ソリューションズと吉川邦夫代表、建設を請け負った東京都の三井三池製作所に対し、多大な費用を要する施設の建設を進めさせ、損害を生じさせたとして9億8300万円あまりの損害賠償請求訴訟を鹿児島地裁に起こしました。
なお、いちき串木野市は補助の目的を達していないとして環境省からの補助金のうち2億4000万円余りの返還請求を受けています。
訴えられたエコミート・ソリューションズと三井三池製作所は、いずれも「訴状が届いていないのでコメントできない」と話しています。
【動画】ごみ処理発電施設問題で損賠訴訟
相次ぐトラブルで計画通りに発電できず、国に補助金を返還することになったいちき串木野市のごみ処理発電施設をめぐる問題で、いちき串木野市は施設の設計、施工業者など3者を相手取って、総額9億8000万円余りの損害賠償を求める訴えを16日鹿児島地裁に起こしました。
訴えられたのは、ごみ処理発電施設を考案した東京工業大学大学院の吉川邦夫教授と、施設の設計にあたった神奈川県相模原市の「エコミート・ソリューションズ」、それに施工業者で東京都中央区の「三井三池製作所」の3者です。
いちき串木野市のごみ処理発電施設は、旧市来町がおよそ3億円の国庫補助金などを含む総事業費およそ10億円をかけて建設したもので2004年4月に稼動を始めました。
しかし、相次ぐトラブルで計画通りに発電できず、補助金のうちおよそ2億4000万円を国に返還することになっています。
訴えによりますと、3者はそれぞれ実用化の上で問題点がないことを十分確認しないまま施設の設計や建設にあたり、その後の改善工事でも予定の性能は発揮されず結局建設や改修、維持などの費用が無駄になったとして3者に合わせて9億8345万円余りの損害賠償を求めています。
なお、この施設はすでに昨年末で閉鎖されています。
2009年7月27日追記
津川敬氏のブログ「循環型社会って何!」の7月8日のエントリー「いちき串木野市・国庫補助金返還の顛末」で,再度,このゴミ処理発電施設について紹介されています。
9月4日に次の公判があるということのようです。
吉川教授のホームページは次の通りです。
http://www.yk.depe.titech.ac.jp/japanese/index.htm
<以下毎日新聞の引用>
いちき串木野のごみ処理発電訴訟:口頭弁論 被告側「機能不全は想定外」 /鹿児島
毎日新聞 - 2009/05/16
全面的に争う姿勢
いちき串木野市のゴミ処理発電が計画通り稼働しなかった問題で、市が契約義務を怠ったなどとして、施設の考案者の大学院教授らに総額9億8345万円の損害賠償を求めている裁判の第1回口頭弁論が15日、鹿児島地裁(牧賢二裁判長)であった。被告側は請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。
訴えられているのは、システム考案者の吉川邦夫・東工大大学院教授と、吉川教授が役員を務める設計業者のエコミート・ソリューションズ(神奈川県)、施工会社の三井三池製作所(東京都)。
訴状などによると、問題の施設は、旧市来町が04年建設した「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」で、ごみ焼却時に発生するガスを利用して発電する仕組み。全国初の施設だったが、当初予定の約3割の処理能力にとどまるなどトラブルが相次ぎ、08年末稼働停止に追い込まれた。
被告側は答弁書で「(施設の)機能不全は、基本設計段階では想定され得なかった発電機の機能不足」などと主張した。
施設の建設費用約10億円のうち約3億円は国などからの補助金。市は会計検査院から約2億4000万円の補助金返還を求められた。【村尾哲】
http://mainichi.jp/area/kagoshima/news/20090516ddlk46040696000c.html
裁判は,かなり争点が細かくなるでしょうから,なかなか情報は出てこないように思います。
契約に至るまで,被告側がどのような話し方をしたのか。学舎としての論文のデータの出し方はどうだったのか,経営者としての商材のデータの出し方はどうだったのかという部分もあるでしょう。
施設がまともに稼働しない時点での,研究者としての対策,データの出し方と飾り方,経営者としての交渉等まで争点になっているのかどうかもわかりませんし。
なお,吉川教授は,現在アジアに目を向けておられるように思います。
以前から海外志向は強い方でした。とくに韓国・中国です。それは吉川教授の研究室のホームページの写真をご覧になると良くお判りになると思います。
http://www.yk.depe.titech.ac.jp/japanese/index.htm
どうか今度は、韓国や中国でトラブルを起こさない様にしていただきたいです。韓国や中国の廃棄物処理関係の人は、吉川教授のいちき串木野市のプラントでの大失敗を知らないでしょうから。技術を輸出するのは良いですがトラブルを輸出しないようにしていただきたいものです。
これは一般論としてお断りして書きますが、ビジネスの形態を取っている以上、中味が「インチキ技術」であると専門家が見抜いたとしても、「あの技術はインチキだ、ダメ技術だ」と公然と指摘するとビジネスを妨害することになり、名誉毀損で訴えられる危険があります。ですから、専門家でも厳然とした結果が出る前に下手なことを言えません。インチキ技術や、あぶなっかしい新技術がビジネスにされることを、第三者が介入して阻止するのはほぼ不可能です。
したがって、いちき串木野市のようなトラブルを避けるためには、旧市来町幹部が、コンサルタント会社や専門家に相談すべきでした。たぶん、旧市来町の大久保町長と側近の、技術的にほとんど素人の人が、導入を決めてしまったのだと思います。だからといって、ほとんど稼働しないガス化炉を売りつけた吉川被告側の責任は重いです。
吉川研究室のホームページのメンバーのページはなくなっていますね。たくさん学生・院生のいた研究室だったのですが。被告の教授に指導を受けているのでは、学生・院生も肩身が狭いでしょう。ホームページも去年の10月から1年以上更新されていません。
研究発表の2008年をみると、国内での発表はゼロです。いちき串木野の事件が起きる以前から、吉川教授は日本での学会発表に登壇するとヤジが飛ぶという方でした。国会ではなくて学会ですよ。地方自治体の約10億円の損害賠償訴訟の被告である方が、国内の学会で発表する訳にはさすがにいかないのでしょうね。
市来町のゴミ処理施設,結果論としては,「ビジネス」としての実用化レベルに至っていなかったことは明らかですからね。
大学の教員が行う「ビジネス」というものへの信頼性を失わせているという意味で,吉川被告の今回の件は,他への影響(というか迷惑)も大きいと思います。
蛇足ですが吉川「被告」ではなく,思わず「被告人」と言いたくもなってしまいました。
#Olivine様の11月7日のコメント,ご連絡にあわせて微修正し,11月15日付で再アップしました。あわせて私の11月10日のコメントも微修正し,本コメントとして再アップしました。
私の知っていることを、あと少し書き残させていただきます。いちき串木野市民の皆様のご参考になるようにと思っています。
吉川教授のSTAR-MEETの講演を聴いたことがあります。良いことずくめをいっていました。小型ガス化炉でエネルギー回収ができるとか、どんな廃棄物でも処理できるとか。
熱プラントは、小型になればなるほど、装置からの放熱の比率が多くなるので、エネルギー回収には不利だというのはプラントエンジニアの常識です。小型になればなるほど(表面積/容積)が大きくなる、小さいカップの湯のほうが冷めやすいのと同じ理屈です。小型ガス化炉で効率的にエネルギー回収ができるのなら、大型プラントで採用すればもっと回収効率が良くなります。そんなうまい話があるのかというのが講演を聴いたときの印象でした。
科学の作法では、新しい説を提唱したものがその実証責任を負います。新技術でも同じことで、「小型ガス化炉でも効率的にエネルギー回収ができる」という新技術を提唱した吉川教授側にその実証責任があります。
プラントを設計するときは、試験プラントや実証プラントで得られたデータをもとに、物質収支と熱収支と灯油、電気、水などの用役使用量を計算します。それがないと実用プラントの設計ができません。吉川教授が用いていた実験装置は、バッチ式(回文式)で連続処理方式ではありませんでした。それでどうやって実用連続プラントの物質収支、熱収支と用役使用量を計算できたのか? 謎です。
自治体のゴミ処理実用プラントですから、少なくとも半年くらいは連続稼働できないといけません。それをどうやって確かめたのか? それも謎です。
一般ゴミと肉骨粉を混ぜて処理するのですが、その裏付けデータをいつどのようにして得たのか? 世の中にそんなデータはころがっていませんので、それも謎です。
ゴミはいろいろなものが入っていて、そのままではカロリーが変動します。ガス化炉に投入する前に、破砕して十分混合しないと、発生ガスの量もカロリーもメチャクチャに変動します。一定のカロリーで一定量のガスが得られなければ、そのガスを使って発電できません。ゴミと肉骨粉の破砕、混合の前処理装置がついていない。それも謎です。
肉骨粉には脂肪がついていますから、乾留(蒸し焼き)すると油分(タール)がたくさん出ます。煤も出ます。それを、高温水蒸気を加えて分解(改質)するというのですが、触媒も使わずにそれが簡単にできるのならば、それはきわめて画期的な技術で、実際の石油化学プラントでも採用されていなければおかしいです。原理的には触媒なしでも少しは反応すると思いますが、実用的な反応速度ではないです。それを採用したのも謎です。たぶん、タールと煤塵が、配管や除塵装置にベタベタくっついて、閉塞して運転にならなかったと想像できます。
肉骨粉にはタンパク質が付いています。タンパク質は窒素を含む化合物ですから、乾留すればアンモニアが発生します。これもゴミのガス化をやったことのある人には常識です。何でアンモニア除去装置が最初から付いていないのか? これも謎です。
アンモニアが出ることが判ってから、おがくず入りの吸着塔を取り付けたのですが、おがくずがアンモニアを吸着するというのは初耳です。少しは吸着するでしょうけれど。プラントエンジニアだったら、ガスからアンモニアを除去するのなら、洗浄塔を設けて希硫酸で洗うでしょうに。そんな初歩的なことも知らずに、アンモニア除去におがくずというのも謎です。
というわけで私には謎だらけなのです。まだまだあるのですが、このくらいにしておきます。まさか、いちき串木野市のプラントを作ってしまってから、それでいろいろやってみて改造するのだ、だから「3年はかかる」のではないでしょうね。それではいちき串木野市のプラントは吉川教授のモルモットプラントです。
そして最後に、「想定外のことが起こった」というのも理解不能です。想定外のことが起こらないように実証試験を重ねることが、新技術を開発するエンジニアリング会社の義務だからです。いまさら「そんな筈ではがなかった」が言い訳になるとは思えません。
水蒸気改質とは炭化水素にスチームを加えて、水素と一酸化炭素を得る反応です。天然ガス(メタン)から水素を作る方法としてよく知られています。水蒸気改質は次のホームページに詳しいです。
http://comtecquest.com/DocPfd/H2process.html
一番単純なのはメタンと水蒸気の反応です。メタンでは次の通りです。水蒸気改質は全体として吸熱反応です。
CH4+H2O → 3H2+CO
CO + H2O → CO2 + H2
一般の炭化水素では次の通りです。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2 + n)H2
CO + H2O → CO2 + H2
何で「水蒸気改質」(カッコ付きにしたのはあとで説明します)が必要かというと、ゴミを乾留すると可燃ガスだけでなくタール(油煙)と煤塵が出るからです。いちき串木野市のSTAR−MEETでは、肉骨粉を混ぜています。肉屋さんがトンカツを揚げると、油で換気扇がベタベタになります。そこにホコリ(煤塵)を吹き付けると、換気扇はベタベタになり、そこにホコリが付いて真っ黒けになります。それと同じで、タールを取り除かないとガス化炉(蒸し焼き装置)の下流の配管やダストフィルターが詰まってしまいます。そこで「水蒸気改質」でタールを分解するのだというのです。
水蒸気改質に何でAir(空気)を入れるかというと、水蒸気改質には少なくとも750℃以上の高温が必要です。また吸熱反応なので熱を加えないといけません。そのために、ゴミを蒸し焼きして出てきた乾留ガス自身を「部分的」に燃やして、750℃以上の温度まで上げようというのです。ところが「部分的」に燃やすだけで済むかどうかが大問題です。ゴミの水分が多かったり、乾留ガスのカロリーが低かったりすると、全部燃やしても750℃以上に上がりません。また、後ろにつけたヤンマーのディーゼル発電機で発電しようという訳ですから、ここで全部燃やしてしまったらお話になりません。
これはとても大事なポイントです。STAR−MEETは、改質炉で「改質」しようとして乾留ガスを燃やし過ぎると、カロリーがなくなるから発電できなくなる、逆に、乾留ガスのカロリーを残そうとするとタールも残って、装置が詰まるから運転できなくなるという両ばさみの矛盾を抱えています。
肉骨粉のような油分の多いゴミを蒸し焼きしますから、乾留ガスには油煙(タール)と煤がたくさん入っています。これらは水素や一酸化炭素に較べて燃えづらいし、「改質」されにくいです。乾留ガス中の水素やメタンは燃えやすくて、すぐに燃えてしまいますが、タールと煤は改質炉を素通りしてしまいます。改質炉の下流の配管やダストフィルターが詰まってしまうので運転できません。そこで吉川教授は、改質炉を大きくすれば「改質」が起こるだろうと、改質炉を大きいものにすげ替えました。明らかな設計ミスなのに、改造費を市来町側に負担させたようです。
ところで、先程紹介したホームページやWikipediaにも説明があるように、水蒸気改質には触媒が必要です。しかし、STAR−MEETの改質炉には触媒が入っていません。ゴミを乾留していますので、乾留ガス中に塩素や硫黄などの触媒毒があるので、触媒がすぐに失活してしまいます。入れたくても入れられません。触媒が入っていないのに、何で「改質」が起こるのかという疑問が出てきます。
実は改質はほとんど起きていないのです。ガス化炉で分解されなかったタールの一部が、熱分解されるかも知れませんが、改質はほとんど起きません。触媒を使っていないからです。750℃程度の「改質炉」に水蒸気を入れても、触媒が入ってなければおまじない程度の効果しかないです。しかも、もともと乾留ガスには十分な水蒸気が含まれており、わざわざ加える必要もありません。なんで自称「Steam Reforming」なのかよく判りません。
平成19年第2回市議会定例会(6月)の議事録で、田畑市長は福田清宏議員の質問に対して次のように答えています。
「平成17年度は余剰水を123.16トン処理し、処理料は約465万円となっております。また、平成18年度は余剰水を237.38トンとタールを7.72トン処理するとともに、タール搬出のための場内作業に2日間を要したための費用合計として約1,206万円を支出しております。」
これからわかるように、改質炉でタールが分解していません。余剰水(プラントの廃水)の中にはわざわざ注入した水蒸気も含まれています。
さて、吉川教授は「改質炉」を大きくしました。「改質炉」は乾留ガスを流す前に750℃以上に予熱しておかないといけません。たぶん市来町には都市ガスがないでしょうから、プロパンガスのバーナーでガンガン予熱したと思います。そして、やっとあたたまったところでゴミの蒸し焼きを始めます。そして「改質炉」に乾留ガスを流しはじめます。
ゴミと肉骨粉を破砕して十分混合していませんから、ゴミのカロリーが変動します。乾留ガスの発生量が少なかったり、カロリーが低かったりすると750℃を維持できません。そうするとタールが分解しませんから、「改質炉」の下流の配管や浄化装置が詰まってしまいます。運転担当者は何とかして運転を続けようとします。それでやむを得ず本来は予熱用のプロパンガスバーナーを常時燃やします。乾留ガスのカロリーがどうなってもいいから、タールと煤を燃やしきってしまうという運転になります。ガス化と発電をあきらめて、焼却炉として運転したのでしょう。ガス化炉を一次焼却炉、「改質炉」を二次燃焼炉に転用して運転したのだと思います。ところが、猛烈な運転コスト(南日本新聞によるとトン当たり30万円以上) がかかったので、平成20年12月に市は運転を止めざるをえませんでした。
ヤンマーのディーゼル発電機は、ゴミの乾留ガス程度のカロリーでは安定して動きません。灯油とゴミの乾留ガスとの混焼が必要です。乾留ガスのカロリーがゼロなら灯油だけで発電していることになります。発電するのに、わざわざカロリーゼロの乾留ガスなど入れる必要はありません。実は改質炉で消費するプロパンでも、ディーゼルエンジンで発電することができます。STAR−MEETからの乾留ガスなどわざわざ使わなくても、STAR−MEETで消費するプロパンや灯油で、年に2000万円相当の電気を発電するなど朝飯前です。もちろん、そのためにはプロパン代や灯油代が、年に2000万円以上かかります。
STAR−MEETはもともと、ほとんどエネルギー回収などできない装置なのです。タールやアンモニアの問題も重要ですが、ディーゼルエンジンの入り口の乾留ガスがどの様な組成で、燃料に値するカロリーがあったのかどうか、そこが問題です。ここを突かれるのが吉川教授は一番痛いと思います。
STAR−MEETと名乗っていますが、Steam Reformingしていないという不思議なプラントです。吉川教授が「MEET」と命名したのには、人と出会う場という意味もこめたそうですが、旧市来町の大久保前町長が、吉川教授に「MEET」さえしなければ、STAR−MEETを導入することはなかったでしょうし、市来町がいいようにカモにされることはなかったでしょう。損害を税金で補填するようなことになれば、被害者は何の責任もない市民です。
コメントありがとうございます。大変勉強になります。
運転が不可能なレベルでタールが発生することから,いちき串木野市のプラントでは水蒸気改質がうまく行っていないことは推定できていたところですが,これが開発者の責によらない,予測不可能なものだったのかどうかというところが,裁判では明らかにされることを信じています。
しかも,今回は触媒無しの「改質炉」とのこと。
水分を普通に含むゴミを原料に,その乾留ガスを改質しながらエネルギー源としても使用することは,不可能に近い,極めて困難なことがolivineさんのおかげで,理解できました。
吉川教授側にもいろいろと言い分はあるのだろうとは思いますが,実用レベルでなかったことだけは明らか。そういう状況にあったことをビジネスマンとして釈明するのか,研究者として釈明するのかも,興味深いところですね。
つくばの発電しない風車は、つくば市側に厳しい判決結果が出て、市側が控訴した様ですね。いちき串木野市の裁判はどうなっているのでしょう。
旧市来町向けのSTAR-MEETの場合は、上のコメントに長々と書かせていただいたように、「未完成技術を売りつけたというよりも、もともと技術的におかしいプラントを売りつけた」とolivineは考えています。
もう一つ問題なのは、実証・検証実験が欠如していることです。新しいプラントを世に出す場合は、ベンチテストという実験室での基礎的研究、パイロットプラントという実装置の小型版のテストプラントでの実証、さらに、セミコマーシャルプラントというほぼ実用規模の装置での検証を行うのが普通です。この場合、実際に都市ごみと肉骨粉と混ぜて、(もちろんバッチ式試験装置でなく連続試験装置で)実証試験を行います。そして実証されたデータに基づいて実用1号機を設計します。プラントエンジニアリングの世界というのは、石橋を叩いて渡る世界なのです。旧市来町向けのSTAR-MEETは、(大学教授にありがちな)吉川被告の机上の空論で設計したのだと思います。
吉川被告の性格からいって実証実験を重ねるなどという「七面倒くさいことはやらない」とolivineは思います。吉川被告の研究室にはSTAR-MEET方式の連続装置はありませんでしたし、納期的に無理でした。という訳で、ぶっつけ本番で旧市来町向けのSTAR-MEETを建設したのです。吉川被告としては、ともかくプラントを建設してしまって、ごちゃごちゃ改造したり、運転条件をいじくり回したりしていれば何とかなると思っていたのでしょう。それで、旧市来町から「実証的性格云々の産学官連携事業」という一札をとって逃げ道を作って置いた訳です。そして見事に失敗した。
olivineが原告側でしたら、吉川被告に次の点をただすと思います。
1.いちき串木野市のSTAR-MEETと同じ反応条件で吉川被告の言う「水蒸気改質」が起きているのか、実際のプラントの運転データや実験室での基礎データを提示しろ。
2.いちき串木野市のSTAR-MEETのディーゼル発電機入り口のガスのカロリーは実際にいくらだったのか提示しろ。本当にエネルギー回収ができるのか、はっきりしろ。
3.いちき串木野市のSTAR-MEETを設計するに当たって、実際に都市ごみと肉骨粉と混ぜて、バッチ式試験装置でなく連続試験装置で実証試験をやったのか、やらなかったのか答えろ。やったのならそのデータを提示しろ(別の廃棄物、例えば鶏糞でやってうまくいったとしても証明にならない)。
4.大学発ベンチャーとはいえ、税金を使って自分の研究の実証実験をやって良いのか。地方自治体を失敗するリスクに巻き込んで良いのか。失敗するリスクを説明したのか。
設備を導入した旧市来町の大久保町長ら市幹部の責任はありますが、それはいちき串木野市民に対して負うべき責任であって、吉川被告側に対して過失相殺されるべき責任ではないでしょう。吉川被告は「実績のない1号機を買うようなことはしない」というようなことを発言しているのですが、それは「買った方が悪い」と居直っているのと同じです。また、失敗するリスクを知っていながら、設備を導入した大久保町長らには、それを説明しなかったことになります。
今回はこの「想定され得なかった」ことについて掘り下げてみます。
以前に、おが屑を充填した吸着塔のことに触れました。新聞の報道で「おが屑充填塔でアンモニアを除去する」という記事を見て、「ええ? いくら何でも」と思いました。新聞記者はともかく、吉川被告ほど技術に詳しい方なら、“おが屑”でアンモニアを除去できないことは知っているはずです。吉川先生、大変失礼致しました。
それでは、吉川被告は何のために「おが屑塔」をつけたのでしょう。吉川被告は「おが屑塔」で乾留ガス中のタールや煤を吸着除去しようとしたのです。短時間なら役に立ちますが、長時間運転したら詰まってしまいますから、実は苦し紛れの手段です。でも訴訟されるのが目に見えていましたから、「STAR-MEETはちゃんと動きました」という“実績”が欲しかったのです。
2006年3月14〜17日の会計検査院による検査の時には、その「おが屑塔」に乾留ガスを通し、タールやダストを除去し、ディーゼル発電機に送ることができました。そして何が起こったでしょう。やはり発電しなかったのです。なぜなら、前回のコメントで述べたように、乾留ガスにはほとんどカロリーが残っていなかったからです。改質炉でタールを分解しようとしたら、そこでタールを全部燃やしてしまうしか方法がないからです。
ということは、吉川被告は乾留ガスにほとんどカロリーが残っていなかったことを知っているのです。さんざんタールトラブルに見舞われましたから、STAR-MEETのキモである「水蒸気改質」がウソだったということも、吉川被告は知っています。でも、「水蒸気改質」がウソであり、乾留ガスにほとんどカロリーが残らないことを認めたら損害賠償しなければいけません。それで吉川被告はとぼけて煙幕を張っているのです。
吉川被告は、「STAR-MEETはちゃんと運転できたではないか、失敗ではない、私は間違っていない、発電できなかったのは想定外の発電機の機能不足のせいだ」と主張しているのです。乾留ガスにカロリーがほとんど残っていなくて発電できなかったという本当の理由を知っているのに。そして今度は、何の責任もないヤンマーディーゼルの発電機に濡れ衣を着せているのです。
ヤンマーのディーゼル発電機には、燃料ガス、軽油、それらの混合でも動くディーセルエンジンがついています。でも、いくら優秀なガスエンジンでも、カロリーのほとんどないガスでは回りません。
吉川被告にとって最大の想定外は、自分が大発明だと思っていたSTAR-MEETプロセスに、自分が一番だまされていたということではないでしょうか。
旧市来町幹部の責任については,やはり過失相殺されるようには思います。
でも,それにしても,まさか吉川被告自らがSTAR-MEETという「大発明」に騙されていたとしても(w),「商品」としてはトルマリンゴと同様くらい,機能しない欠陥品だったんだろうなと感じます。
プラシーボ効果ぐらいはあったんでしょうが。
吉川被告自身への、STAR-MEETのプラシボ効果は非常に強烈だったと思います。ホメオパシーも真っ青でしょう。思い込みが激しいというか、自信満々で会社を作ってSTAR-MEETを市来町に売りこんだのですから。
ところで、プラントの基本設計を行う会社が、なんぼ何でも「想定外でした」では責任を逃れることはできないと思います。トヨタは「想定外でした」では許してもらえませんから。一般には、プラント購入側に過失相殺が適用される例は少ないと思います。
過失相殺というよりも、別の重大な問題があります。
吉川被告は、市来町のSTAR-MEET導入事業は、「産学官連携の共同研究事業」だと主張しています。「産」は吉川被告が代表取締役をしているエコミート・ソリューション社、「学」は東工大、「官」が市来町だそうです。吉川被告は一人二役です。そして、当時の人口約7000人の市来町が、突然、大学に研究資金を提供する国と同格の「官」に昇格しているのが興味深いです。
吉川被告は、建設費、運転費はもとより、改造費まで町に負担させています。しかも市来町から年間1千万円の「共同研究費」を自分の研究室に払い込ませています。どう見ても実態は、自分の研究、自分のベンチャー会社のための「試験研究」なのです。それを市の起債や国からの補助金を使ってやったのです。
地方自治体の事業に対する国からの補助金を、勝手に「産学官」の「共同研究事業」に転用することはできません。試験研究が目的ならば、NEDOなどの国の試験研究資金に応募する必要があります。そして、国が試験研究する価値があると評価した課題に対して研究資金が交付されます。したがって、吉川被告が「産学官連携の共同研究事業」だと主張すると、旧市来町に公金を不正流用させて、自分の試験研究を実施させたことになります。これは刑事告発の対象になるような気がするのですがいかがでしょう。