日本通信「b-mobile 1GB定額」の採算性について調べてみた

 最近元気一杯の日本通信が面白いサービスを発表した。
 
b-mobile 1GB定額 | 速くて安い、よくばりな通信。
http://www.bmobile.ne.jp/1gb/
 
 日本通信の上記ページによると、30日間1GBの高速データ通信が使えて、

  • SIMパッケージ:3,480円
  • チャージ価格 :3,100円

とのこと(2011年9月10日よりサービス開始)。
 確かに魅力的かつ安いのだが、逆にこれで採算がとれるのか気になったので試算してみた。計算ミスを含めて間違えや勘違いは多々あるかと思われるので最初に断っておく。
 

1.MVNOについて調べてみた

 
 MVNOである日本通信は、このサービスのためにFOMA回線を利用しているので、ドコモの公開資料を探す。
 
MVNOとしての事業をご検討の事業者様へ
http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/disclosure/mvno/business/
MVNO様向け卸携帯電話サービス概要のご説明資料
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/disclosure/mvno/business/gaiyou.pdf
http://www.prepaidmvno.com/wp-content/uploads/2011/03/gaiyou.pdf
 
 上記資料によると、第2種卸FOMAサービスの月額利用料は以下の通り。

  1. 契約者回線ごと:118円(基本使用料96円+付加機能使用料15円+ユニバーサル7円)
  2. 定額通信量:7,458,418円(10Mb/s)+網改造料?円

 この数字、素人には高いのだか安いのだかよく分らない。
 

2.10Mb/sについて調べた上で1万パケット当たりの接続料金を計算してみた

 
 ということで「10Mb/s」について調べてみた。
 
MVNOの事業採算について
http://seikatsubunka.blogspot.com/2010/01/mvno.html
 
 上記ページによると、1パケット128B、8bit=1Bなので、

  • 1万パケット当たりの接続料金:月額2.81円(=7,458,418円÷30日÷24時間÷60分÷60秒÷128B×1000÷8)

となる。2010年1月18日時点では1万パケット当たり4.89円だったので大幅に値下がりしていることが分かる。
 ブログは更新されていないようだが、この事業者は今何をしているのだろうか。
 

3.契約者ごとの1GB当たりの仕入原価を計算してみた

 
 1万パケットは1.28MB(=128B×10,000)なので、

  • 1GB(1,000MB)当たりの接続料金:月額2,195円(=2.81円×1,000÷1.28)

となる。
 上述した通り、契約者回線ごとの月額使用料は118円なので、「b-mobile 1GB定額」の契約者ごとの仕入原価は、単純計算すると、

  • 月額2,313円(=2,195円+118円)

と推定される。
 厳密に言うと、これに網改造料などが加わるが、金額がハッキリしないし、おそらく契約者回線数で頭割りをすると微々たる金額になると思われるので、除外して考えることにする。
 

4.「b-mobile 1GB定額」の採算性

 
 1GB当たりの仕入原価は2,313円なので、チャージの場合の粗利は単純計算で787円(=3,100円−2,313円)となる。粗利率は25.3%と想像以上に低い。
 
 他方、SIMパッケージの仕入原価は、新規開通の事務手数料として契約者回線ごとに2,100円かかるので、

  • 4,613円(=2,313円+2,100円)

となり、1,133円(=3,480円−4,613円)の赤字!となる。すなわち2ヶ月以内に解約されたら、日本通信は全く利益が出ないということ。
 
 ただし日本通信はボランティアでやっているわけではないので、収益化の目算は立っているものと思われる。
 例えば、余った分を翌月に繰り越すことはできないので、契約者の大多数は、20%前後余らせてしまうか(=粗利率アップ)、使い切ってチャージするか(=回転率アップ)のどちらかになる可能性が高い。よって、採算性は上昇する。
 この他にも様々な手法を積み上げることによって利益を確保するのであろう。
 

5.「100MB定額」あるいは「200MB定額」の採算性

 
 ところで少し考え方を変えてみれば、より確実に利益を確保できるように思われる。1GBではなく、もっと少ないパケット通信量ならば?
 例えば、通信量を抑える代わりに月額1,000円以内に抑えれば、イオンsim(月987円)と同様のインパクトを与えることが予想される。
 
 そこで3つのパターンの仕入原価について計算してみた。

  • 100MB定額:月額337円(=2.81円×100÷1.28+118円)
  • 200MB定額:月額557円(=2.81円×200÷1.28+118円)
  • 300MB定額:月額776円(=2.81円×300÷1.28+118円)

 利用者からすれば300MB定額が嬉しいが、日本通信も利益を出さなければ企業活動は続かない。現実的には、100MB定額か200MB定額の二択かと思われる。
 そこで参考になるのがSBの通信サービス。
 
iPad 2:(iPad専用)プリペイドプラン | ソフトバンクモバイル
http://mb.softbank.jp/mb/ipad/price_plan/prepaid/
 
 30日間100MBで1,825円(=1,510円+ウェブ基本使用料315円)のサービス。プリペイドプランであったり、WifiスポットやEメールが2年間無料で使えたりするので、同等のサービスとは言えないが、比較対象としては最適かと思われる。
 30日間100MBで1,000円以内ならば、iPadユーザーにアピールできる可能性が高い。200MBならば更にインパクトは大きい。
 
 料金については、

  • SIMパッケージ:2,980円
  • チャージ価格 : 980円

あたりであろうか。
 
 これならば1GB定額と異なりSIMパッケージでも粗利は確保できるし、チャージの粗利についても、

  • 100MB定額:月額643円(=980円ー337円)
  • 200MB定額:月額423円(=980円ー557円)
  • 1GB定額  :月額787円(=3,100円ー2,313円)

となり、100MB定額と1GB定額では大きな違いが生じない。すなわち、販売目標を少し高めに設定すればよいので、経営的にも問題ないと思われる。
 
 普段はWifiなので3Gをあまり使わない、通信料を安く抑えたいが、イオンsimの遅さは嫌だ、という層は確実に存在する。自分もその一人だ。
 というわけなので、日本通信に対して、月額980円の100MB〜200MB定額プランを期待する。