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2011-05-21

国債金利の上昇によって日本は復活する。震災復興には資金を惜しまず投入せよ。 三國陽夫氏に聞く

| 21:33

磯山: 日本経済は厳しい局面が続いていましたが、そこに東日本大震災が起き、復興という重荷が加わりました。

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三國: 大震災を日本経済が立ち直るきっかけにすることです。住宅、商店街、公共施設や道路、防波堤などを単に「復旧」するだけでなく、より良いものに作り替える「復興」です。そのための大規模な財政支出と減税を、国内景気が冷え込まないうちに一刻も早く実行することが必要です。菅直人首相の手腕の良し悪しの議論は後にして、とにかく政治主導で政府がおカネを使うことでしょう。

 住宅ローンや事業用資産の借入金が残っていて新たにスタートするための借り入れができない、いわゆる「二重ローン問題」が指摘されています。そうした債権政府が保証など何らかの肩代わりをします。加えて政策金融もあります。借り手が元利を支払えるためには、事業者の売り上げ増、個人の所得増が不可欠です。日本経済のエンジンが一気に回り始めるまで惜しみなく資金を投入することです。

磯山: 為替が円高基調になり、輸出産業の苦戦による日本経済への影響を懸念する声もあります。

三國: サプライチェーンの寸断が長引いており、輸出の落ち込みは避けられないでしょう。これを機に日本の経常収支の黒字は消滅に向かうことになると思います。しかし、これは日本にとって決して悪いことではありません。

磯山: 「黒字亡国」論ですね。三國さんの長年のご主張で、文春新書にご著書黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す (文春新書)もあります。

三國: ええ。これまで日本は経常黒字分を、円安誘導の目的で資本輸出してきました。通貨機能を海外に移転してきたのです。国内におカネが回れば「乗数効果」が働き、次から次へと経済拡大効果を生みますが、資本輸出をすると国内で信用創出をしても乗数効果が生じません。この状況を90年以降恒常的に続けてきたのですから、「失われた20年」は当然です。

 今回の大震災で国内に資本が回帰し、おカネが潤沢に回るようになれば、日本経済の20年間の停滞モードは終止符を打ち、ごく自然に成長モードに切り替わると思います。

磯山: 復興には巨額の資金が必要になります。財源論も議論されていますが、どう調達すべきでしょうか。

三國: 財政出動により国債金利が上がればいいのです。そうなれば海外に流出している資金も国内に還流してくる。あるいは海外投資家も日本に投資するようになるでしょう。銀行の信用創造機能が復活します。不動産価格、株価など資産価格が上昇に転じ、借り入れをして住宅に投資するといった経済活動が活発になると思います。デフレ収束します。

磯山: 貿易赤字に転落してもいいということですか。

三國: 日本の貿易赤字が進み、所得収支を加算しても経常赤字になると、米国債に流れていた過去に累積した黒字、すなわち資本輸出額を日本が取り戻すことになる。つまり米国が借金返済をしなければならなくなるという意味です。今の米国経済はそんな余裕のある状況ではありませんし、国際政治の力学からも難しいでしょう。日本としては輸入を相殺するくらいの輸出水準に落ち着けばいいということです。

磯山: おっしゃるように外貨準備を取り崩すのは難しいでしょうね。

三國: 90兆円の外貨準備の取り崩しは難しいでしょうが、民間の対外純資産だけでも150兆円程度はあります。国債金利が上がれば、この資金が日本国内に戻り始めます。さらに金利が十分に上がると、30〜40兆円あると言われる家計のタンス預金が銀行に戻って来ます。銀行は与信を容易に拡大できるので、国内でおカネが勢いよく回ります。

磯山: 金利を上げた場合、円高になると思いますが、かなりオーバーシュートするのではないでしょうか。

三國: 1ドル=50〜60円まで行ってしまう可能性はあります。そこまでいくと日本の輸出産業が立ち行かなくなります。そこで、いずれ米国のドル債務を何らかの方法で処理することが検討されることになります。結果として、日米の労働賃金の比較などから考えて、1ドル=70円台で落ち着けばいいのではないでしょうか。

 積極的な財政出動でカネが国内に回るようになれば、名目経済成長率で5〜6%は基調としてあり得るでしょう。そうなれば金利が年4〜5%まで上昇しても経済に問題は起きないと思います。

磯山: 財源は国債発行で賄えるということですか。

三國: 消費税増税の主張がありますが、消費税は消費を抑制する効果を持ちます。いわば消費課徴金なのです。高い消費税率を課すのは主として経常収支が赤字で消費を抑制したい国がとる政策です。日本経済の活性化には国内需要を喚起しなければならないのですから、消費税増税は逆効果です。

磯山: 震災復興に巨額の投資をするとして、日本全体の成長につなげるためには、投資をする対象が必要です。

三國: 大きな柱はやはり住宅でしょう。国民が豊かな生活を実現すると同時に資産形成をしていく住宅投資です。住宅ローン金利を全額所得控除にして、借金を税制上優遇して資産形成に投資する、というおカネの循環を作り、「自走式経済」を構築することが求められます。

 また、俵屋宗達から回転ずしまで、上層社会からも庶民の生活からも生まれた日本の文化は、世界を魅了して広く受け入れられています。日本の消費者が欲しがるものを世界に供給し、日本文化を評価してもらい、高い価格で世界が購入してくれれば日本経済は人口減でも成長できます。

 今回の震災は日本の国のかたちを転換させる大きなきっかけになるでしょう。原子力発電所にしても、とにかく発電量を増やし、日本の製造業の生産量を増やし続けるために無理をしてきたように見受けられます。それが限界に来ていることを如実に示したのが原発事故だったのではないでしょうか。戦後、とにかく前を向いてがむしゃらに走り、物量を増やすことばかりで、立ち止まって考えることをしませんでした。

 ここらへんで、生産量を追うのではなく、生活を豊かにするという発想に転換する時期ではないかと思います。日本流の豊かな生活は、必ずや世界の憧れとなるはずです。

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す (文春新書)

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す (文春新書)

聞き手 磯山友幸

現代ビジネス 20110521アップ

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/5150

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