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2012-12-12

選挙で議員を選ぶ際に、国会での活動実績が1つの評価軸になればいい---「国会議員の活動データを集積する会」鈴木祟弘氏に聞く

| 09:53

国会議員国会での活動実績で評価されるべきではないでしょうか。国会での質問時間や議員立法の提案回数など「活動実績」をデータベース化するプロジェクト「国会議員の活動データを集積する会」が始まりました。突然の解散で大車輪でまとめたデータを、東京プレスクラブが『国会議員三ツ星データブック』刊行。本日12月12日から書店に並びました。「データを集積する会」を今後、恒常的なプロジェクトにしていくために、皆さんの応援を求めています。まずは本を買っていただけると、活動資金が生まれます。このプロジェクトの狙いやデータブックの見方などについて、世話人のひとり鈴木崇弘・城西国際大学客員教授に聞きました。現代ビジネスにアップされた原稿を編集部のご厚意で以下に転載します。オリジナル→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34306

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総選挙の投票日が間近に迫ってきた。民主党自民党に次ぐ「第三極」と呼ばれる少数政党が乱立し、各党の政策の違いが国民には今ひとつ伝わって来ない。前回の総選挙民主党が掲げた「マニフェスト(政権公約)」が軒並み反故になった"反動"から、政党が掲げる公約をどこまで信じていいのか多くの有権者が迷っているのではないか。では何を基準に国会議員を選べば良いのか。議員ひとりひとりの国会での活動実績をきちんと「見える化」することで、議員個人の評価を行う取り組みが始まった。「国会議員の活動データを集積する会」。いわば議員の通信簿を公表してしまおうというわけだ。世話人のひとりである鈴木祟弘・城西国際大学客員教授に狙いを聞いた。聞き手: 磯山友幸(ジャーナリスト

 問 「国会議員の活動データを集積する会」の狙いは何ですか?

国会議員国会での活動についてまとまった情報が存在していないという実態に気が付いたのです。極端な話、国会への登院状況もまとめて公表されていません。つまり、出欠状況すら簡単には分からないのです。国民の代表として選ばれているのに、本当に国会に行っているかも分からない。実際、国会会期中に所属する委員会を欠席して地元に帰っている議員は結構います。

 問 どんな情報を収集したのですか?

 今回はパイロット・プロジェクトですので、前衆議院議員の過去3年あまりの実績について、公開情報で集められるデータをまとめました。国会での「質問回数と質問時間」、「議員立法の提案件数」、「質問趣意書の提出件数」の3つです。

 質問回数と時間については、衆議院ホームページにある衆議院TVのビデオデータを人海戦術で集計しました。また、議員立法についても衆議院ホームページに記録があるのですが、そこには提案代表者の名前しか載っていませんでしたので、衆議院事務局に問い合わせ、情報をいただきました。

 質問趣意書は議員の権利として国会開会中に提出できるもので、内閣がそれに答えることになっています。無闇に質問を出している議員もいる、という批判もあるのですが、それでも国会活動の1つであることには間違いないので集計しました。

 問 質問にしても内容の良し悪しがあるのではないでしょうか?

 内容の良し悪しを評価するとなると、その基準が難しいですね。とりあえず、数量で測れる段階で留めました。いずれ、質問内容の評価まで踏み込んでできるようになればいいなと思いますが、それは将来の課題です。

 問 独自にデータの収集を始められたのは国会の情報公開が不十分だからでしょうか?

 今回、情報収集をやってみて驚いたのですが、衆議院ホームページの情報はお粗末です。各議員の経歴も載せていたのですが、更新されていない情報がそのままでした。野田佳彦首相の経歴には解散直前まで「現在、財務副大臣」と書いてありました。

 恐らく各議員から掲載する原稿をもらって載せ、その後は放りっぱなしだったのでしょう。あるいはすべて業者任せだったのかもしれません。しかも衆議院が解散されたらパッとすべて消してしまいました。

 問 記録として残さないわけですか。

首相官邸ホームページの場合、歴代の内閣の記録はアーカイブとして残っています。政権交代したら全部消すということはありません。衆議院事務局にアーカイブとして残すという発想がないのでしょう。事務局にない、というのは国会、つまり国会議員自身に情報と記録を残して国民に開示するという発想がないのでしょう。

 問 国会の議事録は残っているわけですね

 はい。ところが衆議院TVの動画は、数年したら消してしまうという話です。政府には情報公開法というのがあって、官庁が持っている情報を一定の要件に従って開示請求することが国民に認められています。でも、この法律は行政府に対して情報公開を求めるものなので、国会衆議院参議院の事務局という組織は対象ではありません。三権分立ですから、考えてみれば当然なのですが、国権の最高機関とされている国会の情報が国民に開示されないとしたら問題ですね。

 問 それは意外ですね。国会の情報開示ルールがないのですか?

 ルールづくりを急ぐべきでしょう。もっとも、これまでの国会には情報がないというのが実態だったのかもしれません。日本の場合、情報の大半は行政府つまり役所が握っています。衆参両院には調査局という部署があり、国会図書館もある。国会議員は彼らに調査を依頼するのですが、ほとんどの情報は行政府が出したものなどを整理して持って来るだけです。

 問 国会議員の活動データを集積する会」で集めたデータはどう利用するのですか?

 記者クラブで資料を配布したほか、ネットメディアなどに提供しました。予想以上に解散が早かったため、おおわらわで作業をしましたが、何とか選挙の公示前ギリギリに公表することができました。

 また、データを提供した東京プレスクラブが『国会議員三ツ星データブック』という本にまとめて出版してくれました。12月12日に書店に並ぶそうです。有名なレストランガイドを真似て、すべての前衆議院議員を対象に星を付けています。3ツ星は3人、2つ星は35人ぐらい、1つ星は80人ほどの議員です。

 問 どういう評価で星を付けているのですか?

国会での質問回数もしくは時間のランキング上位50のいずれかに入れば星1つ、議員立法の提案回数で上位50に入れば星1つ、質問趣意書の提出回数で上位20位に入れば星1つとしています。また、政府で大臣か副大臣を務めた議員には無条件で星を1つ付けたそうです。

 問 国会での質問時間や回数は圧倒的に野党が多いようですね。

 特に民主党政権では与党政府は一体という発想で与党の質問時間を短くしました。この結果、質問時間上位には野党が並んでいます。しかも少数政党が多く並んでいますが、これは小党ほど所属議員の数が少ないため、同じ議員が繰り返し何度も質問する機会を得ている結果と見ることもできます。それでも同じ党内でも質問に熱心な議員とそうでない議員がいることが分かります。

 問 委員会ごとの質問時間も調べられているのですね。

 はい。データブックではこれもランキングしています。それぞれの委員会ごとに質問王のような議員がおられます。かなり議員ごとの専門分野が見えますね。

 問 政権交代から3年余りの間に質問に立っていない議員もいるのでしょうか?

 はい80人近くいます。もちろん、この中には民主党議員で大臣や副大臣にずっと就いていたため、国会質問に立つチャンスが無かったという人が多く含まれます。でも野党議員で3年間で質問時間が合計60分以下なんていう人はたくさんいます。

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 問 データ公表によってどんな効果を期待しますか?

国会議員の仕事とは何か、国会議員でも知らない人がいるように感じます。国会で質問をしたり、自ら法律を作っていくのが立法府である国会の最大の仕事です。行政府に入って大臣になるのが立派であるように考えている議員が多いですが、本当はそれが目標ではおかしい。米国議員は、法律の通称に議員個人の名前が付くこともあり、それを自らの業績として胸を張っています。

 質問時間や議員立法の件数を公表することによって、国会議員がそうした活動の重要性に気づいてくれれば嬉しいです。また、選挙国会議員を選ぶ際に、国会での活動実績が1つの評価軸になればいいなと思います。

 問 国会議員の活動データを集積する会」の今後の活動はどうされるのですか?

参議院選挙の前までに参議院議員のデータ集積をやりたいと思います。ただ、参議院TVのデータの古いものがどんどん消されているようなので急ぐ必要があります。また、国会が終わるごとにデータを集計して公表するようにすれば、国会ごとの議員の通信簿が作れると思います。

 データ蓄積は学生のインターンなどの協力で行っていますが、いずれにしても人海戦術です。今は世話人の手弁当で運営していますが、多くの人に支援していただければと思います。民主主義を機能させるための基本データですから。


鈴木祟弘 (すずき・たかひろ)

1954年栃木県生まれ。東京大学法学部卒。イースト・ウエスト・センター奨学生として同センターおよびハワイ大学大学院に留学、政治学修士。総合研究開発機構、日本国際フォーラム笹川平和財団、日本財団を経て東京財団研究事業部長。2006年から11年まで自民党の「シンクタンク2005・日本」の事務局長を務めた。現在、城西国際大学大学院国際アドミニストレーション客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する - 自伝的シンクタンク論』(第一書林、2007年)。朝日新聞社「WEBROZA」や日経BP社「日経ビジネスオンライン」にコラムを連載中。