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2013-03-14

「地方自治体が支払う高金利の受益者は国」という知られざる現実! 公共金融の民間資金への置き換えを訴える大庫直樹氏に訊いた

| 16:58

一見地味なテーマのように見えますが、本質的な問題指摘だと思います。自治体にはCFOがいないんですね。そこから変えなければいけません。現代ビジネスのオリジナルページもご覧ください⇒http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35117


地方自治体が高い金利の資金を借り、そのツケを地方の住民が知らないうちに負担している。そんな地方財政の"暗部"を掘り起こしている金融専門家がいる。マッキンゼーなどで銀行経営のコンサルティングを行ってきた大庫直樹氏だ。大阪府市統合本部の特別参与でもある。これまであまり議論されてこなかった地方財政における資金調達の重要性について訊いた。聞き手: 磯山友幸(ジャーナリスト



 問 このたび出版された『あしたのための銀行学』(ファーストプレス刊)の中で、公共金融の民営化が必要という主張をされています。よくある公共金融機関の民営化ではなく、自治体などが借りている資金を民間資金に置き換えるべきだというご主張ですね。

 ええ。私は2009年から大阪府の特別参与を務めてきましたが、大阪府で言えば8兆円の資金を外部から借りています。1つの企業体とみるととてつもなく大きい規模です。この借り入れ金利を0.1%引き下げることができるだけでも80億円の資金が浮く計算になります。地方財政が厳しい中で、それだけの資金が浮けば新しい事業に回すこともできます。

 問 地方自治体は一般より高い金利で借りているということでしょうか?

地方自治体地方債を発行して資金を調達するのですが、これには一般会計債と呼ばれるものと公営企業債と呼ばれるものがあります。ここでは、上下水道事業や運輸事業、病院などの資金に回される公営企業債を中心に考えたいと思います。公営企業債の平均金利は2010年度で3.2%ですが、民間の公益企業の平均的な金利水準は1.8%です。大きな開きがあるわけです。

 かつては国の信用をバックにした地方債は金利が低く、民間よりも有利な調達が可能でした。ところが地方債にも信用力による金利格差が生じるようになっています。本来、水道などきちんとした収益が見込める事業は信用度が高いため、一般的な地方債よりも金利が低くなる可能性があります。ギリシャ政府財政危機ギリシャ国債の利回りが急騰しても、収益力の高い企業の社債金利はそれほど上昇しなかったのと同じ理屈があり得るわけです。

 問 ところが日本の公営企業は高い金利で借りている、と。それはなぜですか?

 最大の理由は20年、30年といった超長期の債券を発行して資金調達しているからです。同じ公益企業でも民間企業の場合、せいぜい10年、企業によっては5年債の発行を繰り返すことで資金をつないでいます。短い期間の金利の方が長期金利に比べて、一般的には低くなります。短い債券の発行に変えることで、金利負担を抑えることが可能なのです。

 問 その分、住民の負担も減るということですね。

 はい。実は2010年度の公営水道の資金調達コストは2.7%程度です。このため、住民が支払っている水道料金の8%ほどが金利の支払い分なのです。地下鉄などの交通事業では15%、雨水対策などで巨額の設備投資が必要な下水道事業にいたっては23%が金利です。一方で民間企業の場合、加重平均すると1%台です。

 問 金利が高めの地方債が住民に喜ばれているということはありませんか?

 残念ながらそうはなっていません。高い金利の利払いで恩恵を受けているのは住民ではないからです。実は地方債の引き受け手は圧倒的に国なのです。

 2011年3月末の地方債残高53兆円における引き受け主体別データは、何と50%が政府資金で、続く28%が地方公共団体金融機構となっています。銀行も13%を引き受けており、市場で公募されたものは9%に過ぎません。つまり、国に払う高い金利を自治体住民が負担しているわけです。

 問 地方公共団体金融機構とは何ですか?

 かつての公営企業金融公庫を引き継いで2009年6月に生まれた組織です。実はこの機構は実質的に極めて高収益な組織になっています。実質的というのは金利変動準備金というのを毎期積んでいるためです。2012年3月期の当期利益は220億円に過ぎないのですが、経常利益は2,300億円です。

 機構は短い期間で資金を調達し、長期で貸し付けているので、期間ギャップの利益をフルに享受しています。さらに金利が変動した際のリスクに備えて積んだ前述の金利変動準備金が、機構全体で4兆円にも達しています。いっその事、機構が資金を調達する期間と貸し付ける期間を同じにしてギャップをなくしてしまえば、理論上、この準備金はいらなくなります。いわば埋蔵金です。

 問 海外の自治体の資金調達はどうなっているのですか?

 日米で調達方法が大きく違います。米国では自治体が行う個別の事業ごとに債券を発行するのが一般的です。これをレベニュー債と呼んでおり、この債券だけを扱う取引所まで存在します。レベニュー債の特長は、事業によって利回りが大きく変わることです。独占的で安定的な収益が見込める水道事業などは低い利回りで資金調達が可能です。

 一方、病院事業のように公的なサービスではあるものの、民間病院とも競合するような場合、高めの金利でないと資金が調達できません。つまり、高い金利を負担してまで自治体がやるべき事業なのかどうか、再評価が迫られるわけです。また、このレベニュー債には税制面での優遇措置があり、米国地方債市場では大きなウエートを占めています。

 問 日本で同様の取り組みはないのでしょうか?

 かつて新しい広島市民球場を建設する資金を広島市広島県が共同で調達した際に発行された地方債には、20億円の募集に対して66億円の応募があったそうです。その時の発行金利が1.03%で、当時の国債金利1.20%を下回った。使途がはっきり見えることで、その事業を必要だと思っている住民が積極的に資金の出し手になる可能性は十分にあることが証明されたと言えるでしょう。

 また、仕組みは違うのですが、茨城県環境保全事業団という財団法人がレベニュー信託という手法で資金調達を始めました。財団が運営する廃棄物処理場の将来の売り上げを信託にして、優先受益権を投資家に販売したのです。これで100億円の資金調達ができました。

 問 なぜ地方自治体は高い金利の債券をそのままにしておくのでしょうか?繰り上げ償還すれば良いのでは。

 実は地方財政法などで繰り上げ償還が認められているのですが、財政状態が悪い自治体といった条件が付いています。

 問 少しでも低い金利で借りようという当たり前の行動を地方自治体が取れない理由は何でしょうか?

地方自治体に専門家がいないことが最大の理由でしょう。企業にはCFO(最高財務責任者)がいますが、自治体にはCFOはまずいません。予算を作る責任者はいますが、効率的な資金調達をして金利コストを圧縮しようという責任者がいないのです。資金調達を見直すだけで大きな額が浮くのですから、民間の大企業でCFOを務めた専門家などに協力を求めるべきだと思います。

あしたのための銀行学2

あしたのための銀行学2

大庫直樹 (おおご・なおき)

1962年東京生まれ。1985年東京大学理学部数学科卒。同年マッキンゼー入社。99年にパートナー。リテールバンキンググループのリーダーなどを務める。2008年に独立してルートエフ株式会社を設立し代表取締役。2009年から2011年まで大阪府特別参与。2011年からプライスウォーターハウスクーパース株式会社パートナー。現在、大阪府市統合本部特別参与。著書に『新銀行論』(ダイヤモンド社、2004年)『あしたのための「銀行学」入門』(PHPビジネス新書、2009年)ほか。