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2013-03-26

人気の町おこしの専門家が明かす「必敗パターン」とは 〜グッドモーニングス代表・水代優氏インタビュー

| 09:33

町おこし」は全国共通の課題です。過疎の村からシャッター商店街となった地方都市、そして大都会の一角まで。町をどう再活性化するかが問われています。そんな「町おこし」の専門家として売り出し中の水代優・グッドモーニングス社長にお話しを伺いました。現代ビジネスの記事を以下に再掲します。オリジナルページには写真もいろいろあります。→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35199

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問 水代さんは町おこしの専門家として全国を飛び回っています。町おこしの極意というのはあるのでしょうか?

町おこしというと、過去に他の地域で成功したパターンの真似をしがちです。とくに行政の場合、そういう依頼がほとんどです。「水代さん、ゆるキャラ作って」とか、「水代さんは飲食関係が強い。ご当地グルメB-1グランプリで優勝したいので協力して」といった話がよく来ます。

町おこし」「場づくり」の専門家として思うことは、必勝法というのは、1回限りなんですね。その地域に入り込んで、一緒に考えていかないと簡単には勝てない。逆に、必敗法というか、負けパターンはいくつかに分類できますね。

問 ゆるキャラは全国的なブームで、成功してるようにも見えますが。

 ゆるキャラもB級グルメも、最初に作った人はすごいと思います。熊本の「くまモン」ぐらいの全国レベルになれば話は別ですが、あとは二番煎じ。確かに、行政は前例があるものには簡単に資金を出します。未知の挑戦にお金を出すのは難しい。でも、そこを決断しないと本当の成功はありません。

 よく言われる事ですが「ヨソ者、バカ者、若者」が集結しないと成功しません。それぞれの地域資源の素晴らしさには、ずっと住んでいる人は気付かないものです。そこに面白さが隠れていたりするのです。

問 素晴らしい素材を磨くことだ、と。

 100人いて2人しか気付かない「こだわり」とかでも、丁寧な作業を100やったら多分7割くらいの人が気付きます。「どうせ誰も気付かないから」と言って諦めてはいけないのです。「こだわり」を積み重ねたら、みなに評価してもらえるはずです。

 お客さんに「お洒落ですね、いいですね」って言ってもらうには、すごく地味なこと、やるべき事を、スタッフがきちんとチェックし合いながらやるのが大事なんです。「面倒くさいこと」をいっぱいやるのが成功への一番の近道ですね。しかもそれをゲーム感覚で楽しくやくのが重要です。

問 先ほど負けパターンがあるとおっしゃいましたが、それはどんなものですか?

 例えば、ダメなお店の場合ですけど、シフトの早番と遅番が口もきかないとか、厨房と接客係が喧嘩してるといったパターンです。あと「こだわり」への諦めもよくあります。飲食店でいうと、掃除の諦め。店の玄関、トイレ、冷蔵庫の3ヵ所がピカピカで、早番も遅番も喧嘩していない店に、今まで呼ばれたことがありません。

 つまりコミュニケーションの問題なんです。よく「ホウ・レン・ソウ」と言いますが、報告・連絡までは電話やメールでもいい。しかし相談だけは絶対会ってすべきです。そういう情報の共有があるかないかで、大きく変わってきます。

地域おこしについて言えば、同じ県庁内でも農水課と商工課が対立していたり、県と市の仲が悪くて競って同じことをやっている例がままあります。これも必敗パターンですね。

問 水代さんはコミュニケーションの「つなぎ役」をやってるわけですか?

 はい。よく"通訳"だと言ってます。ドリルで壁に穴を空けるようなことをやっています。

問 最近、関係しているプロジェクトはどんなものですか?

宮城県名取市の「閖上(ゆりあげ)朝市」の復活プロジェクトをお手伝いしています。仙台の近くですが、東日本大震災で大きな被害を受けた地域です。

 もともと有名な朝市で、毎週日曜日と祝日の朝6時くらいから10時ぐらいまでやっていて、5000〜8000人が集まっていた。秋刀魚のイベントだと1万人もの集客力があったのです。それが津波で何もなくなってしまいました。

 地元の組合の人たちの「絶対あそこに帰ろう」という想いがあって、カナダ政府の援助で、朝市を復活させることになったのです。すでにジャスコの駐車場を借りて再開しているのですが、これを元の場所で復活させます。5月3日に仮オープン、8月には全面オープンする予定です。

問 そこにどんな水代流を吹き込むのですか?

 ロゴをしっかり作って、グラフィックをしっかりやってと、いろいろ提案しています。「おじいちゃんが孫たちにカッコイイって言われるようにやりましょう」と言っています。みんなが誇りを取り戻すためにデザインを整備するんです。お洒落に6次産業化をして、商品開発をして、儲けましょう、と言っていますが、人によって反応は様々ですね。

 今トライしようと思ってるのは、市場の前面にウッドデッキを敷きたいという希望があるのですが、予算がないので、半畳分のウッドデッキを敷くための資金1万円を拠出してください、という募金を始めます。「閖上半畳・繁盛募金」と名付けました。

 これからクラウド・ファンディングの手法を使ったり、ウェブサイトで呼びかけるなど、応援の輪を広げていきたいと思います。ウッドデッキが敷けたら、その上でジャズ・イベントをやりたいですね。

問 もともと町おこしに携わったのは丸の内が最初ですか?

 ええ。それまで私たちのフィールドは、青山とか表参道とか世田谷三宿が中心でした。そこで世界のデザイナーやお洒落な人たちを集めたイベントをやっていました。当時はまだ丸の内はオフィスだけの町で、土日はシャッター街でしたから。

 お手伝いすることになって、丸の内で働いている人たちが世界から「カッコイイ」って言われないかぎり、東京が本当に一番カッコイイ町にはならないな、と思いました。丸ビルの建て替えなどでハードは立派になるのですから、後はソフトを作って提供すべきだと考えたのです。

 外部からコンサルティングするのは誰でもできるので、企画だけでなく、自分で運営することを売りにしよう、と考えました。そして私が所属していた家具ショップのイデーが三菱地所さんから受託して、会員制のカフェ「倶楽部21号館」を開きました。

 同時に、丸の内カフェ(現・marunouchi cafe SEEK)の立ち上げにも関わらせていただきました。「丸の内には何がないんだろう」と考えた時に、「公園がないな」と気付き、そんな機能をもったカフェを立ち上げたいと思ったのです。つまり、人々が集まり、憩い、交流する「場」です。

 会社という枠の中だけの人間関係しかない人たちが丸の内にはあまりにも多い。定年退職したら全部のネットワークが切れてしまうようでは、豊かな生き方とは言えません。色々なソフトを提供することによって、丸の内の拠点にしたい。丸の内カフェでは、食やアートのセミナーなどを企画・運営してきました。会社以外での友達を作れる場として機能させたい、ということです。

 それから10年あまり続けてきて、倶楽部21号館の会員は1200人ほど、丸の内カフェの会員は4000人にまで広がりました。年間100回くらいのイベントやセミナー、ワークショップ、講演会などを企画・運営しています。県庁や大使館などとも協力して、それぞれの地域や国を紹介するイベントなどを行っていますが、これは人気があります。文化、音楽、経済ワイン、食べ物など、色々な切り口で複合的に紹介しています。

そこで培ったネットワークが生きて新しい取り組みも出てきました。ルクセンブルク大使館と石川県庁に組んでもらい、ルクセンブルク白ワインと石川のスイーツ魯山人が愛した懐石料理などを上手く組み合わせて、そのマリアージュを楽しんでもらうという企画をやりました。かなりヒットしましたね。

 最近、よく思うのは、フェーズが変わってきたなということです。単に出会いを演出するだけでなく、演出した出会いによって、新しいプロジェクトが生まれていくようになってきています。

問 もともとイデーでは新店開発などを担当していたそうですね。

 イデーで町づくりやイベント・プロデュースの責任者をしてきました。カフェやレストランの立ち上げなどもやってきました。また夏には、個人的に友人と共同で、神奈川県・葉山の海の家を経営しています。今年で5回目の夏になります。お洒落なアーティストやDJを呼びます。今まで学んだ場づくりの知恵を集めたショーケースのようなものです。

 マーケティング手法や食事のメニュー、商品開発、スタッフの教育、広報に対する考え方、建築、デザイン、グラフィック・デザインなど、すべて自分が今までに体得したことを提案できる形になっています。実際、地方自治体復興庁からの紹介された人が、丸の内と海の家に来て、「両方できるんだ。この人とだったら新しい場づくりができるかもしれない」って思っていただいたようです。

問 地方の地域おこしの依頼も増えているそうですね。

岡山県新庄村地域おこしのお手伝いをしています。本格的に関わり出したのは去年の秋です。古くから知り合いのカリスマ編集者、湯山玲子さんの紹介を受けて、プロジェクト・デザインについて話しに行ったのがきっかけでした。村の人が丸の内と海の家に来て、「是非!」っていう感じになったんです。

 これまでは県の単発イベントを手伝うケースが多く、実際に自分が「場」に入っていって、本気で雇用を生もうというプロジェクトに関わるのは初めてです。すでに村から融資してもらってキッチンカーを作った人や、株式会社を立ち上げた人など、少しずつですが形になり始めています。

ウェブサイトを上手く使いながら情報発信し、広めていく仕掛けを作ります。大成功して金持ちになるのは簡単ではありませんが、「自分たちがしっかり食べていける武器をたくさん持とう!」と言っています。

新庄村の人口は1008人。山奥ですが、素晴らしい桜並木があったり、江戸時代からの家並みが残っていたり、素晴らしいところです。

問 もう1つの大きなプロジェクトが神田淡路町の再開発ですね。

ワテラス」という新しい複合ビルができるのですが、コミュニティースペースを使ったイベントの企画・運営を請け負いました。

「粋」がテーマなんですが、自分で「粋」と言うと粋じゃないので、"Essence of Japanese"っていうシリーズにするつもりです。京都香道茶道俳句和菓子蕎麦のほか、ぽち袋の折り方や、字をきれいに書けるようになるプログラムなどを考えています。丸の内で溜め込んだノウハウを神田に生かすわけです。年間24本ぐらいの企画をやる予定です。

 さらにコミュニティ誌の編集発行も引き受けました。江戸の香りを残す神田淡路町の昔からの住民と、ワテラスに住む新住民が溶け合い、新たなコミュニティが出来上がっていくお手伝いをしたいと思っています。

 都市の町おこしは今後、ますます重要になると思います。地方に比べて問題が表面化しない事が多いのですが、都会の独居老人の問題や、孤独死、自殺なども、コミュニティの崩壊と無縁ではありません。

問 コミュニティの壊れ方は、実は都会のほうが激しいように思いますね。

閖上など東日本大震災の被災地に行って思うのは、ジワジワとやってくるはずだった問題が、津波と共に一気に表面化したということです。高齢化や限界集落の問題ばかりでなく、産業構造や町の構造などが一変に行き詰まったわけです。

 逆に言えば、被災地で新しいものを創り上げようと頑張ってる人たちのノウハウは必ず、他の町や村で今後深刻化するであろう問題の処方箋になると思います。新しい事例というのは、東北に集まるのではないか、東北から始まるのではないか、という息吹のようなものを感じています。

問 地方の農業と東京のレストランを結び付けて新しいモノを開発するといった6次産業化(1次産業+2次産業+3次産業)にも取り組んでいますね。

6次産業化については、3次産業側が1次産業に出ていくのが正解ではないかと思っているのですが、農林水産省としては、1次産業から出ていく以外は許さないという感じです。3次産業が支配すると1次産業のモノを買い叩く、という発想から抜け出せないからでしょう。

 ただ、最近の3次産業の発想は、ものづくりのプロセスを、買い手なりサポーターなりが共有すれば、きちんとした値段で1次産品は売れます。「現代ビジネス」のこのコラムに登場していた熊本菊池市の渡辺商店さんの発想です。エンドユーザーに触れてる人たちが、本当に欲されるいると感じるものを作っていかないと、6次産業化は難しのではないかと思うんです。

 豊かな時代なので、男の発想の「マーケティング」は全滅すると思います。今は会議から生まれるマーケティングの発想だけで大量に作って売るという時代ではありません。従来のマーケティング手法で「これいいよね、俺は買わないけどさ」という商品を開発しても、限界がくると思うんですよね。たとえニッチでも、自分の奥さんや自分自身が財布のひもを緩めて買おうと思うかどうかが重要なんです。

6次産業化というとすぐに、うちの地域はイチゴがいっぱい採れるからジャムを作ろう、という話になります。でも、健康志向が強まっている時にハイカロリーなジャムなんかたくさん食べますか? 冷蔵庫にジャムが2瓶以上入っている家庭は少ないでしょう。とっておきのひと瓶を自分で買うとなったら、フランス製のいいジャムを買うでしょう。消費者に買ってもらうための「枠」はものすごく狭いわけです。

「これだったら自分の財布のひも緩むかな」ということを真剣に考えて、6次産業化の商品開発にこだわってみたいと思います。

問 ワテラスも舞台になるそうですね。

 第3金曜日と土曜日にワテラスの広場で「マルシェ」をやるので、6次産業の新しい商品を売ってもらおうと考えています。また、実際に自分が出会った農家の人たちと、丸の内のネットワークで知り合ったシェフたちを呼んできて、B to Bの交流会もやっていきたいな、と考えています。