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2013-04-28

Xデーは2017年、世界のカネを呼び込まないと日本は沈む 近藤洋介・経済産業副大臣に聞く

| 23:26

民主党政権は金融オンチというか、金融産業を嫌う風潮があったように思います。今後、日本の金融・資本市場をどうしていくのか。安倍内閣でも議論が始まる見込みですが、民主党政権時代にも前に進めようとしていた議員はいました。少し古くなりましたが、昨年11月に「日経ビジネス・オンライン」にコラムを頂戴した際に第1回として11月にアップされた近藤洋介議員のインタビューです。日経新聞の元同僚でもあります。ご一読下さい。

オリジナルページ→http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121029/238734/

2012年11月2日掲載

「総合取引所」を実現させるための制度整備を盛り込んだ改正金融商品取引法が9月の国会会期末ギリギリに成立した。これまで、金融庁経済産業省農林水産省に分かれていた取引所に対する規制・監督の権限を、原則として金融庁に一元化することとなる。株式や金融先物、商品などを一括して取引する総合取引所の実現に向けて、政府は民間の取引所に対して積極的に働きかけを行う方針だ。省庁間の権限争いもあり、法案の成立が危ぶまれたが、何とか第一歩を踏み出した。総合取引所法案に主体的に取り組んだ近藤洋介・経済産業副大臣に聞いた。

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  政権交代後に経済産業大臣政務官として、総合取引所構想を成長戦略の柱として打ち出しました。

 近藤:2010年に「新成長戦略」の金融分野の柱として総合取引所を盛り込みました。本来ならば1年前には通すべき法律だったのですが、ようやく成立にこぎ着けたのは良かったと思っています。ただ、問題は、新成長戦略の検討を始めた3年前に比べて日本の資本市場をめぐる状況がむしろ厳しさを増している事です。ねじれ国会という事情もあり仕方がない事とはいえ、やや遅すぎたと感じています。これから相当スピードアップして取引所の改革を進めなければならないと思っています。

  10月に発足した野田佳彦第3次改造内閣で、経済産業副大臣に就任され、今度は総合取引所の実現に向けて旗を振ることになりました。

 近藤:経産副大臣になって、取引所自身の判断とはいえ、東京工業品取引所を今後どうするかという話は少し歩みが遅くなっているのではないかと危惧しています。東工取は大阪証券取引所との連携を模索していたわけですが、その大証が東証と一緒になる。その時に東工取はどうするのか。本来なら早めに結論を出さなければいけないわけです。特にシステム更新を控えているわけですから。経産省の事務方は、東証と大証のシステムがどうなるかを見ないと判断できないと言っていますが。とはいえ早めに手を打たなければいけないという危機感は持っています。

  東証大証の統合で生まれる日本取引所に東工取も合流する、と腹を括ったのでしょうか。

 近藤:まだ判断を下していないということでしょう。しかし、東工取だけで単独で生きていけるのかというと、そうではない。ただ時間だけが流れていく対応の遅さに焦りというか、これでいいのかという思いはあります。個人的な意見ですが、私は東工取も東証大証と一緒になるべきだと思います。と言うよりも、ほかに対案はないのではないでしょうか。

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  新成長戦略に総合取引所を盛り込んだ時、経産省農水省には相当な抵抗がありました。当初彼らがこだわっていたものは何だったのでしょう。

 近藤:あまり言いたくはないですが、やはり役所という組織は自分の所管を剥がされるのが基本的に嫌ですからね。現場の審議官とか課長が、というよりも、やはりOB達であると思います。大物が何人かおりましたから。やはり「俺の目の黒いうちは(権限を手放すな)」というのが若干あったのではないでしょうか。

東工取の業績は思った以上に悪い

 その後、経産省も腹を括ってくれました。ただ残念ながら、法律の成立が遅れた理由のひとつとも言えるのですが、金融庁も自分の庭先さえ綺麗にすれば良いという姿勢が見えました。世界で競争に勝てる日本の取引所を合併推進などでどう作るのかという発想に欠けていた。経産省からすると金融庁に「いい所取り」されるのではないかという疑心暗鬼がありました。

 その点、松下忠洋・金融担当大臣が非常に尽力されました。経産副大臣から金融担当大臣になられたので、双方の立場からまとめられた。法案成立に向けた後半戦は松下さんの力が大きかったと思います。亡くなられて非常に残念です。

  経産省が腹を括った理由は?

 近藤:東工取の業績が思った以上に悪いという現実だと思います。農水省管轄下の東京穀物商品取引所の上場商品を東工取が引き受け、東穀取は解散することになりました。東穀取もボロボロでした。

  農水省も当初は総合取引所構想に反対の姿勢でしたね。どうにかして自らの権限を残そうとしていました。

 近藤農水省の中では数少ない「開明派」の幹部が統合の旗振りをしてくれました。これでまあ、ベースは出来たわけです。

  民主党が目指した「政治主導」にはいろいろ批判もありますが、総合取引所については、官僚の抵抗を押し切ったという点で「政治主導」が効いた事例という事でしょうか?

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 近藤:時間はかかりましたが、結果的にできました。ねじれ国会の中で、自民党の方々のご理解もいただいたわけですから、その力も大きかった。自民党政権下では出来なかったことを、一緒になってやらせてもらったという事です。

  近藤さんは新成長戦略をまとめる頃から、海外のおカネをいかに引っ張ってくるかという発想が大事だ、アジアの投資資金の「ハブ」として取引所が重要だ、資産運用立国を目指すべきだと主張されていました。

 近藤:はい。今でもそう思っています。個人の金融資産は国内にたくさんあると言われますが、海外の資金を日本に引っ張ってくる必要がいずれ出てくる。特に東日本大震災で状況が大きく変わりました。やはり原発が動かなくなったことが大きいのです。31年ぶりの貿易赤字になりましたが、輸入エネルギーの費用が増えれば、いつ経常収支が赤字に転落してもおかしくない。そのXデーが2017年にもやってくるという見方が出ているわけです。原子力発電所のほとんどが停止する前はもう少し時間があったかもしれませんが、2017年というのは相当な現実味を帯びています。

不動産におカネを呼び込むことが必要

 そういう状況の中で円高が進み、輸出ができなくなってくるとますます状況は厳しくなる。そうなると日本の国債を国内だけで消化できなくなる日が自ずと来るわけです。そういう意味でも世界のおカネを日本に呼び込む、投資してもらう政策が本当に必要になってくるわけです。

  産業政策と共に、おカネをいかに呼び込むかということを考えなければ日本の産業は簡単には立ち直らないとことですね。

 藤近:そうです。そういう意味も含めて、古川元久さんが国家戦略大臣として「成長ファイナンス戦略」をまとめました。私はそのとき党側で、プロジェクトチームの事務局長をやっていました。いろいろと民主党の中でも批判はありましたが、私はファイナンス戦略に一石を投じたものだと思っています。

 ひとつの柱はデフレ解消のためのファイナンス戦略です。資産デフレを解消するためには不動産におカネを呼び込むことが必要です。Jリートによる資金調達手段の多様化などに向けて次期通常国会に法改正案を提出するという方針を盛り込みました。

 もうひとつは、運用立国を目指すという意味で、確定拠出年金の普及・拡充や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金活用の必要性も入れ込みました。

 さらに、全国銀行協会の幹部に「絵空事だ」と揶揄されましたが、休眠預金の資金活用です。全銀協は大したことはないと言っていましたが、整理させたら、手数料を引いてもネットで年間600億円ぐらいある。これは結構な額だと思います。このおカネをリスクマネーとして投資に回せるとすれば、それなりの効果があると思います。休眠預金も、まさに眠っているお金を動かすということだと思います。

日本の銀行は人もおカネもムダにしている

 こう言ってはなんですが、銀行は大した努力もしないで史上最高益を得ているわけです。運用と呼ぶに値しないことをやっている。預貸率が5割以下というところもある。こんなことでは金融機関とは言えないと思うわけです。おカネを眠らせてムダにしているわけですから。


 なおかつ、銀行界は人材も眠らせている。最近の就職人気上位に大手銀行が並んでいます。人もカネも抱え込んで眠らせている。この構造を変えるべきだと思います。その象徴として休眠預金に手をつけたわけですが、ことほどさように、カネを動かすこと、そして外から呼び込む事は非常に大事だと思います。

  経済成長のためにおカネを回す施策となると、経産省だけでは難しいですね。

 近藤:そうです。経産省主導ではなかなかできません。やはり金融庁財務省ですね。金融を動かすには税なんです。そこでやはり財務省の主税局がもう少し柔軟に対応してもらわなければならないですね。

 「成長ファイナンス」にも「教育資金を通じた世代間の資産移転の促進」を盛り込みました。まさに眠っているおカネ、銀行の資金を分析すれば、65歳以上の高齢者の預貯金がほとんどなわけです。これをどうやって回すかとなると、子や孫のために投資するという形で動かすのが一番わかりやすいわけです。そうすると贈与税や相続税といった問題にぶち当たる。主税局の壁にぶつかるわけです。

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  成長ファイナンスの柱は、閣議決定した「日本再生戦略」にも盛り込まれました。日本経済は成長過程に乗るでしょうか。

 近藤:やはり今後の景気を占う上で、電気料金の値上げが大きな重石になるのではないかと危惧しています。「だから原発を再稼働しなければ」とは言いませんが、現実問題として動かせる原発は動かさないと、電気料金が上がり、企業収益の足を引っ張ってしまいます。





近藤洋介(こんどう・ようすけ)氏

1965年生まれ。88年慶応義塾大学法学部を卒業し日本経済新聞社入社東京本社編集局産業部、経済部で記者として、日米摩擦、エネルギー問題、金融問題、行政改革などを取材。99年同社を退社。2000年衆院選山形2区から無所属で出馬するが落選。03年の衆院選民主党から立候補し初当選。以後、当選3回。野党時代は「次の内閣」の経済産業大臣を務め、若手論客として活躍した。政権交代で誕生した鳩山由紀夫内閣では経済産業大臣政務官に就任。新成長戦略の作成に中心的役割を果たした。その後、民主党総括副幹事長、成長戦略・経済政策プロジェクトチーム事務局長などを務め、2012年10月に経済産業副大臣に就任。野田佳彦首相の側近として知られる。