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2013-09-26

8月の百貨店売上高は再びプラス アベノミクスに残る課題は大都市と地方の格差解消

| 10:58

今の景気を支えているのは消費と公共投資です。アベノミクスによる「ムードの好転」が消費を押し上げてきたわけですが、今後どうなっていくのかが大きな焦点です。現代ビジネスに掲載された原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37079


 1カ月前のこのコラムで「好調な伸びが続いてきた百貨店の売上高に変調をきたし始めた可能性が出てきた」と書いた。

 日本百貨店協会が8月20日に発表した全国百貨店の7月の売上高(店舗数調整後)が前年同月比で2・5%のマイナスになったからだ。6月が7.2%増という高い伸びだっただけに、7月以降、景気が腰折れしてしまうのかどうか、全国百貨店の8月の売上高が注目されていた。

 では8月の売上高はどうなったか。

 9月20日に日本百貨店協会が発表した統計によると、全体の売り上げ(店舗数調整後)は2.7%増と再びプラスに転じた。7月に9カ月ぶりにマイナスになった「身の回り品」が4.5%増と再びプラスになったほか、衣料品(1.9%増)、雑貨(8.5%増)、家庭用品(1.6%増)、食料品(0.1%増)、食堂・喫茶(4.1%増)など主要部門が軒並みプラスになった。

高額消費の代表格「美術・宝飾・貴金属」が18.3%増

「身の回り品」は靴、アクセサリー、ハンドバッグ、財布、傘といった商品で、景気動向によって売れ行きが変わる商材。景気が良くなる時はまっ先に売れ始め、悪化する時はまっ先に売れなくなると言われる。

 また、高額消費の代表格である「美術・宝飾・貴金属」も18.3%増と大きく伸びた。

 伸び率は5月の23.3%増をピークに、6月は16.3%増、7月は14.2%増と、伸び率が鈍化していたが、8月は再び伸び率が前の月を上回った。

 これらの数字を見る限り、7月の減少は6月が「売れ過ぎ」だった反動、あるいは一時的な減少で、消費は全体としては依然として強い、ということを示しているようだ。

 前月のコラムには読者から様々意見をいただいたが、こんな指摘もあった。

 衣料品の売り場担当者の話として、今年はバーゲンセールでの売り上げが好調で、6月にセールが始まった途端に売れてしまい、7月には売るモノがなくなっていた、というのだ。

 目星を付けていた洋服をセール後半に買いに行ったら、もうどの店にも無かったという声を私自身も耳にした。

 確かに統計数字でみても、6月の衣料品は全国ベースで10.5%増の高い伸びを示していた。猛烈な売れ行きだったことを数字は示している。7月の衣料品が全国で7.3%減ったのは「モノ」の供給が間に合わなかったから、という説もうなづけるというわけだ。

スーパーでも総販売額が6カ月連続でプラス

 8月の消費が底堅かったことは、スーパーの売上高にも表れている。

 日本チェーンストア協会が9月24日に発表した8月の販売統計(速報)では、総販売額の伸び(店舗調整前)は前年同月比2.3%増。既存店ベース(店舗調整後)の数字も100.1%とプラスだった。

 店舗調整前の総販売額の増減率で言えば、今年2月まではほぼマイナスが続いてきたが、3月にプラスに転じ、6カ月連続でプラスになっている。食料品が2.3%〜4.7%という比較的高い伸びを示しており、8月も3.5%増えた。

 百貨店での販売好調は当初、株価の上昇に伴う「資産効果」と言われた。

株価が上昇して利益を得たり、含み益が増えた株式保有者が、高額品を中心に消費している、というわけだ。実際、年明け以降の消費の伸びを「美術・宝飾・貴金属」や「身の回り品」といった高額消費が支えてきたことは事実だ。

 5月後半に株価が急落したことで、こうした「資産効果」に陰りが出ることが懸念された。すでに指摘したように、伸び率でみれば「美術・宝飾・貴金属」の売上高は5月をピークに鈍化しており、株価下落の影響が出始めていたという見方もできる。

 5月22日に1万5627円を付けた日経平均株価は6月13日に1万2445円まで下げたが、6月末には1万3677円まで回復。8月末は1万3388円だったから、ほぼ2カ月間にわたり一進一退だった。

 その一方で、8月には高額品消費が再び伸びている。高額消費はかなり底堅いと見ていいだろう。

 9月は月末に向けて再び株価が上昇し、1万4500円を上回った。上旬には2020年のオリンピック東京開催が決まり、景気の先行きに対する見方は明るくなった。

猪瀬直樹東京都知事は、東京オリンピックが「心のデフレを取り払う」と強調していたが、20年近く染みついたデフレマインドが変わる可能性が出てきたように思う。これが9月以降の消費にどう表れてくるか。

安倍晋三首相は10月上旬に消費税率の引き上げに向けた最終判断を下す。最も重視されるとみられる指標である4〜6月の国民総生産GDP)も上方修正され、実質前期比0.9%増(実質年率3.8%増)となった。来年4月から税率が5%から8%に引き上げられるのはほぼ既定路線になったと見られている。

消費を冷やさぬには、家計に回るおカネを増やす必要が

消費税率の引き上げが正式に決まれば、駆け込み需要が生まれる一方で、来年4月以降の消費にマイナスの影響が出ることは確実だ。

 あるいは増税に備えて家計が財布のひもを引き締めるようなことになれば、せっかく明るさが増している消費が一気に腰折れしかねない。

政府は、消費増税の悪影響を吸収するための景気対策を打つ方針だが、消費を冷やさないためには、家計に回るおカネを増やすことが重要になる。

 企業に対する法人税減税や設備投資減税分を消費に回すには、企業がまっ先に年末のボーナスや給与を増やす必要があるが、具体策となるとなかなか答えはみつからないのが現状だ。

 百貨店の売上高を見ていて、もう1つ鮮明なのが、大都市と地方のギャップだ。

 8月の売上高の伸び率は全国では2.7%増だが、東京は5.6%増、名古屋9.5%増、大阪7.8%増と大都市圏の伸びが大きい。主要10都市でも仙台神戸広島はマイナスで、主要都市以外の地域となると0.9%のマイナスだ。

消費税率の引き上げは、それでなくても停滞感の強い地方の中小都市の景気を一気に冷やす可能性がある。

消費税対策として議論されている法人税率の引き下げも、恩恵を受けるのは大都市に本社を置く大企業が中心で、地方の中小企業や個人はなかなか恩恵にあずかれない。地方からの消費の腰折れを防ぐためにも、地方への景気対策が大きな課題になりそうだ。