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2013-12-16

I think about my life as having a cup of coffee(フリー淡路ブックNo4特集記事)

| 17:47

淡路町を中心とする神田町おこしに向けてフリーマガジン「FAB(フリー淡路ブック)」の取材と記事執筆をお手伝いしています。第4号はカフェ。私の事務所がある神田神保町にもたくさんのカフェがあります。人と人をつなぐ「場」としてのカフェの魅力を取り上げました。写真やデザインもきれいで、お洒落な小冊子ですので、是非、手に取ってご覧ください。

一杯のコーヒーが人をつなぐ

伝統のタンゴ喫茶が引き継ぐ魅惑の空間

「この空気感は絶対に守らなければいけないんです。少しでも変えるとお客さんに叱られてしまいますから」

 1953年から続く喫茶店の名店「ミロンガ・ヌオーバ」の浅見加代子店長は笑う。レンガ敷きの土間にどっしりとした木製のテーブルが並んだ店内には、壁に埋め込まれたスピーカーから一日中、タンゴの軽快なリズムが流れる。いわゆる「タンゴ喫茶」だ。戦前・戦後は都内にもたくさんあったというが、今ではミロンガは貴重な存在だ。

 実際には1995年に柱を補強したりテーブルを入れ替えており、名店にも「新しい」を意味するヌオーバが加わったが、学生時代に通い詰めた今は初老の紳士たちは口々に「変わらないね」と話しているという。それが「空気感」を変えないことなんだと浅見さんは考えている。

 もうひとつ変わらないのがコーヒーの香り。ブラジル豆をベースにした「ミロンガ・ブレンド」(\600)は炭火焙煎コーヒーで、ペーパードリップを使って注文後に一杯一杯手出しする。少なくとも浅見さんが店に入った12年前から変わっていない。この街が大好きで、働くならば喫茶店だと思いミロンガに入った。伝統の純喫茶を店長として支えているのが若い女性だというのも意外だ。

 最近は土日にこの街を訪れる人が増え、お客さんも多いという。多くの作家や文化人がゆったりと長居した空間を追体験できるのも、神田の魅力だろう。

一杯のコーヒーを丁寧に

日常を心地よく創造する長野発カフェ

「日常生活を楽しむ人に寄り添うお店にしたいというのがコンセプトです」

 9月14日にオープンした「マーチエキュート神田万世橋」の中に出店した『haluta』の広報担当石黒美記子さんは語る。長野県上田で人気カフェ店『haluta tokida』や、北欧のオシャレな家具や雑貨を扱う『haluta packing case』を展開するhalutaの東京への本格進出第1号である。

 マーチエキュートは旧万世橋駅の赤レンガのアーチなどを活用した商業施設。古いものと新しいものを融合させた空間を見て、オーナーが出店を即決したという。上田のカフェも商店街の古い文房具屋さんの建物を再利用している。古いモノの中に、新しい価値観を見出す志向が一致したのだ。

 halutaが今回、最もこだわって力を入れたのがコーヒー京都焙煎家、オオヤミノルさんが全面的に協力。数少ないオオヤさんのコーヒーが飲めるカフェとなった。ネルドリップを使ったこだわりのある入れ方について、カフェのスタッフたちはオオヤさんから直接指導を受けた。開店時は「中焼きコロンビア」。豆の種類は一定時間で変える予定だという。

 フードにもこだわる。自社のベーカリー『haluta karuizawa』から取り寄せた「毎日食べられる定番パン」はもちろん、長野にあるフレンチレストランにて作ったスモークチキンや吉祥寺タタンのケーキなど、「気軽で特別過ぎないがクオリティの高いものを揃えた」(石黒さん)。老舗の喫茶店が集中する神田にて、また新たな歴史が始まろうとしている。

 古いものを守り新しいものを受け入れてきた神田。数多くの喫茶店やカフェが昔からまちに溶け込んできた。人の価値観が交わる街、神田には一杯のコーヒーはやはり欠かせない存在だ。

FREE AWAJI BOOK No,4