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2014-01-27

倒産件数が示す安倍政権の本気度

| 15:54

「弱者を守るのは国の責任だ」と言われれば、誰も反論しないでしょう。でも「国」とは何でしょう。官僚が「はいはい、国にお任せください」と言ったところで彼がポケットマネーで助けてくれるわけではありません。きっちりそのツケは税金として国民に回ってきます。あるいは借金の形で将来世代にツケ回しされます。国が助けるということは、実は他の国民にツケを回すということなのです。本来なら潰れている企業を国が指導して延命させています。でもそのツケは結局は他の健全な企業や国民が請け負うことになるのですが、なかなかそんな構図は見えません。ゾンビ企業を潰せと言うと、反発の方が大きいのはこのためです。ゾンビを生かしたツケはあなた自身に回り、下手をすればあなたもゾンビになってしまうのですよ、と言っても理解してもらえないのです。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140124/mca1401240500000-n1.htm

 政府産業競争力会議の民間議員を務めるコマツ相談役の坂根正弘・経団連副会長は、昨年1月に会議が始まった当初から「企業の新陳代謝の促進」を提言している。競争に負けて本来は潰すべき企業を過度に守って残せば、過当競争になり、勝ち組だったはずの本来は強い企業の足を引っ張る。まさに「ゾンビ企業」がはびこり、日本の競争力をそいでいると警告したのだ。

 坂根氏らの提言を入れ、成長戦略にも「新陳代謝」という言葉が盛り込まれた。安倍首相も「日本を起業大国にする」と繰り返し述べている。新しい企業をどんどん生み出すには、本来は潰れるべき企業を潰し、時代遅れの古い企業や産業を淘汰(とうた)しなければならない。ヒト・モノ・カネの資源が有限な以上、当然のことだ。アベノミクス経済再生を進めるには、この「新陳代謝」が不可欠なのだ。

 では、安倍内閣の発足から1年がたち、この「新陳代謝」は動き始めているのか。

 東京商工リサーチがまとめた2013年1年間の全国の企業倒産(負債総額1000万円以上)は1万855件と、22年ぶりの低水準になった。12年と比べても10.5%減った。

 22年前といえば、バブル経済末期の1991年。好景気を背景に倒産が減っていた。では、昨年もアベノミクスによる景気回復で倒産が減ったのかというとそうではない。ゾンビ企業が温存された結果なのだ。

 倒産件数はリーマン・ショックのあった2008年から減り続けている。民主党政権下で亀井静香・金融担当相が導入した「中小企業等金融円滑化法」、いわゆるモラトリアム法の効果が大きかった。企業が求めれば、金融機関は融資条件の見直しに事実上応じなければならなかった。この法律によって条件見直しが行われた融資はのべ401万9733件。対象になった融資額は111兆7424億円にのぼった。

 安倍政権になった昨年3月末、この法律は廃止された。金融庁などは「法律をただ廃止すれば4万〜5万社が一気に潰れる」と主張していた。逆に言えばそれだけゾンビ企業が存在したということだ。

 ところが法律が廃止された4月以降、逆に倒産件数は減った。金融庁モラトリアム法廃止に関連する倒産は急増していると言うが、東京商工リサーチの分析では1年で456件。単純に計算すればゾンビ企業を処理するのに10年かかる。「新陳代謝」にはほど遠い状態なのだ。

 安倍内閣の方針とは裏腹に新陳代謝が進まないのはなぜか。金融庁が検査の方針を変更、融資継続の判断を銀行の責任で行うよう求めている。これに対し地方銀行などが融資を切る決断ができずにいるというのだ。

 政治も役所も銀行も「起業支援」と言うのはたやすい。だが、「ゾンビ退治」と言うのは覚悟がいる。経営者ばかりでなく、債権者や従業員、取引先など関係者に痛みを求めることになるからだ。何も手を付けずに先送りするのが一番楽なのだ。安倍首相経済再生へ新陳代謝を進めるつもりがあるのか。倒産件数の推移を見ていれば、アベノミクスの本気度が分かる。(ジャーナリスト 磯山友幸)