Hatena::ブログ(Diary)

磯山友幸のブログ RSSフィード Twitter

2014-04-02

20ヵ月連続で貿易赤字。もはや「円安で製造業復活」は幻想だ

| 10:42

教科書で習った「加工貿易立国」、つまり原料を輸入して日本で工業製品を製造して外国に輸出するという日本のモデルの終焉が、いよいよ鮮明になってきたようです。バブル期から構造転換が必要だと言われ続けてきましたが、いよいよ待ったなしです。

現代ビジネス→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38789


日本の貿易赤字が続いている。財務省が3月19日に発表した2月の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、8003億円の赤字となり、20カ月連続の貿易赤字となった。

菅義偉官房長官は先行きについて、「輸出を中心に改善されていくだろうと考えている」と述べていたが、円安によって輸出が増えると期待してきた経済産業省の内部からも、いわゆる「Jカーブ効果」は出ないのではないか、という声が強まっている。

円安で輸入額が増えすぎた

「Jカーブ効果」は円安になってしばらくの間は貿易収支が悪化するものの、その後しばらくすると大幅に収支が改善するという見方。グラフにするとJのようになることから、そう呼ばれる。

経済産業省は日本の製造業が不振を極めたのは円高による輸出減が主因とし、アベノミクスで円安が進めば輸出は復活するという立場だった。だが、実際には円安になっても輸出はなかなか増えないばかりか、輸入品の価格上昇で貿易収支の赤字から抜け出せなくなっている。これはいったいどういうことなのだろうか。

3月13日に確報値が発表された2013年の年間の貿易統計を見ると面白いことが分かる。1年間の輸出額は69兆7741億円と3年ぶりの増加となり、率にして9.5%も増えた。

ところが、輸入が81兆2425億円と14.9%も増加。この結果、輸出から輸入を指し引いた貿易収支は11兆4683億円の赤字となった。

年間の貿易赤字は3年連続で、赤字額は2011年2兆5647億円→2012年6兆9410億円と年々大きくなっている。つまり、円安によって輸出額の伸び以上に輸入額が増えてしまっているのである。

9.5%と輸出額も増えているが、問題は中味だ。端的な例は自動車。輸出額は10兆4125億円と12.9%も増えたが、台数ベースでは逆に0.4%減った。つまり円安によって収益性は改善したが、輸出量はまったく増えなかった。

半導体電子部品も金額では9.1%増えたが数量ではわずか1.1%の増加。DVDなどの映像機器に至っては輸出数量も27%減り、金額も20%減少した。

円安になれば、海外での価格競争に有利になるので、市場シェアを獲得し輸出数量も増える――。従来の日本の「輸出立国型経済」を前提にすれば、そうなるはずだった。ところが大きく目算が狂ったのである。

赤字は一時的と見るのは危険

冨山和彦・経営共創基盤代表取締役CEOは言う。

「日本の大手製造業は海外生産にシフトしており、加工貿易型の産業構造はとっくに崩れていた。もともとJカーブ効果なんて出るわけはない」

経済産業省もそれを分かっていながら、製造業中心の産業政策を進めたいがために、円高が輸出減の要因だと言い続けてきたというのだ。

政府は貿易赤字の原因として、原子力発電所の停止に伴って火力発電が増え、燃料代の支払いが嵩んだことが大きいとしている。確かに、東日本大震災前に比べれば液化天然ガス(LNG)などの輸入量が増えたのは間違いない。

だが、2013年を2012年と比較すれば、LNGの輸入数量は0.2%増に過ぎず、原油の輸入量は0.6%減っている。にもかかわらず、「鉱物性燃料」全体の輸入額は13.9%も増え、27兆4438億円と輸入額全体の3分の1を占めるようになった。

つまり、原油価格の変動などによる価格要因がほとんどだったのである。もちろん円安が大きく効いたことは間違いない。

原発の再稼働問題とからんで、貿易収支の赤字を原発停止と結び付けて説明する向きもある。

もしそれが本当なら、貿易収支の赤字は一時的なもので、原発が再稼働すれば貿易黒字に戻るということになる。だが、貿易収支の赤字を一時的な現象とみるのは危険ではないか。

円安でコストアップ

円安の影響は非鉄金属や金属製品などの原料価格の上昇に結びついている。非鉄金属の場合、輸入量は8.3%減ったにもかかわらず、輸入額は1.9%増となった。

円安によって自動車や電気機器などの輸出価格が上昇したといっても、製品に使う原材料の輸入価格も上昇しているため、円安分が丸々利益率の改善に直結しているわけではないことが分かる。加工貿易型の製品輸出では、円安はコストアップ要因でもあるからだ。

さらに大きいのは日本が消費大国として様々な生活必需品を輸入しているという現実だ。

食料品の輸入も数量はむしろ減少傾向なのに、輸入額は10.6%も増えた。金額は6兆4730億円と輸入全体の8%を占めている。魚介類が1.4兆円余り、肉類が1.1兆円余りである。

ちなみに日本からの食料品輸出は22.6%と大きく増えたものの、金額はわずか4357億円に過ぎない。安倍内閣は農業再生に向けて日本の食材輸出拡大を掲げているが、まだ数字的には緒に就いたばかりだ。消費財ではバッグ類や衣類なども輸入金額が大きく増えた。

「円安で製造業復活」は幻想だった

そんな中で、注目すべきは自動車の輸入だろう。

円安にもかかわらず、台数ベースで3.4%増加し、金額ベースでは19.5%増の1兆857億円となった。金額ベースでは輸出額の10%、台数では6%に相当する。

単純に台数と価格の比率を見れば、輸入している自動車の方が高価格な高級自動車ということになる。しかも価格が上昇してもユーザーが離れていないことを示している。

円安にもかかわらず、輸出額があまり増えず、輸入額の方が大きく増えるのは、輸出入の決済通貨が、輸出では円建ての割合が増えているにもかかわらず、輸入はまだドル建てが多いこともある。

輸出産業は円高による企業業績への影響を小さくするために、円建て輸出への転換を進めてきており、日銀統計によれば、輸出の3割が円建てになっている。一方、中東産油国の原油やLNGは国際相場がドル建てということもあり、ドルに連動した決済価格体系になっているケースが多い。

いずれにせよ、円安になれば日本の製造業が復活し、貿易黒字を大きく稼ぐというストーリーがもはや幻想になっていることだけは間違いなさそうだ。