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2014-04-08

「国の借金」の増加は収まるか、それとも急増か 3月末の残高次第でアベノミクスの評価が決まる

| 10:47

増税して仮に歳入が増えても、歳出で大盤振る舞いしたら元も子もありません。史上最大の規模の予算を通した安倍晋三内閣は日本の借金を大きく増やすのか、それとも減らすことができるのか。1000兆円を超えた国の借金の推移に注目していきたいと思います。エルネオスの掲載された原稿です。→http://www.elneos.co.jp/

エルネオス連載───36(4月号)

硬派経済ジャーナリスト磯山友幸の《生きてる経済解読》

 消費税率がいよいよ八%に引き上げられた。増税分は全額、社会保障費に充てることになっているが、要は毎年一兆円増え続ける社会保障費に充当することで国の財政悪化を何とか食い止めようというわけだ。しばしば話題になる国の借金は昨年六月末で一千八兆六千二百八十一億円となり、初めて一千兆円の大台に乗せた。

 この国の借金の統計は三カ月に一度、財務省から発表される。最新のデータである二〇一三年十二月末現在の借金は一千十七兆九千四百五十九億円になっている。財務省はこのままでは三月末には一千百四十三兆円に達するという見込みを発表して、財政危機を訴えている。三カ月で百二十五兆円増えるという見通しは、よほど悪さをしない限り実現しないと思われるが、消費増税を控えて、「アベノミクスによる景気回復で借金はあまり増えません」とは口が裂けても言えないということだろう。いずれにせよ三月末の国の借金額は五月上旬に公表される。

 安倍晋三首相が就任したのは一二年十二月末。この段階の国の借金は九百九十七兆二千百八十一億円だったから、一年で二十兆七千二百七十八億円、率にして二・一%の増加である。日本の財政は借金が借金を生む状態だから、その割には増加率を低く抑えることに成功しているといっていいだろう。歴代内閣に比べても増加額率は小さい。

 では、過去に最も国の借金を増やしたのは誰が首相の時だったのだろうか。

 単純に任期中の借金増加率を見ると、最も増えたのが小泉純一郎首相時代の四八・六%、次いで小渕恵三首相時代の二五・三%だが、小泉氏は在任期間が一千九百八十日と飛び抜けて長いうえ、当初は借金残高が小さいため、率にすると大きくなる傾向があって比較しにくい。それでも、「三位一体の改革」などで歳出の抑制を図った第一次安倍内閣は〇・七%増、その流れを引き継いだ福田康夫内閣は一・一%増と増加率が低い。第二次安倍内閣での増加率はこれに次いで低いのだから、こと借金に関しては増やさずにきているといえるだろう。民主党政権時代は三人の首相の任期中はそれぞれ四%以上の増加となっており、当初は事業仕分けなどで歳出カットに取り組む姿勢を示したものの、なかなか成果が上がらなかったことを示している。

借金増加額最少の第一次安倍内閣

 在任期間の違いを調整して比較するうえで、借金の増加額を在任日数で割り、一日当たりの借金増加金額を計算してみた。すると各内閣の特徴がより一層鮮明になる。

 最も増加額が多かったのは小渕首相時代の一日一千六百四十三億円。銀行の不良債権問題の深刻化によって景気が大きく落ち込んだ時で、大型の総合経済対策など積極的な財政出動で公共事業を大幅に増やした。景気回復を狙ったが、デフレは一段と深刻になり、一方で国には借金が重くのしかかった。

 次いで大きく借金が増えたのは、鳩山由紀夫首相時代の一千四百八十七億円。政権交代直後で予算編成が思うにまかせなかったことや、〇八年のリーマン・ショック後の景気の落ち込みで税収が大きく減ったことが借金の増加につながったとみられる。民主党政権時代はデフレの深刻化で税収が伸びないにもかかわらず、子ども手当の導入など歳出を増やしたこともあり、借金は総じて増えた。

 最も増加が少なかったのが第一次安倍内閣の一日当たり百五十八億円。小泉構造改革による不良債権の処理などによって景気が回復基調となり税収が増えたが、その恩恵を最も受けた。また、小泉政権後半から歳出の抑制にも取り組み、社会保障費の自然増分のうち二千二百億円を削減し、増加額抑制の方針を実行に移した。そんな効果が国の借金増の鈍化という形になって表れたのだ。

税収次第で増減する国の借金

 では、この一年の安倍内閣の借金増加が小さい理由は何だろうか。歳出抑制に取り組んだ結果かというと、そうではない。平成二十五年度(一三年度)の十二月時点での歳出額は七十兆千九百一億円。これに対して、一年前の野田内閣後半の歳出額は六十五兆五千九百五十一億円で、年度の途中経過とはいえ七%も増えている。アベノミクスでは「第二の矢」として積極的な財政出動を掲げており、公共事業費などは増加傾向にあるのだ。

 では、なぜ借金がそれほど増えないのだろうか。それは税収が増加しているからだ。同じ昨年十二月末段階の歳入を見ると、所得税収入が七兆千九百七億円と、前年の同じ期間に比べて五・五%も増加、消費税収入も五・三%増えているのだ。アベノミクスによる株価上昇によって証券取引にかかる所得税などが増えている。また、株価上昇による「資産効果」で、百貨店での高級品の販売が増えるなど消費に明るさが出たことも、消費税の増加につながっている要因とみられる。いずれにせよ、税収から見る限り景気回復の芽が出ており、それが借金の増加を抑える役目を果たしているというわけだ。

 もっとも、十二月段階での税収は一年の四割に満たず、企業の決算期末が多い三月に向けてどれだけ法人税が増えるかなど、不透明な要素も少なくない。

 仮に財務省が推計するように三月末の国の借金が一千百四十三兆円になるようなことがあるとすると、安倍首相は在任一日当たり三千二百四億円の借金を増やしたことになり、増加ペースは小渕元首相の約二倍になり、歴代ワーストの借金王ということになってしまう。経済成長で借金を抑制することに成功するか、バラマキによって借金急増となるか。三月末の借金額がどんな数字になるのかでアベノミクスの評価が定まることになるだろう。