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2014-04-30

「ゆりあげ朝市」は「民」の力で震災前の1.5倍の売り上げになった!  成功の秘密を、櫻井広行理事長に聞いた

| 16:09

1年ぶりに東日本大震災による巨大津波で壊滅した仙台近郊の名取市閖上(ゆりあげ)地区に行ってきました。ちょうど一年前に仮復活した朝市はますます元気になっていました。現代ビジネスに書いた桜井理事長のインタビュー記事です。役所ができることは邪魔をしないこと、だとつくづく感じました。オリジナル原稿→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39144


宮城県名取市閖上(ゆりあげ)。2011年3月11日の東日本大震災で10メートル近い巨大津波に呑み込まれ、5500人が暮らしていた漁港を中心とする街は姿を消した。800人を越す死者を出した街は3年1ヵ月が過ぎた今も、建物はまったく立たず、荒涼とした風景が広がる。

そんな一角に見事な復活を遂げた場所がある。港に面した広場にある「ゆりあげ港朝市」。震災前以上に賑わうようになったその秘密を、櫻井広行・ゆりあげ港朝市協同組合理事長に聞いた。

震災前の1.5倍になった朝市

 問 昨年の大型連休に閖上の名物「ゆりあげ港朝市」が元の場所で復活して1年が立ちました。1年ぶりに取材に伺いましたが、すっかり整いましたね。

 櫻井 昨年のゴールデンウィークに仮復活し、昨年末に本格的な営業再開にこぎつけました。毎週日曜日と祝日に開いている朝市には7000〜8000人がコンスタントに来ていただけるようになりました。

朝6時から10時ごろまでの営業だったものをお昼過ぎの13時ごろまで営業するようにしたこともあり、出店しているお店によってバラつきはありますが、売り上げは震災前の1.5倍から2倍になっています。毎週来ていただける常連さんなど大勢のお客さんや支援していただいた多くの方々のお陰です。本当に感謝しています。

 問 カナダ政府から寄付されたカナダ製木材を使った建物「メイプル館/カナダ東北友好記念館」も1年前とは比べものにならない賑わいですね。

 櫻井 メイプル館には飲食3店舗がテナントとして入り、こちらは朝市以外の日や時間帯も営業しています。東北の海産物などお土産も買うことができます。平日に被災地視察に訪れる観光客が、立ち寄っていただける場所ができました。

 問 内部では津波の様子を伝えるテレビニュースのビデオ映像などを流すコーナーもあります。

 櫻井 当初は反対意見もありましたが、津波の恐ろしさを後世に伝え、日ごろからの防災意識がいかに大事かをたくさんの人たちに訴えたいと考えて設置しました。津波の恐ろしさを私自身の口からお話することもあります。

 問 1年前はメープル館のほかに店舗棟が1棟あっただけでしたが、店舗棟がさらに1棟と、飲食店棟が1棟建ちました。

 櫻井 仙台などから車で朝市にモノを買いに来る第一波のお客さんの後に、遅めの朝食や昼食を食べがてら遊びに来る家族ずれが来ます。食事をしたり、ゆっくりコーヒーを飲める場所ができたことで、お客さんの滞在時間が延びました。

「待ち」では厳しい

 問 新たに組合に加入してお店を出す人たちも増えているそうですね。

 櫻井 震災前には51店ありましたが、震災後38にまで減りました。それが今では48になりました。1年前は43でしたかね。南三陸町からトラックでホタテを運んでくるおかあちゃんなどが成功していますね。組合への新規加入者を募集していますが、出資金が30万円必要なので、考えてしまう人が少なくないですね。

 問 組合員はみなさん成功しているんですか。

 櫻井 成功しているのが3割、そこそこが3割、このままでは苦しいというのが4割でしょうか。4割の連中は「待ち」なんですね。好きなものを持ってきて並べていれば売れるんではないかと期待している。でも、商売はそれではダメ。お客さんにどう声をかけるかで売れ行きは変わる。

お客さんにも今日、朝市に行ったら何があるかなという「ワクワク感」を与え続けなければいけない。常に何か面白いもの、お客さんを引き付けるものを用意しなかったら、一度来て飽きてしまうでしょう。

募金でできたウッドデッキ

 問 いろいろイベントも準備しているようですね。

 櫻井 8月の終わりに「さんま祭り」をやります。震災前から続いていた名物イベントです。お客さんに自分で炭火で焼いてその場で食べてもらう。そのさんまは無料です。さんまが安くなった時期でなく、出始めの高い時期にあえてやります。朝市で旬の一番を手に入れてもらうわけです。

 問 港側に、お客さんが憩えるウッドデッキを設置したいということで、募金「ゆりあげはんじょう募金」を募っておられましたね。

 櫻井 これまでに650万円が集まりました。また、積水ハウスさんからは100万円分の木材を寄付していただきました。

その募金のほぼ半分を使ってメープル館の前にウッドデッキを敷くことができました。子どもたちが遊んでいるこういう光景を見たかったんです。本当にありがたいことです。

次は飲食棟の前に敷きたいと考えていますが、すんなり名取市役所が認めるかどうか。そもそも港周辺には一切建物を建てないということに役所は決めてしまっているのです。市場の建物も交渉の末に、特例ということでやっと認められたんです。

相変わらずのお役所仕事

 問 閖上の町の再建はまったく進みませんね。

 櫻井 5500人いた住民のうち、2000人が戻ってきたいと言っています。実際に戻ってくるのは1500人でしょうか。内陸に近いエリアを3メートル盛り土して町を作る計画ですが、遅々として進まない。被災者から土地を買い上げることも決まっていますが、相変わらずのお役所仕事です。

公営住宅など建てるのではなく、民間のデベロッパーに入ってもらえるような仕組みにできないのか。官がやるより民間の力をどんどん使うべきです。そして、みんなで商売をして、土地の価格を上げる。そうすれば税収も増えるのですから。それが本当の復興でしょう。

被災地住民の私たちは、仮設住宅や、借り上げのアパートに住んで家賃も払わずに住んでいます。土地の固定資産税も払っていません。一方で国民は復興税を支払ってくれている。ありがたいことです。

そうした支援をいただいているうちに、自分たちで頑張って自力で街を復興するしかない。それができなければ全国の皆さんに申し訳ないと思っています。まだまだ頑張らなければいけません。