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2014-05-15

安倍首相が進める憲法改正は「影響を受ける若い世代こそ議論すべきだ」 鈴木崇弘・城西国際大客員教授インタビュー

| 10:58

集団的自衛権の扱いを巡る議論が国会で始まります。憲法改正は国の形を大きく変える可能性も内包しています。民主主義のあり方を語らせたら第一人者である鈴木崇弘さんのインタビューです。是非ご一読ください。現代ビジネスのオリジナルページはこちら→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39247


集団的自衛権の扱いなど、憲法のあり方を巡る議論が国会で佳境を迎える。そんな中で、鈴木崇弘・城西国際大客員教授は、国民の間での議論があまりにも少ないと問題視する。とくに「若い世代が最も影響を受けるのに、ほとんど若い人の意見は反映されていない」と指摘する。

そんな鈴木氏が10代の若者との議論をまとめた小冊子『僕らの社会の作り方〜10代から見る憲法〜』をまとめた。出版の狙いを聞いた。

実際に負担を背負う若い世代の議論のきっかけに

 問 若者と憲法について語ろうと思われた理由は。

 鈴木 今の若い世代は様々な負担を背負わされています。財政赤字による国の借金にしても、環境破壊や資源枯渇にしても、そのツケを払うのは間違いなく若い世代です。制約条件がどんどん増える中で、若い人たちの活躍の場がどんどん狭まりつつある。大学で教えていて、そう痛感するのです。

ところが、憲法改正など将来の国の形を決める議論で、まったくと言ってよいほど、若い人たちの意見は反映されていません。国会議員や財界人、言論人など多くが高齢者です。そうした高齢者の意見ではなく、実際に負担を背負うことになる若い世代こそが国の将来について議論すべきだと考えました。

 問 本の中では10代の若者と議論されています。

 鈴木 はい。投票権のない世代です。彼らの声が憲法改正議論に反映される仕組みはないわけです。また10代の人たちもなかなか議論しようとしません。

『僕らの社会のつくり方』では各章ごとに課題を掲げ、私と若者の意見を議論のきっかけにして欲しいと考えました。憲法学者や政治家の意見だけを聞いて考えるのではなく、同世代若者たちの声を聞いて、自分自身で考えてみる。議論してみることが大事です。若い人どうしだけではなく、一般の社会人に若者の考え方を聞いてもらうきっかけにもなります。

 問 憲法改正に反対の立場から作られた本なのですか?

 鈴木 いいえ。私個人にはもちろん意見はありますが、それを押し付けるための本ではありません。司会も中立を心掛けました。

議論される内容については、間違っていてもよい。それを材料に自分たちの憲法について、きちんと考え、議論することが重要だと思っています。末尾の参考文献を見ていただければ分かりますが、改正に賛成・反対両方の本が並んでいます。また、自民党の「草案」などのURLも示してあります。

重要なのは「どういう社会を作りたいのか」

 問 安倍晋三首相自民党憲法改正を目標にしています。

 鈴木 与党が圧倒的な多数を握って憲法改正も現実味を帯びています。しかし、改憲議論を聞いていて欠落しているものがあるのではないか、と感じます。9条をはじめとする条文をどうするか、というのももちろん大切な問題なのですが、それ以前に、われわれがどういう社会を作りたいのか、ということが真剣に議論されていないと思うのです。

 問 それで『僕らの社会のつくり方』というタイトルなのですね。

 鈴木 どんな社会にしたいか。結論はいろいろあると思います。そのコンセンサスを作るためのプロセスにコストと時間をかけること。これが民主主義です。ですから、民主主義は結論以上に、その結論を得るためのプロセスが重要なのです。

国民全員が賛成する結論などというものはあり得ません。決まったことに納得し、反対してきた人も諦めて決めた事に協力する。それが民主主義ですよね。デモクラシーを日本語では民主主義と訳しますが、本来、資本主義や社会主義といった「イズム」ではないんです。モノ事を決めるプロセス、方法です。

 問 若者と議論したうえでの率直なご意見は。

 鈴木 議論する前に勉強をしてもらったので、それなりの議論はできたと思います。読んでいただければ分かりますが、若者の意見も思ったよりも色々な意見があります。

私が感じたのは、若者とはいえ、それぞれの経験と意見が密接に関係していた。例えば留学をしているとか、NPOの活動をしているといった事で意見が形成されている。これは驚きでした。当たり前の事ですが、いかに経験を積むことが大事か、ということです。

今回、議論した10代の若者10人はすべて実名で登場しています。「僕らの一歩が日本を変える。」代表の青木大和君にメンバー集めを協力してもらいました。

 問 現代ビジネスでも「絶望世代が見る日本」というコラムを書いています。

 鈴木 本を見た人に、議論しているのは優秀な大学や高校の学生ばかりじゃないか、と言われました。私が様々な大学で教えた経験から言うと、一般に優秀ではないと思われているような大学の学生でも、話をするといろいろ考えていることに気が付きます。話す方法が上手くないのであって、意見を持っていないわけではない。

ですから、もっと議論することが大事だと思っているのです。本書を授業の副読本などとして活用していただけるケースも出てきました。

日本の民主主義は張り子の虎

問 鈴木さんは「東京財団」や自民党の「シンクタンク2005・日本」の設立などに携わられました。『日本に民主主義を起業する〜自伝的シンクタンク論』という著書もあります。シンクタンクを作ることで民主主義を徹底しようと考えられていたのではないのですか。

 鈴木 政治家や政策人などを育てることで日本にきちんとしたシンクタンクを作れば、民主主義は機能すると考えてきました。

しかし、長年やってきて、どうも日本の民主主義というのは張子の虎なのではないかと感じています。民主主義というのは制度ですので、どうやってモノ事を決めるか、きちんと国民の声が反映されなければいけない。ですから、若者の政治参加といったことに力を注ぐようになったのです。

 問 張り子の虎ですか。

 鈴木 三権分立とか言葉では習います。国会は国権の最高機関だとも習います。しかし、現実はそうなっていません。安倍首相ですら、国のトップだと自らを言う。でも国会の方が上にあるというのが憲法の理念です。

 米国の独立戦争の時に言われた「代表なくして課税なし」という言葉があります。モノ事の決定プロセスに関与できないのに、将来の負担ばかり負わされる若者を放置するとどうなるでしょう。

 ちょっと成功してグローバルに闘える有能な若者がどんどん日本を捨てて外国に行き始めています。そんな悪循環を止めるためにも、若者にもっと声を上げてもらい、その声を吸い上げる仕組みを整備していくべきなのです。


編著者: 鈴木崇弘 青木大和

『僕らの社会のつくり方〜10代から見る憲法』(遊行社、税込み1,080円)