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2014-05-21

年間444億円の保険を売った日本一のセールス・レディ柴田和子さんの「成功哲学」

| 15:31

伝説のスーパー・セールス・レディ、柴田和子さんは不思議な魅力を持った人です。そんな柴田さんが書いた「終わりなきセールス」には、モノの売り方だけではない人生を生き抜く極意が書かれています。

現代ビジネスに書いた記事です。→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39323

柴田和子 終わりなきセールス

柴田和子 終わりなきセールス

年間444億円の保険を売ったセールス・レディ

不思議な魅力が身体中から噴き出している。超美人というわけではないが、可愛いらしい。押し出しは強いが、決して図々しくはない。「頭が悪い」と言いながら、話せば猛烈な勉強家だと分かる。何しろ、話していて時を忘れる。恐らくそんな魅力に多くの経営者は惹かれたのだろう。


柴田和子さん、75歳。

39歳で生保セールス日本一となり、以後連続30年間その座を守り抜いた。ギネスブックに2度も載り、年間に444億円の保険を売った記録はいまだに破られていない。

生命保険業界で「柴田和子」の名を知らない人はいない伝説のセールス・レディだ。

昨年、第一生命保険の役員待遇である営業調査役を長女の知栄さんに譲ったのを機に、自らの営業ノウハウや人生哲学を『柴田和子 終わりなきセールス』(東洋経済新報社)という一冊の本にまとめた。

そこには柴田さんの魅力の源になった思考法や行動の極意が説かれている。いわば成功のための哲学書だ。

「ひと言で言えば、偉大なる母だな」

四半世紀の付き合いがある花房正義・元日立キャピタル会長は柴田さんをこう評する。「人間としての生き様の凄さがある」というのだ。若くして家計を支え、売り上げの多くを稼ぎ出して会社を支え、娘2人を日本を代表するセールス・レディに育て上げた。

花房氏が見る柴田さんの成功術は「人を大切にしていること」だという。「ひと言で言えば、人脈を生かした営業なのだが、その生かし方が絶妙」なのだという。誰かに紹介されて訪問して、1度や2度断られてもあきらめない。この会社のこの人と決めたら、腰を据えて付き合っていた、という。

「お客さんの利益第一」で経営者たちから絶大な信頼を得る

柴田さんは会社が法人として取締役にかける役員保険を中心に手掛けてきた。契約金額が大きくなるのは、1つの会社から契約を取ると、全役員に保険をかけることになるからだ。

そんな役員保険を手掛けるきっかけになったのが、日産自動車の久米豊・元社長との出会いだった。柴田さんが卒業した東京都立新宿高校の先輩だった寺内大吉さん(故人)が、当時常務だった久米氏を紹介してくれたのだ。

おそらく作家ならではの名文で、美人が訪ねていくと書いたらしい。柴田さんが訪ねると、久米氏は開口一番「な〜んだ」と口にしたらしい。そこで黙っていないのが柴田流。「常務さんも下駄みたいな顔」と言ってケタケタ笑ったのだそうだ。

その時、すぐに「保険契約を下さい」とは言わなかった。「社長になったら保険契約してください」と頼んだのだという。常務とはいえ、社長レースを勝ち抜くと決まった人ではない。柴田さんはひと目見て「この人は偉くなる」と思ったのだろう。

その後、7年を経て久米氏は社長になる。そして約束どおりに日産自動車の役員保険の契約を獲得したのだ。そんな久米氏は、仲間の経済人を数多く紹介してくれた。

誰もが知るある大企業の社長もそんなひとりだったが、契約を取るのは大変だった。「系列でも何でもない第一生命となぜ保険契約するのか」という意見も役員から出たという。結局、提案すら出さない系列保険会社よりも、柴田さんの努力を買おうということになったという。

もちろん、営業マンが通い詰めたからと言って契約が取れるわけではない。「必要性を訴えたから契約していただけた」と柴田さんは言う。日本の大企業役員は、責任ばかり重くて大した報酬も得ていない、と柴田さん。

保険を社外に積み立てておけば、会社の業績変動にかかわりなく退職金や弔慰金として役員に報いることができる。そう説明して歩いた効果が大きかった。前出の花房氏も、「会社が作った保険を単に売りに来るのではなく、自ら会社のニーズを汲み取って設計する力があった」という。柴田さんは「何しろお客さんの利益を第一に考えた」と言う。

自然に心から出て来る笑顔が大事

『終わりなきセールス』の中にも「人脈について」という章がある。そこで柴田さんは「人脈作りにコツはない」と書いている。「テクニカルなやり方で人の心は絶対につかめないからです」というのだ。


一方で、「話題が豊富なのは良い」として、「政治、社会、外交問題経済など様々な話を貪欲に吸収しておけば、相手に応じてどんな話題も一緒に話すことができる」と述べている。

テクニックはない、という柴田さんだが、人間関係を良くするコツはあるという。それは「笑顔」だというのだ。作った笑顔ではなく、自然に心から出て来る笑顔が大事だという。

確かに、柴田さんも2人の娘もとにかく明るい。自然に笑顔がこぼれてくる。人知れず、向き合っている人の顔も笑顔になっている。

それは友だちであろうが、同僚であろうが、お客さんであろうが変わらない。

本書の随所にみられるのが「気配り」の具体例だ。


帯に書かれた文句を見ると「セールスは話法よりもハート」「お辞儀は45度、お客様は左側に、目に微笑を」

「弱い立場の人をないがしろにしない」と言ったキーワードが並ぶ。

6章では「人の育て方」に触れている。自らが率いる「柴田軍団」の若手を育てた際のエピソードなどが面白い。

75歳で“引退”した柴田さんは、「80歳までは仕事を続ける」と笑う。やはり大御所の柴田さんでないと話が進まないケースがあるのだろう。

そんな柴田さんも後継者になった知栄さんにかける期待は大きい。自分に似た明るさや気配りなどは引き継ぐ一方で、柴田さんにない「頭の回転の速さ」「知識を吸収する貪欲さ」があるのだという。

経営者の間には知栄さんのファンも少なくない。

本書は単なる営業のノウハウ本ではない。柴田和子さんという未曾有のスーパー・レディの生き様を記し、その哲学をやさしく説いている。書店に数多く並ぶ自己啓発本などを読むより、はるかに元気になれる本である。