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2014-05-23

増税の影響を何とか乗り切った?国内消費の強さ 本格回復のカギは株高と消費税率再引き上げの延期?

| 13:50

消費増税に伴う3月の駆け込み需要と、4月の反動減がどの程度になるか、景気の先行きを占う上でも重要でした。3月の需要増は凄まじい伸びで、4月の反動の大きさを恐れていましたが、どうやら予想よりも小さな落ち込みで済んだ模様です。5月以降がどうなっていくか、要注目です。→http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20130321/245368/


4月からの消費税率引き上げは、ようやく明るさが見えている景気に冷や水を浴びせるのではないか。そんな懸念の声が強かった。飛行機がようやく上昇し始めたところでエンジンを逆噴射をするようなものだ、という指摘もあった。一気に景気が腰折れしてしまう危険性が高いというわけである。

 そんな中で、注目されていた小売業界の4月の統計数字が出始めた。

 日本百貨店協会が5月20日に発表した全国百貨店売上高速報によると、4月は全店ベースで前年同月比12.0%の減少となった。安倍晋三首相アベノミクスを打ち出した前後から百貨店売上高はプラスに転じ、この1年はほとんどの部門で前年同月比プラスを続けてきた。それがマイナスに転じたのだから、やはり消費税率引き上げの影響は出たのである。

 婦人服など「衣料品」が12.2%減、ハンドバッグなど「身の回り品」が12.0%減、化粧品や宝飾品など「雑貨」が24.1%減、家具や家電製品など「家庭用品」が17.1%減といった具合で、買いだめが効きにくい「食料品」も4.7%減った。

 雑貨が24.1%も減ったのは、ここに含まれる「美術・宝飾・貴金属」の落ち込みが大きかったから。絵画や高級時計、宝石といった、いわゆる高額品である。この部門の売上高は前年同月比で38.9%も減った。

消費税率引き上げの影響はあまりない?

 この数字をみて、やはり消費税率引き上げの影響は大きかった、と判断すべきなのだろうか。

 実は3月の百貨店は未曾有の売れ行きだった。全国百貨店の売上高全体で1年前に比べて25.4%も増えたのである。衣料品は18.5%増、身の回り品38.6%増、雑貨67.2%増、家庭用品39.1%増といった具合である。食料品も5.0%増えていた。消費税率が5%のうちに買ってしまおうという駆け込み需要が大きかったのは明らかで、この傾向は高額品ほど顕著だった。「美術・宝飾・貴金属」にいたっては前年同月に比べて2.1倍の売り上げとなった。まさに激増したのである。

 つまり、駆け込み需要が盛り上がった3月には25.4%増えたが、増税の反動による4月の減少は12.0%だったということだ。数字を見る限り、3月の凄まじい消費の増加に比べ、4月の落ち込みはそれほどでもない感じがする。消費増税にもかかわらず消費は意外に強いのではないか、そんな声が百貨店関係者からも聞かれる。

 そんな“予感”はスーパーの売り上げ数字にも表れている。5月21日に日本チェーンストア協会が発表した4月のスーパーの売上高は、全店ベースで前年同月比で2.1%減だった。衣料品こそ9.2%減だったが、なかなか「買いだめ」がきかない食料品はマイナス1%と減少率は小さかった。3月は全店ベースで13.3%も伸びており、食料品は10.0%も伸びていたから、反動減があっても昨年と比べればそれほど大きな落ち込みにならなかったということだ。

 消費税率の引き上げをにらんだ駆け込み需要は、3月だけでなく昨年秋ごろから前倒しで表れていると言われてきた。その数カ月分のプラス効果が一気にマイナスになって出れば、4月の反動減はもっと大きくなったとみられる。消費増税による消費の反動減は予想以上に小さいと見てよいかもしれない。

 底堅い消費を支えているのは、給与の増加だ。

 2012年以降2年にわたって平均7.8%削減されてきた公務員給与が4月から元に戻った。つまり8.5%も増収になったわけだ。国家公務員にならって給与削減してきた地方公務員も給与が大幅に上がっている。「上昇したわけではなく、元に戻っただけ」と霞が関の官僚は言うが、民間の赤字企業ならいったん削減された給与はそう簡単には元に戻らない。

 借金が減るどころか増え続けて遂に1000兆円を超えた日本国公務員給与が上昇すること自体には問題も多いが、消費を支えるという意味では効果が大きかったとみられる。とくに地方公務員の給与増は地方経済への波及効果が大きい。

 大企業がベースアップに踏み切るなど、民間の給与が増えていることも消費を押し上げているのは間違いない。景気回復で仕事が忙しくなり、残業代も増えている模様で、それが消費増に結びついている。さらに、中小企業の交際費の免税額が拡大したことや、大企業でも飲食を伴う交際費に税制上のメリットが設けられたことも、法人消費の増加につながった。

人手不足が示す経済状況

 4月後半から本格化している企業決算発表は、軒並み増益決算で、過去最高の利益を上げた企業も多い。円安によって輸出採算が好転したり、株高による高級品消費によって儲かった小売業、サービス業も多かった。それが給与増や残業代増につながり、消費にプラスに働いている模様だ。

 ここへきて「人手不足」が顕在化しているが、これも人が足らないというよりも、給与水準や労働環境が厳しい職場から、より良い条件の職場へと労働がシフトしている影響と見ることができそうだ。つまり、相対的に給与水準が上昇傾向にあるのである。ファストフードのチェーン店などのアルバイト料も都市部を中心に急速に上昇している。

 それでも深夜の居酒屋や牛丼チェーンなどは、アルバイトやパートを集められなくなっている。それほどに給与の上昇は大きい。つまり消費にプラスに働いている。

 安倍晋三首相は今年1月から始まった国会を「好循環実現国会」と命名した。円安による企業収益の改善を、ボーナス引き上げやベースアップによって従業員に還元し、さらにそれが消費に向かう。そんな好循環を日本経済に取り戻させようとしたのである。

 首相経済界のトップに直接、ベースアップを要望するなど、これまでの首相にない踏み込んだ行動に出た。その結果がジワジワで表れているように見える。アベノミクス効果が消費を下支えしているのは間違いない。

 では、この消費の底堅さは今後も続き、腰折れすることはないのか。

 消費を占う1つの要素は株価の行方だろう。1万4000円前後で一進一退を続けている日経平均株価が再び上昇基調に乗り始めれば、いわゆる「資産効果」による高額品消費などが再び盛り上がる可能性が強い。

 株価の動向を左右するのは何と言っても外国人投資家の動き。昨年1年間で15兆円を買い越したが、今年に入って売り越しに転じ、売り越し額は1月〜3月の合計で2兆円近くに達した。4月は買い越したが本格的に買いに転じたわけではない。

 その外国人投資家が注目しているのは安倍内閣が進める成長戦略の行方だ。6月にはその見直し版が発表される。どれだけ投資家に日本の持続的な成長を納得させる具体的な政策が出て来るか、である。

 もうひとつは今年末にも正式に決定される2015年10月からの消費税率の10%への引き上げ。8%への引き上げの影響を短期間で吸収したからと言って、次も影響は軽微とはならない。景気動向を見極めたうえで、引き上げ時期の延期などを柔軟に議論すべきだろう。軽減税率の導入など論点も多い。

 企業業績の好転もあり、法人税収は大幅に増えている。消費が落ち込まなければ、消費税率の引き上げによる税収増も大きい。税率引き上げを優先して政策を打つのではなく、景気を持続的に成長させ、消費を落ち込ませないことを第1に考えることこそが重要である。