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2014-06-09

消費増税による高額消費の反動減は一時的?

| 14:25

消費税率の引き上げにもかかわらず、消費は底堅さを保っているように感じられます。そんな中で駆け込み需要の大きかった高級品消費がどうなるのか。アベノミクスを支えた高額消費の行方は日本経済の先行きを読む上でも重要です。時計専門雑誌「クロノス」の7月号に掲載されたコラムの原稿です。→http://www.webchronos.net/


消費税増税に伴う高額品の「駆け込み需要」と「反動減」は凄まじかった。

日本百貨店協会が発表した3月の全国百貨店売上高(店舗調整後)は前年同月比25.4%増と大幅に増えた。これに対して増税後の4月の売上高は前年同月比12.0%減。消費税が5%のうちに買い物をしておこうという人が3月中に百貨店で買い物をしたということである。

この傾向は高額品でさらに顕著だった。同じ統計の「美術・宝飾・貴金属」部門の売上高を見ると、3月は前年同月比で何と2.13倍。札幌京都福岡では何と2.46倍まで売り上げが膨らんだ。時計やアクセサリー、絵画といったものが、まさしく「飛ぶように」売れていたのである。金額が張るものなので、どうせ買うなら税率が8%になる前に買っておこうという心理が働いたのは間違いない。

一方で、4月の「美術・宝飾・貴金属」の売上高は38.9%減と大幅な減少になった。アベノミクスで円安株高が始まって以降、ほぼ毎月2ケタの増加が続いてきただけに、久方ぶりの減少となった。

高級時計などは、毎月買うものではないから、消費税の反動が大きいのは予想されたこと。だが、3月の激増ぶりに比べて4月の減少率は予想したほどには大きくなかったように感じる。百貨店協会でも「前回の消費税率引き上げの時に比べて反動の減少率は小さかった」としていた。

焦点は5月以降も反動減による売上のマイナスが続くのかどうか。あるいは、短期間で消費が回復するのかどうかである。

それを左右するのは当然のことながら、「消費の強さ」だ。それを予想するうえで役立つのが食料品の売上高増減だ。買い置きがきく耐久消費材は、消費税増税前に買うことができるが、保存のきかない食料品などは買いだめできない。このため同じ百貨店の売上高でも食料品を見れば消費税の影響の傾向を把握できる。

では、どうだったか。3月の食料品売り上げは5%増加した一方で4月の食料品は4.7%の減少だった。消費税が上がったことで、倹約したり買い控えしたりしている消費の実質減少分は3月の増加分よりも小さかったと見ることができそうだ。

食料品以外にも買いだめのきかないものは多い。例えば外食なども日程を変更して消費増税を回避するのは事実上難しい。倹約する以外には抑えようがない出費だ。それでも飲食業界は4月の消費増税で、客足が遠のくとみていた。ところが4月以降も飲食店需要は、正式な統計はまだ出ていないものの、あまり落ち込んでいないという。大企業公務員を中心に給与が増えていることや、残業の増加などが飲食需要を下支えしていることが大きい模様だ。景気はやはり底堅いのである。

さらに、消費税が上がったからと言ってなかなか利用を抑制できない交通費にも景気の底堅さは表れている。4月以降も飛行機の利用率は高いし、新幹線も混雑している。企業業績が好転したことで、ビジネス客の出張需要が増えているほか、旅行客も多い。加えて、円安による訪日外国人観光客の急増も追い風になっている。

では、高額品の需要も早期に回復するのだろうか。

判断するには、他にいくつかの問題がある。ひとつは、円安による販売価格の上昇だ。時計のような高級輸入品は昨年来の円安で、ジワジワと値上げの波が広がっている。消費税増税に合せて価格を改定している小売店が少なくない。消費者から見れば消費税を超える大幅な価格上昇になっているのだ。こうした価格上昇に伴うマイナスの影響を凌駕するほどに消費が力強く回復するかどうか。

もうひとつは消費税率が再度引き上げられる予定になっていることだ。2015年10月から税率が10%になることが法律には明記されており、政府が延期を決めない限り、税率は上がる。今年後半になれば、税率の再引き上げが視野に入ってくるわけで、そうなると、税率が10%になる前に欲しい物は買っておこうという意識が働く。後者の意識が強まれば、総じて消費が堅調なだけに、高額品の需要も比較的早期に回復する可能性が強そうだ。