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2014-10-10

復興需要に沸いた東北地方に「消費の変調」

| 10:31

時計専門誌クロノスに書いた原稿です。

 今年4月の消費税率の引き上げは、景気にどれぐらいの影響を与えているのか。エコノミストの多くは4-6月期の国内総生産(GDP)の数値を見て、一気に弱気に転じている。8月に発表された速報値では年率換算して6.8%減という数字が出たからだ。これは東日本大震災が起きた2011年1-3月期の年率6.9%減とほぼ同じだ。さらに、9月8日に発表された改定値では、企業の設備投資の落ち込みが大きいとして、7.1%減に下方修正された。景気失速ムードが一気に高まっているのだ。

 だが、消費の現場をみると、消費増税の影響は着実に消えつつある。日本百貨店協会が毎月発表している全国百貨店売り上げを見ると、4月は対前年同月比12.0%減だったが、5月4.2%減→6月4.6%減→7月2.5%減→8月0.3%減と着実に減少率が小さくなっている。8月は各地での集中豪雨などによって天候が悪かったにもかかわらず、ほぼ前年同月並にまで戻ってきた。消費税増税前の駆け込み需要で3月の売り上げが25.4%も増えていたから、その反動が出るのは当然として、その影響もほぼ吸収できたとみていいだろう。

 こうした傾向は高級時計を含む「美術・宝飾・貴金属」の売上高にも表れている。高額品は3月の駆け込み需要が大きく、その分、反動減も大きかった。何せ3月は113.7%増、つまり2.1倍にも膨れ上がっていたのである。反動減が全体よりも大きい数字になるのは当然だ。それでも4月38.9%減→5月23.2%減→6月10.8%減→7月8.0%減→8月4.2%減と、着実にマイナスが小さくなっている。これもほぼ昨年並みに戻ってきたとみていい。

 ところが、全国の中で、高額品消費の戻りが鈍いところがある。仙台だ。東北地方東日本大震災後の復興需要が膨らんでおり、その中心都市である仙台は依然として好景気に湧いている。がれきの処理といった復旧段階が終わり、公共施設や住宅などの再建が進んでいる。このため建設作業者は慢性的な不足が続いており、全国平均に比べてかなり高額の日当が支払われている。その資金が夜の繁華街や百貨店などでの消費に流れ込んでいるのだ。

 仙台の百貨店の「美術・宝飾・貴金属」の3月の駆け込み需要は凄まじかった。まさに、飛ぶように売れるという表現が当てはまる売れ行きだったという。全国平均を上回る2.4倍の伸びになった。その分反動も予想された。4月こそ46.3%減と全国平均より大きかったが、5月は16.6%減、6月は5.3%減と全国平均よりも早いペースで減少率が小さくなった。東北の好景気が全国の消費をけん引するかに見えたのだが、7月以降、様相が変わっている。 

 7月の高額品は13.6%減、8月は16.3%減と再び減少率が大きくなっているのである。東北地方の景気に異変が起きているのだろうか。

 日本銀行都道府県別の個人預金残高を見ると、東北地方の預金は東日本大震災以降、急激に増えている。2011年3月を100とすると12年12月には110を突破、今年の6月には115となった。つまり震災時に比べて15%も預金が増えたのである。全国平均の110を大きく上回っている。景気回復がなかなか進まなかった大阪は12年12月の段階で103、今年6月でも104.6なので、その差がわかる。

 東北地方で個人預金が増えたのは、当初は震災によって消費に向かう資金が減ったことや、保険金や義援金、賠償金などの収入がそのまま預金に回っていたとみられていた。その後、消費が活発になっても預金は増え続ける流れになったことから、復興需要などによる景気好転が預金増につながっているとみられていた。つまり、所得が増えたことによって、消費も預金もともに増える状態が続いていたのだ。それが、どうやら財布のひもを締める「倹約モード」に変わっているのだ。この東北地方変調は一時的なのか。それとも全国に波及するのか。注視する必要がある。