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2014-11-13

話題の書『人口激減』著者・毛受敏浩氏が語る 「人口激減国家・日本は移民を受け入れるしかない」

| 16:24

移民問題について「人口減少」の著者、毛受敏浩さんにインタビューしました。冷静に議論を始める必要性を痛感しました。是非ご一読ください。→ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41050


少子高齢化による労働力不足が顕在化し始めた。

とくに日本人があまり働きたがらない建設現場や外食店の深夜勤務などは深刻な人手不足に直面している。安倍晋三首相は「いわゆる移民政策はとらない」とする一方で、外国人技能実習制度の拡充や、国家戦略特区での外国人労働者の受け入れ拡大などに踏み出そうとしている。

日本は移民にどう向かい合うべきなのか。

『人口激減――移民は日本に必要である』(新潮新書)の著者である毛受(めんじゅ)敏浩氏に聞いた。

その場しのぎの「外国人技能実習制度」拡充


 問 安倍晋三内閣は外国人技能実習制度の期限を、現行の3年間から建設業などに限って最大5年間に拡大する方針を決めました。さらに介護分野などにも拡大していく議論が進んでいます。少子高齢化で急速に深刻化する人手不足への対応が背景にあります。こうした実習制度の拡充についてどう考えますか。

 毛受 技能実習制度はいくつかの点で問題があります。実習生を受け入れている8割の事業所で何らかの違反が存在すること。また、技術を海外に移転する国際協力だというのが建前なのに、本音は安い労働力を確保する制度になっています。

こうした制度も一時的な労働力不足には有効かもしれませんが、中長期的に人口が減少していく中で、その場しのぎに過ぎません。

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 問 新しい提言を出されたそうですね。

 毛受 私たち日本国際交流センター(http://www.jcie.or.jp/japan/)は10月29日に技能実習制度に代わる新しい仕組みを新設するよう提言しました。「技能外国人安定雇用制度(仮称)」です。技能外国人雇用法といったものを制定し、一定の条件を満たした優秀な労働者には6年間の滞在の後に、定住、永住への道を認めるというのが内容です。

企業が人材を募集する際、まずは日本人を募集し、一定期間の間に人材が集まらない場合に初めて外国人労働者を雇えるようにします。これによって日本人の働く場が奪われるといった批判は防ぐことができるでしょう。

また、技能外国人には一定の日本語レベルを求めると共に、日本で働き始めた後も日本語と技能の向上に努めるように求めます。つまり、外国人を正面から正規労働者として受け入れる制度を作ろうという提案です。

言語を学ばせ成功に転じたドイツの移民制度

 問 現在の技能実習制度とはまったく立脚点が違うわけですね。

 毛受 現在の制度では、3年で帰るのが前提ですから、働く外国人の側も日本語をきちんと覚えようなどとは思わず、いかにたくさん稼ぐかを考えます。一方で使用者側も、3年で帰ってしまう人に本気で資格を取らせたり教育しようとは考えません。建設機械を無資格で動かして事故を起こすなどということが起きるのはこのためです。頑張って努力すれば定住できるようになる、という希望が持てる制度にすべきです。

移民を正面から議論せずに放っておけば、労働力不足の穴埋めとして裏口からどんどん外国人が流入してくる。移民論議を避けていると、将来大きな問題になるのは明らかです。

 問 欧米先進国では移民が当たり前になっていますね。

 毛受 先日、日独フォーラムがあってドイツに行って来ました。日本でドイツの移民政策というと、失敗したと思われているのですが、2000年代以降は大きく政策が変わっています。ドイツは2005年に「移民受け入れ国家」を宣言しており、外国人移民を歓待するカルチャーを育てています。一方で、移民にはドイツ語を600時間学ぶことを義務付けているそうです。

かつては安い労働力としてトルコ人を大量に受け入れたドイツですが、いずれ帰国するだろうという前提でドイツ語もろくに学ばせませんでした。そうしたドイツ語もできない外国人が定住するようになって大きな社会問題になったのです。その反省もあって、移民政策を転換させたわけです。

 問 ドイツでは外国人の高度人材受け入れにも力を入れているようですね。

 毛受 最近は国外で取得した資格や専門性をどう認めるかが大きなテーマになっているようです。例えばポーランドの看護師資格を持つ人の専門性を認め、ドイツ語を勉強するだけで看護師として働けるようにするわけです。ドイツでは僻地の医療や介護の現場にどんどん外国人が入っているようで、もはや外国人専門家なしには社会が成り立たなくなっているのです。

20年後に全国の人口の3.8%を移民に

  世界最速のペースで高齢化が進む日本でも、人口減少や労働力不足は深刻な問題です。にもかかわらず、移民の議論はなかなか起こりません。

 毛受 移民問題には4つの論点があります。まず、何人ぐらい受け入れるか。次にどうやってソフトランディングさせるか。いわゆる多文化共生と言われるもので、これはだいぶ自治体など地方レベルでは活発に議論が行われている。

3番目は日本人の意識をどう変えていくか。この点はほとんど議論されていません。そして4つ目は、外国人移民が入った時に日本はどんな社会を目指すのか、いわば国家ビジョンです。この4つが明確にならないと、移民問題は前に進みません。

  どのくらいの移民を受け入れる必要があるのでしょうか。

 毛受 かつて自民党議員連盟が50年間で1000万人の移民を受け入れるという提言を出したことがありましたが、猛烈な反発を受けました。年にすれば20万人ですから本当は大した人数ではありません。でも1000万人と聞くと驚きます。今、日本国内には人口比で1.7%弱の外国人がいます。東京23区は3.8%です。それで何の問題も起きていません。外国人と日本人の衝突が起きているわけでもないのです。

ですから、1.7%の全国平均を3.8%にしても問題は起きないと言えるのではないでしょうか。20年後に3.8%にするという目標を立てて、それに沿った人数の移民を受け入れたらどうでしょう。その先のことは20年たってから考えれば良く、50年後の話をする必要はありません。

  東京新宿区の多文化共生まちづくり会議の会長を務められているそうですね。何が町づくりの課題なのでしょうか。

 毛受新宿区の外国人は人口の10%を超えています。成人式の4人にひとりは外国人ですね。やはり最大の関心は教育問題です。外国人の子供たちをどう教育していくかですね。そしてもう1つが防災問題でしょうか。ただ、新宿区は留学生や一発勝負の起業家などが多く、外国人住民の3分の1が1年で入れ替わります。これが対応を非常に難しくしています。

一般に外国人2世の高校や大学への進学率は日本人に比べて低い。これは日本社会で落ちこぼれていることを示しており、社会の底辺化が進んでいると言えます。

地方創生」に国際的視点を!

 問 何が問題でしょうか。

 毛受 移民に対する国の方針がないことです。国が移民受け入れについて明確な方向性を打ち出さなければ、自治体の腰も定まりません。日本にはたくさんの日系ブラジル人が居住していますが、彼らを今後どうしていくのか。日本語教育も職業訓練もきちんと受けさせず、自治体の場当たり的な対策任せになっています。

かつて、1970年代にベトナム難民を受け入れた自治体の話を聞きました。いまでは退職して高齢者になった難民たちは、ほとんど全員がいまだに日本語が満足にできず、今は生活保護を受けているというのです。日本語教育を満足にやらせなかったために、底辺の仕事しか就けず、結果、財産もできずに生活保護になったのです。そうした失敗を繰り返してはなりません。

 問 安倍首相は「いわゆる移民政策は取らない」と国会で答弁しています。

 毛受 国の方針として、移民の受け入れや外国人との共生をメッセージとして出すことが非常に大事です。国際的にもおおきなインパクトがあります。日本人の意識改革にもつながるでしょう。安倍内閣は「地方創生」と言い、地方の人口減少に歯止めをかけると言っていますが、そこに国際的な視点はまったく欠けています。

地方の人口減少は、地域の文化や伝統を支える人がいなくなることを意味します。地方の人口が減っている地域に外国人を受け入れていく。そこで高齢者の見守りに従事してもらう。そういった外向きの視点が必要です。

  外国人が増えると治安が悪化すると危惧する人たちも少なくありません。

 毛受 今、外国人観光客が大幅に増えています。私はそれによって犯罪は増えると危惧しています。しかし、移民を正規に受け入れたからと言って犯罪はまず増えません。例えば、外国人労働者として6年働き、無犯罪などの条件をクリアすることで定住許可が得られる仕組みになれば、早く定住権を得ようと模範的な社会人として振る舞うようになるはずです。

日本の人口減少は大津波のように襲ってきます。おそらく外国人移民を受け入れても、それで問題のすべてが解決するわけではありません。移民のマイナス面を強調するよりも、人口減少で社会が壊れていく悲惨さに思いを巡らせて危機感を持つべきです。何よりも移民論議をきちんと始める時だと思います。

毛受 敏浩(めんじゅ としひろ)    1954年生まれ。慶応大学法学部卒。米国エバグリーン州立大学行政管理大学院修士。兵庫県庁で10年間の勤務後、1988年より日本国際交流センターに勤務。草の根の国際交流調査研究、二国間賢人会議、NGO、フィランソロピー活動など多様な事業に携わる。2003年より チーフ・プログラム・オフィサー、2012年より現職。慶応大学、静岡文芸大学等で非常勤講師を歴任。現在、東京都地域国際化推進検討委員会委員長総務大臣姉妹自治体表彰選考委員、JICA草の根技術協力選考委員等を務める。2005年、第一回国際交流・協力実践者全国会委員長。 著書に『人口激減−移民は日本に必要である』、『異文化体験入門』、『地球市民ネットワーク』、編著書に『国際交流・協力活動入門講座I〜IV』など。