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2014-11-27

消費の「変調」が鮮明に。安倍首相の増税先送りは妥当だが、確約した10%引き上げは、本当に不可欠なのか

| 13:45

消費の動向と消費増税について現代ビジネスに書いた原稿です。オリジナル→ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41220


夏以降の消費の「変調」が鮮明になってきた。日本百貨店協会が11月19日に発表した10月の全国百貨店売上高は、前年同月比2.2%のマイナスとなった。

安倍首相増税先送りは妥当な判断

4月の消費増税による反動減は、8月に0.3%減にまで縮小し、消費が力強さを取り戻すかに見えたが、9月の0.7%減に続いて、マイナス幅が拡大した。しかも10月は1年前の2013年10月もマイナス0.6%、その前の2012年10月もマイナス2.4%で、決して比較対象が高水準だったわけではない。それだけに、消費の減速ぶりは深刻だと言えるだろう。

また、日本チェーンストア協会が20日に発表したスーパーマーケットの10月の売上高(既存店ベース)も、マイナス1.9%となった。4月以降マイナスだった対前年同月比伸び率が、8月にはマイナス0.1%にまで持ち直していたが、9月にはマイナス1。0%、10月はマイナス1.9%と、マイナス幅が拡大した。明らかに消費は夏以降、悪化しているのである。

安倍晋三首相は11月18日に、7-9月期の国内総生産(GDP)速報値の発表を受けて、消費増税の延期を表明した。物価変動の影響を除いた実質ベースで4-6月期に比べて0.4%のマイナスで、年率に直すと1.6%のマイナスという結果だった。おおかたのエコノミストは年率で2%前後のプラスと見込んでいただけに、衝撃が走った。

もっとも、この数字に対しても、「マイナス0.4%はそれほど大きな落ち込みではない」とか、「民間在庫のマイナスが効いているので実態は悪くない」といった声も聞こえる。

しかし、毎月の百貨店やスーパーの売上高推移を見る限り、明らかに消費に変調が起きているのは間違いない。1ヵ月前のこのコラムで「少なくとも足下の消費に力強さが戻ってくるまでは消費税増税の判断は先送りすべきだろう」と書いたが、消費に力強さが戻るどころか、むしろ弱さが鮮明になったわけだ。安倍首相増税策送りは妥当な判断だったと言うことができるだろう。

年末の総選挙も消費にはマイナス

安倍首相が就任以来掲げてきたアベノミクスの効果は、ようやく消費に表れてきたところだった。百貨店売上高でみると2012年12月はマイナス6%と大幅なマイナスだったが、安倍内閣が本格発足した2013年1月以降プラスに転じた。今年3月まで15ヵ月間のうちマイナスになったのは3回だけだ。

これを支えたのが高額品の売れ行き好調である。高級時計や宝石といった「美術・宝飾・貴金属」部門が大幅に売り上げを伸ばしたのだ。株価の上昇などによる「資産効果」も高額品の消費増につながったと見られてきた。もちろん景気の先行きに明るさが見えたことで、消費者の財布のひもが緩んだ面もある。「美術・宝飾・貴金属」部門の売上高は、安倍内閣が発足する前の2012年9月からプラスに転じ、2012年3月からは2ケタの伸びが今年3月までほぼ毎月続いた。

それが今年4月以降、激変する。3月の消費増税の駆け込み需要が大きかったこともあり、4、5、6月は2ケタのマイナスが続いた。9月にはマイナス2.8%にまで減少幅が小さくなったのだが、10月は6.4%減と再びマイナスが大きくなった。2ケタ増が続いていた高額品消費のエネルギーはすっかり消えてしまったのだ。明らかに4月の消費増税の影響がジワジワと出始めていると見ていいだろう。11月は株価が上昇しており、高額品消費が戻ってくる可能性もあるが、昨年11月は21%増という高い伸び率を記録しており、これを上回ってプラスに転じるのは難しそうだ。

さらに、消費にマイナスになる要素が加わった。解散総選挙である。選挙期間中は外食や贈答品販売が振るわない。とくに県庁や市役所など公務員による支出の効果が大きい地方ではそうした傾向が強いのだ。実際、前回総選挙が行われた2012年12月の百貨店売上高はマイナス6%と大きく落ち込んだ。ボーナスの増加などで期待された年末商戦にも冷水が浴びせられる懸念が出てきたのである。

本当に10%への引き上げは不可欠なのか?

日本のGDPの6割は個人消費が占める。つまり、消費の減退は景気後退に直結することになる。アベノミクスは消費に火を付けることに成功したかに見えたが、4月の消費増税でその火を消してしまったのかもしれない。

安倍内閣は「消費」の重要性を軽視してきたようにもみえる。円安によって輸出が増え、賃金が増えれば、最終的に消費が増えるという発想は、製造業が中心の産業構造だった時の話だ。にもかかわらず、量的緩和で円安が進めば、輸出が増えて日本経済が復活すると信じたようだ。政権の近くに寄ってくる経済人は大企業のそれも製造業経営者が多いということも背景にあるのだろう。だが、円安が進んだにもかかわらず、輸出数量はほとんど増えていない。

現実には円安による効果は、外国人観光客の急増に現れ、観光客による高額品などの消費が国内消費を下支えする格好になった。一方で、円安によって輸入依存度の高い食料品などの価格が上昇し、その結果、消費が手控えられる副作用も出始めている。

安倍首相消費税率の10%への引き上げを2017年4月としたうえで、今度は景気条項を付さずに、必ず増税すると公約した。もちろん増税に賛成する財務省や多くの自民党議員、大手製造業を中心とする経済人に先送りを納得してもらうために、必要だという判断からだろう。だが、本当に10%への引き上げは不可欠なのか。それで日本の消費中心の経済社会が大打撃を被ることはないのか、よくよく判断すべきだろう。

社会保障費を賄い、国の財政を改善するために必要なのは、言うまでもなく税収増である。税率引き上げによって経済が潰れ、税収が減ってしまっては元も子もない。