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2014-12-08

消費増税の影響ジワリ  好調だった宝飾品 消費にブレーキ

| 22:16

時計専門誌クロノスに書いた原稿です。

 安倍晋三首相が2015年10月に予定されていた消費税率の再引き上げを1年半先延ばしする方針を示した。「国民の信を問いたい」として解散総選挙に打って出たが、信を問うまでもなく、とても再増税できる経済状況ではなくなってきた。2014年4月に消費税を5%から8%に引き上げた影響がジワジワと表れ始め、消費の伸びに一気にブレーキがかかってきたからだ。

 日本百貨店協会が発表した2014年10月の全国百貨店売上高は店舗調整後で2.2%のマイナスとなった。消費増税の影響で4月以降、前年比で大幅なマイナスになっていたが、6月以降順調に回復傾向を示し、8月にはマイナス0.3%とほぼ前年並みの水準に戻していた。東京大阪など10都市の売り上げに限れば、8月にはプラス0.5%に転じていた。これで9月以降の全国ベースの売り上げがプラスに転じれば、消費は腰折れすることなく消費増税の影響を吸収したことになるはずだった。

 ところが9月は0.7%のマイナスと逆にマイナス幅が拡大。そして10月はさらにマイナスが拡大する結果となった。夏ごろを境に完全に消費が退潮し始めたのだ。夏のバーゲンセールが終わると、婦人服売り場などから顧客の姿がめっきり減っていた。

 この傾向は高級時計を含む「美術・宝飾・貴金属」の売り上げにも鮮明に表れている。このコラムでも何度も取り上げた数字だ。アベノミクスが始まって以降、消費増税前までは2桁の伸び率が続いてきたが、駆け込み需要の反動で4月以降急減。その後、回復するかに見えたが、9月のマイナス2.8%をピークに10月はマイナス6.4%と再びマイナス幅を拡大した。

 円安の効果で外国人観光客が大幅に増えており、高級品も彼らが大量に購入するようになっている。旅行者は消費税の免税手続きができることから、高額品に関しては4月の消費増税は、外国人消費にはほとんど影響していない。さらに10月以降、化粧品や食料品なども免税対象に加える拡充措置が始まったこともあり、外国人消費の背中を押している。それにもかかわらずプラスにならないのだから、いかに国内居住者の消費意欲が衰えているかが分かる。

 消費だけでなく経済全体の回復も鈍い。2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)の伸び率は、物価変動の影響を除いた実質で4~6月期に比べてマイナス0.4%となった。年率に換算するとマイナス1.6%である。おおかたのエコノミストは2%前後のプラスになると見込んでいたので、大きな衝撃が走った。消費増税前の駆け込みで1~3月期が大幅に伸び、その反動で4~6月期が大きく沈んでいたから、どう見ても7~9月期は最悪期を脱すると誰もが考えていたからだ。安倍首相消費税再引き上げ先送りを決める直接的な引き金になった。

 では、消費税増税の先送りを決めたことで状況は変わるのか。10月の百貨店売上の数字が大きくマイナスになったことを見ても、簡単には再び消費に火がつくことはなさそうだ。株価の上昇や年末のボーナスの増加によって、再び消費マインドが高まるかどうかは予断を許さない。それほどまでに4月の消費増税がボディーブローのように効いてきたのだ。   

 増税時期を2017年4月とすることで、当面の間、消費税問題が消費の足を引っ張ることはなくなると見られる。消費税の引き上げが視野に入ってくる2016年の年末商戦は再び、増税前の駆け込み需要が盛り上がることになると見られるが、それまでにはまだ2年の時間がある。

 日本のGDPに占める個人消費の割合は6割だ。つまり、その分、小売りやサービス業に従事している人の数も多いことを示している。政府は円安で製造業の利益が上がって給料が増えれば消費が増えると見る。だが、消費が落ち込むことによる小売やサービス業の給与減の方がむしろ影響は大きい。一度萎えてしまった消費意欲に再び火をつけるのは簡単ではない。