【高論卓説】国会論戦「不発」の背景 「非力さ」目立つ質問議員、大臣有利に

産経新聞社が発行する日刊紙「フジサンケイビジネスアイ」のコラムに10月5日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/macro/news/161005/mca1610050500002-n1.htm

 ジャーナリストの田原総一朗さんが会長を務めるNPO法人「万年野党」が9月末、恒例の『国会議員三ツ星データブック』を刊行し、三ツ星議員15人を表彰した。国会での質問回数や議員立法に関わった件数、質問主意書を提出した件数など定量評価できるデータでランキングしたもので、2013年の通常国会から国会会期ごとにまとめている。

 「国会議員は見た目のカッコ良さや役職ではなく、国会の活動実績で評価されるべきだ」というのが、この表彰が始まった理由。国会への出欠日数などを調べようとしたが、公表されている定量データはごく限られており、前述の評価基準になった。

 他には例のないユニークな取り組みということもあり、回を重ねるごとに定着している。最近では選挙の時の「選挙公報」や「政見放送」などで受賞をアピールする議員も出てきた。若手などは何とかトップになろうと同僚の代打を買って出る議員もいるようだ。

 一方で週刊誌などは、このデータを逆に使って、国会で一度も質問せず、議員立法などにも参画していない「サボり議員」を明らかにする特集などを行っている。党の役員などに就いた場合など、国会での質問には立たない「慣行」があるなど、「言い訳」はさまざまだが、国会活動がまったく「見えない」国会議員となると、有権者に顔向けできるのだろうか。国会で論戦を戦わせてこそ国会議員と言うべきではないか。

 かつて、国会論戦で「非力さ」が目立ったのは大臣だった。各省庁の局長などが「政府委員」として大臣に代わって答弁できた時代は、不勉強な大臣も多く、答えに窮して失言することも多かった。

 ところが基本的に大臣が答弁するルールとなって以降、専門性の乏しい大臣では国会答弁に耐えられなくなった。当選回数だけで大臣に据えた場合、すぐにボロが出てしまう。安倍晋三内閣で同じ大臣が長期にわたって務める例が増えている背景には、そうした事情もありそうだ。

 最近では逆に、質問側の「非力さ」が目立つ。野党の人数が減っていることもあるが、ひとつの委員会に長期にわたって所属し、大臣よりもはるかに専門知識が豊富だという議員が減っている。それでは、答弁案を事前に作る霞が関の役人がバックに控える大臣側が圧倒的に有利になってしまう。

 とくにアベノミクスなど経済が議論になると、質問する議員の知識不足は隠せない。これは野党議員に限ったことではない。人数が増えて質問が一国会で数回しか回ってこない自民党の若手議員は、経験を積む間もなく当選回数だけが増えていく。

 こうした質問の質は政党によっても大きな差がある。若手議員に勉強の機会を与えたり、政策スタッフを十分に配置するなど工夫をしないと、ますます国会論戦が空虚になっていきかねない。前述の「万年野党」は今後、質問の「質」にも焦点を当てた評価方法を検討していくとしている。