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2017-07-12

GPIF「8兆黒字」は安倍政権への神風か 頭痛のタネ、がひとつ消えた…?

| 12:03

現代ビジネスに7月12日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52274

やっと成果を上げた安倍政権株式シフト

国民の年金資産を運用するGPIF年金積立金管理運用独立行政法人)の2016年度の運用収益が大幅な黒字になった。3月末の日経平均株価が1万8909円と1年前の1万6758円から12.8%上昇したことが大きい。

運用収益額は7兆9363億円のプラスになった。2015年度は5兆3098億円もの運用損を出したことで、安倍政権株式シフトが野党から強く批判された。その損失分も取り返した格好になり、GPIF問題を野党は一切追及しなくなった。

森友学園や加計学園問題などで内閣の支持率が大きく低下している時だけに、頭痛の種が1つ消えたことで、安倍晋三首相は胸を撫でおろしているに違いない。

前年度の運用収益率は5.86%。資産別では国内株式が14.89%と最も高く、次いで外国株式の14.20%となった。前年度の結果を見れば、第2次安倍内閣以降進めたGPIFの運用資産構成の株式シフトが奏功したことになる。

国内債券はマイナス0.85%、外国債券はマイナス3.22%だったため、仮に安倍政権ポートフォリオを見直す前の債権中心の運用が続いていた場合、運用収益率は全体でもマイナスだった可能性が高い。

中期的な運用成績を見ても、安倍政権の「株式シフト」は成果を挙げていると言ってよさそうだ。2012年度から2016年度まで5年間の累計の運用収益は39兆3616億円。その前の5年間はリーマンショックがあったこともあり、累計で3兆3716億円のマイナスだった。

2017年3月末の運用資産総額は144兆9034億円に達した。このうち、国内株式は23.28%と、1年前の21.75%からウエートが増えた。これは株価の上昇による含み益の増大も寄与しているが、GPIFの国内株のウェートとしては昨年12月末の23.76%が最も高くなっており、過去最大規模の国内株投資を継続していることを示している。

一方で、日本国債を中心とする国内債券については、2013年3月の61.8%から急速に低下し、2017年3月末は31.68%と最低水準を更新した。

GPIFが定める基本ポートフォリオ(資産構成割合)では国内株式は25%、国内債券は35%となっており、いずれもまだ余裕がある。短期資産を8.89%保有しているためで、年明け以降、キャッシュポジションを高める運用になっていたことを示している。

市場全体と比べてGPIFの運用成績がどうだったかを、目標とするベンチマークとの差でみると、国内株式はプラス0.20%とベンチマークに勝った。運用としてはまずまずの成果だったと言えるだろう。もっとも、外国株式ベンチマークに負けたことが響き、資産全体ではベンチマークの収益率6.22%を、実際の収益率は0.37%下回った。

公的年金が株価を決め、株価が年金運用益を生む⁉

安倍内閣によるGPIFの運用ポートフォリオの見直しは、株式市場にも少なからぬ影響を与えている。第2次安倍内閣が発足した2012年12月末のGPIFの国内株式資産は14兆4600億円程度だったが、この3月末には33兆7000億円程度に膨らんでいる。もちろん株価の上昇分も含まれるが、20兆円近くが株式投資につぎ込まれた格好だ。

ポートフォリオの見直しだけでなく、運用資産を新規に追加することで、国内株に回る資金が増えている面もある。GPIFは2016年度に新規に2兆6118億円を年金特別会計から受け入れている。前年も2兆8905億円を受け入れた。一方で、年金特別会計への納付額は2016年度か2907億円、2015年度は2750億円と少ない。

2年間で差し引き4兆9000億円ものニューマネーがGPIFに入っている。ポートフォリオに従えば、その4分の1弱、つまり1兆円以上のおカネが国内株式に投入されたことになる。

株価が大きく上昇した2013年度、2014年度は、新規の寄託受け入れは少なく、特別会計納付額が大きくなっていた。ここ2年は、それとはまったく逆、つまり国がGPIFに資金を回して、結果的に株式市場に流入する資金を増やしていたことが分かる。

東京証券取引所市場第1部の時価総額は2017年3月末で558兆円。GPIFの保有株は、東証1部の6%に相当する規模になっていることになる。すでに日本を代表する多くの銘柄でGPIFが大株主に登場しており、GPIFの投資行動がそうした企業の株価を左右するようになり始めている。

株価の上昇が内閣支持率に大きく影響することは、これまでの「実績」が示している。特定秘密保護法の採決や、大臣の辞任といった政治的な問題での支持率低下は、時間と共に回復する。一方で、景況感を大きく左右する株価の下落は、ボディブローのように支持率低下に結び付く。

内閣支持率が急落している今ほど、株価の上昇が内閣にとってありがたいに違いない。4月以降、GPIFがさらに株式のウエートを増やしているとすれば、日経平均株価が2万円を超えてきた要因のひとつになるかもしれない。

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