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2017-08-10

高浜原発再稼働の効果で料金値下げ 販売電力量の失地回復を狙う関西電力

| 10:56

月刊エルネオス8月号(8月1日発売)に掲載された原稿です。http://www.elneos.co.jp/

新電力への顧客流出

 関西電力は八月一日から家庭用電気料金を平均三・一五%、企業向けを平均四・九%値下げした。福井県にある高浜原子力発電所の三号機と四号機を再稼働させたことで、値下げが可能になったとしている。これに先立つ七月十一日に、値下げ幅の妥当性を審査する経済産業省有識者会議(座長・山内弘隆一橋大大学院教授)が開かれ、関電の森本孝副社長が、原発再稼働で停止中に代替していた火力発電の燃料費が減り、経営効率化も進めた結果、八百七十七億円のコストを削減、値下げの原資が確保できたと説明した。有識者会議は値下げ幅を妥当とした。

 関電は値下げを武器に販売電力量を増やしたい考えだ。というのも二〇一六年四月から始まった家庭向け電力の小売り自由化の影響をモロに受けて、新電力各社に顧客を奪われてきた。一年間での顧客流出は七十万件にのぼったとされる。関電は値下げによって、新電力との価格競争に勝ち、流出した顧客を取り戻すことを狙っている。

 一七年三月期決算は最終利益こそ、前の期に比べてほぼ横ばいの一千四百七億円となり、二期連続で黒字を確保した。ところが、販売電力量は一千二百十五億キロワット時と四・七%も減少した。関電の販売電力量は、電力大手十社の中では、東京電力に次いで長年二位だったが、前期は中部電力の一千二百十八億キロワット時にわずかながら抜かれ、業界三位に転落した。

 昨年の電力大手十社の販売電力量の増減率は平均で一・七%減少だった。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故以来、省エネ意識が高まったほか、再生可能エネルギーへのシフトを進める流れが続いている。景気は回復基調にあるにもかかわらず販売電力量が減り続けている背景には、こうした省エネの取り組みが続いていることもある。

「安い電力」と原発への抵抗

 中でも関電の減少率四・七%は平均を大きく上回り、北海道電力の六・二%減に次ぐ高さとなった。原発稼働停止に伴って電気料金を引き上げたことから、客離れを加速した。もともと原子力発電への依存が高かった関西電力は、運転休止の影響が最も大きく、電気料金が他社に比べて高止まりしていた。

 関西電力のエリアは価格に敏感な地域だけに、価格が高止まりした関西電力よりも有利な新電力に顧客が流れていたのは間違いなさそうだ。原発再稼働で値下げに踏み切ったことで、どれだけ顧客を取り戻し、販売電力量が増えるかに注目が集まる。

 もちろん、料金を引き下げるということは、販売量がそれに見合った分だけ増えなければ、減収になる危険性もある。値下げによって業績が悪化しては何にもならない。かろうじて黒字が二期続いただけで、決して関電の懐事情に余力があるわけではないのだ。

 もちろん、関電のこうした値下げの動きを、新電力も指をくわえてみているわけではない。競争に勝つために値下げする方向に動いている。大阪ガスは、同じく八月一日から電気料金の値下げに踏み切った。都市ガスとセットで長期契約した場合の電気料金を現行より二・六%安くした。また、一定量以上の電気を使う事業者向けには三・二%の値下げとした。

 新電力のソフトバンク関西地区で関電より一%安くする。関電の通信子会社ケイ・オプティコムや、大阪いずみ市民生協も値下げを検討している。

 これまで関電は原発再稼働と値下げを完全にリンクさせる戦略をとってきた。原発による発電が「安い電力」であることを印象付ける狙いもあるとみられるが、値段が安ければ原発でいいという反応になるかどうか。新電力に契約を変える利用者の中には、原発への抵抗感があって再生可能エネルギーをあえて選んでいる人もいるとみられる。関電は今後も、福井県大飯原発三号機、四号機が今年秋以降に再稼働した段階で、再び電力料金の値下げを実施する意向で、「安い原発」を武器に価格競争を仕掛けていく見込みだ。

原発会計マジックと再エネ賦課金

 これまで電気料金は、電力大手十社に事実上地域独占を認める代わりに、政府が認可してきた。原価に一定の利潤を載せた料金を認可する「総括原価主義」と呼ばれる仕組みを長年とってきたのだ。電力の小売り自由化に伴い、料金設定での会社側の自由度が増しており、価格競争が熾烈になってきている。

 そんな中で、原発を再稼働させるかどうかで料金を上下させることの妥当性には疑問の声もある。最近では真正面から「原発の電気はコストが安い」と主張する人は減っている。

 確かに、発電に要する原材料費を比べると、火力発電に使う重油液化天然ガス(LNG)よりも、ウランなどの核燃料の発電効率は高い。一方で、安全基準の強化で原発の設備費用が巨額になっているうえ、廃炉するための費用も過去の見積もりよりもはるかに大きな金額になりつつある。

 福島第一原発事故によって、いったん重大事故を引き起こせば賠償額や廃炉のための費用は天文学的な金額になりかねないことが明らかになり、経済計算に乗るかどうかも分からなくなっている。

 事故が絶対に起きないとは言い切れない場合に、原子力発電が本当に割安なのかどうかは議論が分かれるわけだ。現状の会計制度では将来の廃炉費用などの計上が十分とはいえず、その分、コストが低く抑えられるという「会計マジック」もある。

 一方で、再生可能エネルギーの増加が、電力料金を底上げしているという批判もある。太陽光パネルや風力などで発電した電力を電力会社が買い取ったコストを賄うため、電気を使う側が「再エネ賦課金」として一定額を負担する仕組みが導入されている。結果、割高な電力料金になっているというわけだ。

 電力小売り自由化から1年余り。今後、全国各地で原発が再稼働されることになれば、電力料金の値下げに拍車がかかり、新電力との価格競争が一段と過熱することになりかねない。果たして電力自由化の勝者は誰になるのか。目が離せなくなってきた。

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