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2017-10-02

原発は将来どうするのか エネルギー基本計画の見直し

| 07:39

月刊エルネオス10月号(10月1日発売)に掲載された原稿です。

http://www.elneos.co.jp/

原発をどう取り扱うか

 日本は今後、どう原子力発電と向き合っていくのか。その方針を決めるのが政府の「エネルギー基本計画」だ。基本計画は国の中長期のエネルギー政策の指針となるもので、現在の第四次基本計画は二〇一四年四月に閣議決定された。その見直し作業が経済産業省などで始まった。

 基本計画は法令でおおむね三年ごとの見直しを求めており、〇三年十月の第一次以来、〇七年三月の第二次、一〇年六月の第三次、そして一四年四月の第四次と見直されてきた。経済産業省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・坂根正弘コマツ相談役)で議論し、来年三月末にも第五次基本計画の原案を固める。

 最大の焦点は原子力発電の取り扱いだ。

 東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、反原発の声が強まったこともあり、第四次計画は「玉虫色」の方針が盛り込まれた。原発を安定的な「ベースロード電源」と位置付ける一方で、原発依存度は「可能な限り低減させる」とも明記されたのだ。安倍晋三内閣は「安全が確認できたものから再稼働させる」として、原発の再稼働を進めてきたが、将来にわたって原発をどうするのか、明確な方針を示していない。方針を示していないどころか、国民世論を二分しかねない原発論議はあえて避け、再稼働という実利だけをなし崩し的に追い求めてきた。

 一二年には民主党の野田佳彦内閣が「二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という方針を打ち出し、「脱原発」に大きく舵を切った。一〇年の第三次計画では、鳩山由紀夫内閣温暖化ガス削減目標もあって、原発の新設を盛り込んでいたが、一一年の震災で風向きが一気に変わった。

 民主党の方針は閣議決定こそされなかったが、政権を奪還した安倍内閣原発政策の扱いに苦慮した。一四年の第四次基本計画では、民主党政権時代のこの方針は「撤回」されたものの、「ベースロード電源」とする一方で「可能な限り低減させる」という、原発推進なのか、脱原発なのか分からないどっちつかずの表現になった。

なし崩しの迷走状態

 現在のルールでは原発は稼働から四十年でその期限を迎えるのが原則になっている。二十年間に限って一回だけ延長できるという条文もあるが、安全性の確保が大前提で、原子力規制委員会から許可を得るには老朽原発の場合、大規模補修する必要が出てくる。

 再延長を断念して廃炉を選択する動きも広がりつつあり、このまま原発の新設をしなければ、「脱原発」がなし崩し的に進むことになる。再稼働もなし崩し、脱原発もなし崩しという、迷走状態に入りつつあるのだ。

 そこで将来にわたって原発をどうするのかという議論が不可欠になる。調査会の分科会長をつとめるコマツの坂根氏は、「もし脱原発を選択すれば、いずれ化石燃料が枯渇した時に、使用済み核燃料を掘り起こしてエネルギー源として再活用する時代がやってくる」と予想する。技術者出身らしい合理性で、原発技術を保持し続ける必要性を説いている。省エネを徹底して進め、再生可能エネルギーを拡大したとしても、原発は必要だというのが坂根氏の意見だ。これに他のメンバーが同調するかどうか。

 さらに日本が原発を止めたと公言できない事情がある。一九八八年七月に発効した日米原子力協定の三十年の期限を来年迎えるのである。日本が原子力を平和利用することを認めた協定で、使用済み核燃料を再処理して再び発電に使う「核燃料サイクル」を、核拡散防止条約(NPT)下の非核国では唯一、日本にだけ認めている。その条約が切れるのだ。来年一月以降、日米のどちらかが条約破棄の通告をしない限り、自動延長されることになっているが、日本が「脱原発」の姿勢を取った場合には、米国条約継続を認めない可能性が出てくる。

 もうひとつ指摘されるのが、安全保障上の問題点だ。日本が原発を保有し、核燃料サイクル用にプルトニウムを保有することで、周辺国が日本を「準核保有国」と見なしているという意見だ。実際に核爆弾を作るには大きなハードルがあるという指摘もあるが、原発を止めれば、安全保障上の抑止力が低下するという声もある。北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次ぐ中で、抑止力の低下につながる日米原子力協定の「破棄」に反対する声が今後強まる可能性はありそうだ。

まずは核燃料廃棄物処分から

 こうした中で、第五次基本計画は、原発の扱いについて、どんな方向性を打ち出すのか。福島第一原発事故から六年半。そろそろ、将来にわたって日本の原発をどうするのか、真正面から議論すべき時だとの声も強い。そのためには、まずは全国の発電所などに溜まり続けている核燃料廃棄物の最終処分方法を決めるべきだと考えられる。処分方法を決めずに再稼働を進めれば、行き場のないゴミが増え続ける。原発継続か脱原発かを問わず、最終処分は不可欠だ。だが、現実には、最終処分問題にケリをつけることもできていない。

 原発について明確な方針を示すことができないのは、政治の問題でもある。安倍晋三内閣衆議院総選挙に打って出ても、国民の間に反対論が根強い「原発」問題を争点にはしないだろう。

 そうなると、日本の原発政策自体の「なし崩し」状態が続くことになりそうだ。なし崩しで再稼働を進め、四十年の稼働期限が迫れば、なし崩しで六十年に期間を延長する。そして核燃料廃棄物の最終処分地もズルズルと決めない。それでも二十年くらいはエネルギー需給は賄えるに違いない。

 経産省は新しい会議体として「エネルギー情勢懇談会」を創設した。分科会からは坂根分科会長だけが加わり、総勢八人のメンバーでエネルギーの将来像について議論する、という。「温暖化対策経済成長の両立」をテーマに掲げているが、温室効果ガスを廃止しない原子力の必要性が議論になるのは疑いもない。果たして、この会議がどんな結論を出し、第五次計画につなげていくのか。行方に注目したい。

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