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2017-11-15

「国会の質問時間問題」自民党は野党時代を思い出したらどうですか? あのとき「野党8」を求めたのは誰か

| 11:20

現代ビジネスに11月15日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53504

確かに与党議員の質問は少ないが

国会での質問時間を巡る与野党の攻防が続いている。慣例で与党2対野党8になっている質問時間の割合を見直すよう自民党が求めたのがきっかけ。これに対して野党側は、野党の質問時間を削って、森友・加計学園問題などの追求をかわそうというのが本音だとして強く反発している。

国会での質問時間は議院運営委員会の申し合わせで決めることになっており、法律で決まっているわけではない。原則は議席数に応じてということになっているが、長年の慣行で野党に多く時間配分するようになってきた。

自民党の圧勝によって議席の3分の2を与党が占めるようになった一方で、従来の与党2対野党8という質問割合の慣行を維持した場合、与党議員で質問に立てるチャンスは激減することになる。単純に計算すれば、ひとり当たりの質問時間は、野党議員には与党議員の8倍が認められることになる。

自民党内には議席数に比例した質問時間にするべきだ、という声もあるが、そうなると7割近くが与党議員の質問になってしまう。さすがにそれは無理ということで、自民党からは与党5対野党5の割合に変更するよう要求が出されたが、当然のことながら野党側が拒否した。

筆者は非営利任意団体「国会議員の活動データを集積する会」の世話人として国会議員の質問回数(衆参両院)や質問時間(衆議院のみ)を集計している。

2017年の通常国会である193国会(1月〜6月)の衆議院では、足立康史議員日本維新の会)57回が最高だが、50位(16回)までに自民党議員はひとりもいない。与党としては公明党の吉田宣弘議員(28位20回)ら4人が名前を連ねているだけだ。

11月7日の自民党総務会では「あるマスコミは誰が何回、誰が何回と数えて格付けしている」と批判する声が上がった。そもそも質問の割り当て時間が違うのに、自民党議員に不利な格付けをするのはケシカランということのようだ。

確かに、前述の「集積する会」のデータを元に、NPO法人「万年野党」(田原総一郎会長)として質問王を「三つ星国会議員」として毎国会表彰しているが、三つ星議員自民党議員が選ばれたことはほとんどない。質問の量で測る限り、自民党議員は圧倒的に不利なのだ。

国会での質問は、国民が直接見ることができる数少ない国会議員の活動の姿だ。そんな国会での質問を、自民党が本気で重視し始めたのならば、誠に喜ばしい限りだ。与党として政府にキチンとモノを申したいというなら、それ相応のキリっとした質問を期待したい。

そうでなくても、自民党議員による国会質問は、首相や大臣に媚びるかのような発言も目立つ。質問ではなく、応援演説になっているものも少なくない。そんな「出来レース」のような質疑を長時間続けられても、国民のプラスにはならないだろう。

自民党野党時代に決まった時間配分

もともと、与野党2対8という質問時間に申し合わせで決まったのには経緯がある。2009年に自民党が下野するまでは与党4対野党6が目安だった。ところが、民主党政権は「政府与党一体」という姿勢を強く打ち出したため、当時、野党だった自民党の要求で野党の質問時間を8にまで増やした。

議員内閣制では政府与党は一体なのが当たり前だ、と解説するメディアもあるが、日本の場合、そう単純ではない。明治以来、霞が関官僚の力が強い中で、かつては与党政治家が質問に立って、省庁の局長などから答弁を引き出すという姿がしばしば見られた。

自民党は党の政務調査会に様々な部会を置き、そこで内閣が提出する法案(閣法)などは事前に審査することになっている。その決定を経て、総務会で承認されたものを、内閣が閣議決定して国会に提出するというのが基本的な段取りだ。

つまり、国会に提出される各法は事前に党内での議論は終わっており、国会与党議員が閣僚に質問するのは「形だけ」ということになる。もちろん議決する場合に、与党議員が反対することはまずあり得ない。だからこそ、与党の質問時間は少なくていい、ということになるわけだ。

民主党政権が「政府与党一体」と宣言した背景には、自民党の政調で決めるプロセスは一切国民に公開されない密室で決まっており、いわゆる「政官業癒着」の舞台になっている、とする主張があった。

民主党は政調の機能を止め、業界からの陳情なども幹事長室に一本化した。また、政府の意思決定は大臣・副大臣大臣政務官の「政務三役」で行うとして官僚を排除した。

そうした政治システム改革の流れの中で、政府を動かす与党議員政府に質問するのはおかしいという論理で、与党の質問時間が2割まで減ったのだ。

野党に転落した自民党は、ベテラン政治家を予算委員会などでの質問に立たせ、民主党政権を徹底的に批判した。それが、立場が逆転した途端に、質問時間を与党に配分せよと言っているわけだ。

自民党議員の本気質問は増えるのか

安倍晋三首相が幼児教育の無償化などの財源の不足分のうち3000億円程度を産業界に求めると発言したことに対して、小泉進次郎自民党筆頭幹事長が「党で全く議論していない」と批判した。

小泉氏の批判は、むしろ旧来の自民党型を守れと言っているに等しい。つまり、政府が物事を決める前に与党に根回しせよと言っているわけだ。この主張は、自民党国会質問時間を増やせ、という議論とおそらく矛盾する。

自民党国会での質問時間を増やすというなら、自民党内の政調での「密室論議」を放棄すべきだろう。あるいは、国会での議論を党の議論よりも優先させるというのなら、国会での「党議拘束」を廃止するべきだ。つまり、与党議員といえども、政府の政策に全て賛成するわけではない、という姿勢を明確にすべきだろう。

だが、現実には、自民党にはそこまで国会の「形」を変える気はないだろう。やはり、うるさい野党の質問時間を削り、触られたくない問題の追及をかわしたい、というのが本音に違いない。

自民党議員の数で押し切り、野党の質問時間を削って与党議員の質問を増やしたらどうなるか。

与党を厳しく批判する質問を目にする機会が減り、自民党の支持率は上がるか。それとも、政府に媚びへつらう質問ばかり目にするようになって自民党への支持率はむしろ下がるのか。

テレビに映らない委員会での質問時間が増えたとして、本当に質問に力を入れる自民党議員が増えるのか。それとも、若手議員ばかりに質問を任せてベテランは政府や党の役職ばかりを重視するのか。

質問時間の増加を声高に主張する自民党の「本気度」を見てみたいものだ。

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