Hatena::ブログ(Diary)

磯山友幸のブログ RSSフィード Twitter

2018-01-09

【高論卓説】「家庭養育原則」どう実現するか

| 10:14

12月28日付けのフジサンケイビジネスアイ「高論卓説」に掲載された拙稿です。オリジナル→https://www.sankeibiz.jp/macro/news/171228/mca1712280500002-n1.htm

■養親、里親、小規模ホーム…支援手厚く

 親からの虐待にあった子供や、望まない妊娠によって生まれた子供など、親元で育てることができない子供を、どう社会全体で育てていくか。厚生労働省の検討会が8月にまとめた「新しい社会的養育ビジョン」を具体的な政策に落とす作業が、厚労省の社会保障審議会の「社会的養育専門委員会」で本格化する。

 2016年に改正された児童福祉法は、この分野に関わる人たちの誰もが「画期的」という内容だった。1947年の法制定後初めて理念にかかわる改正が行われ、子供は誰もが健全に育てられる権利を持つという「子ども権利条約」の精神が取り入れられたからだ。改正法には「(子供の)最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成」するよう努めると明記された。

 その上で、実の親から子供を離して養育する場合でも、できるだけ家庭と同様の「良好な家庭的環境」で養育すべきだと改正法で規定された。欧米先進国では一般的になっている「家庭養育原則」を日本でも明記したわけだ。

 その中でも重視されたのが特別養子縁組だ。実の親との法的な関係を断って、新たな親と法的な親子関係を構築するもので、子供は養親の下で実の子として育つ。日本では年間500人ほどと、まだまだ数が少ないが、「ビジョン」では、これを5年以内に1000人以上に増やしていこうということが盛り込まれた。

 特別養子縁組が難しい場合には、里親の元で暮らすことが奨励され、里親への包括的な支援体制の強化などがうたわれている。施設に入所させる場合も、小規模な「ファミリーホーム」とし、家庭的な環境で育てることを求めている。

 児童養護施設は、相部屋で集団生活をする「大舎」と呼ばれる施設がまだまだ多数を占めている。日本では、親から離れて暮らす子供たちの多くが18歳までそうした児童養護施設で暮らしてきた。改正児童福祉法ではこうした大規模な施設を「家庭的環境」として認めておらず、大舎を小規模化していくことが求められている。小規模化はこれまでも施策として進められてきたが、これを本格化する必要が出てきたのだ。

 「ビジョン」では就学前の子供について「原則として施設への新規措置入所を停止する」と明記したこともあり、児童養護施設関係者の間に動揺が走っている。専門委員会では、大規模施設をファミリーホームなどに分散・小規模化していくか、そのための財政援助をどうするかといったことも大きなテーマになっている。

 もともと安倍晋三内閣は「児童虐待の防止」に力を入れており、その柱が児童福祉法の改正だった。日本では親から離して養育している子供の数はドイツフランスの3分の1以下で英国と比べても3分の2だという。人口比でみれば、日本は極端に少ないことになる。家庭内で虐待されているにもかかわらず、児童相談所が把握できなかったり、把握していても対処できていなかったりする子供が、まだまだたくさんいることをうかがわせる。具体策を決めていく専門委員会での議論を見守りたい。

【プロフィル】磯山友幸

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。55歳。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/isoyant/20180109/1515460490