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2018-04-20

持ち合い株の「縮減」明確化は株価に追い風 ガバナンス・コード改訂で資本効率は高まるか

| 09:17

日経ビジネスオンラインに4月20日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/041900075/

2015年の施行から3年を経て初めての改訂

 上場企業のあるべき姿を示す「コーポレートガバナンス・コード」の改訂案がまとまり、4月29日までを期限に「パブリック・コメント」の募集が行われている。意見を受けて改訂版が確定され、今年6月から施行される予定だ。最高経営責任者(CEO)の選解任プロセスの透明化や持ち合い株式の削減方針の明確化などを従来以上に強く求める内容で、日本企業のガバナンス体制の強化が進む見通しだ。国際的に見て生産性が低く、資本効率が悪い日本企業の経営改革が進むきっかけになるとして、海外の機関投資家なども注目している。

 ガバナンス・コードは2015年6月に施行されており、丸3年を経て初めての改訂となる。昨年来、金融庁に設置された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」で議論されてきた。

 改訂のポイントはいくつかあるが、企業経営者と機関投資家の「対話」の促進に重点が置かれているのが一つの特徴だ。長期にわたる企業の成長を求める機関投資家の声を経営者が聞くことを求めている。今回、コードの改訂にあわせて、「投資家と企業の対話ガイドライン」も公表された。

 改訂で拡充したのは、CEOの選解任について。「原則」自体はこれまでと変えていないものの、「補充原則」を大幅に強化している。「取締役会の役割・責務」の項目に以下の2つの補充原則が付け加えられた。

 「取締役会は、CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである」

 「取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである」

 これまで多くの日本企業では、現職の社長や会長が後継社長(CEO)の選任権を実質的に握ってきた。次の社長や取締役の人事権を握ることで全社を統括できると考えている経営者は今も少なくない。一方で、こうした慣行が「社長絶対」の風土を生み、時としてトップの暴走を許してきた。また、取締役同士の建設的な経営論議を封じてきたとされている。

株式持ち合い」を巡る原則を見直す

 改訂案では、「CEOの選解任の基準は未だ整備が進んでおらず、後継者計画についても、取締役会による十分な監督が行われている企業は少数にとどまっている状況にある」と指摘している。次のCEOを選ぶためのルールを確立していく必要性を訴えている。

 最近では次のCEOを選ぶために「指名委員会」を設置する例が増えているが、現CEOや取締役会に答申する「任意」の組織が多く、独立社外取締役が過半を占める委員会の設置を求める会社法に則った正式な「指名委員会等設置会社」は圧倒的に少ない。改訂案では任意の指名委員会を否定はしていないものの、「選解任プロセスの独立性・客観性を強化する」ことが必要だとしている。

 付随して、経営者の報酬に関する「補充原則」もより突っ込んだ表現に変えられた。「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである」という一文が加えられている。

 日本企業の経営者報酬は近年、大幅に上昇しており、年間1億円以上の報酬を得ているケースも増えている。一方で、報酬の決定方式の透明性が乏しい例も少なくない。欧米では高額報酬への批判が高まっていることもあり、経営陣の報酬について株主総会で拘束力のない賛否投票を行うなど新しい取り組みが進んでいる。また、在任中の不祥事が退任後に発覚した場合など、過去に遡って報酬の返還を求める規定なども導入されつつある。

 日本ではこうした議論がほとんど行われておらず、今回のコード改訂でも突っ込んだ原則での記載は見送られている。

 今回、コードの「原則」が大きく見直されたのは「政策保有株」に関する原則。企業同士や企業と金融機関の間で相互に株式を保有し合う「株式持ち合い」を巡る原則だ。

 株式持ち合いは親密な会社が「安定株主」となることで、実質的に経営陣に「白紙委任」を与えることになり、外部の株主による経営チェックを弱めていると長年批判されてきた。一方で経済界からは、日本企業が長期志向で安定的な経営を遂行するための重要な慣行だとして規制の強化には強く反発してきた経緯がある。ちなみに米国では銀行が企業の株式を政策目的として保有することは原則として禁じられている。

 ガバナンス・コードではこれまで、「政策保有に関する方針を開示すべき」としてきたが、今回の改定ではこれを「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべき」と変えている。株式持ち合いの「縮減」を目指すべきだと明示しているわけだ。

 さらに、「そのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである」としていたものを大きく変更。「保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」と踏み込んだ。

 持ち合い株が資本コストに見合っているか、と問われると、なかなかそれを立証するのが難しくなる。企業経営者からすれば、そこまで理屈立てて説明しなければ許されないのなら、株式持ち合いは止めようという判断になるだろう。

株式持ち合い」を巡る原則を見直す

 改訂案では、「CEOの選解任の基準は未だ整備が進んでおらず、後継者計画についても、取締役会による十分な監督が行われている企業は少数にとどまっている状況にある」と指摘している。次のCEOを選ぶためのルールを確立していく必要性を訴えている。

 最近では次のCEOを選ぶために「指名委員会」を設置する例が増えているが、現CEOや取締役会に答申する「任意」の組織が多く、独立社外取締役が過半を占める委員会の設置を求める会社法に則った正式な「指名委員会等設置会社」は圧倒的に少ない。改訂案では任意の指名委員会を否定はしていないものの、「選解任プロセスの独立性・客観性を強化する」ことが必要だとしている。

 付随して、経営者の報酬に関する「補充原則」もより突っ込んだ表現に変えられた。「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである」という一文が加えられている。

 日本企業の経営者報酬は近年、大幅に上昇しており、年間1億円以上の報酬を得ているケースも増えている。一方で、報酬の決定方式の透明性が乏しい例も少なくない。欧米では高額報酬への批判が高まっていることもあり、経営陣の報酬について株主総会で拘束力のない賛否投票を行うなど新しい取り組みが進んでいる。また、在任中の不祥事が退任後に発覚した場合など、過去に遡って報酬の返還を求める規定なども導入されつつある。

 日本ではこうした議論がほとんど行われておらず、今回のコード改訂でも突っ込んだ原則での記載は見送られている。

 今回、コードの「原則」が大きく見直されたのは「政策保有株」に関する原則。企業同士や企業と金融機関の間で相互に株式を保有し合う「株式持ち合い」を巡る原則だ。

 株式持ち合いは親密な会社が「安定株主」となることで、実質的に経営陣に「白紙委任」を与えることになり、外部の株主による経営チェックを弱めていると長年批判されてきた。一方で経済界からは、日本企業が長期志向で安定的な経営を遂行するための重要な慣行だとして規制の強化には強く反発してきた経緯がある。ちなみに米国では銀行が企業の株式を政策目的として保有することは原則として禁じられている。

 ガバナンス・コードではこれまで、「政策保有に関する方針を開示すべき」としてきたが、今回の改定ではこれを「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべき」と変えている。株式持ち合いの「縮減」を目指すべきだと明示しているわけだ。

 さらに、「そのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである」としていたものを大きく変更。「保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」と踏み込んだ。

 持ち合い株が資本コストに見合っているか、と問われると、なかなかそれを立証するのが難しくなる。企業経営者からすれば、そこまで理屈立てて説明しなければ許されないのなら、株式持ち合いは止めようという判断になるだろう。

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