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2018-07-05

ついに、日本でも「株主が社長をクビにする」時代がやってきた 6月株主総会で相次いだ再任拒否

| 09:25

現代ビジネスに7月5日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56416

2位の大株主投資ファンドの反対で

ついに日本でも、社長が株主によって解任される時代がやってきた。6月27日に開かれた名証セントレックス上場の「21LADY」の株主総会で、藤井道子社長が過半数の賛成票を得られず、取締役に選ばれなかったのである。

同社が総会後に東海財務局に提出した臨時報告書によると、会社側が出した取締役4人の選任議案で、藤井氏は43.50%しか賛成票を得られず再任されなかった。他の3人は97%あまりの賛成票を得て選任された。

21LADYはシュークリームの「洋菓子のヒロタ」や北欧輸入雑貨販売の「イルムスジャパン」を運営する。藤井氏は2000年に21LADYを創業して以来、社長を続け、現在も33.4%を握る筆頭株主

ところが、長年にわたる業績低迷を理由に2位の大株主で、16.8%を保有する投資ファンド「サイアムライジングインベストメント」が再任反対に回った。サイアムは今回の総会に、株主提案として3人の社外取締役を選任する議案を提出。

この3氏については賛成55.59%で選任された。この結果、会社側提案の3人と株主提案の社外取締役3人が取締役会を構成することになった。

株主総会で異例の否決

もう1社、株主提案の一部が可決され、社長が再任されなかったケースが出た。東証1部上場の保育事業大手JPホールディングス(HD)が6月28日に名古屋市で開いた定時株主総会でのことだ。会社側提案の荻田和宏社長を再任する取締役選任案が否決されたのである。

JPHDの臨時報告書によると、会社側提案の取締役選任議案8人のうち、可決されたのは2人だけで、社長だった荻田和宏氏は議決権の36.06%しか賛成票を得られなかった。

一方、株主が提案した取締役候補2人が63.56%、59.61%の賛成票を得て選任されたが、やはり株主提案として出された社外取締役3人の選任議案はいずれも否決された。

株主提案で取締役に選ばれた坂井徹氏は、JPHDの株式の27.41%を持つマザーケアジャパンの代表。

JPHDをめぐっては、創業者で元社長の山口洋氏と、荻田氏ら経営陣が対立し、この1年で2度も臨時株主総会が開かれるなど混乱が続いてきた。荻田氏の社長再任が否決されたことで、再び混迷の度合いを増す可能性もある。

荻田氏の後任社長には、再任された古川浩一郎取締役が総会後の取締役会で選ばれ、同日付で就任した。

きっかけは内紛だとはいえ、上場企業の社長の再任議案が株主総会で否決されるのは極めて異例だ。過去には2008年にアデランスホールディングス(現アデランス)の社長が米系投資ファンドの反対などで、再任を否決されたことがある。

反対票の中心、大手機関投資家

では、今回の21LADYやJPHDの再任拒否劇は、ごく例外的な事例なのかというと、そうではない。

6月末に終わった3月決算企業の株主総会では、過去最多の42社で株主から議案が提出された。いわゆる株主提案で、会社側提案に反対する内容がほとんどだ。JPHDの株主提案の一部を除いてほとんどが否決されたものの、株主提案に賛成票を投じる株主も増えている。

さらに、会社側提案の役員選任議案でも、反対票が急速に増える「異変」が起きた。特に、不祥事を起こした企業のトップなどには、海外だけでなく日本国内の大手機関投資家が反対票を投じたとみられている。

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが破綻し、投資資金を融資する際に行員が審査書類の改ざんを認識していたと問題視されたスルガ銀行。取締役選任議案で岡野光喜会長への賛成は71.30%にとどまった。11人の取締役の中で最低の得票率だった。

他にも不祥事が発覚したSUBARUや三菱マテリアルなどで、トップの選任議案への賛成率が大きく低下した。

こうした企業の不祥事に対して、責任者である会長や社長への再任に反対する票が増えている背景には、大手機関投資家が反対票を投じるようになっていることが大きい。

もはや「株式持ち合い」の時代ではない

2014年に導入されたスチュワードシップ・コードによって、機関投資家はアセット・オーナーの利益を最大化するような議決権行使を行うことが求められるようになった。

また、2017年からは、個別の議案への賛否を全て開示するようになったことから、不祥事企業やROE(自己資本利益率)が低い企業のトップの再任案に反対するケースが増えている。

さすがに大手企業の間では再任が拒否される事例は出ていないが、だからと言って経営者は安閑とはしていられなくなっている。

というのもこれまでは金融機関や大手企業が取引先の株式を「政策保有」し、会社側提案に無条件に賛成票を送るケースが多かった。いわゆる「持ち合い株」によって経営者が支えられてきたのだ。

それが前述のように機関投資家が必ずしも「白紙委任」してくれなくなったうえ、政策保有自体も減少傾向にある。今年6月に発効した上場企業のあるべき姿を示すコーポレートガバナンス・コードでも政策保有株の「削減」方針を掲げるよう求められている。

今後、是々非々で議決権を行使する機関投資家や個人投資家、外国人投資家の割合が増えれば、会社側提案でも否決される可能性が出てこないとは限らない。

かつて米国でコーポレートガバナンスが重視され、株主を向いた経営を行うようになった大きなきっかけは、大手自動車メーカーの社長が年金基金など機関投資家の反対によって解任されたことにあるとされる。

株主による社長の解任劇が今後、日本の大企業でも現実味を帯びてくることになりそうだ。

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