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2018-07-11

「年俸1億円以上」の会社役員がついに500人突破した背景 日本でも高額報酬が当たり前の時代に

| 12:07

現代ビジネスに7月11日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56502

外国人が高額化を牽引

サラリーマン社長でも1億円以上の高額報酬が得られる時代に日本もようやく変わってきたようだ。

東京商工リサーチが3月決算企業の有価証券報告書から抽出して集計した「報酬1億円以上」の役員は、240社538人と初めて500人を突破した。前年は223社466人だったので、前年を大幅に上回ったことになる。

集計対象は2413社なので、ちょうど1割の企業で1億円の役員が存在することになる。

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かつては、創業社長や創業一族の役員、外国人経営者などが高額の報酬を得るケースがほとんどだったのが、ここへきて業績好調な企業では経営陣は1億円超えが当たり前になってきた。欧米に比べて日本の経営者の報酬は大幅に低いという、これまでの常識が大きく変わってきたことを示している。

2018年3月期の役員報酬額でトップだったのは、ソニー平井一夫前社長の27億1300万円。ソニーの業績を立て直した立役者で、報酬は前の年度の9億1400万円から大幅にアップした。今年の株主総会で会長に退いた。

ソニー有価証券報告書によると、平井氏の基本報酬は2億4400万円、これに業績連動報酬として6億4700万円、株式退職金として11億8200万円が支給された。さらにストックオプションが20万株、譲渡制限付き株式が5万株付与された。

後任の社長になった吉田憲一郎氏の前年度報酬も8億9800万円と多額。基本報酬は8000万円だが、これに業績連動報酬が3億5800万円加わった。さらにストックオプション14万株、譲渡制限付き株式4万株が付与されている。

東京商工リサーチによると、外国人はベスト10に5人と半数を占めた。そのうち3人がソフトバンクグループだった。ロナルド・フィッシャー副会長が20億1500万円で2位にランクイン。3位にはマルセロ・クラウレ副社長COO(最高執行責任者)が13億8200万円で、4位にはラジーブ・ミスラ副社長が12億3400万円で入った。

5位は武田薬品工業のクルストフ・ウェバー社長で、12億1700万円と、前年度の10億4800万円から増加した。

このほか、外国人では8位に、トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長が10億2600万円で入った。ちなみに社長の豊田章男氏の年間報酬は3億8000万円だった。

日本人よりも外国人経営者に多額の報酬を支払うのは、海外事業などを任せる経営者に有能な人材を確保しようと思えば、高額の報酬が必要になるため。報酬の「相場」に大きな開きがあるわけだ。

もっとも、外国人だというだけで日本人よりも高額の報酬を支払うことには、日本人役員の間にも異論がある。結果的に日本人取締役の「相場」を引っ張り上げる効果を発揮していると言えそうだ。

退職金を除外しても10億円近い年俸を支払うケースが日本企業でも今後増えてくる可能性がある。

好業績なら年俸1億円は当たり前

そうした取締役報酬の「相場」が高騰するにつれ、業績好調企業のトップなら1億円は当たり前といったムードが広がって来た。

三菱電機は執行役22人全員が1億円以上の報酬を得た。杉山武史・執行役社長以下の基本報酬は4200万円から3700万円だが、これに業績連動報酬として9900万円から8100万円が上乗せされている。

また、日立製作所も役員18人が1億円以上の報酬を得た。前年は7人だったので、大幅に増加したことになる。

また、ファナックと東京エレクトロンがそれぞれ10人、ソニー、大和ハウス工業、三菱UFJフィナンシャル・グループがそれぞれ9人、大和証券グループ本社、三井物産、LIXILグループ、日本精工がそれぞれ8人の「1億円役員」をだしている。

社長だけでなく、取締役や執行役といった役員になれば1億円以上の年俸を得られる会社が急速に増加しているわけだ。

業績を上げ、株価を上げていれば、堂々と高額報酬を得ても何ら恥じることはない、そうした感覚が着実に日本の企業経営者の間に根付きつつある。

さらに高報酬化は進む

取締役役員報酬1億円以上の開示は、内閣府令によって2010年3月期決算から有価証券報告書に開示することが義務付けられた。リーマンショック後に欧米で金融機関経営者の高額報酬が批判された流れから、国際的に報酬開示が進んだ。

日本も当初は「1億円以上ならばほとんど開示対象者がいない」という推定の下、当時の民主党政権下で開示に踏み切った。

開示する段階になってトップの報酬を開示対象から外すために1億円以下に引き下げる大手金融機関などが現われ、財界の一部からは開示制度を批判する声も上がった。横並び意識の強い産業界で、高額な報酬を得ていることが明らかになることを気にする経営者が多かったのである。

ところが、アベノミクスによって企業業績が大幅に改善したこともあり、2014年ごろから1億円超の報酬を支払う企業が増え始めた。

最近では、報酬を支払うルールを明確化し、ストックオプション株式報酬などの割合を増やす企業が増加。そうした業績連動の結果、1億円以上になる役員のケースも増えている。

コーポレートガバナンス・コードなどで報酬ルールを明示するよう求められたことで、かえって高額報酬を受け取りやすいムードができているともいえる。

役員報酬が高いことが明らかになれば、社員のインセンティブにつながるという考え方もある。また、新卒学生などに入社を決断させるひとつの「夢」になるという声も聞かれる。サラリーマン社長でもうちの会社なら年俸1億円も夢じゃない、というのが入社説明会の売り文句になるというのである。

こうした高額報酬化の流れは今後も続くことになりそうだ。

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