自民党総裁選にも影響…?懸案の「国内消費」に底入れの兆し 百貨店売り上げ9カ月ぶりの高い伸び

現代ビジネスに7月26日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56712

遂に「お父さんの背広」にお金が回る
安倍晋三首相が言い続けている「経済好循環」の最後の試金石は「国内消費」である。2014年4月の消費増税で失速して以来、低迷が続いてきたが、ようやく明るさが見えた。

日本百貨店協会が7月24日に発表した6月の全国百貨店売上高概況によると、店舗調整後の総売上高が前年同月比3.1%増と大幅に増加した。2017年9月の4.4%増以来の高い伸びとなった。

昨年12月から前年同月比マイナスが続き、3月4月はプラスとなったものの、その率は0.1%増、0.7%増とわずかだった。5月には再びマイナス2.0%と失速していただけに、6月の大幅増は「転換点」を期待させるに十分だ。

同協会の発表によると、「6月下旬にスタートしたクリアランスの前倒し効果や気温上昇による季節需要の高まり、土曜日1日増などのプラス与件が重な」ったことが要因といい、主力の衣料品が7カ月ぶりに前年同月比でプラスになった。

百貨店の消費を見るうえで、「先行指標」の役割を果たすのが、ハンドバッグや靴などの「身の回り品」と、時計や宝石などの「美術・宝飾・貴金属」の推移。

前者は景気に敏感な女性の「財布の紐」の硬さ具合を示す指標と言えるが、これが今年1月から6カ月連続でプラスになっている。後者は株価の上昇など「資産効果」が表れる部門と言え、こちらは2017年4月以降、1年2カ月連続でプラスとなった。

それでも全体がなかなかプラスにならなかったのは主力の衣料品や食料品などがマイナスを続けてきたからだ。

それが、である。6月は衣料品が4.3%増と高い伸びになったのである。これは消費税導入による「反動減の反動」があった2015年4月の9.9%増以来の高い伸びで、久しぶりに洋服売り場が賑わったのだ。

中でも注目すべきは「紳士服・用品」の伸びが5.5%増と高かったことで、婦人服の4.7%増や子供服の5.1%よりも高かった。妻の小物や子供服から始まる消費が、お父さんの背広にたどり着くのは最後の最後とも言われるが、遂にその「お父さんの背広」におカネが回ってきたようなのだ。

可処分所得の減少止まる
これは、もしかすると、「賃上げ」の効果がジワリと消費ににじみ出てきたのかもしれない。安倍首相は「経済の好循環」を掲げて、アベノミクスによる円安で企業業績が改善した分を、賃上げに回すよう企業に繰り返し要望してきた。今年の春闘では「3%の賃上げ」を安倍首相自ら財界人に求めてきた。

その結果、5年連続でベースアップが実現。ボーナスを含めた年収ベースで「3%の賃上げ」が実現する企業もかなりの比率にのぼった。夏のボーナスも前年に比べて増えた企業がかなりあったとみられる。

5年連続のベアに加え、ボーナスも増えたことで、なかなか実感が湧かなかった「手取りの増加」を徐々に感じるようになり、それが「お父さんの背広」の購買に向かった、ということかもしれない。だとすると、いよいよ経済循環が回り始め、消費が底入れする可能性もある。

「賃上げ」以外にも消費にプラスに働いている可能性のあるものがある。厚生年金保険料負担が頭打ちになったことだ。

実は、厚生年金の保険料率は2005年から毎年9月に引き上げられることが決まっていて、2004年9月に13.58%(半分は会社負担)だった保険料率は2017年9月には18.3%になった。

毎年厚生年金保険料が上昇し、手取りが目減りしていたのだが、それが昨年9月で、法律で決めた目標に達したのだ。つまり、可処分所得の減少が止まったのである。

給料が増え、差し引かれる厚生年金保険料の増加も止まれば、着実に「手取り」は増える。いよいよ消費が底入れする環境が整ってきたというわけだ。

このまま国内消費が伸び続ければ
百貨店の売り上げは訪日外国人による「爆買い」に支えられているのではないか、という疑問を持つ人も多いだろう。確かに、外国人消費の効果は小さくない。

6月に百貨店で免税手続きをして購入された物品の金額は281億5000万円。高水準は続いているものの、ピークだった今年4月の316億1000万円には届いていない。

6月の百貨店売上高総額は4869億円で、ここから免税手続き額の281億5000万円を引いた「実質国内消費」を1年前の6月と比べると、1.1%の増加になる。

実はこの「実質国内消費」がプラスになったのは、この2年間で4回目。直近は昨年11月の0.6%増で、過去3回はすべて1%未満の伸びだった。この数字を見る限り、いよいよ国内消費に火がつき始めた、と期待できそうだ。

焦点は7月もこの「消費好調」が続き、底入れが鮮明になるかどうかだ。特にインバウンド消費分を除いた「国内消費」がプラスを続けるかどうかが最大のポイントだ。

7月は西日本を中心に豪雨災害が発生、その後、全国的に記録的な猛暑が続いた。一般に「夏の暑さは消費にプラス」と言われるが、ここまで暑さが異常となると、百貨店への出足にプラスかどうかは分からない。

現在も、猛烈な人手不足が続いており、雇用環境は悪くない。就業者数も雇用者数も過去最高を更新している一方で、有効求人倍率も上昇を続け、完全失業率は2.2%にまで低下した。

株価は国際情勢に翻弄されているものの、企業収益の改善と共に総じて堅調な動きをしている。

「経済好循環」を言い続けてきた安倍首相にとって、最後で最大の頭痛の種が「消費」であるだけに、消費の底入れが実現すれば、向かうところ敵なしだろう。ここで消費に力強さが出てくれば、秋の自民党総裁選でも大いに安倍氏の追い風になるに違いない。