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2018-09-14

女性の「就業率」が過去最高の69.9%に 次の焦点は「定年」を過ぎても働く女性

| 14:07

日経ビジネスオンラインに9月14日にアップされた『働き方の未来』の原稿です。オリジナルページ→https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/091300076/

女性の就業者数は6年弱で303万人増加

 働く女性の割合が過去最高になった。総務省が8月31日に発表した7月の労働力調査によると、15歳から64歳の女性の「就業率」が69.9%と前年同月比2.1ポイント上昇、過去最高となった。

 企業に雇われている女性の「雇用者」が86万人(3.3%増)も増えたことが大きい。アルバイトが20万人増と9.3%も増えたほか、パートが21万人(2.4%)増えるなど、引き続き「非正規」雇用が増加した。一方で、正規雇用も45万人(4.0%)増えたことが目を引いた。深刻な人手不足に対応して企業が積極的に女性雇用に動いているほか、従来のパートなどから正社員雇用へと切り替えている様子が浮かび上がった。

 女性の就業率は2007年5月に初めて60%を超えたが、その後は2012年ごろまでほぼ横ばいで、第2次安倍晋三内閣が発足した2012年12月は60.9%だった。その後、安倍首相が「女性活躍の推進」を政策の1つの柱に掲げたこともあり、女性の就業率はその後、急ピッチで上昇した。

 2013年9月に63%台、2014年9月に64%台、2015年6月に65%台、2016年6月に66%台、2017年5月に67%台とほぼ1年ごとに1ポイント上昇。今年3月には69%台に乗せた。冒頭で述べたように7月は69.9%まで上昇しており、70%の大台に乗せるのは時間の問題だ。

 安倍首相が掲げてきた「女性活躍の推進」はまがりなりにも成果を挙げているわけだ。就業者数は第2次安倍内閣発足時の2012年12月に6240万人だったものが、この7月には6660万人と、420万人増加したが、そのうち303万人が女性である。

 国が閣僚として「男女共同参画担当相」を置くようになって久しいが、当初は官房長官の兼務だったものを、独立した大臣として任命したのは2005年の第3次小泉改造内閣が最初だった。これを引き継いで、第1次安倍内閣では高市早苗氏、改造内閣では上川陽子氏を担当相にあてた。それ以降、中山恭子氏と小渕優子氏が大臣を務めた。

 2009年に発足した民主党政権でも「男女共同参画担当相」は引き続き置かれたが、3年余りの間に8人の大臣が交代するなど、「軽視」されているようにみえた。

女性活躍は経済的に「プラス」

 それが大きく変わったのが第2次以降の安倍内閣である。政権が発足すると安倍首相は、まっ先に「女性力活用」を打ち出す。しかも、安倍首相は女性の活躍を「社会問題」として捉えるのではなく、「経済問題」として捉えていると当初から発言している。つまり、「男女同権」といった旧来の権利意識から女性活躍を訴えるのではなく、女性が活躍することが経済的にプラスになる、という「実利」を訴えたのだ。

 さすがにその後、女性の「活用」という露骨な発言は止め、「女性活躍推進」という言葉がもっぱら使われるようになった。だが、人口減少が鮮明になっていく中で、女性を「労働力」として「活用」することに着目したのは正しかった。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少し始め、今年8月1日現在の概算値は1億2649万人となっているので、すでに159万人も減少している。女性の就業率が上昇しなかったならば、今以上の人手不足になっていたのは間違いない。

 安倍内閣は女性活躍を推進するための施策として、産休・育休制度の整備や保育所の増設に取り組んだ。働く女性が増えたのと同時に都市部を中心に保育所不足が顕在化、待機児童問題がクローズアップされた。

 2016年には「保育園落ちた日本死ね!!!」と題する匿名ブログが話題になり、待機児童問題解消に向けて行政を突き動かしていくことになる。

 厚生労働省のまとめによると、2015年に253万人だった保育所等の定員は、2018年には280万人となり、3年で1割以上増えた。これによって待機児童は2016年4月の2万3553人から2018年4月は1万9895人に減少した。

 女性の就業者の増加は、結婚して出産したら仕事をいったん辞めるという慣行が減り、産休や育休を使って、仕事を続けるという選択肢が広がったことも大きい。年齢別の就業率をグラフにした場合、出産や育児の期間は退職するため、30歳くらいから40歳くらいまで就業率が下がる「M字カーブ」が問題視されてきた。それがここへきて「M字」が「台形」に近くなり、「M字カーブ」問題はかなり解消されつつある。

 男女合わせた就業者数も雇用者数も過去最高を更新し続けている。にもかかわらず有効求人倍率は7月で1.63倍にまで上昇している。1974年1月に付けた1.64倍以来44年ぶりの高水準だ。

 嘱託社員などとして働いている現在69歳から71歳のいわゆる「団塊の世代」が今後、本格的に労働市場から退場していくことになれば、人手不足はいよいよ本格化する。もちろん人口減少も止まらないので若年層の労働力が増える見通しも立たない。

 政府は単純労働として受け入れを禁じてきた分野での外国人の雇用を可能とする新たな在留資格制度の導入を決め、秋の臨時国会法案を提出する運びだ。だが、外国人労働力が増えたとしても、人手不足がそれで解消されるわけではない。

パートから正社員への動きが加速

 今後、求められるのは、本当の意味での「女性活躍」だろう。これまで女性の労働はパートなど非正規が中心で、補助的な仕事が多かった。これを正社員化するなど、本気で戦力の主軸に据えていくことが必要になるだろう。

 男性就業者の78.3%が正規社員である一方で、女性の正規は44.5%に過ぎない。今後、パートから正社員への動きが一段と強まるに違いない。

 もうひとつ、男性と女性の就業者で大きな差があるのは、65歳以上の就業率だ。男性では65歳以上でも32.9%が働いているにもかかわらず、女性は17.2%に過ぎない。定年を過ぎても働く女性が今後は増えていくことになるだろう。長年仕事に携わって来たベテラン女性を企業もそうそう簡単には手離さなくなる。

 企業で働く女性が増えていくことで、日本で今最大の課題になっている「働き方」が劇的に変わっていく可能性もある。出産や育児で職場を離れる女性が減れば、管理職など重要なポストに就く女性も増える。ひと昔前は「男並み」に働かなければ出世するのは難しいと言われたが、今は、女性として女性社員のキャリアパスを切り拓く役割を担っている。つまり、女性が就業者の半分を占める時代が着々と迫る中で、女性の働き方を理解して組織改革していくことが企業にも求められているのだ。

 非効率な長時間労働など、日本の「男社会」の伝統とも言える働き方は、女性の進出によって確実に変わっていくだろう。それが、企業の生産性を上げるひとつの大きなきっかけになる可能性がある。業務のやり方を見直し、男女の関係なく効率的に働く仕組みはどうあるべきか。それを真剣に考えることが企業に求められるわけだ。

 女性に選ばれない企業は滅びることになるかもしれない。猛烈な人手不足によって、今後、日本企業は人材を採用できるかどうかで将来が大きく左右される時代になるだろう。その時、より「効率的な働き方」に敏感な女性に敬遠されるような企業では、存続すらできなくなるのではないか。

 女性がどの程度活躍しているかが、企業の「働きやすさ」や「生産性」に大きく関係していると言われて久しい。自社の女性社員の比率などを、経営者や人事担当者はもう一度、凝視してみることが必要だろう。

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