日本経済の回復基調に水を差す「ある気になるデータ」 株価の先行きを決める本当のところ

現代ビジネスに11月15日にアップされた原稿です。オリジナルページ→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58470

下期は失速予想
株価の軟調が続いている。米国の政治情勢などが株価乱高下の主因だが、中長期にわたって日本株が買われるかどうかはファンダメンタルズ(経済の基礎的要因)の良し悪しにかかっている。

なかでも重要なのが企業業績だ。日本企業(上場企業)は2017年3月期、2018年3月期と2期連続で過去最高益を更新してきたが、果たして2019年3月期はどうなるのか。

折り返し地点である9月中間決算がヤマ場を越えた。日本経済新聞の11月10日付けの報道によると、9日までに決算発表を終えた1346社の4-9月期の純利益は15兆6000億円と19%も増え、半期の利益としては過去最高を更新したという。

ところが、多くの企業が下期の減益を見込んでおり、2019年3月期通期の純利益は1%増とほぼ横ばいにとどまる見通しだという。中国経済の減速などが理由のようだ。

日本企業の経営者は業績見通しを慎重にみる傾向があり、「下期減益」という見方が本音なのか控えめなのか、現状ではまだ分からない。日経の記事でも触れているが、「今後、業績が上振れする可能性は残る」。

株価のトレンドが変わる
株価にとって今期の業績が最高益を3期連続で更新することになるのか、それとも失速するのかは大きな意味を持つ。

年末の日経平均株価をみると、2011年末の8455円を底に上昇を続け、2017年末は2万2764円を付けた。6年連続の上昇だった。これが今年2018年の年末にどうなるかが注目される。つまり、昨年末の2万2764円を上回ることができるのかどうかだ。

10月2日に2万4448円の年初来高値を付けた日経平均株価はその後、大きく下落し、11月13日現在は2万2000円を割り込んでいる。通信業界の料金引き下げによる業績悪化を見込んだ株価の下落なども響いている。

6年続いた株価上昇が、ここで7年ぶりの下落になった場合、大きなトレンドに変化が生じる。来年以降の日本経済の成長に陰りが出ると市場がみている証ともいえる。

企業業績の下期減益が現実味を帯びてくれば、株式市場はそれを嫌気し、株価の上昇トレンドが一気に変わる可能性が出て来る。

もちろん、企業の見通しが堅すぎて、現実には業績は大きく上振れするというのであれば、それが見え始めるにつれて株価は戻すだろう。そんな企業業績や景気の見方の分岐点に今、立っているわけだ。

消費も、設備投資も
実際、景気が失速しそうな状況証拠も数多い。まずは7月から9月にかけての消費が大きく落ち込んだこと。主因は西日本豪雨や台風、北海道胆振東部地震など自然災害が相次いだためだが、もともと国内の消費力は弱い。百貨店での売り上げも大きく落ち込んだ。

いわゆるインバウンド消費を支えてきた訪日外国人観光客が5年8カ月ぶりにマイナスになったことも不安材料だ。JNTO(日本政府観光局)の推計では9月の訪日外客数は216万人で前年同月に比べて5.3%も減った。

台風による高潮被害で関西国際空港が閉鎖されるなど、一時的な影響という見方もあるが、本当に一時的な現象なのか、長期的な増加トレンドに変化が生じているのかは、まだ見極めがつかない。

訪日外国人で最も多くの割合を占める中国からの観光客が今後、V字回復するのかどうか。中国の景気減速が言われているだけに注目すべきポイントだ。

増加が期待されている設備投資でも不安なデータが次々に飛び出している。

内閣府が11月8日に発表した9月の機械受注統計では民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)が前月比11.3%も減少した。減少率としては過去最大だという。

好調だった8月の反動という見方もあり、四半期ベースでは5期連続で増加していることから、あくまで「一時的な減少」という見方もあり、政府も景気判断を変えていない。

だが、さらに日本工作機械工業会が11月12日に発表した10月の工作機械受注額(速報値)でも、これまで増加が続いていたものが23カ月ぶりにマイナスになった。

一時的かどうかは別として、明らかに長期にわたって続いていた回復基調に変化を示すデータが相次いでいる。

そんな中で、株価が軟調になるのはある意味、当然のことだろう。決して米国の動向に影響されているだけではないと見た方が良さそうだ。

好調な雇用にも
一方で、雇用情勢は好調が続いている。就業者数、雇用者数ともに2013年1月以降、今年9月まで69カ月連続でプラスが続いている。有効求人倍率も上昇を続けており、雇用が一気にしぼむ懸念は今のところなさそうだ。

ただし、企業が先行きの業績悪化を「本気で」懸念し始めれば、人の採用にも変化が生まれる。今後、就業者数や雇用者数、有効求人倍率などに変化の兆しが出るかどうかが、日本のファンダメンタルズの変化を占うカギになるかもしれない。

好調だった雇用情勢に、仮に頭打ち感が出て来るようだと、景気の転換点を本格的に意識せざるを得なくなる。