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磯山友幸のブログ RSSフィード

2018-04-11

自民党が決めた「郵便局2万4000維持」の見過ごせない奇怪さ ほんとにそんなに必要ですか?

| 08:20

現代ビジネスに4月11日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55219

本当に消費税が理由?

自民党は4月9日、「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)などの合同委員会を開き、全国2万4000の郵便局を維持するための法案の骨子を決めた。

現在は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が、郵便局網を運営する日本郵便に業務委託料として負担金を支払っており、その額は合計1兆円にのぼる。郵便局は山間地や離党など過疎地にも存在し、不採算な局が少なくない。これを金融2社の委託料で補っている。

今回の法案では金融2社が第三者機関に「負担金」として納め、第三者機関が日本郵便に郵便局の維持管理費として交付するとしている。

民営化を進めている郵政会社間の取引に「第三者機関」を絡ませる理由について、業務委託料として金融2社が支払っている現在は、年間500億〜600億円の消費税が課せられているが、第三者機関に負担金として納めれば200億円程度で済むとし、消費税負担の軽減が目的だとしている。

メディア消費税の圧縮が目的だと報じているところもあるが、実際には民間企業の店舗業務委託費用を、第三者機関を通したからと言って「非課税」にするのは簡単ではない。同様に地方の不採算店を抱える宅配便会社などに比べて郵政が優位になってしまう懸念もある。

隠れた目的

だが、こうした「消費税」の圧縮が目的というのは目くらましではないか。

自民党が検討している「第三者機関」は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構のようだ。民営化する以前に預け入れられた定額貯金や積立貯金などの定期性郵便貯金を管理するための組織で、11兆円近い資金を持つ。

これらの貯金は依然として国の保証が残っているが、設定された満期と共に役割を終えていく運命にある。

これを郵便局維持の資金の受け皿にしようというのが隠れた目的ではないか。郵便局維持のために交付金を支給できるとなれば、この機構に金融2社から負担金を取るだけでなく、いずれ国からも予算を取ることを狙っているのではないか、と疑いたくなる。

自民党の前提とは

自民党の議論は、2万4000ある郵便局をそのまま維持することが大前提になっているようにみえる。人口減少が鮮明になる中で、2万4000の郵便局が本当に必要なのか、という議論もまったく欠如している。

これだけインターネットが発達する中で、金融窓口と職員を配置し続ける意味があるのか。民営化した以上、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険という「民間会社」が自分たちの採算に合うかどうかを考えたうえで、業務委託すべきではないのか。窓口業務が必要ならば、なぜ地域の金融機関に業務委託することを考えないのか。

自民党が何としても郵便局網を守ろうとする背景には、郵便局が「集票マシン」として機能し、郵便局長会が支援組織になってきたという歴史があるからかもしれない。だが、「ユニバーサルサービス」の維持を旗印に、郵便局に税金交付金を投入していく事に国民の理解は得られるのだろうか。

過疎が進む自治体の住民たちに間でも、何としても郵便局を残して欲しいという声は小さくなっている。過疎地では郵便局よりもコンビニエンスストアが欲しいという声が強くなっている。郵便局よりもサービス領域の広いコンビニによりニーズがあるのは当然だろう。

国会には、「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の改正案」として自民党を中心とする与党議員議員提出法案議員立法)として提出される見通しだ。おそらく消費税の節減が強調され、野党議員の多くは煙に巻かれるに違いない。

郵便局網の維持に、国が直接的に関与していくようになれば、郵政民営化は後退し、民間企業の経営を圧迫することになりかねない。

上場しても民営化ではない

もうひとつ、国会で議論になっている事がある。ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の撤廃だ。

ゆうちょ銀行は民営化され、株式上場したのだから、民間企業と同様、預金の限度額など無くてよいのではないか、というのが論拠だ。ゆうちょ銀行の経営者も当然の事ながら要望している。

もちろん、ゆうちょ銀行が本当に「民間銀行」並みになったのならその通りだろう。

たしかに、ゆうちょ銀行の株式政府は1株も保有していないが、筆頭株主で74%を持つ日本郵政の株式の56%はまだ国が保有している。つまり、ゆうちょ銀は今でも国の「孫会社」に当たるわけだ。

民間金融機関がそろって預金限度額の撤廃に反対するのも当然だろう。ゆうちょ銀行の民営化はまだまだ名ばかりで、郵便貯金は事実上、国に「保証」されているに等しい。

だが、政府が限度額の撤廃に動くのも、前段の郵便局網維持に連動している、とみてよさそうだ。ゆうちょ銀行の収益が上がれば、郵便局網維持のための負担金を増やすことができる。逆に、ゆうちょ銀行が儲からなくなれば、郵便局網の維持は難しくなる。

郵政民営化による日本郵政グループの発足から10年。そろそろ郵便局網の維持ありき、ではない郵便サービスのあり方について、本音の議論を始めるべきだろう。

2018-04-04

総務省が「ふるさと納税」に苛立ち、自治体に脅しをかける事情 全国の自治体に届いた1通の「通知」

| 08:22

現代ビジネスに4月4日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55125

これは体の良い脅しだ

総務省はよほど「ふるさと納税」の広がりが目障りなようだ。

4月1日付けで全国の自治体総務大臣名で1通の「通知」を出した。

ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」というもので、自治体が「返礼品」として送っている商品を「地元産品にしろ」というのが柱だが、そのほかにも細々と「指示」をしている。総務省は昨年4月にも返礼品を納税額の3割に抑えるよう「通知」している。

今回の通知では、ふるさと納税に関して自治体間の返礼品競争が過熱しているとしている。そのうえで、これまでも「良識ある対応」を自治体に「お願い」してきたが、一部の自治体が従わない点を問題視し、以下のように述べている。

ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付されているような状況が続けば、制度全体に対する国民の信頼を損なうほか、他の地方団体に対しても好ましくない影響を及ぼすことが懸念されます」

返礼品は自治体の裁量で内容を決めており、総務省に自粛を命ずる法的権限はない。通知にも「地方自治法245条の4(技術的な助言)に基づくものだと明記されている。

本来、強制力はないのだが、「総務省では、個別の地方団体における返礼品送付の見直し状況について、今後、随時把握する予定であることを申し添えます」と畳みかけるような文章が書かれている。体の良い脅しである。

そのうえで、以下のような“助言”が記されている。

「次に掲げるようなふるさと納税の趣旨に反するような返礼品は、換金の困難性、転売防止策の程度、地域への経済効果等の如何にかかわらず、送付しないようにすること。【ア】金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)、【イ】資産性の高いもの(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等)、【ウ】価格が高額のもの、(エ )寄附額に対する返礼品の調達価格の割合の高いもの」

呼んでお分かりの通り、「○○すること」という「命令口調」である。文章を読んでいると、総務省の「苛立ち」が伝わって来る。

さらに、返礼割合に関しては、

「社会通念に照らし良識の範囲内のものとし、少なくとも、返礼品として3割を超える返礼割合のものを送付している地方団体においては、速やかに3割以下とすること」

と昨年加えられた「ルール」の遵守を求めている。

自治体の創意工夫は無視

今回の通知について、野田聖子総務相は、「返礼品を送る場合には地場産品とすることが適切であることから、良識ある対応をお願いしております」と会見で述べた。

メディアでは「寄付を集めるため、佐賀県自治体北海道夕張メロンや、長野県自治体がフランス産シャンパンなど、地域と関係ない産品を扱うケースがあった」ことを総務省が「地域活性化を目指す制度本来の趣旨に反する」と問題視して通知を出すことになった、と報じられた。

今回の通知について、ふるさと納税に力を入れている自治体の間からは戸惑いの声が上がっている。何が「地場商品」かが分からないからだ。

日本の多くの商品が輸入品に依存している中で、純粋な「地場商品」となると案外難しい。その地域の牛肉でも、エサが米国産で、子牛は他県で育った場合など、様々だ。

また、魅力的な地場商品がないところは「ふるさと納税」を諦めよ、ということなのか。

そもそも返礼品には各自治体の様々な思いがある。

大手電機メーカーのパソコンを返礼品にした自治体は、工場が自治体内にあって、大きく税収に寄与している会社であることを考慮して、返礼品に採用した。

まさに地元経済に貢献しているのだが、総務省のルールでは「ご禁制品」となってしまう。

地方自治体では地元企業に対して様々な助成を行っているが、返礼品として採用することで、全国の納税者に評価されるものに税金流れるという利点がある。政治や行政が恣意的に助成先を決めるよりも、税金の使われ方としてはよほど透明だろう。

また、自治体ふるさと納税によって税収を増やすよう知恵を絞り、努力するようになったのもここ数年の大きな変化だ。

だが、総務省の事細かな“助言”は、そうした自治体の創意工夫に水を差すものだ。地方自治の本旨にも反する過剰な「通達行政」と言ってよいだろう。

総務省は何を嫌がっているのか

返礼品競争が過剰だ、という批判を耳にする読者も多いだろう。

総務省だけでなく、霞が関をあげての、反ふるさと納税キャンペーンに使われている。確かに行き過ぎの自治体もある。だが、それをことさら強調して、ふるさと納税を批判するのはなぜか。

総務省は地方交付税交付金の分配権を握っている。交付金自治体の財政状態によって決まるので、自主財源が少ない自治体総務省に逆らうことはできなかった。

総務省はそうした分配権を手に、県や市町村の幹部に出向したり、天下ることができた。つまり、総務省の権力の源泉なわけだ。

ふるさと納税では、納税者の「意思」によって納税先が変わる。つまり、総務省の権力の源泉が脅かされることになるわけだ。

2017年度の地方交付税交付金都道府県市町村を合わせて15兆3501億円。ふるさと納税の受け入れ額は2016年度で2844億円に過ぎない。

それでも総務省が危機感を募らせるのは、その伸びが大きいからだろう。2014年度に388億円だったものが、15年度に1652億円となった。2017年度は3000億円を大きく超える勢いだ。

ふるさと納税が急増しているのは、返礼品目当ての納税者が増えたからだろうか。その地域を応援する気持ちなど無く、物が欲しいから納税しているのか。

長年、「日本には寄付文化がない」と言われ続けてきた。ふるさと納税が大きく増えるきっかけになったのは東日本大震災。その後の熊本地震でも支援の納税が増えた。返礼品がない地域問題を解決するための純粋な寄付も着実に増えている。

多くの地方自治体の首長が異口同音に言うのは、初めは返礼品目当てだった人が、本当の自治体応援団になってくれている、という話だ。

しかも、自己負担2000円でふるさと納税できる上限を超えて寄付している人も少なくない。少しぐらい足が出ても返礼品がもらえれば得をする、ということもあるだろう。それだけでなく、地域を本当に応援しようと思って、上限おかまいなしに寄付をする人もいる。

ファンドレイジング助言会社ファンドレックスのイノウエヨシオさんによると、ふるさと納税の寄付金総額は、寄付金控除額を大きく上回っているという。

例えば、2016年度課税ふるさと納税額が1655億円だったのに対して、寄付金控除額は999億円で、還付率は60%に過ぎないという。

総務省はこうした数字を因果づけて公表しようとしないが、明らかにふるさと納税が地域に対する寄付の呼び水となり、地方自治体に税収増をもたらしているのだ。

メディアをみていれば、ふるさと納税によって大都市自治体の税収が減って大変だ、という記事に多く出くわす。

一方で、地方の自主財源が増えたことで、どれだけ自治体の自立心が高まったか、という記事は数少ない。ふるさと納税の記事を書いている記者の多くが総務省詰めだからだろう。

大都市自治体は、黙っていても入って来る地方税収が減ったことを嘆くのではなく、いかに住民が支払う地方税が重要な施策に使われているか、もっと知ってもらう努力をすべきだろう。

自治体間の競争をさせたくない総務省の通達に、努力をしている自治体は強く反発するに違いない。国民はどちらを応援すべきなのか。霞が関のキャンペーンに目を曇らせてはいけない。

2018-03-28

大阪を中心に全国の地価が「続々上昇中」一体なぜ? いつまで続くのか

| 08:51

現代ビジネスに3月28日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55033

大阪が上昇率トップ

地価の上昇が全国に広がってきた。

国土交通省が3月27日に発表した2018年1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均で0.7%上昇した。地価上昇は3年連続で、2016年0.1%→17年0.4%→18年0.7%と上昇率も年々大きくなっている。地価上昇が定着してきたことを示している。

全国平均では商業地の上昇率が高く1.9%の上昇。住宅地は0.3%の上昇と10年ぶりに上昇に転じた。

大都市圏の地価上昇が地方へと広がり始めた。地方圏全体の商業地は0.5%上昇し、26年ぶりに上昇に転じた。

地価上昇をけん引しているのは引き続き、三大都市圏の商業地の上昇だ。東京・名古屋・大阪とも5年連続の上昇となった。

中でも上昇率が最も高かったのは大阪圏の商業地で、4.7%の上昇。2014年1.4%→15年1.5%→16年3.3%→17年4.1%→18年4.7%と上昇率が拡大。地価上昇は勢いを増しつつある。

大阪の地価が上昇している背景には、訪日外国人の急増に伴う「インバウンド消費」の増加がありそう。

昨年は特に大阪圏を訪れる外国人が多く、大阪の百貨店売り上げも全国の中で突出して伸びた。小売店の販売環境の好転で店舗用地のニーズが高まったほか、外国人観光客を狙ったホテル用地の取得など需要が増えた。

大阪市中央区道頓堀「づぼらや」の公示地価は1平方メートルあたり510万円と27.5%も上昇。大都市圏の商業地で上昇率がトップになった。

また、京都市南区東九条の「KKDビル」が210万円と27.3%上昇、名古屋では中村区椿町の「ミタニビル」が488万円と25.1%上昇した。商業地も住宅地も「上昇率上位」ベスト10には東京都の土地が一件も入っていない。

地価全国1位の「山野楽器銀座本店」は5550万円と、バブル以降の過去最高を更新し続けているものの、銀座での再開発事業が一巡したこともあり、上昇率は昨年の26%から9.9%へ、大幅に鈍化した。

先行して上昇してきた東京圏の地価は一服し始め、大阪や名古屋などが活気付いている。

地価は再開発が行われると上昇するが、東京都心では再開発の余地がだんだん乏しくなっているのに対して、名古屋や京都などはまだホテル新設の計画などが目白押しだ。

また、地方圏でも観光客の増加に対応したホテル建設などが増えつつあり、地価の上昇に結びついている。

訪日観光客ブームが牽引

問題は果たして今後も地価の上昇が続くのかである。

現在の地価の上昇を下支えしている要因にマイナス金利政策など大幅な金融緩和の効果があることは間違いない。店舗やホテル建設のための資金調達が容易になっていることで、投資が生まれている。

国土交通省も発表資料で「良好な資金調達環境の下、不動産需要は旺盛であり、地価は総じて堅調に推移」しているとしている。これが一気に変調をきたすとは考え難い。

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2017年1年間に日本を訪れた外国人は前年比19.3%増の2869万人と過去最多を記録したが、この勢いは衰えていない。

同局が3月20日に発表した2月の訪日外客数は250万9000人で23.3%も増加、2月としては過去最高を更新した。中華圏の旧正月が2月になったことで、訪日客が大きく増えた面もあるが、日本旅行ブームは続いている。

また、日本百貨店協会が発表している全国百貨店で外国人が免税手続きをした売上高も増加を続けている。日本での買い物に多くのおカネを使う中国からの訪日客が増えている。

一時落ち込んでいた顧客単価が上昇しているのも特長で、日本の消費を支える大きな要素になっている。

訪日外国人客は圧倒的にリピーターが増えており、京都などの主要観光地から全国の観光地へと訪問先が広がりつつある。

こうしたことも地方中核都市の景気を浮上させつつある。商業施設の建設やホテルなどの新設計画もあり、地価上昇に結びついている。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに外国人観光客は増えそうで、こうした需要を狙ったホテル建設などはギリギリまで続くとみられる。

オリンピックを機に増える観光客がオリンピック後に一気にしぼむとは考えにくく、商業地の地価は底堅いという見方も強い。

一方で、住宅地の地価上昇が今後も続くかどうかは予断を許さない。少子高齢化による需要の減少があるうえ、都心部の開発による高層マンションの建設などで、より便利な都心に住居を移す動きが続きそう。

そうなると都心の一等地の地価は上昇するものの、周辺の住宅地はなかなか上昇しないということになりかねない。

安倍政権の命運がカギ握る

地価を占ううえで、現在のアベノミクスによる大胆な金融緩和政策が続くかどうかが、大きな要素になりそうだ。

物価が徐々に上昇し始めれば、金融引き締めに動き出す可能性もあり、そうなると不動産販売にはマイナスに働く。

また、現在国会で問題になっている森友学園を巡る決裁文書の書き換えの余波で、安倍晋三内閣が仮に倒れるようなことになれば、アベノミクス自体が否定され、金融緩和がむしろ引き締め策に変わることになりかねない。

そうなれば、せっかく明るさが見えている地価にも大きな影響を与えることになる。

マイナス金利など金融緩和に反対する識者の間からは、金融緩和が地価の上昇を招きバブルを生んでいるという声も聞かれる。住宅地価格で見た場合、バブル期のピークの半分以下の水準で、まだまだ「バブル」を疑う価格水準ではないのだが、アベノミクスに潜在的に反対する専門家は少なくない。

それだけに安倍内閣がグラつくようなことがあれば、アベノミクスが否定され、再び円高・デフレ経済に舞い戻る可能性がある。安倍政権の今後が、地価の先行きにも影響を与えそうだ。

2018-03-22

「内閣人事局こそが忖度の元凶」という指摘はあまりにお門違いだ 官僚の論理に乗ってはいけない

| 08:31

現代ビジネスに3月21日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54940

前代未聞の不正だが…

森友学園への国有地売却を巡って公文書が事後に改ざんされていた問題は、なぜ財務省の幹部が法に触れかねないような前代未聞の不正を指示したのか、その動機の解明が焦点になっている。

首相官邸の政治家が改ざんを指示したのか、首相に近い官邸官僚の指示はあったのか。疑問は尽きないが、多くの国民は、最低でも官僚による「忖度」が働いた結果だという思いを抱いているに違いない。

『現代ビジネス』のコラム「朝日新聞『森友新疑惑』事実なら財務省解体、誤りなら朝日解体危機か」で元財務官僚の盒桐琉貉瓩蓮朝日新聞の「改ざん」報道に対して、もし本当ならば財務省は解体、もし誤報ならば朝日新聞が解体になるぐらい重大な問題だ、と指摘していた。

官僚だった高橋氏は、よもや後輩たちが決裁された公文書を書き換えるなどということをするはずがない、と信じ、朝日の報道を疑っていた様子が伺われる。他の官僚OBも異口同音に、いくら何でも法律に触れかねない公文書書き換えなど手を染めるはずはないと発言していた。

近畿財務局に書き換えを直接指示したとみられる佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での証人喚問が決まったが、どうやら与党は佐川氏の個人の罪に矮小化しようとしているようにみえる。佐川氏が自分の出世を考えて、忖度して文書の書き換えを指示した、という筋書きだ。

だが、もしそうだとしても、その忖度に応える形で、理財局長から国税庁長官に昇進させているので、官邸の政治家がまったく責任がない、という話にはならない。

内閣人事局批判は「お門違い」

そこで焦点になるのが内閣人事局である。第2次安倍晋三内閣が発足したのち、2014年5月に発足した。国家公務員の幹部職員600人の人事を一元的に行うための組織で、内閣官房の下に置かれた。

第1次安倍内閣の折、安倍首相が力を入れた公務員制度改革の目玉のひとつで、いわゆる「官邸主導体制」に不可欠のものとされた。それが、第2次安倍内閣で実現したわけだ。

それまで、各省庁の人事権は実質的に事務方トップである事務次官が握っていた。大臣が幹部人事に口をはさんで大騒動になったこともある。結果、「省益あって国益なし」と言われる「官僚主導体制」が脈々と続いていた。

人事を掌握する事務次官の権力は大きく、事務次官会議で承認されなければ閣議にかけることができない、という不文律も生まれた。その不文律を破ったのも、第1次安倍内閣時の安倍首相だった。

森友学園問題の「忖度」を巡って、この内閣人事局が問題だ、という声がとくに霞が関から湧き上がっている。人事を政治家が握っているから政治家に忖度するのだ、と言わんばかりである。

官僚は国民全体の奉仕者であって、特定の勢力への奉仕者ではない、としばしば官僚は口にする。だが、それはバカな政治家の言うことを聞くのではなく、優秀な官僚が国を動かす方がうまくいく、という「官僚主導体制」へのノスタルジーだろう。

政治家に任せるより、官僚に任せる方が不正が起きない、という論理は、一見正しいようにも見える。

だが、忘れてはいけない。政治家は国民の選挙によって交代させることが可能だが、官僚はクビにすることができないのだ。内閣人事局があると言っても、実際には降格人事はまずできないので、ポストが空かず、抜擢人事もできない。

内閣人事局長は発足当初、霞が関の大方の予想を裏切って、政治家の官房副長官が就いた。初代は加藤勝信・官房副長官(当時)、二代目は萩生田光一・副長官(当時)である。ところが、三代目には事務の官房副長官である杉田和博氏が昨年8月に就任している。

何と言うことはない。安倍内閣の人事権限は再び事務方に戻っているのだ。それでも、内閣人事局が問題だ、というのは、かつての「省益優先」官僚体制に戻せと言っているに等しい。

あくまで問題は「官僚」にある

いくら忖度だと言っても、不正を働いて国民を騙すような役所は絶対に許してはならない。麻生太郎財務相が徹底的に真相を究明するのは当然のことだ。盒桐琉貉瓩言うように、財務省を解体するぐらいの思い切った改革を打ち出すべきだ。

いくら忖度であろうが、不正を働けば自分自身も役所も大きなペナルティを被るという前例を作らなければ、同じことが繰り返される。

役所や官僚に対してどれだけ厳しい追及ができるかどうかを見ていれば、文書を改ざんさせるよう官邸が「空気」を作ったのか、どうかが見えてくる。甘い処分でごまかすならば、やはり「忖度」はあったのだ、ということを満天下に示すことになるだろう。

徹底した調査と厳しい処分の後には、政治家としての責任が問われることになる。財務大臣はもちろん、引責辞任は避けられない。内閣人事局で佐川氏を国税庁長官に据えた内閣官房副長官や官房長官の責任は重い。

内閣人事局がおかしいという批判は、官僚による為にする議論である。政治主導が悪だという国民がいるとすれば、天に唾する行為だろう。人事の失敗によって「忖度」するような官僚をはびこらせたのだとすれば、政治家が任命責任を負えばよい。

2018-03-14

「麻生大臣辞任」なら、アベノミクスと日本の株価はどうなるか もしも個人投資家が見放したなら…

| 21:32

現代ビジネスに3月14日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54850

このままでは終わらない

森友学園への国有地売却を巡る公文書記録の改竄問題が、安倍晋三内閣を根底から揺さぶっている。

財務省は3月12日に14の決裁文書の書き換えを認める調査結果を国会に報告。これを受けて記者会見した麻生太郎副総理兼財務相は、「行政文書について書き換えを行うのは極めて由々しきことで誠に遺憾。深くおわび申し上げる」と陳謝したものの、自身の進退について「考えていない」と述べ辞任を否定した。安倍首相も続投させる方針を示した。

もっとも、これは時間稼ぎに過ぎないのは誰の目にも明らかだ。野党側が激しく批判して財務相辞任を求めているのは当然として、自民党幹部や閣僚の間からも、真相の究明が終わった段階で麻生氏の辞任は不可避だとの声が上がっている。

12日の為替市場では麻生氏が辞任するのではないかとの見方から一時円高が進んだが、辞任否定で円安に戻す場面もあった。

いずれにせよ公文書である決裁文書の書き換えは国政の根本を揺さぶる大問題である。

別の官庁でトップを務めた官僚OBは「局長など幹部が指示して文書を書き換えるなどという事は信じがたい」と憤慨する。現役の経済官僚も「まさか、あそこまでやるとは、僕らの常識では考えられない」と肩を落とす。

しかも、国会論議で焦点になっていた“証拠”の文書を書き換えたとあっては、国会審議の根本を大きく揺るがす。「民主主義を危うくする」という批判の声が上がるのも当然である。

「改竄」が誰の指示によって行われたのか。政治家がどう関与したのか。あるいは官邸の官僚たちが「忖度」したのか。まだ明らかになっていない。

実際に文書を作成した近畿財務局の職員が自殺した事が明らかになっているが、その遺書には書き換えを命じられたという文言があるという報道もなされている。そうなると、到底個人の“犯罪”というわけにはいかず、財務省という組織ぐるみで「改ざん」が行われていたことになる。

公表された「改ざん」前の文書には、安倍昭恵夫人の名前が記されていたが、それが「書き換え」によって削除されていることも明らかになった。

野党は改ざん公表を前に国税庁長官を辞任した佐川宣寿・元理財局長や、安倍昭恵氏の国会での証人喚問を要求しており、安倍首相にも追及の手が伸びるのは必至だ。

個人投資家が安倍相場を見限るか

そうした事態に敏感に反応するとみられるのが株式市場だ。そうでなくても北朝鮮情勢やトランプ大統領の輸入関税導入など、世界的に株価を変動させる要因に満ちており、実際、株価は神経質な動きが続いている。

1月に2万4000円台に乗せた日経平均株価は3月13日現在で2万2000円を下回ったままだ。

市場はまだ、安倍内閣の崩壊リスクを織り込んでいない。だが、麻生財務相が辞任すれば、その先、安倍首相にも辞任を求める声が強まるのは必至だ。

日本経済の回復は、まがりなりにも安倍首相が先導したアベノミクスの効果だと世界的にみられている。安倍首相の辞任に至らなくても、森友スキャンダルによって働き方改革関連法案などの成立が先送りになれば、アベノミクスの先行きにも暗雲が漂うことになる。

株式市場で懸念されるのは、このところ買い姿勢を強めていた「個人」が、安倍内閣の動揺をきっかけに、再び売り越しに転じることだ。

日本取引所グループがまとめている月間の投資部門別売買状況によると、今年1月に10カ月ぶりに買い越した個人投資家は、2月には1兆2482億円の買い越しを記録した。

この間外国人は大きく売り越している。つまり2万4000円台に株価が駆け上がった原動力は、いつものように海外投資家ではなく、個人投資家だったのである。

雇用情勢が改善していることを背景に、今年の春闘では5年連続でベースアップが実現することが確実になっており、いよいよ「経済の好循環」が実現しつつある。

今回の公文書改竄は、こうした経済の好調ムードを一掃してしまうだけの破壊力を持っているだけに、個人投資家が「安倍相場」を見限る事になる可能性も十分にある。

アベノミクスは立ち消えか

ポスト安倍が見えないことも、安倍内閣崩壊のリスクを読みにくくしている。

アベノミクスを引き継ぐ政治家が自民党内にも見当たらないうえ、野党は反アベノミクスでほぼ固まっている。

万が一、安倍首相が政権を放り出した場合、これまでの金融緩和路線や改革路線がどうなるのか、まったく読めない。

かといって、「経済最優先」を掲げれば支持率が再び戻った過去と、今回のスキャンダルは大きく違う。

特定秘密保護法や安全保障関連法案は、政治スタンスの違いからの反対だったため、支持に回る人もいた。

だが、今回の改ざんスキャンダルは、結局は安倍首相や夫人の個人の「保身」のためだったのだろう、という政治家個人の資質の問題で、だれもこのスキャンダルを支持する人はいないだろう。

株式市場はまだ本格的な動揺をみせていないが、麻生財務相が辞任に追い込まれれば、大きく乱高下する場面もありそうだ。