Hatena::ブログ(Diary)

磯山友幸のブログ RSSフィード

2018-01-10

「新聞崩壊」はたった一年でこんなに進んでしまった このままでは経営維持できないレベルだ

| 09:06

現代ビジネスに1月10日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54095

この10年で約1000万部減

新聞の凋落が2017年も止まらなかった。日本新聞協会がまとめた2017年10月現在の新聞の発行部数合計(朝夕刊セットは1部と数える)は4212万8189部と、1年前に比べて115万部減少した。

2007年は5202万8671部だったので、10年で約1000万部減ったことになる。最大の発行部数を誇る読売新聞1紙がまるまる消えた計算になる。

新聞発行部数のピークは1997年の5376万5000部で、2000年以降は前年を上回ったことがなく、2008年あたりから減少率が大きくなっている。

まさにつるべ落としの状態で、2017年は2.7%減と、前年の2.2%減よりも減少率が大きくなり、下げ止まる気配はまったく見えない。

大手新聞社はどうやって発行部数の減少を補おうとしているのか。業界で切り札の1つと目されているのが「電子新聞」だ。形が「紙」から携帯端末やパソコンなどに変わるだけで、「新聞」自体は無くならない、というわけだ。

確かに欧米諸国の大手メディアはいち早く「電子化」を進めた。「ネットファースト」を掲げて紙の新聞が届くよりも早くネット上の電子版にニュースを掲載することも10年以上前から取り組んでいる。

2007年というのは初代「アイフォーン」が米国で発売された年。それまでのガラケー携帯電話)とは格段に情報伝達量が増え、新聞もその力を無視できなくなった。

日本の新聞発行部数の減少率が2008年以降大きくなったのと、スマートフォーンの普及はもちろん関連性がある。その後のタブレット端末の普及などもあり、新聞の電子化は必然的な流れになった。

欧米で「ネットファースト」が可能なわけ

欧米のメディアに詳しい米国在住の日本人ジャーナリストは、米国で「ネットファースト」が急速に進んだ理由を、こう解説する。

米国の新聞はもともと、 日本の新聞のような全国紙はほとんどなく、ローカル紙に近かった。国土が広く物理的に新聞を運べなかったことも大きい。だから、電子化することによって同じ国内の、これまで新聞が届いていなかった地域に読者を広げることができた。もともと紙の新聞を読んでいた人が電子版に移行するだけでなく、新規の読者を獲得するツールになったわけだ。だからこそ、新聞経営者もネット優先にシフトすることへの抵抗感がなかった」

電子化によって、それまでの紙時代よりも読者数を増やすことができた、というのだ。

電子新聞は紙に比べて一般的に購読料が安くなる、という問題を抱えている。単純に紙から電子版へのシフトが進めば、高い購読料が安い購読料に置き換わるだけで、新聞社の経営は窮地に陥る。欧米ではそれを新規読者の購読料で補うことができた、というわけだ。

もうひとつ、言葉が大きかった。英語の力である。英国のような国土が狭い国でもフィナンシャルタイムズ(FT)などが電子化にシフトできたのは、英語の情報であるために世界中に購読者を広げることが可能だった、というわけだ。

デジタル化すれば成り立たない

一方、日本の場合、読売新聞朝日新聞毎日新聞日本経済新聞産経新聞など大手新聞はほとんどが「全国紙」である。もともと紙の段階で全国津々浦々に自社の新聞を届ける体制を敷いてきた。それだけに、電子化した場合でも、新たな地域の購読者を獲得するという戦略が立ちにくい。

紙で新聞を読んでいる読者を、電子版に切り替えても、基本的に大きな増収効果は得られない。さらに、「ネットファースト」に踏み切った場合、既存「紙」読者の利益を損なうことにもなるわけだ。

もうひとつ大きいのが、広告収入だ。紙の新聞は、販売店を通じた購読料収入と紙面に掲載する広告料収入が二本柱で、新聞社によるがほぼ同額の規模になっている。紙の新聞の広告料は1ページの全面広告で定価は1000万円を超す。電子新聞にした場合、そんな高額の電子広告が取れるわけでは、もちろんない。

紙の新聞が減って電子版に読者が移り、紙の発行部数が減れば、高額の新聞広告料が取れなくなる。新聞社が長年、「押し紙」などで名目上の部数を維持してきた背景には、広告料の値崩れを防ぐ狙いがあった。

日本の新聞は「電子化」に活路を見出すことは、おそらくできないだろう。最大発行部数を誇る読売新聞電子化に冷淡な態度を取っているとされるのも、収益面で考えた場合の「紙」の重要性を十分に理解しているからだろう。

だからといって、「紙」にしがみついていても、じり貧になるのは目に見えている。何せ年間に100万部以上の購読が減っているのだ。

ジャーナリズムの拠り所はどこに

もはや伝統的な「新聞」は事業として成り立たないではないか、と新聞業界人の多くが感じ始めている。しかし、日本のジャーナリズムを担ってきた新聞が「消えて」しまってよいのだろうか。

前出の在米ジャーナリストは、「NPOしかないのでは」と語る。

アイフォーンの登場した2007年に米国ではもうひとつ誕生したものがある。非営利独立系の報道機関「プロパブリカ」だ。富豪が出資して新聞出身のジャーナリストが報道機関を立ち上げた。2010年にはピューリッツァー賞を受賞し、日本でも話題になった。

これまで日本の新聞社は多くの人材を育て、優秀なジャーナリストを輩出してきた。大手新聞社の経営が厳しくなるにつれ、そうした人材育成力などが格段に落ちている。

ジャーナリズムが消えて世の中が良くなるはずはない。そろそろ日本でもNPO型の報道機関が成長し、成功を収めてもいいのではないだろうか。

2017-12-27

歴史的な大惨事レベル「人材不足」今年はこんなにヒドかった 2018年は「人材争奪」の年になる

| 18:20

現代ビジネスに12月27日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53978

歴史的な人手不足

2017年は人手不足に始まり人手不足に終わる年だった。

厚生労働省が12月26日に発表した11月の有効求人倍率(パートを含む、季節調整値)は1.56倍と、1974年1月以来、43年10カ月ぶりの高水準となった。すでにバブル期の水準を上回り、高度経済成長期並みの求人難となっている。

夏以降一服して頭打ちかと思われた新規求人件数も11月は98万8605件と前月比2.4%増加した。新規の求人に対してどれだけ採用できたかを示す「対新規充足率」は14.2%。7人雇いたいという求人に対して1人だけが決まっているという計算になる。

この14.2%という数字も、比較できる2002年以降で最低である。この厚労省統計ハローワークを通じた求職求人の倍率だけで、最近増えているインターネットなどを使った民間サービスの求人は含まない。このため、実際には採用難はもっと深刻だという声も聞かれる。

この2年だけを見ても、2015年12月に247万人だった求人が、この11月には275万人に増えた。28万人も求人が増えたにもかかわらず、職を探している求職者は194万人から176万人と18万人減っている。

仕事を求める人が減った背景には、景気が良くなって失業者が減ったことや、少子化によって若年層の人口自体が減少したこと、女性で働く人が大幅に増えて、新規に就労する人が減ったことなどが考えられる。

なにせ11月の完全失業率総務省の調査によると2.7%で、24年ぶりの低さとなった。求人倍率の高さ、失業率の低さとも、歴史的な人手不足状態が出現していると言える。2.7%という失業率は世界的に見ても異例の低さで、働く意思のある人が働いているという事実上の完全雇用状態といっていい。

そんな未曾有の人手不足は、いったい、いつまで続くのか。果たして2018年はどうなっていくのだろうか。

広がる人手不足倒産業種

2017年は人手不足によって深夜営業を止めたり、店舗を閉鎖したりする外食チェーンなどが相次いだ。政府が音頭を取る「働き方改革」などの影響もあり、長時間労働や低賃金といった条件の悪い職種が敬遠されている。人手の確保ができないところが、営業を縮小せざるを得なくなった。

2018年は、この傾向は一段と鮮明になるだろう。帝国データバンクの調査では2017年度上期(4〜9月)の倒産件数は4197件と前年同期比で3.4%増えた。前年同期比での増加は何と8年ぶりのことだ。

倒産理由を見ると、「人手不足倒産」が54件あり、まだ件数としては少ないが前年同期は32件で、69%も増えている。単月で見てもジワジワと人手不足倒産が増えており、2018年はこれが大きな問題になりそうだ。

人手不足が営業縮小では間に合わず、事業自体が存続できないところまで追い詰められてしまうケースが増えるとみられる。サービス業のほか、中堅中小の製造業などでも人手不足が深刻化しつつある。

有効求人倍率は2018年も上昇を続ける可能性が大きい。仮に有効求人が頭打ちになったとしても、団塊の世代の労働市場からの退出や、今後ますますの少子化によって、求職者数が減り続けるとみられる。人手不足が簡単に解消することはないだろう。

前述の厚労省の調査でも、新規求人倍率の高い職種ははっきりしている。

家庭生活支援サービスが約16.9倍、介護サービスが5.4倍、生活衛生サービスが7.7倍、接客・給仕5.9倍などとサービス産業での求人倍率の高さが目立つ。建設(6.5倍)、土木(5.5倍)など建設系の仕事も相変わらず人手不足だ。こうした職場では、2018年は人材確保が企業の死活問題になってくるに違いない。

また2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けて、駆け込み工事などが増えるほか、ホテルやレストランの新設オープンも目立ち始める。建設やサービスなどの人手不足が一段と激化するのは火を見るより明らかだ。

待遇改善による人材確保競争

安倍晋三内閣は2018年の春闘で「3%の賃上げ」を経済界に求めているが、賃上げに消極的だったり、労働時間の短縮が進まなかったりする企業からは、人材の流出が加速することになるだろう。

失業率が3%を恒常的に下回るようになって、人材の争奪戦が企業の間で熾烈になっていくとみられる。

給与の引き上げにどれぐらい対応できるかが、企業の人材確保を左右しそうだ。最低賃金は毎年引き上げられており、パートやアルバイトの人件費増が鮮明になっている。

そうした中で正社員化や正社員の待遇改善が焦点になっている。正社員だからと言って長時間労働を強いたり、ましてやサービス残業を常態化させるような経営を行えば、社員はどんどん逃げていく。

ひとたび社員の流出が始まれば、残った社員への負荷がさらに大きくなり、長時間労働に拍車がかかることになりかねない。労働環境の悪化がさらに離職につながるという悪循環に陥りかねないわけだ。

いったんそうした負のスパイラルに陥れば、簡単には立て直しが出来ず、「人手不足倒産」への道をまっしぐら、ということになりかねない。

2018年は必要な人材を確保できるかどうかが、企業の生殺与奪を握る、まさに「人材争奪」の年になるだろう。

2017-12-20

リニア問題で分かった「ゼネコン談合」をなくすには結局これしかない 誰が本気になるべきか、が大切だ

| 16:24

現代ビジネスに12月20日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53893

相変わらずの談合

企業による「不正」に明け暮れた今年を締めくくるかのように、リニア中央新幹線の工事を巡る大手ゼネコンの入札談合事件が発覚した。

新聞各紙の報道によると、12月19日時点で、大林組がスーパー・ゼネコン4社による受注調整をしていた事実を自ら認めたことが明らかになった。

談合など独占禁止法に違反したことを、公正取引委員会に早期に自主申告すると、企業に課される課徴金が減免される「リーニエンシー」と呼ばれる制度がある。大林組はこれに基づいて、委員会に申告していたことが判明したという。

これによって、大林組のほか、鹿島建設、清水建設、大成建設のスーパーゼネコン4社が、リニア新幹線の工事15件で受注調整を行っていたことが、ほぼ確実になった。東京地検特捜部と公正取引委員会は4社の本社などを家宅捜索しており、容疑が固まり次第、立件される見通しだ。

リニア中央新幹線は東京―大阪間の438キロメートルを67分で結ぶ、総工費9兆円の巨大プロジェクト。JR東海などは2015年8月以降、ゼネコン各社が組成した共同企業体(JV)などと計22件の工事契約を締結したが、4社のJVはこのうち約7割にあたる計15件を受注。各社3、4件ずつほぼ均等に受注していた。

大手建設会社による談合は、これまでも繰り返し表面化し大きな社会問題になった。

1993年に発覚したゼネコン汚職事件は、政界を巻き込む大スキャンダルに発展。それ以降は公共事業を巡る汚職や談合事件はやや下火になったとみられてきた。大手企業の間でコンプライアンス(法令遵守)が重視されるようになったことも大きい。

今回のリニア中央新幹線の工事は、通常の公共事業と異なり、民間企業であるJR東海が発注している。このため、特捜部は偽計業務妨害などを突破口に事件に着手、公取委は不当な取引制限を禁じた独占禁止法違反を罪状としている。

いずれにしても、談合をすることで価格を調整した結果、入札による本来の競争が起きず、不当に高い価格となったという容疑だ。

開き直りの論理

しかし、大手ゼネコンは懲りずに談合を繰り返すのだろうか。発注する側も受注するゼネコン側にも「談合は必ずしも悪いことではない」という潜在意識が今でも残っている。価格で競争をして叩き合えば、工事の品質にかかわるから、むしろ受注調整して、それぞれが得意な工事を高い価格で受注する方がいい、というのである。

直接、談合の場に出席する社員にも罪悪感は薄い。受注調整することで、すべての会社が儲けられるわけで、会社のためになるからやっている事だ、と思っている。会社の経営トップは、公式には談合はダメだと言いながら、利益を確保するためには仕方ない「必要悪」だと思っている。

「公取委がうるさいから」というだけで、自分たちのやっている事が、不正だとは感じず、ましてや犯罪ではないと思っているのだ。何せ、談合で私腹を肥やしている社員はいない。

そこには、談合によって競争がなくなり工事価格が上昇すれば、そのツケは新幹線を利用する乗客に回る、という発想が抜け落ちている。JR東海も事実上、独占状態を許されて利益をあげているという現実を直視しないわけだ。

要はトップの本気度ひとつ

東芝の粉飾決算や、神戸製鋼の品質データ偽装といった、今年大きな問題になった「不正」は、経営者や社員の罪悪感が薄い、という共通点がある。まさに談合と同じ感覚なのだ。自分の私利私欲をむさぼったわけではなく、会社の利益のためにやったまで、お客さんには迷惑はかけていない、というものだ。そんな長年の社風が染みついているわけだ。

こうした「不正」をなくすのは難しいことではない。まずは社長が「絶対に談合はするな」と厳命すること、そして、「談合をやった社員は絶対に許さず、とことん刑事責任を追及する」と公言することだ。

社長が本気で談合をさせないと決めれば、社長の命令に背いてまで談合に加担する社員はいない。ましてや、犯罪者になってまで会社の利益を守ろうなどという社員がいるはずもない。

今、問題になっているゼネコンの社外取締役を務める財界首脳のひとりは、「とことん膿を出すようトップに求める」という。業界の慣行やムードだからと緩い姿勢で臨むことは許さないというのだ。

ここ数年、社外取締役の導入が広がり、取締役会に業界の外の常識をもった経営者が入るようになった。果たして彼らが、長年続く、その業界ならではの「不正」にどう立ち向かっていくのか。

東芝でも不正事件のあと、社外取締役を中心とする経営執行体制になったが、その後も続々と問題が噴出した。ゼネコンの社外取締役もうかうかしていると、まだまだ問題が飛び出してくることになりかねない。

日本企業は、不正を防ぐための「経営力」が問われているとみていいだろう。

2017-12-13

コンビニでネパール人のバイトが急増しているのはなぜか そろそろ日本が本気で議論すべきこと

| 07:29

現代ビジネスに12月13日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53819

急激な人手不足

コンビニエンスストア各社が加盟する業界団体「日本フランチャイズチェーン協会」が、外国人技能実習制度の対象として「コンビニの運営業務」を加えるよう、国に申し入れを行うという。

日本で経験を積んだ実習生に母国に帰ってコンビニ展開を担ってもらうというのが「建前」だが、深刻化するコンビニでの人手不足を解消しようというのが「本音」であることは誰でも想像がつく話だ。

最近、都市部のコンビニに外国人店員がどんどん増えているなと感じている読者も多いだろう。彼らの多くは「留学生」という資格で日本にやってきて、勉学の「余暇」に働いている「建前」になっている。

セブン・イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社だけでも4万人を超える外国人が働いているとされ、すでに全店員の約5%に上っているという。

留学生が働くのは「資格外」という扱いで、週に28時間までなら働くことができる。コンビニや居酒屋は、彼らにとって最も簡単に見つかるアルバイト先だったが、最近はなかなかコンビニで働きたがる留学生が減っている。人手不足が深刻化する中で、もっと割のよい仕事がいくらでも見つかるようになったからだ。

ひと頃多かった中国人の大学留学生などはコンビニや居酒屋を敬遠し、留学生と言いながら、本音では「出稼ぎ」に来ているベトナム人やネパール人の留学生が増えている。

コンビニでバイトする日本人学生も急速に減っており、コンビニは人手を確保するのに四苦八苦している。

本来ならば、きちんと外国人労働者を雇いたいところだが、安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は取らない」というのが基本方針で、政府も「単純労働」とみなされる分野には、外国人は受け入れない姿勢を崩さずにいる。

技能実習生という「奴隷労働」

そこで「活用」されているのが「技能実習生」制度。建設や縫製、農業など77の職種について、一定期間、日本国内で働くことを認めている。

ただし、建設技術者の実習生として日本に来た場合、他の業種などに移ることは許されない。しかも、実習なので、寮費や食費などが引かれ、最低賃金以下で働いているのが実態。

技能実習生の集団脱走などが相次いだのは、逃げて、より稼げるところへ移るのが目的だ。何せ、斡旋業者などに渡航資金を前借りしてきているケースも少なくなく、いわば「奴隷状態」で働いている実習生も少なくない。

そんな世界的にも評判がよくない技能実習制度にコンビニ業界が手を挙げるのは、他に外国人を安定的に雇う方法がないからだ。

「単純労働」とされるサービス産業の現場には、もはや日本人の若者は就職したがらず、慢性的な人手不足が続いている。

にもかかわらず、外国人は「高度人材」しか受け入れない建前になっているため、正規に雇うことができない。さらに留学生もなかなか雇えないとなると、安定的に外国人を雇えるのは「技能実習」しかない、というのが今の日本の現状なのだ。

学生アルバイトの時給は毎年最低賃金が引き上げられていることもあり、年々人件費が上がっている。東京都の最低賃金は2017年の10月から時給で958円に引き上げられた。留学生といえども、最低賃金以下で雇うのはもちろん違法だ。

一方で、技能実習生となれば、労働時間も長くできるうえ、場合によっては実質的に最低賃金以下で働かせることもできる。

コンビニの場合、コストよりも人手の確保が喫緊の課題になっているが、農業や工場の現場では「低コスト」の働き手として使われているケースが少なくない。

自らの首を絞める結果に

現在、「単純作業」と言われてきた現場を抱える様々な業種から、外国人労働者を受け入れたいという声が挙がっている。ところが政府の方針は一向に変わらない。ここへきて打ち出されている方針は、あくまで「技能実習」という便法を拡大することだ。

政府は2017年11月1日から、「介護」職を技能実習の対象に加えた。介護業界は慢性的な人手不足に悩んでおり、外国人を正規の労働者として受け入れる必要性などが叫ばれてきたが、結局、「技能実習」の対象とすることでお茶を濁した。

介護職は団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、需要が253万人に達するとする試算もある一方で、供給は215万人と見込まれており、38万人が不足するとされている。

技能実習制度でやってくる外国人は、3年の満期が来れば本国に帰るのが建前だ。深刻な人手不足で更新も可能な制度が導入されたが、働く側からみれば、将来にわたってずっと日本に住めるわけではない。短期的な労働力不足を賄うための便利な存在としてしか扱われないわけだ。

だが、母国であるアジア諸国も急速に経済発展する中で、いつまでも日本に働きにやってくる外国人を確保し続けられる保証はない。技能実習の対象職種を広げれば問題が解決出来る、という話ではなくなっている。

長期にわたって日本に住むことができず、短期的な「出稼ぎ」となれば、優秀な外国人人材がやって来なくなる、という問題もある。質の高くない外国人が増えれば、それこそ犯罪が増えたり、様々な社会問題が発生することにつながりかねないのだ。

そろそろ本気で外国人労働者の受け入れ体制を真正面から議論すべき時だろう。

政府の腰が重いのは、外国人受け入れに強く反対する勢力に、過度に反応しているためだが、実習生などを便法として使うことで、なし崩し的に質の高くない外国人がどんどん国内に入って来れば、むしろ問題を引き起こすことになりかねない。

正規で労働者として受け入れる一方で、その資格をきちんと決め、質の悪い外国人は排除することこそ、国の治安を守ることになるのではないか。

2017-12-06

自民党はなぜこんなにも医者に甘いのか 医療費、またしても増えそうです

| 08:54

現代ビジネスに12月6日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53732

薬価下げ分を医者に回す

またしても医療費は増え続けることになりそうだ。

自民党の「医療問題に関する議員連盟」は12月5日に国会内で総会を開き、2018年度の診療報酬改定で、医師の人件費などにあたる「本体」部分を引き上げるよう求める決議を採択した。自民党の衆参両院の国会議員など240人余りが出席しており、圧倒的多数の議席を握る自民党の政治力で引き上げが決まる見通しだ。

すでに3日付けの朝日新聞は「診療・入院料引き上げへ 報酬改定、薬価下げ財源」と見出しに取った記事で、政府が「本体」部分を引き上げる方針を固めたと報じた。

薬価下げを財源とするという意味は、政府は来年度予算で社会保障費の自然増が6300億円と見込まれるものを、5000億円に抑える目標を掲げてきたが、薬価の引き下げで1千数百億円が捻出できるので、本体を引き上げても数字は達成できる、という理屈だ。

薬価を下げた分を医者に回せ、と言っているわけで、結局は来年度以降も医療費は増え続けることが確実になった。

議員連盟の会長を務める高村正彦副総裁は、総会で「いつでもどこでも良質な医療を受けられる『国民皆保険制度』を守るため、しっかり勝ち抜いていかなければならない」と述べたと報じられたが、医師の給与を引き上げることが国民皆保険制度を守ることになるのだろうか。

診療報酬が上がれば、会社員や企業が支払う健康保険の掛け金が上がる。病気になった人だけでなく、保険加入者全体が負担することになるのだ。また、国費として投入される分も、いずれは国民の負担となって戻って来る。

止まらない医療費負担増

そうでなくても健康保険料は高い。中小企業が加入する「協会けんぽ」の保険料率は労使合わせて10%を超す道府県が少なくない。

健康な時に支払う保険料負担がどんどん大きくなれば、加入を忌避する人たちが増え、かえって国民皆保険制度に穴が開く。実際、国民健康保険の無保険者問題はなかなか解決しない。

国民医療費は増え続けている。2015年度42兆3644億円と3.8%、1兆5000億円も増えた。保険料の負担は4.0%増加、国庫と地方を合わせた公費負担も3.9%ふえている。患者の自己負担も2.9%の増加だった。

2016年度の概算医療費は前の年度に比べて0.4%減ったが、これは前年度の伸びが極端に大きかった反動に過ぎない。

2015年度に9.4%も増えた調剤費が2016年度は4.8%減となった。高額の医薬品が大きく増えて調剤費が増大したのに対して、緊急で薬価を引き下げた結果だった。

来年度は2年に1度の薬価改定の年に当たっており、実勢価格に対して高過ぎる薬価の引き下げは当然に行われる。本来ならば、それを医療費全体の削減につなげるべきなのだが、「本体」の引き上げに回されるわけだ。

医師のための自民党か

これでは「国民」よりも「医者」を向いていると言われかねないが、なぜ、自民党は、医者に甘いのか。

「医療費、政界へ8億円 日医連が最多4.9億円提供」という記事が東京新聞の12月1日付けに載った。

「医療や医薬品業界の主な10の政治団体が2016年、寄付・パーティー券購入などで計8億2000万円を国会議員や政党に提供していたことが、30日に総務省が公開した16年分政治資金収支報告書で分かった」としている。日本医師会の政治団体である日本医師連盟(日医連)が約4億9000万円と最多だった、という。

「医療費が政界へ」というのは、医療費として公費や健康保険から医師に支払われているおカネが、回りまわって政治献金になっているという意味である。

政治家や政党に寄付することで、診療報酬「本体」の引き上げを実現しようとしているようにも見えるわけだ。カネの力がモノを言っているということだろうか。

もともと、財務省の審議会は11月に診療報酬を「マイナス改定」するよう求めていた。しかも求めた診療報酬の改定幅は「2%台半ば以上のマイナス改定」だった。薬価が大幅に引き下げれても、本体が引き上げられてしまえば、2%台半ばには到底達しない。

国の財政を考える財務省の意向や、保険料を引き上げたくない健康保険組合連合会などの引き下げ意見などをすべて無視する形で、本体部分を引き上げることになりそうだ。

人の命を預かる医師の職場が過酷であることは間違いない。本体を引き上げることで、待遇改善したいという気持ちも分からないではない。だが、猛烈な勢いで増え続ける医療費と、それに伴う国民負担の増加を、医師たちは「当然の事」だと思っているのだろうか。

このまま医療費が増え続ければいずれ、国家財政も家計も、企業の健保組合も破たんしてしまう。それこそ、国民皆保険制度や日本が誇る医療制度の崩壊につながりかねないのではないだろうか。