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2018-07-04

福島第2原発も廃炉に…ニッポンにはいま、「廃炉庁」が必要だ 国が責任を負う以外、道はない

| 20:49

現代ビジネスに6月27日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56223

スマートエネルギー情報局→http://smartenergy.ismedia.jp/

東電、福島第2も廃炉表明

東京電力ホールディングスは福島第2原子力発電所福島県楢葉町富岡町)の原子炉4基を廃炉にする方針を表明した。

6月14日に同社の小早川智明社長が福島県庁で内堀雅雄知事と面会した際、知事が第2原発の廃炉を求めたのに対して、「4基全て廃炉の方向で検討に入っていきたい」と述べたという。

東電は事故を起こした福島第1原発の廃炉作業を進めてきたが、第2原発について「廃炉」を明言したのは初めてのことだ。

福島第1原発事故後、第2原発は運転を停止してきた。この日の面会で小早川社長は「根強い風評、帰還が進まない況を踏まえると、(第2原発の)あいまいな状況自体が足かせになっている」と述べたそうだ。

内堀知事は面会後の記者会見で、「多くの県民が県内原発全基を廃炉にしてほしいと訴えてきた。今日、明確な意思表示をされたことを重く受け止めている」と話した。

知事は「重要なスタートだ」と評価したが、大手新聞などメディアは事故後7年たっての決断に「遅すぎる」と批判した。

県民感情を考えれば当然の批判とも言えるが、東電には第2原発の廃炉を明言できなかった事情がある。

廃炉には膨大なコストがかかる

第2原発の廃炉方針を示せば、原発設備の損失処理などが必要になり、その負担が一気に東電にのしかかることになる。

そうでなくても第1原発の廃炉と賠償には少なくとも21兆円の費用がかかるとされており、しかも、本当にその金額で収まるのかさえ見通しがたっていない。

結局は電気料金を通じて利用者や国民にツケが回るのだが、東京電力という民間会社の責任で事故処理と廃炉を行わせようとする事にもはや無理があるのだ。

原発を新設して稼働させたのは原子炉ごとにステップ・バイ・ステップだったわけだが、東電は福島第1の6基に加えて、福島第2の4基の合計10基を同時に廃炉させる事になる。

時間差なしにいっぺんに10基の廃炉費用が通常の決算にのしかかる事になれば、通常の電力会社では経営が成り立たない。

東京電力の組織のあり方が問われていた2013年ごろには、自民党内から「廃炉庁」を設置すべきだという声が挙がった。

廃炉庁はもともと英国にある組織にヒントを得たもので、政府(廃炉庁)が責任を負って廃炉を進めるものの、廃炉作業自体は民間に事業委託する形で行う。

英国流のやり方を参考に日本独自の廃炉庁を設置すべきだというアイデアが持ち上がったのだが、その後は雲散霧消したままだ。

国が廃炉に責任を持つ姿勢を明確にせず、東電任せにしたために、福島第2原発の廃炉表明に7年もかかったと見ることもできる。

いや東電として廃炉方針を表明したからといって、実際に廃炉までの道筋が決まったわけではない。その膨大な費用をどうするのか、最終的に電力料金にすべての費用を上乗せしようとすれば、電気料金は益々上昇することになる。

原油価格の上昇によるコストの増加で、電力各社は値上げを余儀なくされているが、そんなものでは済まない可能性が出てくる。

どうやって必要な人材を確保するか

ここに廃炉を電力会社任せにした場合の矛盾点がある。廃炉費用がかさめば業績の悪化は避けられず、そのしわ寄せは社員の待遇などに向かう。そうなると優秀な人材を集めることが難しくなるのだ。

そうでなくても「廃炉」という後ろ向きの業務に従事する場合、社員のモチベーションを維持できるかという問題がある。

2015年に会計不正が発覚した東芝の場合、粉飾決算の修正に伴う巨額の赤字だけでなく、米国原子力子会社ウエスチングハウスの巨額損失で、東芝本体は事実上解体されている。

国内原子力事業はまだ東芝に残っているが、福島第1原発の廃炉などに携わってきた多くの技術者が会社を去り、転職していった。

「廃炉」を任せる優秀な人材を確保するには、技術者に将来に対する不安を抱かない「安定」が不可欠だ。

国が廃炉の方針を明確にし、国(廃炉庁)主導で廃炉を進めていく事になれば、民間企業にとっては長期にわたる作業の受注機会が生まれる。リスクを負わずに仕事があり続けるという状態になるのだ。

廃炉には通常でも長期の時間がかかる。

1998年3月に稼働を終えた東海発電所は解体作業がまだ続いており、完全な解体撤去までには23年を要し、2021年ごろになるとされている。2009年に廃炉になった中部電力の浜岡原発1、2号機の解体終了は2036年度になるとされている。

さらに、事故を起こした福島第1原発の廃炉にはさらに長期にわたる時間がかかるとみられている。

そんな中で、廃炉の決定が相次いでいる。

原発の稼働は原則として40年までと決まっている。60年まで延長する特例もあるが、稼働から40年を経た老朽原発が次々と廃炉決定されているのだ。

2015年には関西電力美浜原発1、2号機、同敦賀原発1号機、中国電力島根原発1号機、九州電力玄海原発1号機の廃炉が決まった。また2016年には四国電力伊方原発1号機が、2018年5月には2号機も廃炉が決まった。

これに福島の10基を加えると、全国で20基の廃炉が進んでいることになる。まさに日本は「廃炉大国」なのだ。

今後もさらに廃炉になる原子炉は増えていく。そんな中で人材を確保していくには、もはや国が廃炉に最終責任を負う体制が不可欠だ。もう一度「廃炉庁」を検討してみるべき時だろう。

2018-06-27

福島第2原発も廃炉に…ニッポンにはいま、「廃炉庁」が必要だ 国が責任を負う以外、道はない

| 21:35

現代ビジネスに6月27日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56223

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東電、福島第2も廃炉表明

東京電力ホールディングスは福島第2原子力発電所福島県楢葉町富岡町)の原子炉4基を廃炉にする方針を表明した。

6月14日に同社の小早川智明社長が福島県庁で内堀雅雄知事と面会した際、知事が第2原発の廃炉を求めたのに対して、「4基全て廃炉の方向で検討に入っていきたい」と述べたという。

東電は事故を起こした福島第1原発の廃炉作業を進めてきたが、第2原発について「廃炉」を明言したのは初めてのことだ。

福島第1原発事故後、第2原発は運転を停止してきた。この日の面会で小早川社長は「根強い風評、帰還が進まない況を踏まえると、(第2原発の)あいまいな状況自体が足かせになっている」と述べたそうだ。

内堀知事は面会後の記者会見で、「多くの県民が県内原発全基を廃炉にしてほしいと訴えてきた。今日、明確な意思表示をされたことを重く受け止めている」と話した。

知事は「重要なスタートだ」と評価したが、大手新聞などメディアは事故後7年たっての決断に「遅すぎる」と批判した。

県民感情を考えれば当然の批判とも言えるが、東電には第2原発の廃炉を明言できなかった事情がある。

廃炉には膨大なコストがかかる

第2原発の廃炉方針を示せば、原発設備の損失処理などが必要になり、その負担が一気に東電にのしかかることになる。

そうでなくても第1原発の廃炉と賠償には少なくとも21兆円の費用がかかるとされており、しかも、本当にその金額で収まるのかさえ見通しがたっていない。

結局は電気料金を通じて利用者や国民にツケが回るのだが、東京電力という民間会社の責任で事故処理と廃炉を行わせようとする事にもはや無理があるのだ。

原発を新設して稼働させたのは原子炉ごとにステップ・バイ・ステップだったわけだが、東電は福島第1の6基に加えて、福島第2の4基の合計10基を同時に廃炉させる事になる。

時間差なしにいっぺんに10基の廃炉費用が通常の決算にのしかかる事になれば、通常の電力会社では経営が成り立たない。

東京電力の組織のあり方が問われていた2013年ごろには、自民党内から「廃炉庁」を設置すべきだという声が挙がった。

廃炉庁はもともと英国にある組織にヒントを得たもので、政府(廃炉庁)が責任を負って廃炉を進めるものの、廃炉作業自体は民間に事業委託する形で行う。

英国流のやり方を参考に日本独自の廃炉庁を設置すべきだというアイデアが持ち上がったのだが、その後は雲散霧消したままだ。

国が廃炉に責任を持つ姿勢を明確にせず、東電任せにしたために、福島第2原発の廃炉表明に7年もかかったと見ることもできる。

いや東電として廃炉方針を表明したからといって、実際に廃炉までの道筋が決まったわけではない。その膨大な費用をどうするのか、最終的に電力料金にすべての費用を上乗せしようとすれば、電気料金は益々上昇することになる。

原油価格の上昇によるコストの増加で、電力各社は値上げを余儀なくされているが、そんなものでは済まない可能性が出てくる。

どうやって必要な人材を確保するか

ここに廃炉を電力会社任せにした場合の矛盾点がある。廃炉費用がかさめば業績の悪化は避けられず、そのしわ寄せは社員の待遇などに向かう。そうなると優秀な人材を集めることが難しくなるのだ。

そうでなくても「廃炉」という後ろ向きの業務に従事する場合、社員のモチベーションを維持できるかという問題がある。

2015年に会計不正が発覚した東芝の場合、粉飾決算の修正に伴う巨額の赤字だけでなく、米国原子力子会社ウエスチングハウスの巨額損失で、東芝本体は事実上解体されている。

国内原子力事業はまだ東芝に残っているが、福島第1原発の廃炉などに携わってきた多くの技術者が会社を去り、転職していった。

「廃炉」を任せる優秀な人材を確保するには、技術者に将来に対する不安を抱かない「安定」が不可欠だ。

国が廃炉の方針を明確にし、国(廃炉庁)主導で廃炉を進めていく事になれば、民間企業にとっては長期にわたる作業の受注機会が生まれる。リスクを負わずに仕事があり続けるという状態になるのだ。

廃炉には通常でも長期の時間がかかる。

1998年3月に稼働を終えた東海発電所は解体作業がまだ続いており、完全な解体撤去までには23年を要し、2021年ごろになるとされている。2009年に廃炉になった中部電力の浜岡原発1、2号機の解体終了は2036年度になるとされている。

さらに、事故を起こした福島第1原発の廃炉にはさらに長期にわたる時間がかかるとみられている。

そんな中で、廃炉の決定が相次いでいる。

原発の稼働は原則として40年までと決まっている。60年まで延長する特例もあるが、稼働から40年を経た老朽原発が次々と廃炉決定されているのだ。

2015年には関西電力美浜原発1、2号機、同敦賀原発1号機、中国電力島根原発1号機、九州電力玄海原発1号機の廃炉が決まった。また2016年には四国電力伊方原発1号機が、2018年5月には2号機も廃炉が決まった。

これに福島の10基を加えると、全国で20基の廃炉が進んでいることになる。まさに日本は「廃炉大国」なのだ。

今後もさらに廃炉になる原子炉は増えていく。そんな中で人材を確保していくには、もはや国が廃炉に最終責任を負う体制が不可欠だ。もう一度「廃炉庁」を検討してみるべき時だろう。

2018-05-31

電力大手「販売量減でも売上増」一体なぜ…? 2018年3月期決算を読む

| 09:21

現代ビジネスに5月31日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55886

スマートエネルギー情報局→http://smartenergy.ismedia.jp/

競争激化の波、顕著に

電力の自由化が進み、家庭用の小口電力でも激しい顧客争奪戦が繰り広げられるようになった。かつては地域市場を独占してきた大手電力会社も、電力販売量の減少が続いている。

2018年3月期の大手電力10社の決算発表によると、電力販売量は北陸電力を除く9社で減少した。10社合計の販売電力量は7753億キロワット時と、前年度の7922億キロワット時と2.1%減少した。

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最も減少率が大きかったのが北海道電力の7.5%減で、家庭用の「低圧」が5.2%の減少したほか、工場やオフィス向けの「高圧・特別高圧」が9.7%減と大きく減ったことが響いた。

他社との競争で契約を奪われていることが原因だ。中でも電気代がコストの大きなウエイトを占める小売業で北海道電力から新電力に切り替える動きが加速しているとされ、報道によると、コープさっぽろやセブン-イレブン・ジャパンが道内の大半の店舗で新電力に変更したという。

次いで販売電力量の減少率が大きいのは関西電力。1152億キロワット時と5.1%も減少した。関西電力の販売量は長年、東京電力に次ぐ2位だったが、2017年3月期に中部電力に抜かれて3位に転落。前期も中部電力に水を開けられることとなった。

関西電力の販売量減少は2015年3月期の4.2%減→2016年3月期5.2%減→2017年3月期4.7%減→2018年3月期5.1%減と、下げ止まる気配を見せていない。

もともと原子力発電への依存度が高い関西電力の場合、原発の運転休止の影響が大きく、電力料金が他社に比べて高止まりしている。販売量は3年前の1345億キロワット時から200億キロワット時近くも減少しており、一段と固定費が重くのしかかる状況が続いている。

大飯原発3号機、4号機の再稼動をきっかけに値下げに踏み切っており、これを機に他の新電力との競争を勝ち抜く方針だが、なかなか効果を上げていない。

増収の中身を見ると

販売電力量が増えていないにもかかわらず、各社の売り上げは大きく増えた。前期は10電力すべてが増収になった。燃料価格の上昇を数カ月後に電気料金に反映する燃料費調整制度によって販売価格が引き上げられたことが大きい。また、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)賦課金・交付金収入が増加したことも売り上げ増につながった。

もっとも、燃料であるLNG(液化天然ガス)や原油の価格上昇で、燃料費も増えた。10社合計の燃料費は3兆8341億円に達し、前年度に比べて13.4%増えたが、値上げによって吸収され、経常利益も大きく増える結果になった。10社中8社が経常利益で増益になった。

10社のうち、唯一、北陸電力だけが販売量を増やしたが、これは卸電力取引所での売買を拡大していることが大きい。卸販売は62%も増えた。

これを除いた小売販売だけで見ると、前期比2%増だった。業務用は苦戦したものの、冬場の豪雪などによって、平均気温が低かったこともあり、家庭用の電灯・電力はいずれも伸びた。

中部電力も販売量はマイナスだったものの、減少率は0.3%にとどまった。最大の需要地である首都圏に進出して電力販売を行うなど、果敢な攻めの姿勢が奏功した。

中部電力は大阪ガスと共同出資で電力・ガス小売り会社「CDエナジーダイレクト」(本社・東京)を設立。すでに進出している首都圏の電力小売り事業の一部を同社に移管。共同事業の早期開始を目指している。

地元にしがみつリスク

前期決算を見ると、表面上の決算は増収増益のところが多く、大手電力の先行きに不安はないように感じてしまう。だが、現実には電力の販売量が減り続けており、従来通りの地域での電力事業だけではジリ貧に陥る可能性が高い。

特に、大手電力は原子力発電所を抱えており、減価償却費だけでなく保守管理費用もかさむ。稼動すれば、火力発電の燃料費が減るためコストを吸収できるが、現状のように再稼働がごく一部の原発に限られている段階では、むしろ原発は電力経営に重くのしかかる。

販売電力量が落ち込めば、当然、採算性も悪化するため、なかなか値下げができなくなる。価格が高止まりすれば、消費者の省エネ意識が高まり、さらに販売電力量が減るというスパイラルに陥ってしまう。

東京電力、関西電力、中部電力、北陸電力の4社は予備電力を相互に融通する体制を目指している。

需給を調整することで、予備用の火力発電所への投資や運用を抑え、コストを削減する。地理的に融通できない沖縄電力を除く9社が連携した場合、年間1160億円程度のコスト削減効果があると試算されている。

小売分野では各社がかつて独占していた「本丸」地域に相互に進出して激しい競争を繰り広げている。また、ガス事業や通信事業に参入するなど、新しい収入源の獲得に力を注いでいる。

新電力の参入による顧客争奪戦は一段落の兆しだが、まだまだ大手から新電力に契約を切り替えた顧客は少ないとされる。

今後、こうした層の切り崩しに向けて、ガスや通信などと組み合わせた新しい料金プランなどが出てくれば、再び顧客争奪が激しさを増してくる可能性は大きい。大手電力の販売量減少に歯止めがかかるのか、目が離せない。

2018-05-01

今夏にも閣議決定「第5次エネルギー基本計画」は日本の未来を描くか 重要な課題が山積みだが…

| 10:55

現代ビジネスに4月24日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55347

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複線シナリオ?

2050年を目指した長期的なエネルギー政策について議論する経済産業大臣の私的懇談会「エネルギー情勢懇談会」が4月10日、「エネルギー転換へのイニシアティブ」と題した提言をまとめた。

脱炭素化に向けたエネルギー転換が急速に進んでいくとしながら、「可能性と不確実性に着目した野心的な複線シナリオ」を描くべきだとしている。

本来この懇談会は、日本が将来にわたって「原子力発電(原発)」とどう向き合うのかを示すことが期待された。提言書でも「取りまとめに当たって踏まえた点」として、以下のような文章が書かれている。

「福島第一原発事故が原点であるという姿勢は一貫して変わらない。我が国は、原子力の位置づけを考察し続ける責務がある。2050 年のエネルギー戦略を構想するに際して、エネルギーの選択肢の1つである原子力の検証・検討は不可避であり、この提言は、福島第一原発事故の教訓をどういう形で示していくのかという問いかけへの回答でもある」

ところが、提言では、真正面から原子力を扱う事を避けている。

懇談会の設立に当たって、経産大臣から2050年のエネルギー戦略のシナリオを描くよう求められたにもかかわらず、可能性と不確実性が混在する今後30年間のシナリオをひとつに決め打ちすることはむしろリスクだとして、「複線シナリオで行くべきだ」という回答を出した。

あえて言えば、「脱原発」をシナリオに乗せることだけは外した、と言えなくも無い。脱炭素化のためには、再生可能エネルギーも、原子力も、という「複線」のシナリオである。

原発はやめるのか、やめないのか

世界の流れが脱炭素化に向かっているという点だけは間違い無いだろう。

要はそれをどうやって実現するかだ。提言では、風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーは重視し続けるものの、蓄電技術などがまだまだ開発途上で、今の技術では天候などに左右されて電力供給が不安定になってしまう。

安定化させるためには火力発電による補完が必要になるため、再生可能エネルギーは「単独では脱炭素化を実現することはできない」というのだ。その上で、「水素やCCS(二酸化炭素回収貯留)、原子力など、あらゆる選択肢を追求することが妥当だ」としている。

原子力を前面に押し出さないものの、原子力は選択肢として持ち続ける、と言っているわけだ。

ところが一方で、「原子力の課題解決方針」とした部分では、「可能な限り原子力発電への依存度を低減するとの方針は堅持する」とも述べている。

また、「我が国においては、更なる安全性向上による事故リスクの抑制、廃炉や廃棄物処理などのバックエンド問題への対処といった取組により、社会的信頼の回復がまず不可欠である」ともしている。

さらに、そのために、「人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めなければならない」と、前向きに取り組む事の重要性も指摘している。

この提言だけを読んで2050年に日本の原発がどうなっているかを想像するのは正直言って難しい。

方向性は煙に巻いたまま

この提言は現在見直しが行われている国の「エネルギー基本計画」に盛り込まれることになっている。基本計画の方向性を指し示す役割を担うことが期待されていたと言っても良い。

基本計画の見直しは、経済産業大臣の諮問機関である「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・坂根正弘コマツ相談役)」で議論されている。

本来は原発の行方などを長期的な視点で検討すべきなのだが、大所帯で意見がまとまらないこともあり、少人数の懇談会が設けられた。

懇談会にも加わった坂根氏は技術者出身の経営者で、「化石燃料がいずれ枯渇した時の事を考えれば原子力技術は放棄すべきではない」というのが持論。懇談会の提言も、もっと理詰めで原発技術の開発持続の必要性を説く内容になるとみられていた。

最終的には「脱炭素化」という言葉で煙に巻き、原子力はあまり目立たせない仕上がりになった。

世論を気にしてまた先延ばし

現在のエネルギー基本計画は第4次計画。原発については「ベースロード電源」としたものの、一方で「可能な限り低減させる」という方針を示した。

というのも2012年秋に民主党政権が打ち出された「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」というがあったためで、これを見直したものの、全く逆に「原発推進」を打ち出すまでには、世論を気にしてできなかった、ということだろう。

第4次計画では、原発の「新設」や「建て替え」といった文言は書き込まれていない。既存原発を再稼動させたとしても、最長40年が経てばルール上、廃炉になってしまうため、なし崩し的に「脱原発」が進んでしまうわけだ。

それだけに、見直し中の第5次計画で、原発について政府がどう方向性を示すのかが注目されている。

だが、前哨戦とも言えた懇談会の提言に、原発の新設や増設といった文言が全く含まれなかったことで、第5次計画も「玉虫色」のままになる可能性が強まった。

いくらなんでも懇談会の提言にある「産業基盤の強化」や「機動性に優れた炉の追求」という文言で、原発の新設を意味していると強弁するのは難しい。

原発推進派からは、2050年になっても原発を維持すると言っている以上、原発新設は既定路線だという声が上がるかもしれないが、それでは国民のコンセンサスを得たことにはならないだろう。

夏にも閣議決定されるとみられる第5次エネルギー基本計画に注目したい。

2016-09-23

大手都市ガス「電力参入」が絶好調!の理由

| 09:43

現代ビジネスに9月11日にアップされた原稿です。オリジナルページ→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49601

スマートエネルギー情報局→http://smartenergy.ismedia.jp/

大手都市ガス、絶好調

今年4月に電力小売りが全面自由化され、一斉に「新電力」が家庭向け電力小売り事業に新規参入したが、そうした中で大手都市ガス会社が順調なスタートを切っている。首都圏で家庭向け電力小売りに参入した東京ガスは当初、初年度の目標としてきた40万件の顧客獲得を4カ月で達成、目標を53万件に引き上げたと報じられていた。

関西エリアで電力事業を展開する大阪ガスも、20万件という初年度目標を掲げているが、すでに17万件の契約を獲得した。名古屋を拠点とする東邦ガスも当初1カ月で1万件の契約を取るなど順調に滑り出した。都市ガス大手が大手電力会社にとっての最大のライバルになってきた。

都市ガス大手が順調に電力小売りの契約を獲得している背景には、同じエネルギー会社として各家庭にネットワークを持っていることが大きい。通信系なども家庭とのつながりがあるが、カバー率はガスの場合、ほぼ100%で、圧倒的に高い。きめ細かい顧客サービスを展開する素地があるわけだ。

東京電力の広瀬道明社長は毎日新聞のインタビューの中で、「新電力ナンバーワンを目標に、達成までやり抜く」と意気込みを語っていた。競争は激しいものの、環境は都市ガス大手にとって優位性があり、他の新電力を凌駕できる余地は十分にある。

大阪ガスはガス契約をしている家庭を対象に新たに「住ミカタ・サービス」という新サービスを展開。ガス機器のメンテナンスだけでなく、エアコンの修理のほか、風呂や台所などのクリーニングなどにサービスを拡大している。住宅のリフォームの相談などにも乗っている。顧客との関係の「密度」を上げることで、ガス契約から電力小売りなどに契約を広げていく戦略だ。

リフォームや建て替えのタイミングを早期に知ることで、家庭内の設備インフラを総合的に提案できるようにするのも狙い。特にガスを使った温水床暖房などは家の建設設計と同時に組み込まれるケースが多いことから、そのタイミングで電力や通信の契約も合わせて一括受注する体制を狙う。

ガス会社から「総合エネルギー会社」へ

経済産業省の資源エネルギー庁によると、「小売電気事業者」として登録しているのは8月9日時点で334事業者にのぼる。そのうちすでに一般家庭への電力供給を始めた会社は100社あまり。今後、事業開始を予定している事業者もあるが、ほぼ出そろって来た感じだ。

参入したのは、大手都市ガス会社のほか、静岡ガス&パワーや中央セントラルガスといった「ガス系」、昭和シェル石油、東燃ゼネラル石油、JXエネルギーといった「石油元売り系」、伊藤忠エネクスホームライフ関東やミツウロコグリーンエネルギーといった「商社系」のほか、KDDIなどの「通信系」や、東急パワーサプライなどの「電鉄系」など多岐にわたる。

各社とも、大手電力会社に比べて価格が安いことを売り物にしているが、各社のもともとの事業サービスと組み合わせた料金体系を取り入れるなど、工夫をこらしている。

変わったところでは、生活協同組合が事業者として事業を開始したところもある。大阪いずみ市民生活協同組合では「コープでんき」と銘打って事業を開始。価格が安いことも売りのひとつだが、「『コープでんき』の2016年電源構成は、FIT(再生可能エネルギー)を38.5%(全国平均の3倍以上)で計画しています」として、環境配慮を前面に打ち出している。エコ意識の高い生協組合員を意識した特長ある取り組みと言える。

もっとも、新電力はまだまだ「乱立状態」で、価格体系などが見えにくいことから、切り替えを躊躇している消費者も多い。インターネットには価格の比較サイトなども登場しているが、競争が収斂していく様子を見ている人たちは少なくない。緒戦で一定のシェアを獲得した新電力に、今後、様子見をしている消費者が契約に動くことになるとみられる。

そうなった場合、価格だけでなく、サービスをどう周知するかがポイントになる。このため自社のもともとのサービスで既存ネットワークを持っている事業者がより優位に立つことになりそうだ。そうした面でも、ガス大手が従来の顧客サービスの拡充に動いているのは正しい戦略だろう。

電力VSガスの行方

今後、IoT(インターネット・オブ・シングス)と呼ばれる動きが加速し、家庭内の電気機器やガス機器、通信などがインターネットで結ばれて管理される態勢になっていく中で、「家庭内インフラ」の窓口一元化が進むことになりそう。電力・ガスなどエネルギーに加え、インターネット通信や電話、CATV、防犯システムといった家庭に関わるサービスを一企業が一括受注して一括管理する方向へ進んでいくに違いない。

それだけに、通信事業者やCATV会社など自社の既存事業を守るためにも電力小売りに参入しているという面が強い。今後、合従連衡を経て集約されていく中で、「総合家庭サービス会社」が誕生してくるのだろう。その場合も、エネルギーを基幹とするガス会社が優位に立つ可能性はある。

もちろん、ガス大手が安閑としていられるわけではない。都市ガスの小売り自由化が迫っており、電力会社が家庭向けのガス事業に参入してくるのだ。

今は守勢に立っている電力大手は、資本力ではガス大手を圧倒するだけに、ガス事業参入では強力な競合相手になる見込み。いずれは大手ガス会社と大手電力会社の統合なども起き、早晩、総合エネルギー会社が誕生してくるに違いない。