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磯山友幸のブログ RSSフィード

2017-11-08

【高論卓説】日本企業にまかり通る「ウソ」 相次ぐ不正、経営トップは本当に反省しているのか?

| 15:54

11月7日付けのフジサンケイビジネスアイ「高論卓説」に掲載された拙稿です。

オリジナル→http://www.sankeibiz.jp/business/news/171107/bsg1711070500001-n1.htm


 東芝、日産自動車、神戸製鋼所と、企業の不正が相次いで発覚している。日本企業はいつから「ウソ」がまかり通る組織になったのか。どうすれば、不正を根絶することができるのか。不正が発覚した企業はみな、謝罪会見を開いてトップが頭を下げてはいる。だが、本当に反省しているのか。見ていて疑わしい印象を受ける。

 東芝でも粉飾決算を行った歴代社長は逮捕すらされていない。粉飾、つまり有価証券虚偽記載罪はれっきとした犯罪だ。にもかかわらず、証券取引等監視委員会が求めても東京地検は立件に踏み切らない。理由は、当事者たちが容疑をかたくなに認めないためだとされる。つまり、トップたちは、「チャレンジとは言ったが、粉飾をやれとは言っていない」「自分が罪を犯したわけではない」と思っているのである。

 粉飾決算にしても、「会社のためにやったことで、悪いことをしたわけではない」というのが当事者たちの率直な思いだろう。欧米企業でしばしば起きる不正事件のように、経理帳簿を改竄(かいざん)して自分の懐にカネを入れたわけではない。あの段階で数字を作ってかさ上げしなければ会社が潰れて路頭に迷っていた。だから、仕方がなかったのだ。そう思っているフシがある。

 かつて総会屋事件で利益供与していた総務担当の役員たちも、本当には反省していなかった。会社のためには「汚れ役」が必要で、それをこなしているだけ。自分の利益のためにやっているわけではない、と思っていた。経営トップもそれが分かっていて、仮に逮捕されても、ほとぼりが冷めると子会社の顧問などにして生活の面倒をみていたものだ。建設業界の談合もまったく同じ構図だった。

 総会屋対策では、利益供与した会社側役員にも厳罰を加える法改正が実施された。さらに総会屋の罰則も強化されたため、割に合わない犯罪になって、今はほとんど下火になった。

 では、どうすれば企業の不正は根絶できるのか。一つは、不正が発覚したら厳罰に処することだ。不正が明らかになれば、厳しい罰が待っているとなれば、誰も不正は働かない。

 もう一つは会社のトップが「不正は絶対に働くな」と明言することだ。その上で、不正が発覚した場合、「不正に手を染めた社員は守らない」とはっきり言うことである。守らないどころか、会社が不正を働いた役員や社員を告発したり、損害賠償を求めたりするとまで言えば、社員はだれも不正に手を染めなくなる。

 終身雇用が幻想だと思い始めている若い世代は、会社に対する絶対的な忠誠心など、もはや持ち合わせていない。会社のために自分が不正を働いて処罰されるなど、ばかばかしいと思っている。だからこそ、社長が「会社のためだから不正を働くなんて絶対にダメだ。そんなことをしても、決して会社のためにはならない」とはっきり言えば、不正のカルチャーは根絶できる。日本企業から不正をなくす第一歩は、社長がまず腹をくくることである。

【プロフィル】磯山友幸

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。55歳。

2017-08-07

【高論卓説】東証は上場廃止基準見直しを 裁量余地大きく 明確なルール不可欠

| 12:29

産経新聞社が発行する日刊紙フジサンケイビジネスアイ」のコラムに8月3日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/business/news/170803/bsg1708030500002-n1.htm

 経営危機に直面している東芝株式をめぐって、東京証券取引所上場廃止を決断できずにいる。東証にはれっきとした「上場廃止基準」が存在しており、東芝はそのいくつかに抵触している。

 まず最初が「有価証券報告書(有報)に虚偽記載を行った場合」。2015年に不正会計が発覚し、同年末には金融庁から「虚偽記載があった」と認定され、課徴金をかけられた。

 本来ならば、この一事をもって上場廃止になるはずだが、東証の上場廃止規定にはこうある。「虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき」。つまり、東証は、同じ粉飾決算でも、上場させ続ければ「秩序維持が困難」だとは判断しなかったわけだ。

 ただし、粉飾決算を起こさないような社内体制が整っているかをチェックするため、「特設注意市場銘柄」に指定した。通常は1年たって会社が報告書を出すと解除されるが、東芝の場合、別の不祥事が発覚し、さらに半年延期された。その期限が今年3月14日で切れたが、その時点で東芝が提出した報告書を、東証は審査している最中だ。内部体制が整っていないとなれば、上場廃止になる。

 もう一つが有報の「提出遅延」。東証の基準では、監査報告書の「法定提出期限の経過後1カ月以内に提出しない場合」、上場廃止になるとしている。東芝金融庁の許可を得て今月10日までに提出するとしている。

2017-06-29

【高論卓説】「相談役・顧問」が株主総会の焦点 居座る社長OB、悪しき慣習にメス

| 11:08

産経新聞社が発行する日刊紙フジサンケイビジネスアイ」のコラムに6月21日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/business/news/170621/bsg1706210500002-n1.htm

 3月期決算企業の株主総会が本格的に始まる。東京証券取引所によると最も集中するのが来週29日で東証上場3月期決算企業の約30%、次いで28日の18%、今週23日の16%となっている。

 そんな今年の株主総会での一つの焦点は「相談役・顧問」の扱いだ。政府が9日に閣議決定した成長戦略「未来投資戦略2017」に、退任した社長兼最高経営責任者(CEO)が就任する相談役や顧問について「氏名、役職・地位、業務内容などを開示する制度を株式会社東京証券取引所において本年夏頃を目途に創設し、来年初頭を目途に実施する」とされた。社長OBが居座って、現役社長や取締役よりも強い権力を握り続ける日本企業の「慣行」にメスを入れようというわけだ。

 これを先取りする形で、顧問や相談役を廃止する企業も出始めた。また、機関投資家に議決権行使をアドバイスする米国の助言会社は、企業が新たに定款に顧問や相談役などを設置する議案を出した場合には、反対するよう推奨している。

 本格化する株主総会でも個人投資家などから、顧問や相談役の有無などについて質問が出ることが予想される。28日に大阪で開く武田薬品工業の株主総会では、長谷川閑史会長が取締役を退任して相談役に就くことになっているが、株主から相談役などを置く場合には株主総会で議決するよう求める株主提案が出されている。

 総会で選ばれる社外取締役の中には経営者OBも多く含まれるが、社長や会長などを務めた「古巣」の相談役や顧問といった肩書を持ち続けている人が少なくない。こうした人たちの選任への賛成票の割合も減る可能性がある。

 ひと昔前と違って、社長や会長の報酬は大幅にアップした。欧米企業に比べればまだまだ低いが、それでも年間1億円以上を得るトップが大勢いる。東京商工リサーチの昨年の調査では211社で414人が1億円以上の報酬を得ていた。もはや、「社長は薄給なので、退職後も顧問などとして面倒を見続ける必要がある」といった理由付けはできなくなってきている。

 社長OBの相談役らが、強権を振るうかどうかは別として、会社にしがみ付き続けるのは、自分のアイデンティティーがそこにあると思うからだろう。○×会社の社長をやった誰々、ということで財界活動や他社の社外取締役に呼ばれている。決して個人の能力ではないと感じているからに違いない。また、財界活動を行うにしても、秘書やスタッフ、車などが必要だという、実利的な必要性もあるだろう。

 だが、社長OBらは世間相場からすれば十二分な報酬を得てきたのだから、退任後は自分で事務所を作りスタッフを雇うなど自立することが不可欠だろう。他社から「独立社外取締役」として迎えられるような人物こそ、まず、自らが古巣から「独立」することが不可欠だ。相談役などとして居座り続けるのは、プロ経営者として恥ずかしい。

2017-05-08

【高論卓説】住宅建設に景気底上げ効果 失速させない金融・財政政策必要

| 11:53

産経新聞社が発行する日刊紙フジサンケイビジネスアイ」のコラムに5月2日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170502/mca1705020500004-n1.htm

 国土交通省が4月末に発表した3月の「新設住宅着工戸数」は、7万5887戸と、前年同月比で0.2%の増加となった。日本銀行がいわゆるマイナス金利政策を導入した昨年2月以降、消費税増税前の駆け込み需要と同水準の新設着工が続いていた。ところが、昨年末からブレーキがかかり、今年2月は前年同月割れ。3月の失速が懸念されていたが、何とか踏みとどまった。

 貸家の新築着工が11.0%増と大きく増え、17カ月連続の増加となったほか、分譲一戸建て住宅も3.4%増と17カ月連続の増加だった。昨年は好調だった分譲マンションは、2月に続いて3月もマイナスになった。

 貸家が住宅着工を牽引(けんいん)していることで、「バブルだ」と批判する声が昨年来強まっている。低金利を活用して遊休地に賃貸アパートなどを建てる不動産投資が増えていることを指している。いつかバブルがはじけて借金が返せなくなり、銀行は再び不良債権を抱えることになる、というわけだ。特に日銀のマイナス金利政策を批判するエコノミストらがしきりに「バブル」説を展開している。

 確かに、1980年代後半のバブルの象徴だった「不動産担保ローン」が再び活発化しているし、「使途自由」といった当時を彷彿(ほうふつ)とさせる、うたい文句も登場している。住宅を担保にして老後の資金を借り、死後に住宅売却で元本を精算する「リバースモーゲージ」も広がり始めた。何となくバブルの臭いがしてきたのは事実だろう。

 だが、バブル期のように、不動産価格が急騰しているわけではない。1月の公示地価ではようやく住宅地が9年ぶりの上昇となったが、上昇率はわずか0.022%。下落が止まったにすぎない。商業地の上昇で全用途の地価が上昇に転じたのも2016年から。もちろん都心の一等地などでは大きく上昇しているところもあるが、平均地価からみる限り、バブルと言うにはまだまだ程遠い。

 前述の新設住宅着工にしても消費増税前の駆け込み需要の水準をかろうじて上回っているだけ。4月の件数が昨年の8万2398戸を上回れるか、あるいは失速してしまうかの分岐点である。

 住宅建設による景気底上げ効果は大きい。住宅そのものへの投資だけでなく、家具やインテリア、家電製品など付随した消費の増加をもたらす。アベノミクスによる円安で企業業績は好調だが、消費の低迷が続いている。日本の国内総生産(GDP)の6割を占める消費が盛り上がらなくては、経済成長はおぼつかない。

 人口が減るのだから住宅建設も減るのが当然、という主張もある。だが、バブル崩壊後の景気低迷もあって「住宅の高齢化」が進んでいる。建設から時間がたち、建て替えや大規模修繕が必要になってきている建物が増えている。「ウサギ小屋」と海外から揶揄(やゆ)された日本の住宅を、もう少し大きく、快適なものに変えていく必要もある。

 ここで、もう一段の住宅建設を促す金融・財政政策を打つべきだろう。「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」と言うが、バブルを懸念するあまり、せっかく底入れしつつある住宅建設を失速させるような政策を取るべきではない。

2017-03-16

【高論卓説】人ごとではない東芝の断末魔

| 11:24

産経新聞社が発行する日刊紙フジサンケイビジネスアイ」のコラムに3月15日に掲載された原稿です。オリジナルページ→http://www.sankeibiz.jp/business/news/170315/bsg1703150500007-n1.htm

■海外企業コントロールする経営力が欠如

 東芝が14日に予定していた決算発表を再延期した。原子力子会社のウェスチングハウス・エレクトリック(WH)で見込まれる巨額損失の見積もりなどをめぐって監査法人と折り合いが付いていないもようだ。というよりも、WHが結んださまざまな契約に伴うリスクを東芝の経営陣がきちんと把握できていないように見える。

 「どっちが親会社か分からない態度で、腹立たしく思うこともしばしばありました」と、東芝の原子力部門で働くエンジニアは振り返る。東芝はWHを2006年に6000億円を投じて買収、傘下に収めた。しかし、当初から東芝本体の経営陣にはコントロールできず、役員の間から「まるで独立王国のようだった」と振り返る声も上がる。もともとWHは、東芝がWHの原発技術が欲しくて買収した。そのWHの経営陣に足元を見透かされているかのようだった、という。

 巨額の損失を生み出す原因となっている米国の4基の原発についても、東芝の経営陣は東芝本体の決算で表面化させない「つじつま合わせ」ばかりに気を配っていた。その結果、東芝にとって不利になる契約や買収を次々にWHが実行するのを許していった。一部のメディアはそれを東芝の経営陣はWHに「だまされた」と表現している。

 仮に、子会社の経営者にだまされたとして、それを唯々諾々と受け入れた親会社の経営陣は許されるのか。要は海外企業をコントロールするだけの経営力が圧倒的に不足していた、ということではないか。

 実はこの問題は東芝に限ったことではない。日本企業による海外企業の大型買収が相次いでいるが、きちんと融合した企業グループを形成して、一体のグローバル企業として経営できているところはごく一部だ。ほとんどのケースでは、傘下に置いているものの、WH型の「独立王国」であることを許している。

 それを「連邦経営」とか「独立性の維持」とか言って、むしろ良いことのように説明している。出資比率が2割ぐらいなら、投資と割り切って「独立王国」を許すのもいい。だが、連結子会社となれば、その企業が問題を抱えれば、すべて親会社の責任になってくる。それが連結経営というものだ。東芝もWHの原発事業に親会社として保証しているが、保証の有無にかかわらず、傘下に収めた以上、経営責任は親会社にある。

 1980年代後半、バブルの勢いにのって日本の老舗企業が欧米の大企業を次々に買収した。結果はどうなったか。その後のバブル崩壊もあり、「死屍累々」で撤退したものも多い。結局、グローバル企業をコントロールする経営力が圧倒的に欠如していたのだ。結局、日本企業は高い授業料を払ったその頃の経験をほとんど学んでいない、ということではないか。

 東芝の断末魔は日本企業の経営のお粗末さを示している。決して東芝特有の問題だと考えるべきではないだろう。