2010-09-04
はじめまして。
いよいよ、「一冊堂」店主・坂本もブログを書くことにしました。
内容は、読書日記と日々の雑記といったところです。末永いお付合いよろしくお願いいたします。
まずは、「大阪民主新報」という週刊の地方紙に、私が連載している書評の最新分(2010-9-5)を転載いたします。
『餓死した英霊たち』 藤原 彰 著 (新潮社2001年5月発行)
タイトル「日本軍隊の餓死地獄」
アジア・太平洋戦争において、日本の軍人・軍属の戦没者の数は230万人にのぼっている。このうち戦闘行動による、いわゆる「名誉の戦死」を遂げた人は半数に達しておらず、約60%は餓死か、栄養失調症が原因による戦病死であった。
著者は、ガダルカナル、ニューギニア、フィリッピン、中国などでの戦闘状況を詳細に検討したうえで、日本軍の戦没者の亡くなり方を分析し、餓死者のおおよその割合を推計することに成功している。
そのうえで本書は、なぜ日本の軍隊はこのような言語に絶する悲惨な状況を繰り広げたのかを深く掘り下げている。
著者によれば、日本の軍隊の際立った特質は、盲目的な精神主義である。そしてそのような精神主義は、当時の日本資本主義の脆弱性に起因すると述べている。
そもそも徴兵制による軍隊は、解放された農民を基盤とする国民国家の成立が前提である。しかし当時の日本は農民を完全に解放せず、自発性を持った兵士を結集する経済的基盤が弱かった。日本の軍隊はそのような本質的な弱点を、天皇への盲目的な忠誠と、強制と懲罰による上官への絶対服従という精神主義でカバーしようとしたのである。
このような精神主義の具体的な現われとして、主観的な作戦を重視し、食糧や武器の補給を軽視、ないし無視するという、およそ戦闘の常識ではありえない狂信的な路線を出現させた。その結果、ガダルカナルをはじめとした南方戦線を中心に、餓死地獄とか言いようのない惨状を、いわば人為的に広げたのである。
また、日本軍の盲目性は他の様々な局面にも現れた。例えば自動小銃や機関銃など、近代的な装備を充実させた米英軍に対し、旧式の銃剣を手に突撃すれば相手を撃破できると考えていたことなどもそうである。その結果、日本の軍人は敵の近代的銃弾に虫けらのようになぎ倒されたのである。
「無限の可能性を秘めた有為の青年たちを、野垂れ死にとしかいいようのない無残な飢え死に追いやった責任」を、本書は深く静かに告発している。