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Dr.Kato’s Bar

2017-10-10 「応力とインプラント周囲骨の反応」セミナー開催

場所:東京国際フォーラム G 501号会議室

日時:2017年 12月 17日(日)10:00 〜

主催:ITDN-Tokyo(日歯生涯研修会認定スタディーグループ)

インプラント治療が普及した今日、多くの歯科医師研鑽を積み一般開業医においても幅広い

治療が行われております。インプラントの早期の安定性やインテグレーションの獲得は20 年前に

比べ格段の進歩がみられます。このような状況の中、周囲組織の再生や安定による審美や良好な

長期予後の獲得が臨床家やメーカーに求められています。これらは生体応答や生物学的リサーチ

を考慮した基礎研究のなかに臨床のヒントがあると考え、下記のテーマでセミナーを開催致しま

す。真理探究する多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。

詳細はこちら

http://implant-kato.com/archives/20171217semi.pdf

2017-08-09

シンギュラリティ 人工知能から超知能へ

 シンギュラリティとは特異点を指し,数学者チューリング(映画 Imitation Gameのモデル)はAI(人工知能)と人の解答が出題者がつかなくなる日が20世紀末には来ると予測した.ムーアの法則では1つのチップに埋め込まれるトランジスタの数は18ヶ月で倍増し,21世紀半ばにトランスヒューマニズム(人超越)を迎えるという.しかしそれには従来の方法を脱し,より脳を理解するために生体の記憶野をμマッピングし,回路を演算し,それを外部身体化=エミュレーション(記憶の外部コピー)することが必要だ.肉体が不要となれば自己の不死化も夢ではない.だが人並みではない超AISF映画などでも自我覚醒する!! われわれの恵となるか天才棋士の連勝も阻む敵となるのか? ―それでも創らずにはいられないヒトの,未知の一手は?

2017-06-22

生命の閃光 体は電気で動いている

皆さん,最近ビビビッと来てますか? 生体は,(−)イオン(CI)と(+)イオン(Na, K, H)を駆使し,電気の役割はハイブリット車より大きい. 組織内にはKイオンが, 外にはNaイオンが多く,隔てる細胞膜にはチャネル(水路)が埋め込まれ, 濃度の高いほうから流れるイオンを水門のように制御する. 神経細胞の稲妻の速さのデジタル信号(インパルス)は, 終末でCaチャネルを開口させ,対岸の筋線維収縮の引き金を引く. その他の細胞でも個性的なチャネルがあり, その誤作動が疾病障害や毒薬になる死をもたらしてきた. 著者は, 膵β細胞のKATPチャネル異常の新生児糖尿病の仕組みを解明して

服薬による治療法を臨床化した. 動物電気の発見者Gaivaniのみならず, 古代史から007の逸話まで織り込んだ, 電気仕掛けの生体の書.

生命の閃光: 体は電気で動いている

生命の閃光: 体は電気で動いている

2017-03-22

UCLA西村一郎教授講演会 歯周病を,いま一度考える Periodentitis. Who, When, Why, How, Any cure?

 2016年9月27日(火),庭のホテル東京にてITDN-Tokyo歯周病勉強会が行われた. 今回の講演会UCLA歯学部教授 西村一郎先生を迎えて,メタアナライシスや最近の論文などを元に,現在行われている歯周病に対するアプローチの是非や,今後の展開を占う内容であった.その内容や切り口に,会場にいる医療従事者の誰もが驚いたに違いない.

 統計から得られた歯周病の病態についての説明後,こんな意外な言葉から本題に入る. 「Barrier Tissueとしての口腔粘膜を考えてみる」である.

 日常臨床で,歯の喪失後の顎堤吸収が個人によってかなり違うことを経験しないだろうか? 西村教授は,その解明のために免疫細胞である線維芽細胞の,“ある働き=コラーゲン収縮”に注目している.なぜか? 顎堤吸収に至るには,まず歯肉結合組織の線維が反応し,その創傷治癒過程で,口腔粘膜組織の過度な収縮力を受けるからだ.しかし,なかにはその収縮が強いものと弱いものがいる.その場合では,顎堤吸収にも大きな差かあるというのだ.その違いはどこから来るのか? その答えは歯肉収縮型遺伝子である Fibroblast Growth Factor Receptor 1 Oncogene Partner 2/Wound Inducible Transcript-3.0(以下. wit3.0)に よるところが大きいと西村教授の研究グループによって明らかになった.講演はここからヒトゲノムや人類の祖先ネアンデルタール人クロマニョン人についてまで話が及ぶのだが,この収縮力=顎堤吸収の差の正体はwit 3.0 活動の程度によるもので,それを利用すればポケットの深さのコントロールや顎堤の吸収の防止など治療法となる. 歯周病には,もうーつ大事なフアクタ一がある. それは年齢である.年齢のなかでターニングポイントと考えられるのが50歳頃のことで, DNAの不完全な修復によって老化という現象が起きる.このDNAの修復が不完全であると,炎症だけではなく,老化やアポトーシスが待ち受ける.もちろん,ここにも老化しやすいが為に歯周痛が進行しやすいタイプというものが存在する.

 こういった点を踏まえると,われわれ人類は歯周病の進行具合や治癒過程に遺伝子の影響を受けていることになる. そこで,遣伝子診断か可能となると,個別化された治療もしくは予防プログラムへと発展する. つまリ,自分自身が歯槽骨や顎堤か吸収しやすいタイプだとわかれば,綿維芽細胞の収縮力が強くならないプログラムを取り入れ,そうすると管理は増えるかもしれないが, ブラッシングなどのセルフケア単純化できるのではないたろうか?

 歯科ではプロフェッショナルケアが確立されておリ,ポケット形成から重度歯周病への防止を行ってきたノウハウには長年の蓄積がある.今後はさらに,パーソナライズドケアの時代となるであろう.それも遺伝子の情報を元に.


芝崎龍典

愛知県 浅見矯正歯科, ITDN会員

ITDN-Tokyo「インプラント周囲骨吸収の発生機序」

 2016年12月18日(日), 年末恒例のITDN-Tokyo(代表:加藤英治先生・目黒区開業)講演会が「インプラント周囲骨吸収の発生機序」をメインテーマに,前明海大学歯学部歯周病学 講座教授宮田隆先生を講師にお招きし, 東京国際フォーラム会議室にて関催された. インプラント周囲炎が一部社会問題となっているが,対処法のみならずその発症機序はいまだ明らかではない.

 歴史的にはMombelliらが1980生代後半に「インブラント周囲組職に歯周病と酷似した病態を示す炎症性の組繊破壊」をPeri-Implantitis(インプラント周囲炎)と命名したことに始まるといわれるが,当時は機能後の管理の仕方,メインテナンス法などはまだ議論されてはいなかった.

 1998年からJournal of & Maxil-lofacial Implantに掲載されたMiyata らによる一連の論文−The Influence of Controlled Occlusal Overload on Peri-implant Tissue」はosseointegrationの崩壊と咳合の関与を具体的に論じたものとして今日でも全世界て多く引用される論文のーつである.

 今後増加傾向にあるインプラント周囲炎の社会への負の影響ははかリしれなく,論文の著者・宮田先生に直接お話をうかがうことは会の念願でもあった.炎症と力の両面からインプラント周囲骨吸収の機序を解明していくことは歯科医の社会的責務である. 本講演では,午前の部においてまず代表の加藤が「そこが聞きたい骨吸収!」と題し,特異な環境を有する歯科インプラントの粘膜貫通部について1.初期治癒期の軟組織の生物学的幅径獲得説による骨高径決定,2.治癒後のインプラント頚部応力集中による骨への力学的負荷の2点を,貫通部の骨吸収のKey pointとし,近年研究が進むアルカリヒート(AH) 処理によるチタン表面によるソフトティシュ・インテクレーションの可能性を示すことで,当日の主旨を提示された.

 次に,会員代表として筆者が「唆合と骨組織変化」のテーマで,有限要素解析によるインプラント周囲骨の応力解析結果を示すと同時に, ノカノセンサーとして注目される骨細胞による骨 増生と吸収のメカニスムを下顎隆起や 根分岐部病変なとの臨床所見と比較し.発表した. それを受ける形で午後の部では宮田 氏が,カニクイザルを用いた一連の研究の意図するところを苦労話を交えながら楽しく解説され,また.インプラントが埋入された海綿骨を渇たす骨髄液の力学的挙動に着目し,メカニカル ストレスによる血管内皮細胞の変化と単球系の遊走が周囲炎発生の機序に関与するという仮説を提示し,会場を沸かせた.

 最後は企業研究者や大学関係者も交え,1日を総括する討論が活発に行われコメンテイターとして参加された 東京歯科大学教授吉成正雄先生から 「今後の研究に新しい示竣を与えた有意義な1 日とのご感想をいただき, 盛会に幕を閉じた.本講演会インプラント周囲炎の発生機序の解明への大きな一歩になったであろうことは間違いない.


吉野晃

東京都:吉野デンタルクリニック

2017-03-21

UCLA西村一郎教授講演会 歯周病を,いま一度考える Periodentitis. Who, When, Why, How, Any cure?

 2016年9月27日(火),庭のホテル東京にてITDN-Tokyo歯周病勉強会が行われた. 今回の講演会UCLA歯学部教授 西村一郎先生を迎えて,メタアナライシスや最近の論文などを元に,現在行われている歯周病に対するアプローチの是非や,今後の展開を占う内容であった.その内容や切り口に,会場にいる医療従事者の誰もが驚いたに違いない.

 統計から得られた歯周病の病態についての説明後,こんな意外な言葉から本題に入る. 「Barrier Tissueとしての口腔粘膜を考えてみる」である.

 日常臨床で,歯の喪失後の顎堤吸収が個人によってかなり違うことを経験しないだろうか? 西村教授は,その解明のために免疫細胞である線維芽細胞の,“ある働き=コラーゲン収縮”に注目している.なぜか? 顎堤吸収に至るには,まず歯肉結合組織の線維が反応し,その創傷治癒過程で,口腔粘膜組織の過度な収縮力を受けるからだ.しかし,なかにはその収縮が強いものと弱いものがいる.その場合では,顎堤吸収にも大きな差かあるというのだ.その違いはどこから来るのか? その答えは歯肉収縮型遺伝子である Fibroblast Growth Factor Receptor 1 Oncogene Partner 2/Wound Inducible Transcript-3.0(以下. wit3.0)に よるところが大きいと西村教授の研究グループによって明らかになった.講演はここからヒトゲノムや人類の祖先ネアンデルタール人クロマニョン人についてまで話が及ぶのだが,この収縮力=顎堤吸収の差の正体はwit 3.0 活動の程度によるもので,それを利用すればポケットの深さのコントロールや顎堤の吸収の防止など治療法となる. 歯周病には,もうーつ大事なフアクタ一がある. それは年齢である.年齢のなかでターニングポイントと考えられるのが50歳頃のことで, DNAの不完全な修復によって老化という現象が起きる.このDNAの修復が不完全であると,炎症だけではなく,老化やアポトーシスが待ち受ける.もちろん,ここにも老化しやすいが為に歯周痛が進行しやすいタイプというものが存在する.

 こういった点を踏まえると,われわれ人類は歯周病の進行具合や治癒過程に遺伝子の影響を受けていることになる. そこで,遣伝子診断か可能となると,個別化された治療もしくは予防プログラムへと発展する. つまリ,自分自身が歯槽骨や顎堤か吸収しやすいタイプだとわかれば,綿維芽細胞の収縮力が強くならないプログラムを取り入れ,そうすると管理は増えるかもしれないが, ブラッシングなどのセルフケア単純化できるのではないたろうか?

 歯科ではプロフェッショナルケアが確立されておリ,ポケット形成から重度歯周病への防止を行ってきたノウハウには長年の蓄積がある.今後はさらに,パーソナライズドケアの時代となるであろう.それも遺伝子の情報を元に.


芝崎龍典

愛知県 浅見矯正歯科, ITDN会員

ITDN-Tokyo「インプラント周囲骨吸収の発生機序」

 2016年12月18日(日), 年末恒例のITDN-Tokyo(代表:加藤英治先生・目黒区開業)講演会が「インプラント周囲骨吸収の発生機序」をメインテーマに,前明海大学歯学部歯周病学 講座教授宮田隆先生を講師にお招きし, 東京国際フォーラム会議室にて関催された. インプラント周囲炎が一部社会問題となっているが,対処法のみならずその発症機序はいまだ明らかではない.

 歴史的にはMombelliらが1980生代後半に「インブラント周囲組職に歯周病と酷似した病態を示す炎症性の組繊破壊」をPeri-Implantitis(インプラント周囲炎)と命名したことに始まるといわれるが,当時は機能後の管理の仕方,メインテナンス法などはまだ議論されてはいなかった.

 1998年からJournal of & Maxil-lofacial Implantに掲載されたMiyata らによる一連の論文−The Influence of Controlled Occlusal Overload on Peri-implant Tissue」はosseointegrationの崩壊と咳合の関与を具体的に論じたものとして今日でも全世界て多く引用される論文のーつである.

 今後増加傾向にあるインプラント周囲炎の社会への負の影響ははかリしれなく,論文の著者・宮田先生に直接お話をうかがうことは会の念願でもあった.炎症と力の両面からインプラント周囲骨吸収の機序を解明していくことは歯科医の社会的責務である. 本講演では,午前の部においてまず代表の加藤が「そこが聞きたい骨吸収!」と題し,特異な環境を有する歯科インプラントの粘膜貫通部について1.初期治癒期の軟組織の生物学的幅径獲得説による骨高径決定,2.治癒後のインプラント頚部応力集中による骨への力学的負荷の2点を,貫通部の骨吸収のKey pointとし,近年研究が進むアルカリヒート(AH) 処理によるチタン表面によるソフトティシュ・インテクレーションの可能性を示すことで,当日の主旨を提示された.

 次に,会員代表として筆者が「唆合と骨組織変化」のテーマで,有限要素解析によるインプラント周囲骨の応力解析結果を示すと同時に, ノカノセンサーとして注目される骨細胞による骨 増生と吸収のメカニスムを下顎隆起や 根分岐部病変なとの臨床所見と比較し.発表した. それを受ける形で午後の部では宮田 氏が,カニクイザルを用いた一連の研究の意図するところを苦労話を交えながら楽しく解説され,また.インプラントが埋入された海綿骨を渇たす骨髄液の力学的挙動に着目し,メカニカル ストレスによる血管内皮細胞の変化と単球系の遊走が周囲炎発生の機序に関与するという仮説を提示し,会場を沸かせた.

 最後は企業研究者や大学関係者も交え,1日を総括する討論が活発に行われコメンテイターとして参加された 東京歯科大学教授吉成正雄先生から 「今後の研究に新しい示竣を与えた有意義な1 日とのご感想をいただき, 盛会に幕を閉じた.本講演会インプラント周囲炎の発生機序の解明への大きな一歩になったであろうことは間違いない.


吉野晃

東京都:吉野デンタルクリニック

2016-11-22

カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する

知財の保存は古く先史代,羊飼いが小石(計算calculs:歯石の語源)を用いて頭数を記録(アーカイブ)したのに遡る,石窟壁画の象形は文字となり,書籍や新聞など,現在までに膨大なデータとなった.著者らはすべての図書館蔵書を自動スキャンし,電子化する計画を立てた.当初,著作権個人情報問題で危ぶまれたが,"言葉"の出現頻度と歴史軸情報だけで人類文化を可視的に分析した論文が2010年Science誌に掲載され,同時にそのデータはGoogleで公開された,受験英語の不規則同士は規則化されつつあり,有名人(クリントンBeatles)名の出現率には半減期がある.事件や戦争などの負の集団記憶には忘却曲線がある.逆に脳磁計を用いて記憶を外部化し,死後も自己保存をめざすSF張りの構想もある.エッ! あなたのそのひと言もBig Data?

2016-07-04

 現在の多細胞生物はすべての材料(Cell Staff)や動力源(ミトコンドリア葉緑体)、細胞接着、公共機能(微生物群落のクオラムセンシングから)等の仕組みを微生物から拝借して進化している。古細菌細菌ウィルスは、遺伝子の水平伝播により素早く変化に対応し地球創始期の環境さえ変えた。24億年前シアノバクテリア酸素を生み出し大気オゾン層を形成し有害紫外線をカットした。02濃度上昇によるCO2やメタンなど温室効果ガス減少で全球凍結が起こった。火山活動などで再度気温が上がった際、氷河などが地中のリンを削り出し海水中リン濃度を上げ、これを利用し(核酸、骨格、ATP等)生命の多様性大爆発が起った。微生物は死後も地中深くエネルギーを蓄え、地球環境〜ヒトの腸内細菌まで、今も我々を支配し続けている!

2016-06-02

9月27日 ITDN主催セミナーのご案内

歯周病を、いま一度考える”の表題で、2016年9月27日、庭のホテル 東京 2F“燦“会議室(JR水道橋駅東口 東歯大新館 白山通り向かい)セミナーを開催します。

  

米国ではOne Healthという新しいコンセプトのもと、ヒト、動物、さらに環境の健康を同時進行で推進するという動きが出てきた。歯周病は犬や猫といったペット動物でも多く見られる。人と動物での類似点、あるは相違点という観点から、新しい病態論が生まれてくるかもしれない。さらに、Drug Screeningや16S metagenomicsといったビッグデータが、これまでの仮説を証明する研究方法論に新しい方向性を示し始めた。本セミナーでは、歯周病を今一度、一見無関係と思われるようなデータから考証してゆきます。

UCLAの西村先生にご講演いただいます。皆さんふるってご参加下さい。

http://implant-kato.com/archives/nishimura_20160927.pdf

2016-03-29

ITDN主催セミナーが歯科展望に掲載されました。

2015年12月27日東京国際フォーラムで開催したITDNインプラントセミナーの内容について、UCLAの石島先生より、歯科展望 Vol.127 2016年4月に寄稿、掲載されましたのでアップいたします。

:歯科展望記事はこちら

2016-02-14

ヒトラーの科学者たち

 2つの世界大戦ドイツ最高峰の科学者たちを翻弄した.

ロンドン空襲のV2ミサイル開発のファン・ブラウンはユダヤ人虐待の汚名を背負い戦後米国帰化し,アポロロケットを月に導いた.一方,アインシュタインに天才と評されたハーバー(ノーベル賞受賞)は,毒ガス兵器開発で妻(初の女性博士)を自殺に追いやり,ユダヤ人排斥で研究所を追われ,自ら開発したチクロンBは600万の同胞の命を奪った.

また排斥された多くの学者は米国原爆開発に協力した.現代科学はパトロン(科研費請求しかり)に異様に依存的である.ニュートリノが注目の日本だが,ブレずにいかないと科学も道を誤る. 負の歴史もあるが闇に目を向けてこそ見える光もある!

2015-12-06

THE SIXTH EXTINCTION

米国自然史博物館の足元プレートにこうある.”地球規模の気候変動により種の大絶滅に5度遭遇した”.そのたび役者が総入れ替えになった舞台のように繁栄生物が変わった.最後は白亜紀末に起き,その地層のイリジウムの多さから地球外物体の衝突説が1980年代に認められた.”人類の出アフリカ”により6度目がすでに起動している・・・! 人の分布にともない,両生類の大半の種が絶滅し,鳥類,大型哺乳類の乱獲(繁殖と成体への期間が長いため),果てはネアンデルタール人に至るまで(4%のDNA痕跡をわれわれの遺伝子に残し)絶滅に追いやった. 生命進化樹頂点の人類, 温暖化環境破壊により今, 自らの枝まで切り落そうとしている!?

6度目の大絶滅

6度目の大絶滅

2015-05-14

「インプラントにおける治癒の病理」講演会

2014年12月21日(日)表記がITDN-Tokyo主催(東京国際フォーラム)にて行われた.「新編治癒の病理」(2011),「やさしい治癒のしくみとはたらき」(2013)著者の下野正基(東歯大名誉教授)先生にインプラント臨床の疑問に答えて頂いた. 

 講演に先立つ打ち合わせにて“貴君(きみ)がボケで私が突っ込む漫才調でやりましょう〜!?”と,ご提案を受けた.“ボケる“のは得意なので早速,前振りの症例を探し始めた.

閑話休題–(–それはさておき–),本会では, 1.顎骨内病変(根尖病変・エナメル上皮腫など)の発生機序と骨内欠損の治癒.2.咬合力とインプラント周囲骨組織として,過度な力が歯周組織に及ぼす変化について.3.インプラントと天然歯周囲組織の防御力の違いなどについて解説された.

⒈ではまず筆者がエナメル上皮腫区域切除後再建移植された腸骨にインプラント埋入した長期経過例と,嚢胞摘出や歯根端切除の骨治癒経過例を供覧し,下野先生にその発生機序と鑑別法,適切な処置と治癒機転を解説頂いた.

2.の力が歯周組織に及ぼす変化については、吉野晃先生(東京都北区開業)が骨は進化の過程で生命が揚陸した際の重力に耐えるためや,免疫機構内包のため役割が多様化した経緯を述べ,力とインプラントの関係について質問された.

3.では先の下顎骨区域切除移植骨症例では歯槽固有粘膜は無く口腔粘膜から直接アバットメントが貫通していることを示し,この部の治癒の機序や,天然歯周囲軟組織とインプラント周囲軟組織の付着の違いについて解説頂いた.

 インプラント周囲上皮の弱点として,内側上皮は非角化上皮から成るので天然歯付着上皮より3倍も遅いターンオーバーであること.CEJが欠如しており接着タンパクは一部のみの発現で弱く,インプラント周囲上皮には歯肉血管叢はみられず,従って歯肉溝滲出液による防御機構も期待できない.歯槽上線維群も部分欠如しており機械的障壁が低いなど.

 また初期の骨吸収(皿状骨欠損)原因として,歯根膜が無く炎症・免疫応答が遅く防御が弱いためや,CEJがないため上皮先端の位置が骨頂の位置によって決まり生物学的幅径にも不利なこと,過度な応力については,矯正治療の知見から穿下性骨吸収(内部骨吸収)により血管のないインプラント周囲骨側からでなく,血管の多い(破骨細胞は循環血液の単球から分化する)骨髄側から短時間で広範囲な吸収を起こすなどが挙げられた.

−−−−恩師である下野先生に講演を依頼するにあたり大学の友達に,その人となりをリサーチした.1. 一流の研究者で紳士である.2. 留学先がミラノイタリア通.3. 北海道出身のワンゲルOBで日本100名山のうち過半数以上を登破.なるほど!と思わせる反面,自筆の挿絵(シモノ画伯作)を本講演のため,わざわざ画材屋で絵筆を調達して描いていただいた大作を多用しての解説は,我々素人の脳みそに少しでも記憶を残し,今後のヒントを与えたいというパッションを感じた.“ボケる”どころか,講演後も暫くプッチーニの“誰も寝てはならぬ!”が私の頭の中で鳴り続いていた−−−−

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双子の遺伝子「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける

 自然発生のクーロンともいうべき一卵性双子の疫学研究より,盲信されてきたメンデル/ダーヴィン以来の遺伝学の定説※に異を唱える本書(※:遺伝子は生命の不変的根源で運命は変えられない,環境要因は遺伝子に永続的に作用しない.先の代が受けた後天要因(エピジェネティクス)は受け継がない).見た目もDNAも同じ双子,実は発生して母体にいるときからすでにホルモンをはじめ,激しい世間の荒波に翻弄され,大きく運命片方だけが肥満やがん体質,ゲイ,等)は分岐していた! それは祖父母の時代の飢餓や戦争PTSDさえも受け継いでしまう.IPSなどの培養操作や体外受精時の皿のBPA(環境ホルモン)微漏も例外ではない

―――エピジェネティクス恐るべし!!

2015-01-04

UCLA西村一郎教授 「疼痛を伴う神経障害という難病に立ち向かって」講演会

 2014年7月28日(月)東京歯科大学水道橋本館会義室にて表記の講演がITDN-Tokyo/歯周病勉強会主催にておこなわれた。2000年より年一回開催の西村講演は独特で、濃密なディスカッションに重きをおいた参加型の内容だ!

 “最近,司馬遼太郎に凝っていてネ!”数年前の暑い昼下がり UCLAのオフィスを訪ねた際の教授のこんな言葉を、講演後思い出した。

閑話休題–(–それはさておき–)、今回は三叉神経痛をはじめとする顎顔面痛の発現の謎解きから始まる。神経の細胞膜を貫通するタンパク質でNa+を制御するVoltage-gated Naチャンネル(NaV)は現在10種程確認され、各々異なる神経障害に関与している。この合成を阻害する遺伝子mRNAを細胞に導入すれば治療の道が開ける。当然司令塔である核に指示を与えなければ成せないが神経細胞は特異な形態をしており、核を有する細胞質と末端線維は座骨神経等ではヒトで1つの細胞が1mにも達する。知覚神経ではその末梢が表皮直下まで来ている。

 血管・脊髄や経口投与ではなく、 今回その末梢皮下への注射と経皮投与(トランスダーマル)が試みられゼラチン(+10mvに荷電)を7.5:1比で遺伝子と混合した600nmのいわば人工ウィルス感染ともおぼしきデリバリー法の高い導入効率が示された。

 神経痛の強烈な痛みはNaV1.8が発現している細胞で認められる。 P11という低分子タンパク(P)はNaV1.8の設計図であるNaV1.8mRNAの細胞膜への移動をつかさどる。これを合成するDNAの一部 [1-127]のみを阻害できれば他のNaVへの副作用リスクも減る。

 低分子Pの研究より、新たな知見が得られた。最初細胞質内の核の近傍で合成されたNaV1.8が神経繊維末端に運ばれて来ると考えたが、その前駆のmRNA のまま、神経線維細胞膜に運ばれそこで転写合成されていた。また、NaV1.8mRNAは神経に傷があっても無くてもその量は変らず、その亜型d−NaV1.8 mRNAが有意に増える。この病変mRNAは3`UTR末端部が大きく変異しておりこの部分直接への遺伝子治療が現在模索されている。

 ディスカッションでは、この荷電ゼラチンにmRNAや低分子Pを包み、知覚のみならず運動神経にも経皮や舌粘膜下よりの神経導入の可能性があることや、新たに示された細胞膜近傍でのmRNAからNaVへの転写のメカニズム、麻酔薬との混合による臨床応用、神経損傷の大きな症例での応用、巷の話題STAP細胞研究の行方にまで及んだ。

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−−−−2年前のUCLAでの暑い日、“司馬は学生時代、蒙古研究会に入ってテネ!?”この遊牧の民は、羊の群れの中にあり常に移動し姿を変え、その土地での文化や環境に適合し、やがて融合し大陸を掌握し溶け込んで新たな文化を各地に生んでいった−−−−.一つの流れが次の流れを呼ぶ今回の内容は、そんな西村教授の話しを彷彿とさせた。

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ダーウィンを数学で証明する

ヒトゲノム配列解明から早10年!! ダーウィン進化論に有利な経験的証拠はあるが、数学的証明(アプリオリ)がないので”メタ生物学”を提唱する著者、ラ・メトリは、1748年に人体(ハードウェア)を機械構造と同じに数理的に論じようとした。本書はDNAをプログラミング言語に擬えて”人間ソフトウェア論”を提唱し、神化史(エラの時期さえある)を発生中の胚で繰り返し人体をアルゴリズムで組み立てている。進化は確立的変異をともない、この最短期間がNなら”シラミつぶりの探索(=2*N)”より実際ははるかに早いN2〜N3だ・・・! ついに、人類は”命”の最終形も計算しうるのか!?

2014-08-19

2014年12月 ITDN講演会 

治癒の病理 インプラント

上記講演を2014年12月21日 10:00〜16:00 東京国際フォーラムG棟 会議室にて開催いたします。

真理探究する多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。


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詳しい情報、お申し込みはこちら

http://www.implant-kato.com/archives/201412semi.pdf

アナロジー思考

ゲイツやジョブスが巨大企業のラボに眠っているアイデアを具体化してPC革命がなされたように、できるだけ遠い分野の技術を借りてきて組み合わせる思考を”アナロジー(類推)”と呼び、たとえば、電力のインフラが、企業個別発電から電力会社の発電所に集約した経緯を類推し、インターネットのクラウド化は生まれた。科学や物理の分野でも多くの発見をみている。柔らかい発想で遠くから借りてくるオープンマインド。たとえ話でうまくプレゼンする訓練や比較力が鍵だ!では、あたなの類推力は?!謎かけです!

 のれんとかけて、セールスマンと解く。その心は??



答:外に出れば、営業中

アナロジー思考

アナロジー思考

2014-06-08

UCLA西村一郎先生講演会 2014

「疼痛を伴う神経障害」という難病に立ち向かって-研究室の声

上記講演を2014年 7月28日(月)19時〜21時

より、東京歯科大学水道橋病院にて開催いたします。

終了後 場所を改め懇親会の予定があります。西村先生のご研究の内容や今後のテーマなどをカジュアルな雰囲気で話し合える絶好の機会です。多数のご参加をお待ちしております。

f:id:itdn:20140608234516j:image

詳しい情報、お申し込みはこちら

http://www.implant-kato.com/archives/semi_nsmr.pdf

2014-02-08

元素検定 The ELEMENT EXAMINATION

元素周期表”?を覚えてますか?!古代ギリシャ人が星空を眺めて万物の答えを求めたように、われわれは18世紀からこの科学の黙示録の解明と完成に挑み、この世の成り立ちを解き明かそうとしている。地球クラーク数、O(49.5)、Si(ケイ素25.8)、Al、FeCaMgの%順で、宇宙は、H、He、O、Cの順で構成されている。それぞれ、質量とエネルギーをもち生体内でも流れのなか、生き物の機能と形態を維持して治癒や再生に利用されている。生物化学防人たる歯科医師も臨床応用のロジックに本書のQ&Aを活用されては如何だろう!ではQ;ヒトの体内でもっとも多い(重量)のは水素炭素窒素酸素

元素検定

元素検定

2014-02-06

師走のITDN−Tokyo講演会 「インプラントのマテリアルセンス」

Implant & Tissue-engineering Dental Network Tokyo:代表 加藤 英治先生)主催による 講演会東京国際フォーラムにて開催された.2013年も残りわずか.年を締めくくるに相応しい真理を探究する師走講演会に多くの臨床家、研究者が集った。

今回のテーマ「インプラントマテリアルセンス」は、格段に進歩したインプラント治療において、改めて生物学的応答を検証し、近未来のインプラント治療の進むべき道を探るには、マテリアル研究開発のなかに多くのヒントがあるとの思いから、昨年夏に行われたテーマ「インプラントのバイオロジックセンス」を引き継ぐ形で企画されたものである.

インプラント周囲の生物学的環境を、「骨・硬組織」と「粘膜貫通部・軟組織」に分け、午前のセクションでは、コーディネーターである加藤英治先生が、「抜歯窩のバイオロジックセンス」をテーマに問題提起され、それを受ける形で小川哲朗先生(オリンパステルモ社長)が骨充填材の展望についてお話された。我が国でセラミクス人工骨が開発されてから40年になるが、各人工材料開発逸話からそれぞれの特徴、吸収置換型βリン酸カルシウムンに至るまでの経緯は、今後の人工骨の使用に大きなヒントを示すものであった。午後のセクションでは、粘膜貫通部の問題提起に対し、東京歯科大教授 吉成正雄先生が「ジルコニアの歯科インプラントへの応用」をテーマに、軟組織接触部位へのジルコニア材料の生物学的可能性と表面改質法のみならず、比較として酸化チタン光触媒作用にまで言及された。最後に改めて三講師にご登壇頂き、トータルディスカッションの時間を設け、会場からの講演内容に関する質問に対し、熱い議論が交わされ大変充実した1日となった.

東京オリンピックの招致と開催決定に沸いた2013年.歯科界からも日本発世界へ.本講演会が確実な一歩と成ったはずである.

以上

吉野 晃(吉野デンタルクリニック 東京都北区開業)

の寄稿より

2013-12-29

偶然の科学

Appleの復活劇は、ジョブズとは関係ない!!歴史は繰り返さないなど、「常識は盲点」だとする著者は、スモール・ワールド(6〜7人の知人をたどれば全人類と繋がる)理論で一躍脚光をあびた。本書では,人間は単純な自明の事項は予測できても複雑系社会を科学する事は不可能としている。モナリザが注目されたのも、i-Podの成功もSONYのビデオ規格やMDディスクの失敗も偶然の産物だ。Evidenceに基づくのが科学的予測とされるが、その尺度やデフォルトの方向、歴史の解釈など多くのバイアスインセンティブ(真の選択)をゆがめる。常識に囚われず、偶然を見抜くことこそが、成功の鍵だ!

2013-10-19

12月22日ITDN主催セミナーにご期待ください

インプラントの早期の安定性やインテグレーションの獲得は20年前に比べ格段の進歩がみられます。更なる飛躍への一考とし国際フォーラムにて下記テーマでセミナーを開催いたします。

「骨補填剤の展望」

オリンパステルモバイオマテリアル社の小川社長より

ジルコニアの歯科インプラントへの応用」

東京歯科大学口腔科学研究センターの吉成教授より

「抜歯窩と粘膜貫通部のバイオロジックセンス」

私加藤より

12月22日日曜日の9時半から開催です。

真理探究する多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。

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内容詳細/お申し込みはこちら

http://www.implant-kato.com/archives/1222semi.pdf

講演内容/抄録はこちら

http://www.implant-kato.com/archives/1222semi.pdf

2013-07-06

7月28日にて講演いたします。

安心・安全なインプラント治療のための最新トピックスと題し、7月28日10時より新宿NSビルにて講演をさせていただきます。シンプラントを活用したシミュレーション実習を行います。症例の相談も受付いたしますので、ご興味ある方は是非!

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2013-05-17

シムプラント・サージカルガイドの有効性について

POI-EX サージガイドシステム【的心】を用いて 確実にインプラント治療を行うために

最近は、安全確実なインプラント治療が要求される時代になってきております。CBCT、シュミレーションソフト、CAD/CAM 技術による企画化されたサージカルガイドなどデジタル技術も進歩してきておりますが、これらの先端技術を安全に取り入れる為、インプラント手術において、より安全により確実に治療を行うために必要なガイドシステムの取扱いについて、有用性などについてワークショップ、症例を交えながら幅広く解説します。

■期 日 平成25年6月30日(日)

■時 間 10 : 00~12 : 30

■定 員 20名

■参加費 無料

■会 場 ケーオーデンタル株式会社 城北営業所

    東京都板橋区志村3-20-18

ご興味ある方は、PDFをご利用いただきFAXにてお申し込みください。

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2012-10-06

天衣無縫 我が人生  /田川 清

震災支援のあり方にも参考になる本書。国連児童基金(ユニセフ)と混同されがちだが、最近は世界遺産関係で注目されている教育・科学・文化の国連機関(ユネスコ)。その活動に50年かかわった歯科医の半生記。途上国への学校建設(識字教育)や歴史文化遺産の保存は“カネやモノ“を送りつけただけでは根付かない。また継続しなければ後世に何も残せないと“120%で走り、チャレンジし、熱くなれ(怒れ)”を信条に次世代の育成に余念がない。何事も現地に出向き肌で感じないとダメ!インドネパール・べトナム・カンボジア・・出向いた先の国状も様々だが続けてこその価値がある。

2012-10-03

スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼンテーション

ご存知Appleの創始者ジョブズ!!リスクを恐れない天才は、この5年でP.Cのみならずi-pod.i-pad .i-phoneなど音楽産業やケータイのモバイルコンテンツに激変をもたらした。『シンク・ディファレント』をはじめとする記憶に残るMacのCMや新作発表会での彼自身の伝説的なプレゼンがある。本書では、商品を魅力的により簡単そうに見せるためスリムな構成と、わかりやいアナロジー(たとえ)を用い聴衆にアイ・コンタクトする口演法を紹介している。巨星が急挫して一年、残した言魂は数知れず。彼の生き方そのものが今後の市場開拓やプレゼンに語り継がれるバイブルとなるだろう!!

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

2012-09-03

真夏のITDN−Tokyo講演会 「インプラントのバイオロジックセンス」

 2012年8月5日(日),ITDN-Tokyo (Implant & Tissue-engineering Dental Network Tokyo:代表 加藤 英治先生)主催による 講演会東京国際フォーラムにて開催された.なでしこジャパンの快進撃の余韻がのこるこの日の外気温は34℃。真夏の太陽が照りつける有楽町には、多くの臨床家、研究者が集い、会場はロンドンオリンピックに負けない熱気につつまれた.

 「インプラントのバイオロジックセンス」と銘打たれた本講演会は、進歩著しい今日のインプラント治療において、生体応答や生物学的リサーチを考慮した日常臨床こそが、長期予後の獲得に不可欠との思いから、真理探究を志して企画されたものである.

 午前のセクションは、インプラントの生体力学をテーマに、筆者 吉野(東京都北区開業)が「構造力学とメカニカルストレスによる骨の変化」、河原優一郎先生(長野市開業)が「インプラントー骨接触率(BIC)と応力負担部位の評価」と題して,オッセオインテグレーションにおける力学的挙動についてそれぞれ講演した. 午後のセクションでは、「TE−BONEは腸骨移植を凌駕できるか?」と題して、長谷川晃嗣先生(東京都開業)が新規骨再生医療TE−BONEの臨床応用と可能性について言及され、山田将博先生(東京歯科大学有床義歯補綴講座 助教)が「抗酸化バイオマテリアルの臨床家研究」と題し、今後注目されるであろう抗酸化アミノ酸誘導体を応用した多機能性生体材料の現状について報告された。また、本会の代表で、一日を通して会をコーディネートされた加藤英治先生(東京都 目黒区開業)自らが、「インプラントのバイオロジックセンス」をテーマに、インプラント周囲組織のバイオロジックセンスを硬組織と軟組織の2局面に分け、多くの海外文献から科学的根拠を紹介するとともに、実際の臨床例を提示しながら長期経過と予後を報告された.

 ブローネマルクによるインプラントの発見から60年.その機能性から、臨床での普及速度に対し、生物学的考察が遅れている感は否めない。今回の講演会は、インプラン治療のさらなる発展のため、、今、検証の時がきていることを感じさせる一日となった.


 吉野 晃

 (吉野デンタルクリニック 東京都北区開業)

2012-01-03

ITDN/JMM共催「 医療安全に基づくインプラントガイドライン」

2011年12月23日(祝) ,新宿NSビルにおいてITDN-Tokyo (Implant & Tissue-engineering Dental Network Tokyo 代表加藤英治先生)・日本メディカルマテリアル株式会社共催による講演会が「医療安全に基づくインプラントガイドライン」と題して開催された。ITDN-Tokyo講演会は2000年より年1回開催されており、今回は座長に丹羽 健先生(愛知県一宮市開業)をお迎えし三名の演者の講演と参加者とのディベート形式で進められ、年末の祝日の開催にも拘らず多くの参加者が集い会場は熱心な質疑が交わされた。

 最初に加藤英治先生が「ガイドサージェリーと即時荷重の臨床」の演題で最新のアメリカインプラント事情を豊富に織り交ぜながらエビデンスとレビューより即時荷重には適切なケース選択とプランニング、治療術式の決定がより確実な成功への鍵になり即時荷重の長期的予後に関しても今後更なる検証が必要であると講演された。

 次いで鈴木龍先生(静岡県袋井市開業)が「一般開業医が行える医療安全優先の上顎洞アプローチ」と題して一般開業医がいかに外科的侵襲を抑えて上顎の症例を成功に導くための留意点や工夫を多くの臨床経験で得た症例を交えて、骨補填材、HAインプラントの変遷骨のリモデリング代謝を考慮してペーパーサージェリーを用いて綿密な治療計画の立案の重要性を講演された。最後に病院歯科において多くの自家骨による骨造成の症例をお持ちの鍋島弘充先生(愛知県名古屋市開業)は「病院歯科での医療安全基準に従った上顎インプラントメソッド」題して高度の骨吸収を認める難症例への自家骨による骨造成で欠損補綴を施行した症例の経時的変化のご提示頂き自家骨を用いた症例ではあらかじめ骨の吸収量を考慮した治療計画が必要であるとお話しされた。

 上顎骨へのインプラント埋入においては既存骨の状態、骨補填材の選択、埋入時期の決定、荷重の時期、審美領域の問題と多くの課題を考慮の上より予知性のある治療が望まれるところである。本年ITDNセミナーは 8月5日(日)東京フォーラムにて開催される。


岐阜県開業 折居恒典 

真夏のITDN−Tokyo講演会 「インプラントのバイオロジックセンス」

 2012年8月5日(日),ITDN-Tokyo (Implant & Tissue-engineering Dental Network Tokyo:代表 加藤 英治先生)主催による 講演会東京国際フォーラムにて開催された.なでしこジャパンの快進撃の余韻がのこるこの日の外気温は34℃。真夏の太陽が照りつける有楽町には、多くの臨床家、研究者が集い、会場はロンドンオリンピックに負けない熱気につつまれた.

 「インプラントのバイオロジックセンス」と銘打たれた本講演会は、進歩著しい今日のインプラント治療において、生体応答や生物学的リサーチを考慮した日常臨床こそが、長期予後の獲得に不可欠との思いから、真理探究を志して企画されたものである.

 午前のセクションは、インプラントの生体力学をテーマに、筆者 吉野(東京都北区開業)が「構造力学とメカニカルストレスによる骨の変化」、河原優一郎先生(長野市開業)が「インプラントー骨接触率(BIC)と応力負担部位の評価」と題して,オッセオインテグレーションにおける力学的挙動についてそれぞれ講演した. 午後のセクションでは、「TE−BONEは腸骨移植を凌駕できるか?」と題して、長谷川晃嗣先生(東京都開業)が新規骨再生医療TE−BONEの臨床応用と可能性について言及され、山田将博先生(東京歯科大学有床義歯補綴講座 助教)が「抗酸化バイオマテリアルの臨床家研究」と題し、今後注目されるであろう抗酸化アミノ酸誘導体を応用した多機能性生体材料の現状について報告された。また、本会の代表で、一日を通して会をコーディネートされた加藤英治先生(東京都 目黒区開業)自らが、「インプラントのバイオロジックセンス」をテーマに、インプラント周囲組織のバイオロジックセンスを硬組織と軟組織の2局面に分け、多くの海外文献から科学的根拠を紹介するとともに、実際の臨床例を提示しながら長期経過と予後を報告された.

 ブローネマルクによるインプラントの発見から60年.その機能性から、臨床での普及速度に対し、生物学的考察が遅れている感は否めない。今回の講演会は、インプラン治療のさらなる発展のため、、今、検証の時がきていることを感じさせる一日となった.


 吉野 晃

 (吉野デンタルクリニック 東京都北区開業)

2011-11-08

12月23日セミナー開催いたします。

医療安全に基づくインプラントガイドライン」と題し12月23日、新宿NSビル305号室にて10時〜16時まで日本メディカルマテリアル株式会社と共催でセミナーを実施いたします。私はそこで「ガイドサージェリーと即時荷重の臨床」

というテーマで講演をさせていただきます。興味ございましたら

是非ご参加ください。お申し込みの際は、添付のファイルをダウンロードしご活用くださいませ。

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2011-08-31


昭和60年 -東京歯科大卒、同付属水道橋病院総合科勤務

平成 2年12月 -都内勤務医医療法人和同会)を経て開業 (目黒区)

平成 7年 -医療法人祐清会理事長就任(現在港区目黒区大田区にて開業)

平成12年 - ITDN‐Tokyo設立・代表就任(学術医療研究関連会社,港区

平成16年 - New York University College of Dentistry Continuing Dental Education Programs ~20年

平成17年10月 -NYUCDE International Implant Program Certificate of Achievement(Oct.2005) 

平成20年2月 -NYUCDE International Implant Program Certificate of achievement(Feb.2008) 

平成19年 -目黒区歯科医師会理事(学術・保険担当理事)~21年

平成21年 -目黒区歯科医師会学術委員会委員長 ~23年

平成21年 -目黒区中目黒駅前再開発事業にともなう移転開業

2011-08-30

10月19日(水)東京歯科大学水道橋病院にて歯科再生医療セミナー開催!

UCLA歯学部教授 ワイントロープ再建生体工学研究所所長 である西村一郎先生を御招きしセミナーを開催いたします。場所は、東京歯科大学水道橋病院13F中会議室

開業医・一般/5000円  勤務医/3000円

懇親会 別途5000円 予定しております。

ご興味あるかたは、その旨ご連絡ください。

お問い合わせ カトウ歯科 FAX:03−3714ー1515 

加藤英治まで

“The Next Generation of Regenerative Dentistry” 

口腔領域における、骨欠損補填を目的としたバイオロジクスの開発は、ヒト由来あるいはウシ由来の多孔性乾燥骨片、ハイドロオキシアパタイトやベータ-TCPなどの合成素材をはじめ、最近では エムドゲンやリコンビナント製剤のBMP、PDGFといった細胞活性作用のある製薬製品と、きわめて盛んに行われてきた。これらは、主に骨増成作用のある製剤として、整形外科での治療から開発が始まり、そのままの作用機序を歯科再生治療分野に応用する形で用いられてきたものである。しかし、整形外科と歯科での骨欠損は、その病理から異なっていることが多い。例えば、BMP整形外科での適応症に脊椎固定術があるが、ここでの薬理作用は、隣り合う脊椎を新しい骨を生成して固定するもので、骨欠損を補填するものではない。

歯科分野では、まず歯肉の炎症や外傷から始まり、破骨細胞の異常な活性化を伴って、骨欠損を引き起こすことが多い。すなわち、歯科においては骨増成型ではなく、骨吸収予防型の再生治療を目指すことも十分考えられる。歯肉由来の骨吸収シグナルをインターセプトするような骨補填剤、骨吸収予防製剤など視野にいれた新世代の歯科再生医療の展開を議論する。

2011-05-26

"JFK暗殺" by ウィリアム・レモン

アメリカ、自由の国に選ばれた若き大統領。雨上がりのダラスに銃声が響く。それは頭上のビルか

ら、そして芝生の丘からも――。真実は陰謀による公開処刑か!? 最後の証人は今、歴史を覆す。


2001年9月11日、自分が何をしていたか記憶しているアメリカ人は多いという。同様に1963年11月22日あの瞬間何百万という場所でスナップショットの様な集団記憶がある。大統領が白昼公然と暗殺され、アメリカが純潔を失ったあの瞬間 ――。どの世代にも各々指標となる日付がある。

92年度アカデミー賞にノミネート7部門、受賞2部門の『JFK』は、社会派監督O・ストーンとケビン・コスナー演じるJ・ギャリソン検事が主役の秀作で、暗殺事件後のウォーレン委員会による“オズワルド単独犯説”に疑惑を投げかけている。当日、大統領と共に撃たれたコナリー州知事の担架からほぼ無傷の弾丸が発見された。委員会はこれが後部座席にいた大統領の背中にあたり喉から出てコナリーの背中に当り彼のわき腹を通り胸から出て手首を砕き最終的に太腿で停止し担架で見つかった(魔法の弾丸説)としている。しかも6秒間に3発を発射するのは単独犯では不可能である。劇中流れる元洋服店主のザプルーダー氏が撮影していた実写フィルムで被弾したジョン・ケネディが後方に、次いで左側に跳ね返る映像を見せられればいやでも、弾丸が背後の教科書ビルからだけとは信じがたい。政府の公式見解と世論との亀裂は、このフィルムが初めてテレビで公開された日に始まった。

教科書ビルの6階は今では博物館になっており、著者の1人フランス人ジャーナリストのウイリアム・レモンはここから取材を開始した。館長はUFOを信じないのと同様に陰謀説も信じていなかった。今だJFK研究者の論調には、どこか“X-ファイル”ばりのSFに似た響きがある。

しかし98年、突如風向きが変わった。40年間沈黙を守ってきた73歳のもう一方の著者、ビリー・ソル・エステスが主治医から癌を告知されたのだ。死を前にして彼は最後の証人としての責任を果すことを考え始めた。「アメリカ人はもうあきあきしているんだ、元々この国には批判精神なんてものは無いのさ、9.11テロで、それさえも麻痺してしまった。イラクを見てみろ。大統領が国民に嘘を付いたとは言わんが、誰も真実なんて気にしちゃいない。だからJFKのことも‐‐、事実は単純なのに皆探し回っている。真犯人はどんな手を使っても権力の座に就こうとした男の仕業さ」と告げた。

真相を理解するにはテキサスを理解することが必要だ。1963年のダラスは2003年より1863年にはるかに近い、アメリカの真の西部、つまりハリウッド化された無色のアメリカの姿とは無縁な土地で、テキサス人はコルト拳銃の銃声を子守唄に少しでも多くの土地を子孫に残そうと血の涙を流し東海岸のエリートに対する憎悪の中に育った世代である。南北戦争は過去のことではなくケネディー家をはじめとする東部のエスタブリッシュメントは敵なのだ。そんななか地元出身のリンドン・ジョンソン副大統領になったのは慰めになった。しかしJFKは次の選挙では彼と手を切ろうとしていた。アメリカでは真の勝者はなかなか決まらない、一方に東部のエリートもう一方はテキサス男。これは60年代のことか?2000年のことか?所属政党や年代は問題ではない。フロリダでのブッシュとゴアとの得票差をめぐる最高裁の内幕も63年ダラスの街角での惨事の現代版にすぎない。州の選挙人による間接選挙制度下、フロリダ州知事ブッシュの弟が責任者で「48年以来のテキサス流で選挙に勝った」と言われている。そして昨年テキサスは、また地元の人間をホワイトハウスに送り込んだ。

ジョンソンが初めてテキサス選挙に勝った48年、地元の権力は1人の保安官が握っており郡の開票は1人の判事が行っていた。彼らを味方に(金で)つけることが勝因となっていた。しかし10年前に死亡した人間まで投票したことが発覚、ジョンソンにまで捜査の手がのびていた(75年にこの判事自殺している)。そしてもう片方の勝因“金”はエステスら地元の利権にからむ富豪たちが担当していた農業公共事業、石油利権、軍事産業、彼らは世界屈指の金持ちでアメリカの政治を思いのままにできると信じて疑わなかった。

しかしエステスは62年にジョンソン失脚をねらうロバート・ケネディ司法長官(JFKの弟)によって57件の不正容疑で告訴された。免責と引き換えにジョンソンにいくら裏金を払ったか自白させようとした。彼が口を開けばケネディーはテキサス人をお払い箱にできる。そしてこの時期いろいろな事件が重なる。ジョンソンの秘書が収賄で逮捕され、地元軍事関連企業の資金提供者も関係を取りざたされ、61年エステスの不正を調べていた農務省の地元役人H・マーシャルが変死体で見つかった。自殺とされたマーシャルの家族は84年に裁判を起ししこれが殺人であることを立証した。この裁判ジョンソンの子飼、マック・ウォレスの目撃が証言されている。またJFK狙撃直後教科書ビル6階のダンボール箱から採取された指紋はオズワルドと2人の地元警官そして身元不明指紋が1人。今回の取材で新たにこれが33の点でウォレスと一致していることが判明した。

 本書ではもう1人重要人物が登場する。テキサス最大の墓地に勤める死体修復人ジョン・リゲットだ。彼は顔面を専門とする熟練者で狙撃当日JFKの顔面修復を秘かに依頼されている。大統領の検死は今でも議論の的だ。ダラス医師と、ワシントン医師の記憶は一致せず、また修復後の写真が公開されたためウォーレン委員会を始め諸説を生んでいる。このリゲットは74年にジョンソン大統領の代役を務め映画出演もしている人物をはじめJFK事件に関連のある7人の殺人等で有罪になり護送中に背中から射殺されたことになっている。(99年リゲットは元妻に目撃されている)73年にジョンソン大統領は亡くなったが、彼の元顧問らのグループ(政府高官やCIAFBI・地元警察内部)は今だ健在で事件の究明を阻んでいる。

西洋では紀元前ローマ帝国の時代から「王殺し」が続きそれは自由と平等の国、現代アメリカでも変わりは無い。映画『JFK』の中でも狙撃の報を聞いたケビン・コスナーは嘆く「アメリカ人でいる事がはずかしい--‐」と。71年に釈放されたエステスは、直後にジョンソンの元側近クリフ・カーターと会い、マック・ウォレスが死んだことを告げられた。そしてカーターは初めてJFK事件に直接ジョンソンが関与していることを話しだした。刊末はこの時のテープの冒頭で終わっている。リードテープのノイズの中から40年間の呪縛を解く声が響く「リンドン(ジョンソン)はマックに大統領を殺せなんて言うべきじゃなかったんだ。」(声の主カーターもまた、録音の56時間後に突然死している。)

――本書を読んだあとも皆さんが、無事なことを祈ります――?!

2011-05-11

"ケニア" by アーネスト・ヘミングウェイ

20世紀の巨人ヘミングウェイ誕生から100年

まさかの未刊行大作発刊。サファリの闇を破る鮮烈な曙光の中にキーウエストのパパが蘇る!!

「吸うかい!?ハバナだよ」眠気と70`s・ディスコの暗闇の中で、銀のケースが一瞬光った。講演で来日したニューヨーカーのDrに似合いの細身のシガーを貰った。スモーカーの友人が「本当はアメリカではイケナイはずですがネ」と私に耳打ちした。ためしに吸ってみると葉巻の独特の香りにむせた。

そういえば何年か前に、ドアを開ければフワリと飛びのれそうな雲の中を飛んでメキシコへ行った。夜、ホテルから街なかへ出てヴァン・ヘーレンのサミー・ヘーガーの店でたまたまやっていた、彼のライブを見に行った。トイレには“ドラッグを吸うな!”とか“車を忘れて帰るな!”とか書いてあり少々ビビッた。店は港に入っていたアメリカからの豪華クルーザーの客でごったがえしており、開演まえに陽気なメキシカンが売りに来たビールを飲んでいると鼻を突く匂いが立ち込めてきた。周りの客の目のやる先に、太いキューバ葉巻をくわえたヘミングウェイばりの白髭の大男がテキーラをやっていた。立ち込めた紫煙が、ひとしきり落ち着き朝靄のように垂れ込めた頃合いにサミーのお約束“パウンドケーキ”で幕があけた――――。

閑話休題

本書の原題“True at First Light”が意味するものはなんなのか?すべては大地の闇の中より胎動し一条の鮮烈な光のように生まれる。そんな夜と朝のはざまに真実が見えるサファリが彼の憧れの地だ。

初章には、こう書かれている。 “常に不思議な国がある。子供時代の一部だ。我々はその国々を覚えていて、ときどき、眠って夢を見ているとき、訪れることがある。夜、そこは、幼かったころと同じように素敵な場所だ。我々はいまアフリカにいて、壮大な山のふもとにある沼地のはずれの小さな草原のキャンプのテントで暮らしている。そしてここにはそういった国がある。我々は年齢的にいえばもはや子供ではないが、いろんな意味で子供であることは間違いない。それなのに、子供という言葉は軽蔑的につかわれる。“と。

物語のハイライトは彼の妻メアリがクリスマスまでにお尋ね者のライオンを仕留められるかを中心に進行する。幾日もその機会は訪れず、期限がせまった、運命の日、黄昏がせまる頃。ヘミングウェイがライオンの退路をふさぎじりじりと距離をつめた、彼の妻は、初弾を発射するためにライオンにギリギリまで接近していた。もし仕損じれば妻や仲間は手負いの猛獣の餌食だ―――。

遂に引き金はひかれ、事は成就された。彼らは、ジニー・フラスコからストレートのジンを回し飲みし、祝杯をあげた。それはスペイン製の古びた弾薬嚢のポケットに入れてある銀のフラスコで彼と苦楽を共にしてきた。 “私は、もう自分をあざむくのをやめて、存分に飲んだくれることにしたんだ、噂が正しとすればチャーチルはわたしの二倍も飲むそうだが、つい先日ノーベル賞を受賞したばかりじゃないか、わたしも酒量を増やしていけば、ノーベル賞を受賞するかもしれないぞ“と美酒に酔う。

ライオンを仕留めた夜の祝宴の後、興奮冷めやらぬ彼はハンティングの記憶をなぞり、最悪のシュミレーションにならなかった経緯に満足しながらフィッツジェラルドの「魂の真の闇夜では、時刻は常に午前3時だ」という1節を思い浮かべていた。

アル中でも、夜が怖いのでも、新しい一日を恐れるでもない者にとって、午前3時は最高の時間帯だ。恐怖とは子供の悪戯のようなもので、首をもたげてくるとわくわくするが、大人が相手にすることではない。他の者に責任を持つ立場にあるなら、恐るべきは真の切迫した危険で、それは反射的に感じる危険で、差し迫ると頭皮がちりちりするような感覚を味わう。そういう反応ができなくなったら仕事を変える潮時なのだ。“と、

その夜、彼は妙にリアルな夢をみた。夢の中で彼は馬になり、肩から上だけが人間だった。そして、体に変化が起きて人間に戻る瞬間までを経験した。深夜に目覚めた彼は冷たいシードルを喉に通したが、筋肉にはまだ夢の中で馬だった時の感覚を残していた。そこで彼は自分の言葉で魂とはどんなものか、表現しようと試みた。“おそらく、日照りにも枯れず、冬の寒さにも凍ることのない美しく澄んだ泉、それが魂に最も近いものではないか。”永遠にPureなものそれが彼の追い続けた魂なのだ。

本書のもう一方のハイライトは、彼に恋焦がれるカンバ族の娘ディバとの微妙な関係だ。それはアメリカ文明そのものである彼への恋情で、裏側には、遠い文明国が電気も通わぬ僻村の無垢な少女に与えた物質主義への無限の憧れへの弊害が込められている。彼女の粗末な部屋の壁には、“ライフ”誌から切り抜いた洗濯機、レンジ、ミキサーやマレーネ・ディートリッヒの写真がある。実は“ライフ”は彼のアフリカ行き直前に『老人と海』を一括掲載し、530万部を売りつくし、彼をアメリカンヒーローに決定付けた雑誌だ。

アフリカ滞在の最後に、妻メアリにベルギーコンゴに行くことをねだられる。しかしその一件には触れられず、サファリ・キャンプの夜、テントの中でライオンの遠吠えを聞きながら眠るシーンで本書は終わっている。

このラストは彼が意図した結末か?それとも別のシナリオを考えていたのか?今となっては知る由もない。

事実は1954年1月24日ヘミングウェイ夫妻を乗せたセスナ機はコンゴ行きの途中、マーシソン瀑布の上空で墜落、死亡の記事が世界を駆け巡った。一命は取り止めたものの後遺症は生涯彼を苦しめ続けた。本書はその彼が発刊を見ることなく、約40年のときを経て彼の息子により生誕100年を記念して陽の目をみた大作だ。刊末をつづるのはそれぞれの読者の役目かもしれない。

そう言えば、今年、エディ・ヴァン・ヘーレンのガン発病や仲たがいやらで長らく中断していたヴァン・ヘーレンの全米ツアーが再開された。

― あの夜、メキシコの陽に焼けたのか、酒のせいか?少し太めになったサミー・ヘイガーは煙の中から登場した。白髭のへミングウェイは半袖をさらに肩までまくし挙げ毛むくじゃらの二の腕を突き出し何か言っている。“Mas Tequila!!” ―

独特の香りで、あの暑い夜のことを思い出した。“午前3時、魂の真の闇夜”気が付くと私は少し酔って、まだ細身のシガーの煙の中にいた。