extra innings

2016-11-12

2016年アメリカ大統領選挙結果考

まず大前提とするべきなのは、今年が共和党にとっては奪還年にあたるということだ。第2次大戦後、民主・共和両党は基本的には規則正しく8年交代で政権を担当してきた。この流れが乱れたのはいずれもレーガン絡みで、1980年民主党の再選年であるにもかかわらずカーターを破って共和党政権を得たのと、1988年、民主党の奪還年であるにもかかわらず、激しく高まったレーガン人気の影響を受けて、レーガン政権下の副大統領であったブッシュ・シニアが当選した、この2回しかない。

今日、レーガンは国父扱いされているのだが、カーター政権の異常なまでの無能さとレーガンカリスマがあってこそ、レーガンはルーチンを乱してホワイトハウスを獲得したのであり、普通の政権と普通の対立候補ならば、奪還年には奪還すべき政党が勝つ、それはよほどのことがなければ覆らない。

つまり、今年は共和党が普通の候補を出してくれば、ヒラリー・クリントンが勝つ見込みはまず無かったのだ。今回は結果としてトランプが勝ったけれども、得票数で競り負けているように、トランプは決して強い候補ではない。

私は以前、「トランプが共和党の候補になって一番喜んでいるのはヒラリー民主党首脳陣」とブックマークコメントで書いたが、曲がりなりにも「ヒラリー優位」の構図が作り出せたのは、相手がトランプだったからである。そうでなければ、ヒラリーに対する拒否感情の大きさを思えば、ヒラリーには万に一つの勝利の可能性もなかった。

ヒラリー敗北の印象が強いが、実際にはポテンシャルに比してかなり善戦したのである。

トランプに対しても大きな拒絶があったのは確かだから、ヒラリーが勝つ見込みはかなり高かった。少なくとも予備選挙の段階ではそう考えられた。

私がこれは潮目が変わったと思ったのは、共和党予備選挙で、有権者がかなり増えていたのを見た時だ。各候補ごとの得票比率にしか焦点があてられていないが、全体のパイが大きく膨らんでいたのだ。つまりこれはトランプが新しい支持層を開拓した、通常であれば選挙にはいかない層を掘り起こしたということであって、その人たちは当然、本選挙にも行くはずである。民主党予備選挙ではそこまでの膨らみはなかった、つまりサンダースは、従来の若年有権者を支持層としてまとめたが、票田を新規開拓したわけではない。

トランプが勝つ見込みがかなり強まったと思ったが、それでもヒラリーが逃げ切れるのではないか、そう思いたかった。

後から見れば、もしヒラリーに勝機があったとすれば、サンダース副大統領候補にすることだった。そうすれば少なくともサンダースの支持者を取りこぼすことはなかっただろう。ケインを副大統領候補指名した結果、ヴァージニア州を得られたのだから(南部連合首都州である!)それだけを見ればそこは正解だったように見えるが、その結果、ラストベルト諸州を落としてしまった。

民主党の絶対地盤西海岸首都ワシントンイリノイニューヨークマサチューセッツニュージャージーメリーランドコネティカットデラウェアロードアイランドである。ここはそれこそレーガン級のカリスマでも出ない限り、民主党が取りこぼすことは「絶対に」考えられない。これだけで185票。後85票を積み上げればいいわけだが、通常は民主党地盤の、コロラドニューメキシコミネソタウィスコンシンペンシルベニアニューハンプシャーハワイを固めれば、オハイオヴァージニアフロリダアリゾナのいずれかを得れば勝つ。サンダース副大統領にしていれば、防衛しなければならなかったラストベルト諸州で勝てる見込みが出ていたし、そうなればオハイオヴァージニアノースカロライナでも勝てていた見込みがある。

そういう意味では、ヒラリーの敗因は、ウィスコンシンミシガンペンシルベニアを落としたことだ。ヒラリーは守りの選挙をやるべきだったのを勝ちに行ったのが間違いだった。これに限らずヒラリーには絶望的なまでに、政治センスがない。この人は本質的には活動家であって、政治的な能力がとても低い。私は彼女を有能だと思ったことは一度もない。

彼女が長らく「アメリカ女性第一人者」の立場にあったため、もっとふさわしい適任者、例えばオルブライトやコンドリーザ・ライスらが、前に進めなかったのはアメリカ女性にとっては不幸なことだった。彼女は「ガラスの天井」を持ち出し、女性であるために地位を得られないかのように言うが、女性であることはある程度のスター性も保証することであって、諸外国、アジア諸国でも女性指導者は出現している。韓国フィリピンが、アメリカよりも進歩的と言うことはあるまい。ヒラリーは女性でなければここまでは来れなかっただろう。

ヒラリーの敗北は彼女の退場を促すという意味では、この選挙戦で得られた唯一のポジティヴな結果である。

2016-08-27

高畑裕太が犯した性犯罪について思うこと

あー、やっちゃったか、というのが周囲の正直な感想だと思う。いつかやりかねないと思ってた、と。

純粋と言えば純粋なんだろうけど、どこか善悪の判断が弱いような、善悪の基準を持っていないような、そういう危うさが彼にはあった。それを愛嬌だけで乗り切ってきた、というのが彼のすごいところなんだけども。

僕は彼には何の同情もないけども、ちょっと普通の人ではないと思う。ここでいう普通でないというのは、障害者寄りではないか、ということだ。母子家庭で育って、母がいて、姉がいて、男の子が一人で、男子として考えても普通は性犯罪には走らないと思う。他の男子がそうなるとしても、彼の立場ならそうはなりにくいと思う。

人間はしょせんは他人は他人だから、まして異性であれば、衝動があれば相手の人格が見えにくくなるということは程度としてはあり得る。でも、母がいて、姉がいて、男として家族を守らないといけない、そういう気持ちになるのが普通だろう。そうならなければならない、という話ではないよ。そうなってしまう、という話だ。女性を、人間として見ることができる、男子としてはそういう立ち位置に彼はいたはずだ。彼の立場だったら性犯罪から母を姉をどうやって守るのかというのがテーマになるはずで、自分が性犯罪を犯すなんてあり得ない。僕は母子家庭の出ではないけれど、母がいて姉がいるので、特に姉は若い時はそこそこ綺麗だったので、わが身を顧みて野獣のような男たちからどう守るかということを気にかけないことはなかった。その眼で他の女の子を見ればその女の子は誰かにとって同じようにかけがえのない娘であり、姉であり、妹であり、とても「モノ」のように扱えるはずがなかった。

母子家庭の末っ子長男ってのはこれまで何人も見てきたけれど、高畑裕太のように、その影響が全く見受けられないというのはかなり特殊な人格だと思う。

そこが危ういな ― と僕は思っていた。

そもそも高畑淳子も売れた時期が遅い。名が知られ始めたのは金八先生くらいからで、高畑裕太はたぶん中学生になるくらいまでは、母親の名前を言っても周囲は誰も知らなかったんじゃないかと思う。だから甘やかされたボンボンというのともちょっと違う、そういう境遇にはなかったはずだけど、それでいて、見事に甘やかされたボンボンにしか見えないというのも、それがいいか悪いかは別にして、相当に特殊には違いない。

そういうことを考えると。

決めつけるのもよくないけれど。

教育とかしつけでどうこうできる代物ではない。人は、子供は、様々だ。教育でどうにかできるなら、犯罪を犯す人なんて一人も出てこない。

高畑裕太という人が、育てるうえでかなり手間がかかる、相当に難しい人であっただろうことは想像できる。

親の責任がどうこう、という前に、これはきっとお母さん相当苦労したんだろうなという感想しか浮かばない。

親の責任で言えば22歳なんだから、まったくないというわけにもいかないだろう。これが30歳とか40歳ならともかく、成人してまだ2年、大学に行っていたら卒業もしていないような年齢、40歳の男が犯罪を犯したのとはわけが違う。

それでも、彼を育てるのはかなり難易度が高い仕事だったろうな、と思う。特に母親一人で。

2016-07-27

誰だ鳥越俊太郎を擁立したのは?

私は鳥越さんを有能だと思ったことが一度もないので、鳥越さんを擁立しようと思った人が野党上層部にいると言うことの方が、2016年東京都知事選鳥越俊太郎候補の数々の失態よりも問題だと思う。保守分裂もあって、宇都宮氏でまとまっていればおそらく野党は勝てた。石田純一氏ですら鳥越さんよりはマシだったと思う。

先日、何人かのニュースキャスターが集まって、その中には鳥越俊太郎氏もいたが、与党報道局への圧力について批判をしていたが、具体的なことは提示できていない、放送行政の仕組みと放送法を理解できていない、少なくとも遵守する姿勢がない、等々で、かえって赤っ恥をかいていた。

それを言うならば少なくとも普段の姿勢で、昨年週刊文春誌上に掲載されたSMAPの元マネージャーに対する公開パワーハラスメントに対して一言でも批判しておけばいいのである。元ミスユニバース女性タレントが、性的なサービスの提供を暗に大手芸能事務所社長から持ち掛けられた、それについてでもコメントを出せばいいのである。

国民はとっくに「じゃあなりすと」さんたちの仕事なんてしょせん「ごっこ」に過ぎないと知っている。かけらでも尊敬されるとでも本気で思っているのだろうか。

そういう部分はうやむやにして、仲間内の感覚だけで選ぶからこういう人が候補になってしまうのだ。

民主党の結党以来、私はずっと民主党に投票してきたけども、民主党/民進党の周囲にいる人たちは当然、その支持者たちばかりだ。その仲間内の、マスターベーションめいた同調におぼれてはならない。

民主党の三人の元首相のうち、鳩山氏は論外としても、野田前首相民主党支持者には評判が悪い。民主党支持者以外ではおそらく野田前首相評価が一番高いだろう。それがなぜなのかを考えなければいけないと思う。

2016-05-18

立法府の長

安倍首相が自分は立法府の長だ、と発言したことについて、当然、批判が出ている。制度的には彼は行政府の長ではあっても立法府の長ではないのだから、当然ではある。

ただ、議院内閣制にあって、内閣総理大臣内閣総理大臣として行政府を掌握し、与党党首として立法府を掌握しているのは制度的な実態なので、実質的には安倍首相立法府の長、というか立法府において一番影響力のある個人というのは間違いない。

議院内閣制というのはそういう制度なのだから。

そういう実態があるときに、名目でいや立法府の長は国会議長であり云々とくさすのはクイズ的、腐儒者的退廃に見えなくもない。三権分立云々を言うならば、議院内閣制はそもそも三権分立を徹底していないのであって、虚構的な三権分立にのっとって安倍首相の発言をやいのやいのと言うのも、知的退嬰にしか見えない。そういう人たちは国家制度というものについてきちんと考えてみたことがあるのだろうか。

日本国憲法の基本の設計思想は、国会は国権の最高機関と規定がある以上、国民公会的な議会独裁を念頭に置いている。そもそも三権分立は補助的な意味しか与えられていない。

問題は、国会が主であり、内閣が従であるべきであるのに、内閣総理大臣国会議員の中から国会指名によって選出される規定があるためにかえって、一人の人物が行政府立法府の双方を支配することになり、その人物の前において国会が従になる、つまり内閣国会が従う構造が実態として出現することだ。

こうしてみると議院内閣制における首相は、大統領制における大統領よりもはるかに強大な権限を持っていることになる。実態として存在もしておらず機能もしていない三権分立金科玉条のようにあたかもそれがあるかのように泣き叫ぶ者をインテレクチャルとはとても呼べない。

2016-05-03

小遣い制の話

家計管理。うちの場合は、共稼ぎ、子供なし、なので、状況的には特殊かもしれない。生活費は折半、貯金、保険、投資の部分は話し合って、合意できる分については、それぞれが「支出」し、そこから更に残る分については当人の自由でやっているので、当人の自由の範囲内で何を買おうが何をしようが気にもならない。

自分が稼いできたものではないカネについて、キリキリして怒ったり不機嫌になったりすることほど醜悪なことはないと思っている。家計を完全にひとつにするということは、好むと好まざるとにかかわらずゼロサムゲームに巻き込まれることになるので、醜悪な感情に巻き込まれるリスクを負うことになる。

イラク油田クウェート油田が地下でつながっていて、クウェート原油を増産すればイラクの取り分が少なくなってその不和が湾岸戦争を招いた、みたいなことになるわけだ。

自分の親であれ配偶者の親であれ、親が困窮しているならば子が援助するのは当然だ、と僕は思うが(まあ、普通の親子関係の場合はね)、それですら配偶者の反対で出来ない、という例は結構あるようだ。人の情として、切り捨てられるはずもない相手の親を含めて抱え込む覚悟がないならば、何のために結婚していているんだろうか。いや、持ち家のローンがあってとか、子供の学費がとかそれなりの理由はあるのだろうが、家族の誰かが困窮している時に、家を持ったり子供を大学に行かせる必要があるのだろうか。優先順位が狂っているように思えてならない。

うちの場合はそういうわけだから、もし離婚するとなれば財産的にはわりっとすっぱりと分けやすいのだが、これは同級生同士が結婚して(つまり同年齢)、子供など共通して支出すべき案件が少ない世帯だから出来ることかも知れない。逆に言えば家計が基本的には分かれているため、経済的な理由からはわざわざ離婚するようなトラブルも起きにくいのだが。

専業主婦は経済的には自立していないのだから、社会的にはかなり不利な立場になりやすいのだが、おそらくそれを補填するために、日本では家計の全権を主婦が掌握することが多い。日本人女性と外国人男性が結婚した時にトラブルになりやすいのがこの家計の管理権の所在であって、外国人男性は「どうして僕のお金をキミが管理するの?」と思うらしい。僕は日本人だがまったく同じことを思う。

フェミニストは、家計管理権を掌握する専業主婦、というわりあい日本独特の風習を、「面倒なことを押し付けられているだけ」という被害者意識文脈で解しがちだが、さすがに無理がある解釈だと思う。以前、テレビで専業主婦の女性が泣きながら、「家計管理を夫が任せてくれないのです」と訴えていた時に「それはひどい」という雰囲気になっていた。妻として尊重されていない、という不平不満になるほど家計管理権は既得権益なのであり、日本の専業主婦が歪だと思う一つの理由だ。

カネを管理したいならば働けよ、と思う。この、妻が働かない問題も外国人男性と日本人女性との結婚では争点になりがちなテーマだ。

まあ、小遣い制の話も、日本的専業主婦制度も、日本独自の歴史的な経緯からそうなっているわけで、ただ、男女共同参画社会では従来型の専業主婦モデルはロジック的には維持できないのだから、まずもって女性の側が意識を変えるべき問題だと思う。

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