extra innings

2017-02-08

佐藤康光日本将棋連盟新会長就任を受けて

つい、佐藤モテ光、と書いてしまいそうだが、三浦九段の、冤罪事件、と言っていいだろう、この事件の余波を受けてモテ光丸は嵐の船出となった。どれほどの労力を割かなければならないのか、まさに火中の栗を拾ったという感じであり、今期の順位戦の成績が芳しくないこともあって、おそらくA級から陥落するだろう。

誰にとっても悲劇的な事件だった。一番気の毒なのは先輩の中に放り込まれてややこしい事件に関わらざるを得なかった佐藤天彦名人ではなかろうか。糸谷前竜王竜王位を防衛していれば避けられていたのかも知れない。言っても詮無いことだが。

三浦九段が不正をしていたかどうか、それは当人にしかわからない。不正をしていたとしても、客観的な証拠は挙がらないだろうし、不正をしていなかったとしても、完全な潔白を三浦九段当人でも証明は出来ない。だがそれは最初から分かっていたことである。まさしく、羽生三冠のいうとおり、どうなっても灰色にしかならない、そうである以上推定無罪という対応しかありえない。

社会人なら五秒で出来る判断である。渡辺竜王告発は無理筋だなと。

棋士ならぬ身であれば棋士の直観は分からない。今回、告発に動いた棋士が一人二人ではなかったことから、棋士の直観としては相当なクロという心証があったのだろう。だがしょせん直観でしかない。

日本将棋連盟法治国家における法人であるから、心証などで動けるはずがない。子供でも分かる理屈だ。

それを動いてしまったのだとしたら、谷川前会長や他の理事たちの責任は非常に重い。谷川前会長は私が一番敬愛する棋士なので、こういうことになってしまって本当に残念だ。人格的には米長前々会長は谷川さんの足もとにも及ばないが、あの人ならば少なくともこういう勘所で判断を間違えることはなかったはずだ。片上大輔常務理事をやっていて、東大法学部を出ていながら一体何を学んだんだろうか。もともと高くなかった私の中の片上株がストップ安である。

そもそも渡辺竜王は三浦九段を嫌っていたし、公言して批判もしていた。その批判の内容は若手に勉強会での成果を聞き出すのはいかがなものか、というものだったけれど(文体はもっと激しかった)、聞き出して何が悪いのだろうとしか私は思わなかった。棋士が強くなるために努力して何が悪いのだろう。やれることはやるべきだ。もちろん若手に圧力をかけたとかならば問題だけども、そもそも若手だからとちぢこまるような将棋界ではなかろう。三浦九段よりも10歳も年少の渡辺竜王がそもそもあれだけ無礼な口を叩いたのだから、若手への圧力など無いに等しい。

私は渡辺竜王の言は言いがかりでしかないと思うが、棋士の姿勢としては支持する人もいるだろう。棋士観が根本的に違っているということだ。

渡辺竜王の正義感覚から見れば最初から三浦九段は真っ黒に見えていたはずで、好き嫌いは個人自由だとしても、相当な圧力を加えて将棋連盟を引っ張ってしまった。

このことについて渡辺竜王らの責任が不問に付されることがあってはならない、と私は思う。

単純に言って今回の件はすでに冤罪として決着している以上、三浦九段冤罪に追い込んだ人たちと「職場で顔を合わせる」ことを日本将棋連盟が三浦九段に強要することが出来るかどうかと言う話である。

日本将棋連盟第三者ならばともかく、今回は過失を行った当事者である。

渡辺明竜王島朗九段久保利明九段橋本崇載八段あたりはコンプライアンス上、除名処分にして将棋界永久追放にしなければ収まらないのではないか。彼らが残留できるとすれば、三浦九段当人から赦しを得た場合のみであろう。

2016-11-12

2016年アメリカ大統領選挙結果考

まず大前提とするべきなのは、今年が共和党にとっては奪還年にあたるということだ。第2次大戦後、民主・共和両党は基本的には規則正しく8年交代で政権を担当してきた。この流れが乱れたのはいずれもレーガン絡みで、1980年民主党の再選年であるにもかかわらずカーターを破って共和党政権を得たのと、1988年、民主党の奪還年であるにもかかわらず、激しく高まったレーガン人気の影響を受けて、レーガン政権下の副大統領であったブッシュ・シニアが当選した、この2回しかない。

今日、レーガンは国父扱いされているのだが、カーター政権の異常なまでの無能さとレーガンのカリスマがあってこそ、レーガンはルーチンを乱してホワイトハウスを獲得したのであり、普通の政権と普通の対立候補ならば、奪還年には奪還すべき政党が勝つ、それはよほどのことがなければ覆らない。

つまり、今年は共和党が普通の候補を出してくれば、ヒラリー・クリントンが勝つ見込みはまず無かったのだ。今回は結果としてトランプが勝ったけれども、得票数で競り負けているように、トランプは決して強い候補ではない。

私は以前、「トランプが共和党の候補になって一番喜んでいるのはヒラリー民主党首脳陣」とブックマークコメントで書いたが、曲がりなりにも「ヒラリー優位」の構図が作り出せたのは、相手がトランプだったからである。そうでなければ、ヒラリーに対する拒否感情の大きさを思えば、ヒラリーには万に一つの勝利の可能性もなかった。

ヒラリー敗北の印象が強いが、実際にはポテンシャルに比してかなり善戦したのである。

トランプに対しても大きな拒絶があったのは確かだから、ヒラリーが勝つ見込みはかなり高かった。少なくとも予備選挙の段階ではそう考えられた。

私がこれは潮目が変わったと思ったのは、共和党予備選挙で、有権者がかなり増えていたのを見た時だ。各候補ごとの得票比率にしか焦点があてられていないが、全体のパイが大きく膨らんでいたのだ。つまりこれはトランプが新しい支持層を開拓した、通常であれば選挙にはいかない層を掘り起こしたということであって、その人たちは当然、本選挙にも行くはずである。民主党予備選挙ではそこまでの膨らみはなかった、つまりサンダースは、従来の若年有権者を支持層としてまとめたが、票田を新規開拓したわけではない。

トランプが勝つ見込みがかなり強まったと思ったが、それでもヒラリーが逃げ切れるのではないか、そう思いたかった。

後から見れば、もしヒラリーに勝機があったとすれば、サンダース副大統領候補にすることだった。そうすれば少なくともサンダースの支持者を取りこぼすことはなかっただろう。ケインを副大統領候補指名した結果、ヴァージニア州を得られたのだから(南部連合首都州である!)それだけを見ればそこは正解だったように見えるが、その結果、ラストベルト諸州を落としてしまった。

民主党の絶対地盤西海岸首都ワシントンイリノイニューヨークマサチューセッツニュージャージーメリーランドコネティカットデラウェアロードアイランドである。ここはそれこそレーガン級のカリスマでも出ない限り、民主党が取りこぼすことは「絶対に」考えられない。これだけで185票。後85票を積み上げればいいわけだが、通常は民主党地盤の、コロラドニューメキシコミネソタウィスコンシンペンシルベニアニューハンプシャーハワイを固めれば、オハイオヴァージニアフロリダアリゾナのいずれかを得れば勝つ。サンダース副大統領にしていれば、防衛しなければならなかったラストベルト諸州で勝てる見込みが出ていたし、そうなればオハイオヴァージニアノースカロライナでも勝てていた見込みがある。

そういう意味では、ヒラリーの敗因は、ウィスコンシンミシガンペンシルベニアを落としたことだ。ヒラリーは守りの選挙をやるべきだったのを勝ちに行ったのが間違いだった。これに限らずヒラリーには絶望的なまでに、政治センスがない。この人は本質的には活動家であって、政治的な能力がとても低い。私は彼女を有能だと思ったことは一度もない。

彼女が長らく「アメリカ女性第一人者」の立場にあったため、もっとふさわしい適任者、例えばオルブライトやコンドリーザ・ライスらが、前に進めなかったのはアメリカ女性にとっては不幸なことだった。彼女は「ガラスの天井」を持ち出し、女性であるために地位を得られないかのように言うが、女性であることはある程度のスター性も保証することであって、諸外国、アジア諸国でも女性指導者は出現している。韓国フィリピンが、アメリカよりも進歩的と言うことはあるまい。ヒラリーは女性でなければここまでは来れなかっただろう。

ヒラリーの敗北は彼女の退場を促すという意味では、この選挙戦で得られた唯一のポジティヴな結果である。

2016-08-27

高畑裕太が犯した性犯罪について思うこと

あー、やっちゃったか、というのが周囲の正直な感想だと思う。いつかやりかねないと思ってた、と。

純粋と言えば純粋なんだろうけど、どこか善悪の判断が弱いような、善悪の基準を持っていないような、そういう危うさが彼にはあった。それを愛嬌だけで乗り切ってきた、というのが彼のすごいところなんだけども。

僕は彼には何の同情もないけども、ちょっと普通の人ではないと思う。ここでいう普通でないというのは、障害者寄りではないか、ということだ。母子家庭で育って、母がいて、姉がいて、男の子が一人で、男子として考えても普通は性犯罪には走らないと思う。他の男子がそうなるとしても、彼の立場ならそうはなりにくいと思う。

人間はしょせんは他人は他人だから、まして異性であれば、衝動があれば相手の人格が見えにくくなるということは程度としてはあり得る。でも、母がいて、姉がいて、男として家族を守らないといけない、そういう気持ちになるのが普通だろう。そうならなければならない、という話ではないよ。そうなってしまう、という話だ。女性を、人間として見ることができる、男子としてはそういう立ち位置に彼はいたはずだ。彼の立場だったら性犯罪から母を姉をどうやって守るのかというのがテーマになるはずで、自分が性犯罪を犯すなんてあり得ない。僕は母子家庭の出ではないけれど、母がいて姉がいるので、特に姉は若い時はそこそこ綺麗だったので、わが身を顧みて野獣のような男たちからどう守るかということを気にかけないことはなかった。その眼で他の女の子を見ればその女の子は誰かにとって同じようにかけがえのない娘であり、姉であり、妹であり、とても「モノ」のように扱えるはずがなかった。

母子家庭の末っ子長男ってのはこれまで何人も見てきたけれど、高畑裕太のように、その影響が全く見受けられないというのはかなり特殊な人格だと思う。

そこが危ういな ― と僕は思っていた。

そもそも高畑淳子も売れた時期が遅い。名が知られ始めたのは金八先生くらいからで、高畑裕太はたぶん中学生になるくらいまでは、母親の名前を言っても周囲は誰も知らなかったんじゃないかと思う。だから甘やかされたボンボンというのともちょっと違う、そういう境遇にはなかったはずだけど、それでいて、見事に甘やかされたボンボンにしか見えないというのも、それがいいか悪いかは別にして、相当に特殊には違いない。

そういうことを考えると。

決めつけるのもよくないけれど。

教育とかしつけでどうこうできる代物ではない。人は、子供は、様々だ。教育でどうにかできるなら、犯罪を犯す人なんて一人も出てこない。

高畑裕太という人が、育てるうえでかなり手間がかかる、相当に難しい人であっただろうことは想像できる。

親の責任がどうこう、という前に、これはきっとお母さん相当苦労したんだろうなという感想しか浮かばない。

親の責任で言えば22歳なんだから、まったくないというわけにもいかないだろう。これが30歳とか40歳ならともかく、成人してまだ2年、大学に行っていたら卒業もしていないような年齢、40歳の男が犯罪を犯したのとはわけが違う。

それでも、彼を育てるのはかなり難易度が高い仕事だったろうな、と思う。特に母親一人で。

2016-07-27

誰だ鳥越俊太郎を擁立したのは?

私は鳥越さんを有能だと思ったことが一度もないので、鳥越さんを擁立しようと思った人が野党上層部にいると言うことの方が、2016年東京都知事選鳥越俊太郎候補の数々の失態よりも問題だと思う。保守分裂もあって、宇都宮氏でまとまっていればおそらく野党は勝てた。石田純一氏ですら鳥越さんよりはマシだったと思う。

先日、何人かのニュースキャスターが集まって、その中には鳥越俊太郎氏もいたが、与党報道局への圧力について批判をしていたが、具体的なことは提示できていない、放送行政の仕組みと放送法を理解できていない、少なくとも遵守する姿勢がない、等々で、かえって赤っ恥をかいていた。

それを言うならば少なくとも普段の姿勢で、昨年週刊文春誌上に掲載されたSMAPの元マネージャーに対する公開パワーハラスメントに対して一言でも批判しておけばいいのである。元ミスユニバース女性タレントが、性的なサービスの提供を暗に大手芸能事務所社長から持ち掛けられた、それについてでもコメントを出せばいいのである。

国民はとっくに「じゃあなりすと」さんたちの仕事なんてしょせん「ごっこ」に過ぎないと知っている。かけらでも尊敬されるとでも本気で思っているのだろうか。

そういう部分はうやむやにして、仲間内の感覚だけで選ぶからこういう人が候補になってしまうのだ。

民主党の結党以来、私はずっと民主党に投票してきたけども、民主党/民進党の周囲にいる人たちは当然、その支持者たちばかりだ。その仲間内の、マスターベーションめいた同調におぼれてはならない。

民主党の三人の元首相のうち、鳩山氏は論外としても、野田前首相民主党支持者には評判が悪い。民主党支持者以外ではおそらく野田前首相の評価が一番高いだろう。それがなぜなのかを考えなければいけないと思う。

2016-05-18

立法府の長

安倍首相が自分は立法府の長だ、と発言したことについて、当然、批判が出ている。制度的には彼は行政府の長ではあっても立法府の長ではないのだから、当然ではある。

ただ、議院内閣制にあって、内閣総理大臣内閣総理大臣として行政府を掌握し、与党党首として立法府を掌握しているのは制度的な実態なので、実質的には安倍首相立法府の長、というか立法府において一番影響力のある個人というのは間違いない。

議院内閣制というのはそういう制度なのだから。

そういう実態があるときに、名目でいや立法府の長は国会議長であり云々とくさすのはクイズ的、腐儒者的退廃に見えなくもない。三権分立云々を言うならば、議院内閣制はそもそも三権分立を徹底していないのであって、虚構的な三権分立にのっとって安倍首相の発言をやいのやいのと言うのも、知的退嬰にしか見えない。そういう人たちは国家制度というものについてきちんと考えてみたことがあるのだろうか。

日本国憲法の基本の設計思想は、国会は国権の最高機関と規定がある以上、国民公会的な議会独裁を念頭に置いている。そもそも三権分立は補助的な意味しか与えられていない。

問題は、国会が主であり、内閣が従であるべきであるのに、内閣総理大臣国会議員の中から国会指名によって選出される規定があるためにかえって、一人の人物が行政府立法府の双方を支配することになり、その人物の前において国会が従になる、つまり内閣国会が従う構造が実態として出現することだ。

こうしてみると議院内閣制における首相は、大統領制における大統領よりもはるかに強大な権限を持っていることになる。実態として存在もしておらず機能もしていない三権分立金科玉条のようにあたかもそれがあるかのように泣き叫ぶ者をインテレクチャルとはとても呼べない。

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