第二次世界大戦はいつ始まったか

麻生首相真珠湾攻撃をもってして第二次世界大戦が始まったと発言したのを、ZAKZAK が揶揄した、という話。
http://www.zakzak.co.jp/top/200812/t2008121029_all.html
それに対する玄倉川さんの「いや、第二次大戦は真珠湾攻撃から世界化したのでしょう」という反論。
http://blog.goo.ne.jp/kurokuragawa/e/9617713feef622e0eb9dcf5f118fabea


玄倉川さんのご指摘は一理あると思うにしても、麻生首相は自説を開陳しているのではないので、知識として言うなら、やはり間違い。
玄倉川さんは教科書レベルと一蹴にされるけれども、知識とは教科書レベルの共通理解なので、そこから離れて自説を展開するのであれば、知識に言及する文脈ではエクスキュースが必要だと思う。
教科書レベルのことさえ知らないのと、知った上で論考を重ねるのは全然違うわけで、エクスキュースがない以上、麻生首相のあの言及は知識として間違っているのは確かなことだ。
ちなみに私は第二次大戦開始、ドイツのポーランド侵攻説に立つ。
第二次大戦に至る対立関係はむろんそれ以前からは生じていたのだが、後の枠組みにつながる主要国間の戦争が勃発したのが、ポーランド侵攻(というよりはそれに伴う英仏の宣戦布告)によるのだからここに起点を置くのは妥当だと思う。
アメリカの参戦は真珠湾攻撃を契機としているが、実際には大西洋憲章などで明確に反ドイツの姿勢を示し、交戦国に準じる立場にあったのだから、真珠湾攻撃を受けての「世界化」は付随的な現象だ。
欧州でのみ実戦がなされていたのだからそれ以前は世界化されていないという見方は(日中戦争はプレイヤーの片方が少なくとも当時の主要国ではない)、例えば朝鮮戦争を米ソの直接対決がなかったからと言って世界的な文脈から切り離して言及するのと同様の文脈を軽視した見方だと思う。
また、山東省やタンザニアでも戦闘があったから第一次世界大戦の世界化が可能というのであれば、では、南米は世界ではないのかという言い方も可能になる。
重要なのは世界の主要国、列強プレイヤーの硬直的な対立関係の発生にあるのであり、それがポーランド侵攻で明確化したというならば、それはあながち間違った見方ではない。