やらなきゃゼロ

 

高卒で東京都の職員に。苦学して法政大学の夜間コースを卒業した著者。都の交流人事で夕張市に派遣され、地域コミュニティ活動に没入したのをきっかけに、帰京後、市長選に推されて「日本最年少市長」に当選。と、書けばあっという間だが、その時その時のエピソードが実に面白い。財政再建都市のため、ほんの少しの支出変更でも北海道と国(総務省)にお伺いを立てなければ前に進まず、「金が出ない」ことから政策を考えなければならない辛さは、「そう遠くない未来の日本の姿」と言い切る。
 都職員からの着任1日目、夕方5時で暖房が打ち切られ、職員はスキーウエアを羽織って室温マイナス近くの中で黙々と残業に励む中、「防寒対策不足でリタイア」のエピソードが象徴的。職員が辞めていく中で負担は増す一方で、最低限の経費すら自由にならないジレンマ。でも、それを「笑い話」で済まさずに安定した身分を投げ打って再び乗り込んでいった著者もすごいし、こういう本が岩波ジュニアとして出るのも意義あること。若いもんは堂々と「公務員」を目指していいと思うし、公務員はもっともっと地方に、そして地域に飛び出して行って欲しいと思える本である。