オリヲン座からの招待状


「突然ではございますが、昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオリヲン座は、誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館いたす事と相成りました」――。昭和30年代、映画館「オリヲン座」の館主・豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子・留吉(加瀬亮)が彼の遺志を引継ぎ、松蔵の妻・トヨ(宮沢りえ)とともに映画館を守ることになった。古い時代には、周囲の人々から“師匠のかみさんを寝取った若主人”、“不義理な女将”と陰口を叩かれた2人だったが、映画産業が斜陽化し始めても、貧乏に耐えながら互いを思いやり、映画の灯を照らし続けていくのだった。一方、そんなオリヲン座を一番の遊び場にしていた幼い子供たちがいた。祐次(田口トモロヲ)と良枝(樋口可南子)は、毎日映写室の小窓から名画を覗いて成長し、やがて大人になって東京で結婚生活を送っていた。しかし時とともに、互いを思いやる心を忘れ、別れを決意することとなった2人。そんな彼らのもとに、一通の招待状が届くのだった。国民的人気作家である浅田次郎の同名小説の映画化作品。

『オリヲン座からの招待状』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。
最近の映画館閉鎖ラッシュに感傷的になってしまったのか、突然この映画に興味が出てきました。元々は全然興味がなくて見る予定もなかったのですが、ついつい見に行ってしまいました。ストーリーの進展に従って徐々に心が温かくなる期待以上に素晴らしい作品でした。見逃さなくてよかったです。


先日見たALWAYSもこの作品も舞台は映画が大衆娯楽として隆盛を極めていた時代のようでして、映画館で大勢がワイワイ言いながら映画を見ている風景が出ていました。映画自体は大して面白そうには見えないのですが、見ている人の表情は正に楽しいものを見ている人の表情そのもので、もう本当に楽しくて楽しくてしょうがないといったふうでした。
大勢で見ると楽しいのかどうかってのは、普段両手で収まるくらいの人数で見ることばかりなので正直何とも言えないのですが、創造した限りは楽しそうだなと思います。
例えば「クワイエットルームへようこそ」の舞台挨拶を見に行った時は、作品自体の面白さとその笑いを大勢で共有しているという気分の高揚がすごくよかったですし、そのせいかこの作品には非常によい印象・感想を持ちました。映画はみんなで見れば楽しいみたいです
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そんな映画バブルが過ぎ去って経営が苦しくなっても、見に覚えのない周囲からの誹謗中傷で辛い思いをしても、決して逃げないでトヨを守り続けた留吉の姿がすごく切なくてもうぐっと感情が昂ぶってしまいました。さっさと別な土地でやり直せばこんなに辛い思いをしなくても済んだのに、そうはせずに耐えて守り抜くことを選んだその強さ。そこにとても魅了されたのです。特に最後に閉館に際してお客さんを前に述べた挨拶のシーンはよかったです。


ずっとそこにあると思っていたものが無くなる寂寥感は、正に私が先日感じたそれと全く同じでした。形あるものいつかは無くなるとは分かっていますが、大事なもの・好きなものが街並みから消えていくのは本当に寂しいです。


公式サイトはこちら


[追記]
こんなニュースを見つけました。

宇都宮の中心市街地の映画館を取り巻く状況は厳しい。第一東宝の中村恭三代表社員(71)は休館の原因について「シネコンの進出、映画館に駐車場が併設されていないことなどが大きい」と話す。中村さんによれば、平成13年には「千と千尋の神隠し」公開などもあり、年間売上高5億円、観客動員数41万6000人を超えたという。

 しかし、15年に「MOVIX宇都宮」(宇都宮市砂田町)、翌16年に「TOHOシネマズ宇都宮」(同市陽東)が進出して売り上げは激減した。昨年は売上高4000万円まで落ち、「入場者数も10分の1ぐらいまで減った。とてもやっていけない」(中村さん)という状況になってしまった。中村さんは、親の代から家業として映画館を受け継ぎ、街を見守ってきた。「街中が少し暗くなるね」と寂しげだ。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tochigi/071129/tcg0711290341000-n1.htm

売り上げが1/10以下にまで落ち込むとは想像もしていなかったでしょうね。以前は十年一昔なんてよく言いましたが、もう10年というスパンで物事を区切るのは難しいのではないかと感じます。街の風景の変わり方を見ていると、一年一昔という速度で世の中が変化しているような気がします。

*1:みんなで見れば楽しいってどこかで聞いた言葉だなあ〜と思ってましたが、MOVIXで上映前に流れているCMでした。最初は気にも留めてなかったし、そんなことあるかwと思ってましたが案外的を射ていたのかも知れません。