「あぜ道のダンディ」見たよ


北関東のある地方都市。妻に先立たれ早15年、配送業の淳一(光石研)には、大学浪人中の俊也(森岡龍)と高校三年生の桃子という2人の子供がいるが、子供たちとはほとんど口を聞かない。一生懸命働いても、その金は俊也の携帯ゲーム機と桃子のプリクラ代に変わるだけ。そんなある日、淳一は体調を崩し、亡き妻がそうであったように、自分も癌なんだと思い悩む。なんとか大学進学を控えた2人の学費は友人から借りて捻出したが、別れの時間はすぐそこまで迫っていた…。

『あぜ道のダンディ』作品情報 | cinemacafe.net

テアトル新宿にて。


「男らしさ」とか「父親はこうあるべき」みたいな旧態依然とした価値観のおっさんの人生を全力で肯定することを目的としているような、何となくいびつな印象を残す作品でした。
あちこちにコメディ要素もふんだんに盛り込まれていてそれらはいずれもおもしろくて笑ってしまったし、作品をとおして言いたかったであろうことがくみ取れるようになったあたりからは楽しく鑑賞できましたが、全体を俯瞰できない前半はただただ不快さばかりが残ってしまい、かなりきびしかったです。


本作でまず特筆しておくべき点があるとすれば、それは淳一の異常なキレっぷりだと思います。
親友だという友だちの言葉でキレて、子どもたちの行動に腹を立ててまたぶちギレて、さらには売春をもちかけてきたとは言え娘の友だちにもキレる*1のですが、これがまた本気でびっくりするくらい大声でうるさいくらい怒鳴るんですよ。
観る前にそのキレっぷりのひどさは聞いてたので覚悟してたつもりでしたが、これがまあ予想以上にすごくて参ってしまいました。なんか自分が怒られてるみたいでものすごくいたたまれない気分になっちゃったんですよね...。
しかもキレる相手を微妙に選んでるあたりがまたちょっと嫌な感じでして、例えばお医者さんとか会社の人にはまずキレないし、何ていうか確実に自分よりも弱いかどうかを見極めてキレてるような、そんな嫌らしさを垣間見てしまったときには本当に嫌な気分になってしまいました。いい大人なんだからこのくらいできて当然なんだけどさあ...。でも観たくないよ、こういうのは。


ただ、たぶんこのキレっぷりって前述の「男らしさ」みたいな要素を強調するための演出なんだろうなと思うようになってからは、そんなに不快ではなくなって作品のよい部分にも自然と目を向けられるようになりました。そんなわけで後半はまあよかったです。


ただ、そもそもが価値観をドッチボールのようにぶつけあう映画なので「絶対に無理!」っていう人も結構多そうな気がしますし、わたしも比較的苦手な部類に入る作品でした。おもしろいなとは思うんだけどどうも好きにはなれないなあという、そんな印象を受けました。


「父親はこうあるべき!」みたいな価値観を支持できる人は結構楽しめると思います。


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*1:しかも雌豚呼ばわりw