Kinectの活用事例について

先日、The Microsoft Conference 2012に行ってきたのですが、その中で一番面白かったのがKinectの活用事例についてのセッションでした。個人的にかなり



Kinectのような入力インターフェイスはNUI(Natural User Interface)と呼ぶそうですが、操作に習熟するために特別な訓練が要らない自然な入力インターフェイスであるKinectはその利活用がすすんでいて、導入事例をいくつか紹介していました。

(1) ゲームへの活用

まずはゲームセンター用のゲームに使われた事例が紹介されていました。
もともとKinectXbox360で利用できるデバイスとして提供されていたので、ゲームへの適用というのは事例と言うほどの事例でもないかなと思ったのですが、集客効果に結び付きやすい分、コンシューマーよりもアミューズメントのゲームに向いているという指摘には首肯しました。

体を動かすという性質上、広い場所が必要だしそうなると普通の家だと手狭なのでゲーセンの方が向いているのかも知れません。

(2) リビングルームでの利用

エアコンやテレビ、DVDやライトといった具合に、各家庭にはたくさんのリモコンが必要となっています。
それが邪魔くさいのでユーザーのアクションでリモコンの代替をしようという試みを三井ホームでしているそうです。

具体的には、カーテンの開閉やテレビやライトの点灯・消灯をユーザーの手の動きや声で動かせるようにしようとしているようですが、動画でみるかぎりはまだまだ実用的というにはほど遠く、あんなしちめんどうくさいことをするのであれば動いた方が早いと思いました。

ただ、テレビやDVDを見ていたり歓談していたりという、ユーザーがいま行っている動作を中断することなくやりたいことを命令できるという点はたしかに利便性向上につながるような気がしました。

くわえて体が不自由で動かすことが困難な方でも使えることを考えると、一定のニーズはあると思います。

(3) 医療現場での利用

手術中の医師が、手術を中断することなく見たい情報(手術中の患者のMRIや知りたい情報)を表示するための作業をKinectで操作するというシステムが紹介されていました。

これまでだと術中にそういった情報を見るためには「手術を中断して自分でPCを操作する」か、もしくは「助手等、別の誰かに操作してもらう」という方法があったそうです。ただし、前者は手術がいったん中断されるために手術のリズムが崩れてしまい時間をロスしてしまうことが、そして後者は術者自身が操作するわけではないので見たい画像や情報を出すまでにもどかしい思いをしたり大幅に時間のロスが生じてしまう可能性がある点が問題としてあげられていました。


おそらく手術というのはプログラミングと同じで集中力の要求される作業であるのだと思います。だから途中で中断するというのは中断した時間以上に大きなロスを生みますし、それが無くなることで最終的な手術の成功率につながるということはすごくよくわかります。


基本的に医療現場では滅菌環境や滅菌されたものを使った作業が多く、逆に滅菌していない物を触ったり滅菌されていない場所に行ったりした場合には必ず滅菌処理が必要となります。
そのため、操作したい対象に触れることなく(声含む)作業ができるKinectは活用範囲が広いということが述べられていました。

(4) リハビリにおける利用

とても大変な上に単調になりがちなリハビリを、ゲーム感覚で楽しむことでリハビリ継続のモチベーションにしようという試みがされていて、おばあちゃんの喜びの声が紹介されていました。つらい反復作業を楽しくやろうというケースには流用できそうです。

(5) 福祉分野での利用

現在、電気ポットを使ったかどうかで独居老人の生存を確認するサービスがあります。
これはこれで割と評判がよいそうなのですが、たとえばポットを使わずにやかんで沸かす場合や夏場にはあまり使えないという欠点もあります。
このポットの代わりにKinectのモーションセンサーの反応有無を使うというアイディアが紹介されていました。監視カメラのように詳細を映し出すわけではなく、あくまでモーションをとらえるだけなので抵抗も少ないということが述べられていました。アイディアは悪くないと思うのですが、常時監視しているような感じがしてちょっとどうかな…と思う気持ちもわいてきました。

(6) 教育分野での利用

昨今、小中学校でヒップホップダンスを教えるようになったのですが、それを教える教材として使われているそうです。記録されたパターンの動きと同じ動きをしたかどうかを判定してOK/NGを判定して習得の一助となるような使い方をするそうです。

(7) ヒューマンエラー防止としての利用

上のヒップホップへの活用と似ているのですが、本来取るべき動作をしなかった場合にはそれがミスであることを通知するという使い方をするそうです。紹介されていた事例は、薬剤師の方が誤った薬を調合しないようにするという例でした。

5×5の四角が並ぶ棚の中に調合する薬が入っているというシチュエーションにおいて、必要としている薬以外の棚から薬を取ったらそれをエラーとして検知するという内容のデモが紹介されていました。これはこれですごいなと思ったのですが、そこまでやれるんだったら正しい薬を自動で取ってくれる仕組みを作った方がいいのではないかんと思いました。

ただ、ヒューマンエラーを防止するという観点は非常に有効だとも感じました。

(8) アパレル分野での利用

ARを使った着せ替えサービスが紹介されていました。
これが割とよくできていて、ユーザーの動きに合わせて服や手に取ったバッグも動いたりしていたことに感心しました。

また、どのアイテムがよく手に取られたのか?とか、どのくらい長く手に取っていたのか、その商品の購買率やいっしょに買われたり手に取られたりしている商品はなにか?という情報も取れるために、それと組み合わせることで販売に関する傾向をつかんでアドバイスすることもできるというのはとてもおもしろいと思いました。

(9) まとめ

どんなサービスに対しても言えるのは、とにかくフィードバックすることが大事だとおっしゃっていました。つまりユーザーが何かしたら、それに対して必ずフィードバックを付けることで操作に対するストレスが減っていくそうでして、体を使った操作は余計にそういう傾向がつよくなるそうです。