「強いチームはオフィスを捨てる」読んだよ


強いチームはオフィスを捨てる

強いチームはオフィスを捨てる

どこにいても世界中の人と簡単にコミュニケーションできるのに、なぜオフィスが必要?人生の大切な時間を通勤に費やすのはナンセンス!優秀な人材と一緒に働きたければ、物理的距離なんて関係ない!前作『小さなチーム、大きな仕事』で圧倒的な支持を集めたカリスマ経営者たちが、今回取り上げたのは「リモートワーク」。世界に散らばる36人の社員を率いて、数百万人ものユーザーにふさわしい働き方を伝授する。会社や組織にまつわる固定観念が、根底からくつがえる!

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あらすじにも書いてあるとおり、本書はリモートワークの有効性について書かれた本です。
リモートワークについては以前話題になったこともあるのでご存じの方も多いと思いますが、日常的に会社外(たとえば自宅やカフェなど)で仕事をする働き方です。

通勤コストの削減、時間に縛られないことによるプライベートな時間の活用、集まって働くよりも集中して働くことが可能であるという点、さらにオフィスをもたずに済むことに伴う会社側の固定費削減(これにはあまり言及していませんでしたが)などを長所として挙げていました。

雇用/非雇用者というのは、損得・利害を奪い合うゼロサムな関係にあると思っていたのですが、リモートワークはどちらにもメリットがあると言われると「それはさすがに言い過ぎだろう」と鼻白んでしまったのですが、読んでみたら半分本当で半分は言い過ぎといった感じでまったくの嘘でも誇張でもないと感じたしそのことがすごく意外でした。

本書を読んでいておもしろかったのは、リモートワークになったときにもっとも心配すべきなのは「社員が働かないこと」ではなく「働き過ぎてしまうこと」であるという主張でした。

たとえばリモートワークを自分がするとなった場合、他者の目がないことで自称息抜きという名のさぼりが増えるのではないかという気がしていました。

ところが本書はそういった点に対する懸念よりも、労働場所が公私で分断できないがゆえに労働時間を管理しきれずに働き過ぎてしまうことを最大の問題点として挙げていました。

たしかに、休日に問い合わせのメールを見てしまったときに思わず返信をしてしまったり、思いついたときにプロトタイプを作ってみたら思いのほかちゃんと動いたのでそのまま最後まで作ってしまったりと、自宅でも仕事ができる環境があるとついつい時間の区別なく対応をしてしまいがちです。

そうすることでリフレッシュすることができず、結果としてパフォーマンスが悪くなってしまうことを問題視しており、そうならないようにケアする方法についてもいろいろと書いていました。

ちなみに誰かが見ていないとちゃんと仕事しないのではないか?という懸念については、アウトプットを可視化する、つまり成果を定量的に多くのメンバーが見られるようにしておくことで監視されていなくてもちゃんと仕事をするようになるという指摘はおもしろいと感じました。

たしかにリモートワークをすれば、専門外の管理者が報告や成果物を頼りに進捗管理をするという管理は難しくなりますが、だからダメだと諦めるのではなく「同僚が成果物を見られる環境を作っておく」という、より簡単でより効果の期待できる代替案を見つけて提示している点はすごくいいと思います。こういう発想ってそうする必要性に駆られて初めて気付くようなことだと思うし、必要は発明の母だよなと感心しました。


昨今の技術の進歩にともない、場所にとらわれずに好きな場所で働くことができるような環境が整ってきているということに対してはそのとおりだと思っていましたが、そもそもわざわざ離れた場所で仕事をするメリットというものが理解できていませんでした。

そんな懐疑的な気持ちで本書を読み始めたのですが、離れていることで限られたコミュニケーションを大事に取るようになることや純粋に成果物だけで評価するのであれば労働時間の長短にこだわる必要はないしその無駄を徹底的に排除すれば雇用する側もされる側も得のある仕組みであるという点はとても納得できました。


ただしこれを最大限に活用するためには個々の会社ががんばるだけではなくて社会全体で変わっていかないといけないと感じたし、それを考えると日本では何か大きなきっかけが無い限りはまだまだ先の話になるのかなというのがわたしの率直な感想ですが、すぐにリモートワークが実現できるかどうかはおいておいても「同じオフィスに集まって働く」ことが自身の望む働き方なのかどうかについては一考してみるべきかなと思いました。