「思い出のマーニー」見たよ


海辺の村の誰も住んでいない“湿(しめ)っ地(ち)屋敷”。12歳の杏奈(あんな)はそこで、青い窓に閉じ込められた金髪の少女マーニーと出会う。小さな身体に大きな苦しみを抱えて生きる杏奈。その杏奈の前に現れる謎の少女マーニー。ひと夏の出会いの中で、二人が分かち合った秘密とは一体何だったのか。

『思い出のマーニー』作品情報 | cinemacafe.net

誰にも心を開かないものすごく内向的な少女が、静養のために訪れた小さな田舎町で出会ったある女の子との交流をとおして変わっていく様子を描いた作品でしたがひじょうにおもしろかったです。公開初日に観に行ったのですが、あまりにおもしろくて3日連続で毎日観に行っちゃうくらい気に入ってしまいました。


「この世には目に見えない魔法の輪がある。 輪には内側と外側があって、私は外側の人間。 でもそんなのはどうでもいいの。私は、私が嫌い」


本作はやたらネガティブな主人公、杏奈から発せられるこんな独白から始まるのですが、幼い頃に両親を失って他人に育てられていたためなのか彼女は他人に甘えることが苦手で、さらに自分自身のことすら好きになれなくて常に周囲との間に壁があることを感じながら生きています。つまり「自分はこの世のすべてから排除されていていつもいっしょにいる誰かもおらず常にみんなの輪の外側にいるんだ」と思い込んでいるがゆえに余計悪い方向に考えがねじ曲がっていっているところが見ていてつらいなと感じました。

そしてそんなふうに性格がこじれていけばいくほど今度は本当に周囲から疎外されやすくなるという悪循環。

傍から見ていると杏奈は輪の外側にいると言うよりも、他人との関わりを拒絶して勝手に壁を作ってコミュニティの外へ逃げているようにしか見えないのに、自ら輪の外に逃げておきながら自分が輪の外側にしかいられないと嘆いているところに子どもっぽさというか未成熟な子どもらしさを感じたのです。

これ以外にも言ってはいけないようなことをつい口にしてしまったりなんてこともそうですが、孤独とうまく付き合っていられるという大人びた部分だけではなくそれとは対照的な杏奈の幼さを示す要因の存在をつよくアピールするような演出も多くあってそのギャップがとても印象に残りました。

そんな杏奈がある日出会ったのがマーニーと言う女の子なんですが、杏奈は何の理由もなくその子に惹かれ、そしてそんな大好きなマーニーとの一時の楽しい時間が杏奈にとってもものすごく大事な時間となっていくのです。杏奈とマーニーがともに過ごしたシーンはいつだって夢と現実がまぜこぜになったような不思議な空気が蔓延していて、果たしてマーニーは実在の人物なのかどうかとか、そもそもこのシーンは現実世界のことなのかどうかと考えながら作品を観ることになったのですが、そこにはっきりとした回答を与えてくれるあの展開はとても衝撃的だったしそこも含めてラストシーンはすごく良い出来だったと思いました。


そういえば、なぜ杏奈がマーニーに惹かれたのかもっと描写して欲しかったという感想を見かけましたが、わたしは好きになる理由の無さもまたリアリティがあってとてもよかったと思っています。


というのも、わたしは「嫌いになるのには理由はあるけど、好きになることには理由はない」と思っています。

何かを嫌いだと思ったときにはその嫌いの理由を探すことが嫌いを克服するための大きなファクターとなります。つまり、原因というかその「嫌いという感情」の源泉が分かれば大抵のことは決定的に嫌いではなくなると思っているのですが、逆になにかを好きになることについては一切の理由づけは不可能であるというのがわたしの持論です。

だから初めて観たときから何となく惹かれてしまったというこの作品における演出にはたいへん満足していますし、最初から最後までとにかく楽しく鑑賞しました。



ちなみに、話はちょっと変わるのですがこの映画に関する展示が東京都江戸東京博物館で開催されていました。

ちょうど都内に出かける用事があったので観に行ったのですが、映画の中の世界が原寸大、もしくはミニチュアとして再現されていて映画のファンにはたまりませんでした。この作品の美術を担当したのは「借りぐらしのアリエッティ」のときと同じで種田さんだそうですが、アリエッティのときは「ミニチュアサイズの人間から観たミニチュアな世界」というちょっと変わった世界を見事に構築していてすごいなと思ったのですが今回は「リアルにどこかにありそうな田舎の風景」を丁寧に作り上げていてこちらもまたすばらしいなと感心しました。


たいへん興奮したので帰りにビジュアルブックを買って帰ってきました。

この本は寝転がって眺めているだけで作品の中の世界に入り込めるような気分になれるし、映画のことを思い出しながら読んでいるとあっという間に時間が経ってしまうくらい気に入っています。


そしていよいよ3月にはDVD/BDも発売されるそうですが、高くてなかなか手が出ません。

高いけど欲しい...。誰か誕生日プレゼントとして買ってください!


@MOVIX宇都宮で鑑賞




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