五番目ノ神社

2018-01-01

2017 books

2017年はちょっと信じがたいんですが741冊読んでました。思ったよりも漫画をモリモリ読めてたみたいですが最終的には自然と10選に収まりました。

全然関係ないけど2017年は珈琲を飲めるようになった年でした。蜂蜜たっぷり入れて、ですけど。


ヘヴンアイズ

ヘヴンアイズ

呼吸するように読める不思議な文体。金原瑞人の翻訳はやはり精緻で良い。

これ、『肩胛骨は翼のなごり』の人。でもどちらかを選べと言われれば、今の私はこちらを選ぶ。ジャニュアリーとエリンの深い繋がりに痺れてしまったから。視線を合わせ、屈託もなく笑い、合図を送り、囁きかけ、手を握り、抱き合って、同じ未来の欠片を見る。

「ひとりでは行くな! ほんとうの友達を連れていけ! 命をあずけてもいい友達を、この世の果てまでいっしょに行ける友達を」


ぼくの死体をよろしくたのむ

ぼくの死体をよろしくたのむ

名前の付けようがない関係性というのが世界には無数にあるのだということをひっそりと暴くような短篇集。

これを読んだのが初夏のことだったので詳細はまるっと忘れてしまっているけれど、それでも良い物を読んだなぁという余韻だけがじわりと残っているのでもう一度読みたい。

最後の「廊下」でやられてしまったんだな。忽然と消えてしまった恋人の飛夫に再び美術館で遭遇するシーンが無闇に泣けてくる。ありえない、夢のような出来事が、小説の中では叶うし赦される。誰もが抱いてもおかしくない、「死者にもう一度会い見えたい」という無数の祈りが仮託され、ここで結実している。


野崎まど主催のアンソロジーなんてヤバイに決まってんだろと思ったら案の定ちらほらヤバかった。褒めてます。

〈異星人とのファーストコンタクト・アンソロジー〉というコンセプトが既に胡散臭くて大変良い。一押しは「コズミックロマンスカルテット with E」。笑いどころたっぷりで最高に楽しい、流石の小川一水。「星の人たちは多分エブリシング結婚で考えてる」にしこたま笑った。円城塔の「イグノラムス・イグノラビムス」のワープに関する考察も味わい深かった。


江戸の暮らしがまだ色濃く残っている明治期に日本を訪れ、市井の人々を写実し続けたロバート・ブルームの絵は、ただの精密な写真よりもずっと生々しく迫ってくる。土埃の匂いすら嗅ぎ取ってしまえるような。

愛がなければ決して描けない絵ばかりで、この人が日本を愛してくれたことが嬉しい。


隈研吾 オノマトペ 建築

隈研吾 オノマトペ 建築

ちょっと建築写真でもパラ見しようかなと思ったらコンセプトが珍妙で面白かった一冊。

この建築家は建物をオノマトペで表現し、デザインを画かせる。オノマトペで表現することにより、5%の誤読を期待する。理想に限りなく近づくのではなく、想像の範疇をふと外れることを待つというのは、鷹揚ながらも手法としてはありなのかもしれない。

それぞれの擬態語の捉え方が非常に「空間的」で、小説では見られない定義を求められていて興味深かった。


2017年、最も役立ったのがこれ。

「考えるってどういうことなんだろうなぁ」と作者がこちらに問いかけつつ、珈琲でも飲むような穏やかさでゆったりと話しかけてくる。独特のテンポにより、読み手との対話が成り立っている。

考えることは、チューニングすること。ヘウレーカの声を待つ過敏な楽器となること。この喩えを今後も大事に携えていきたい。


コンテナ物語

コンテナ物語

コンテナとはただの箱でしかない。でもその箱を海運に持ち込んだことこそが発明だったのだ、という信じがたいノンフィクションだった。

コンテナがいかに世界を変えたか。その変化はあっという間だったが、激流をひとつひとつ紐解いてみせようとする気概が逞しい。マクリーンの偉才を手放しの賞賛で語っていて気持ち良かったし、あまりに豪傑っぷりがフィクションのキャラクターかよって感じで読んでてゲラゲラ笑えた。


図説 不潔の歴史

図説 不潔の歴史

清潔がある種の宗教となっている現代に読むと、本当に「嘘でしょ!? 嘘だと言って!!」な歴史がギッシリ。ひとしきり笑った後、現代の「不潔」の概念は今後どう変わるかを考えてしまう。清潔・不潔の意識はそのまま善悪に繋がっている、それは今も変わらない天秤の重石なのだ。


常識を覆される喜びを味わうためには、まず学者たちが「常識」と知っている基礎を知ってもらわなければならないということをよくよく理解した上で、土台となる地盤をきちんと築いてから綺麗にひっくり返す。おかげで読み手は素直に感動できた。

似ている種のメスでも果敢にエラーのアタックを繰り返すオスの心理、寄生したオスを殺して自分も死ぬバクテリアの意図…。人間とは異なる、しかし確固たる道筋/生き様が見えてわくわくできた。


鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

頭良い人が笑いを取りに行きつつ、ちゃんと読者寄りに語ってくれるので物凄く助かった。「ギリギリ付いていける」どころか「突っ込みながらグイグイ読める」レベルにまで落とし込んでくれる。

鳥が何故胎生ではなく卵生なのか、皮膜と羽毛ではどう違うのかなど初めて知ることが多く胸躍りまくり。この人の講演なんかあったら是非駆けつけたいなぁ。