指輪世界の第二日記

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2015-03-27 艦これ:誰もが気づいた3つの縛りと誰も気づかない2つのトリック このエントリーを含むブックマーク

机にかかる提督の影

「じゃあ、もう一皿…かんぱちください。先輩は?」

「かんぱちいいね。僕も、これをもう一杯くださいな。はい。それで、艦これは見てるの?」

「あのアニメ。あれは面白いですね」

「おぅ?」

「あれって、『現場にどんな縛りが降りてきた制作体制だったのか』を想像するのがかなり容易な作品じゃないかと思いませんか? たぶんこうでしょう:

・提督を出さない

・一般人を出さない

・第二次大戦に言及しない

そのほかもあるかもしれないけれど、この3つが縛られたうえで作劇しているのはさしあたり確かそうと思われますよね」

「ああ…そうかもね? それは、クレーム対策的なもの?」

「おそらく。だから比較的上層部から現場に降りてきた縛りで、現場も苦しんだのではないでしょうか? この3つの縛りは話のうえでどう波及するかというと:

提督を出さない → 軍事行動の責任者がいない → 作戦の成功や失敗の評価、払われた犠牲や死の価値を問う作劇ができない

一般人を出さない → どんな人々を、どんな社会や世界を守っているのかという兵士たちのモチベーションの源を描けない

第二次大戦に言及しない → 各人物の個別の過去のエピソードを語ってキャラ立てすることができない

これはきつい、そうとう苦しい。どうすればいいんだ、という感じがありますね。ああ、あの、ローストビーフとアスパラをもらえますか」

「あと、うすにごりを。はい。お願いします」



「アスパラよかったね」

「あの店は野菜がしっかりしてるんですよね。なんでも、自前の畑を持ってるとか聞きましたが…」

「なにそれ。たしかに店を開くのは夜の商売だけど、そういうのできるのか? 面白いな」



「ゲーム版は、戦争ものでありながら、日常ものみたいな雰囲気をもあわせ持つことに成功しています。これはですね、ゲームならでは達成できた一種のトリックなんですよ」

「ほう?」

「ゲームだと、『なぜ出撃し、戦うのか?』というモチベーションの部分を、ストーリーではなくて、ゲームシステム上の『出撃すればレベルが上がって強くなるから』という強化の欲求に担わせることができる。プレイヤーが出撃して戦うことでゲーム上の課題が達成でき、キャラクターを強化でき、新たなキャラクターが入手できる。だからプレイヤーは喜んで出撃しますよね?」

「するね」

「ゲーム版ではそうして、戦争の原因やキャラクターたちのモチベーションに、ほぼ踏み込むことなく済ませることができている。一種『逃がす』というか、さばくことに成功しているわけです。これができるのはゲームならではの、一種のトリックなんです」

「ほほう」

「そして、キャラクターの死、轟沈についても、トリックがあります。ゲーム版では、死はたしかに存在するが、大破進撃という意図的な行為かケアレスミスでのみ発生する、というゲームシステム上の仕様にしています。これは、死の扱いをいわば半分だけプレイヤーに引き渡すというトリックです。日常ものみたいな雰囲気にしたいプレイヤーにとっては、死は回避して発生しないものにすることができ、安全な繰り返しの、日々の労働や学業に準じた世界観にすることができる。それに対して、戦争ものの冷酷さがあって良いと思っているプレイヤーにとっては、捨て艦して死を発生させることができ、作戦上の計算された犠牲として兵士が使い潰されていく世界観にすることができる」

「ははあん?」

「このへんのつくりは、設定上の手強い要素をうまくゲーム要素の上に担わせて、巧みにさばいているんですよね。このさばきの見事さが、太平洋戦争という手強いテーマを扱って成功させたひとつの要因になっていると思いますね」

「ふーむ」



「アニメ版をつくるときに、それらのゲームならではの、ゲーム要素に担わせてさばいていた要素を、所与のものとして見積もってしまっていたのかもしれませんね。ゲーム版で日常ものの雰囲気はすでに達成しているのだから、アニメ版でもそれは当然引き継いで存在しているものだろう、といったふうに。しかし、これら『ゲーム要素によってさばいておいた』要素は、実はゲーム要素がなくなると支えを失ってしまう。それらをあらためてストーリーでもって再表現しようとなると、非常に厄介なのだ…このへん、日記を一本書こうと思うんですよ」

「いいね。どんどん書くといい。心が安らぐ」

「タイトルがね、いつも一回悩む。なにか、釣り能力の高そうなタイトルを思いついたら送ってくれませんか? ああ、では、また、おつかれ様ですー」

「うん、おつかれ、またぜひ。おやすみなさいー」

spcategゲーム[ゲーム]

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