指輪世界の第二日記

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2016-08-08 シン・ゴジラネタバレ感想その2 このエントリーを含むブックマーク

三度目を見終えたのでいくつかメモ


























・女特使はラブコメアスカと思って見るとなるほどかわいい

  「アンタたちなんて見下してるんだからね!」

 →「タメ口でいいって言ってるんですけど!」

 →「帰ってこいって言われたんだけど…私、帰らないわ」

 →「私が妻であなたが旦那でもいいわよ??」


・最後の演説の直後に「ヤシオリ作戦協力民間企業関係者」という字幕を確認できた。

 作戦時にこれら民間技術者と自衛隊員とが被爆・死傷していると思われる


・第一戦で攻撃命令が長い連絡線を行ったり来たりするが、これが最後の「お前、指揮官がなんで前にいく」の前振りになっていると言える。実際に最終戦で「問題がありますがどうします」という問いが数回あって、「それは本質的ではないから続行」という命令が即座に出せているから、意味があるという描写にはなっている


・気づいていなかったが最終戦の前線指揮所には安田がいるっぽい


・総理が「今、ここで決めるのか!?」とうろたえる芝居があり、つまり、それ以前はすべて事前に説明と決定があったということ。官房長官が「(はい、利害関係組織が一通り存在を主張し終わりました。ここで打ち合わせ通りのご決定をどうぞ)」というのを毎回やってきた。

 それが、急変進行する危機のなかで、事前打ち合わせなしに芝居でなしに組織を動かせる首相になっていく。

 その成長の頂点で死んでしまうという理屈に沿った脚本になっている。


・赤坂の、また彼の将来像である官房長官の立ち回りというのは交通整理である。個々の課題を、それに関わる複数の政治権力の間のバランスの最適な落としどころを見つけるべきものととらえていて、その把握と取引とだけに専心しようとしている。「俺は権力者じゃない、交通巡視員だよ」といったところだ(そこにこそまた巨大な権力があるのだが)。

 世界に誰も解決策を知らない新しい問題などなく、ただ複数の組織のうちのどれがどれだけコミットし、どれだけリスクとリターンを分割するかの手柄争いに過ぎない。「誰も気づいていなかった新しい解決法を僕が見つけました!」などというのは自分が英雄になれると舞い上がった作業者の譫妄だ、という考えの持ち主であり、それが「うぬぼれるな」という台詞として出る。

 そうして怪獣騒ぎは矢口に持っていかせて、「成功しても失敗しても政治的イベントにすぎない」とうそぶいていたのだけれど、核攻撃は彼の世界観の枠を越えていて、唯一動揺した顔芸を見せる。そして矢口に相談をしに行く。

 最後の面談は赤坂が矢口に嫌味を言ってマウンティングしている絵面だが、実際には「こっちは追い詰められてしまった。お前のほうの成算はどうなの」という弱音を吐いていて、それをあくまで自分が力及ばなかったのではなく客観的合理性に従っているのだ、というレトリックで覆っている。


・今回、ほぼ唯一、ゴジラ側に感情移入させそうな箇所は、バンカーバスターくらったところでよろけうつむいて「悲しいぜ〜♫」みたいな曲が流れるところなのだけれど、そこから流れるようにスーパー大逆襲に続いていくので、「ああ、憐れな…憐れどころじゃねえ!!!?」

ってなるので結局感情移入させないつくりになっている。

2015-09-16 ホルムズ海峡、光対闇のディレクター、怒り狂うプログラマー このエントリーを含むブックマーク

夢やぶれたディレクター

「ああ、それでいうと安倍首相は夢やぶれたディレクターっぽいなと思うんですよね。すみません、この米焼酎をストレートで」

「僕もそれ。2つ。あとお冷やも2つ。お願いします……なにそれ、ディレクター?」

「安倍首相のことを独裁者やらファシストやら言う方々もいるんですが、そういったのはどうもピンと来なかったんですよ。それが先日、参議院で国会議員が、アーミテージ報告のままではないかというツッコミをしてて、そうかこれはわかるかもなと」

第3次アーミテージ・ナイレポート

「というと」

「このフリップの12項目、たしかに安倍内閣はこの12項目をひとつひとつ通してきた。この中でとっかかりになるのが、ホルムズ海峡です。存立危機事態の例として、安倍内閣は何度もホルムズ海峡の機雷掃海を仮定に出して説明してきた。これは妙に話が古い。2015年現在や近い将来にホルムズ海峡が機雷封鎖されるというのは、うまく想定できなくて話がかみ合いづらい。イラン大使も「(核開発の嫌疑が晴れて友好関係を築こうとしているイランを念頭に置いているのであれば)根拠のないことだ」と釘を差したりしてます。これは何かわざわざ話を回り道でもしているのかと思っていたんですが、それより簡単な話で、アーミテージ報告にホルムズ海峡って書いてあったからなわけです」

「ほお?」

「あのホルムズ海峡、ホルムズ海峡ってのは、よくある景色で、あれはディレクターがスポンサーから渡されたペラ2枚の資料の上のキーワードを繰り返してる景色だったんですよ」

「?」

「もうすっかり妄想モードに入ってるんで話0.15掛けで聞いてほしいんですが、安倍首相は2013年に渡米したとき、言い換えるとスポンサーとの打ち合わせに行った時に、2つの企画について交渉してきた。1つは、彼による日本国憲法の改憲案。これは彼のオリジナル企画で、彼と彼のゆかいな仲間たちが長年抱えて暖めてきたものです。もう1つは、スポンサーが出してきた12項目20ページの実装要件資料。打ち合わせの日、スポンサーは資料を机の上にぽんと置いて、これをやれやと言った。それに対して安倍ディレクターは一歩も怯まず、懐から自分の資料を取り出してこう言った。『この僕の考えた最高の日本国憲法改憲案をやらせてほしい。これをやっていいなら、その12項目をやりましょう』」

「ほほう」

「それでスポンサーは『ふむ。やれるならやっていいよ。12項目をやると約束するならね』と言い、ディレクターは『確かに約束します。では、やらせてもらいます』と応えて、打ち合わせは終わりました」

「終わったのか」

「ディレクターの主観的には、これで巧みな交渉に成功した、見事な成果を得たという自己評価でいた。そしてディレクターは自社に戻ってきて、ほくほくでこの自分のオリジナル企画、『僕の考えた最高の日本国憲法改憲案』にとりかかった。資料を書き加えて太らせ、関係部所に根回しして回りました……ところが、案外現場と国民の支持が少なく、法制と国会政治をくつがえす見込みは消えていき、企画は実装できず、やがて流れてしまいました」

「ええー。なんてことだ」

「これにはディレクターの認識に齟齬があったのだと思われます。著作の売れ行きやフェイスブックかなにかで国民の支持を見ていたときに、『政党政治の頭数に表れない非常に多数の改憲支持の潜在層が存在する』と評価したのではないでしょうか。その層が国民として下側をおさえ、自分がスポンサーに話をつけてきて上側をおさえれば、中間の法制と国会政治をはさみこんでオセロのように覆して勝てる、という算段だったのではないかと思う。願わくばディレクターのゆかいな仲間たちの中に、Twitterでもらったふぁぼ数をもとにコミックマーケットに本を出して、売れ残って在庫を抱える失敗の経験のある人がいればよかったのですが」

「なにじゃああれフェイスブック事案だったの。あ、どうも。おっと、そうか、この紙で注文すればいいんだな。ふむ、よし、乾杯! おつかれー」

「おつかれさまです! V8!」

「V8! えーと……サーモン4、さんま2……ほたて2、この塩セットってのもいくか」

「シャコも」

「シャコ2? オーケー。で、それで」

「それでそうして残念ながらオリジナル企画は流れてしまったのですが、では彼の仕事は終わりかいうと、もう1つのほうの企画、スポンサーに約束した実装要件は残っているわけです」

「アーミテージ報告のほうね」

「そうです、アメリカから渡された12項目のうち、順々に実装してきて残るは安保法案の部分、この実装要件が残っている。ここを約束した通り実装しなければならない。ところがですね、このディレクターとゆかいな仲間たちは、この安保法案の部分を、『オリジナル企画が通って俺憲法改憲案で改憲できたとき、それにぶら下がって実装できるもの』として考えていたんですよ。これがまずかった」

「まずいの?」

「まずい。なぜなら、たしかに俺憲法改憲案が通れば、安保法案はその大きな構想の中の小さな一部分として実装していけたかもしれない。だが俺憲法が流れたいま、安保法案は解釈改憲を使って実装しなければならなくなった。ここで、このディレクターとゆかいな仲間たちは、解釈改憲を使う想定での実装準備をぜんぜんしてこなかったんですよ。スポンサーから12項目20ページの資料を受け取ってから2年間、夢みたいな俺改憲オリジナル企画資料を楽しく太らせるほうに時間を使っていて、それがポシャったときの予備手段、解釈改憲による堅実な実装を想定して資料を太らせるということはまるでしてこなかった」

「ほほう。あ、すみません、これお願いします。はい」

「そうするとですね、いざその企画の打ち合わせになって、現場の作業部局から『この企画案は解釈改憲で実装すると聞いているが、シチュエーションとしては具体的にどんな想定をしたものなのだ』といった質問が投げつけられた時に、すごく情報量の少ないことしか言えないわけですよ。『えっとそれは……そのですね』とか言ってね、スポンサーに渡された資料20ページ中の2ページを何度もめくって見なおして、『えーとホルムズ海峡に機雷が敷設されたと仮定した時にですね』なんてね、そこに書いてあるキーワードを繰り返すしかできない」

「あー、そこでホルムズ海峡が出てくるの」

「はい。3年前にスポンサーが企画資料を書いたときにはホルムズ海峡は眼前の課題だった。だからスポンサーの企画資料、アーミテージ報告には、ホルムズ海峡、機雷、掃海というキーワードが書いてある。当時要求された実装要件です。しかし3年たってイランの核疑惑も解かれ、資料の側が古くなっている。古いまま、やせたままで、現場の作業部局からの突き上げをさばくには情報量が足りない」

「本当はもっと情報量があるはずなのか」

「そうです。本当はスポンサーから実装要件資料を受け取って持ち帰ってきたら、ディレクターとそのゆかいな仲間たちはその資料を太らせていかないといけないんですよ。政治的修飾のレトリックをかぶせて重ねて、法制のつじつまをあちらにこちらにぬいつけてつくろって、自社の理念の建前とつながるように太らせておかないといけない。そして現場の作業部局からの質問攻めを耐えられるように、アップトゥデートな適用例と想定問答集を用意しておかなきゃならない。なぜならスポンサーの資料にはむきだしのシンプルな実装内容が書いてあるだけで、なぜ下請け会社がそれを実装するのかの政治的修飾は書いてないわけですからね。下請け会社の社員たちが『なるほどこれはわが社の理念、わが社の利害として一応理屈がつながっている企画だ。そういうことならまあやろうじゃないか、汗を流そう、徹夜もしよう、三者面談の予定を遅らせよう、肝臓の半分くらいも壊そうじゃないか』と思うためには、スポンサーの実装要件の字面がそのまま並べられるだけではだめだ」

「下請け会社ってのは、日本のことか」

「です。戦後いままで70年、下請け会社のディレクター仕事をやって、そのディレクターを引き継いできたチームが、自民党だということになるのでしょうね。スポンサーの要件資料に政治的修飾のレトリックをかぶせて防御的に資料を太らせ、法的つじつまを幾重にも構築しつつ、現場の各作業部局の利害と感情量を見計らって作業負担の配分をする。このマネジメントは労力のいる仕事であって、その部分はスポンサーたちのチームはやりたくない。スポンサーのチームは有能ではあるが下請け会社の内部事情にそこまで詳しくはないし、人的リソースをけっこう食うから、そこに投入するくらいなら委託して、自社の人材は他の案件に回すわけです。逆にいえば委託されるディレクターチームは、そのコストを取引材料のカードにすることができる。『スポンサーさん、いったん持って帰って検討しましたが、現場を納得させるにはこういうふうにまるめなおしての実装をさせてください』といってスポンサーと押し引きして、実装要件を修正させることができる。これが彼らの誇りでもある。大人の仕事だと。敗北で打ち倒された、その打ち倒されてつながれた憲法9条を逆手にとって、軍事力を充実させながら、『軍事リスクを負うのはスポンサーさん、あなたがやってくださいよ、それはあなたとわが国で作ってしまったこの憲法があるんで充実させるところまでしかできないんです、ぎりぎり解釈改憲でがんばりましてここまでですねえ、あなたもわが国も立憲民主制なんでねえ、憲法もある、民衆の声もある、いやー残念ですねえ』ともたれかかるつくり。下側から勝者にからみつき、敗者の下請けでありながら経済的勝者の立場に復興した。この見事な仕事がわからないか、わからんやつらにはわからせないでおけ、それでよい。わかってもらうためにこの仕事をしているのではない。われわれこそが理解せぬ人々に理解されぬままに仕えているのだ。われわれは仕え、釈明しない。サーバントなのだ」

「詩的だな」

「かもですね。いままで、お話に出てくるような自派への利益誘導ばかりしているおじさん政治家像たちというものなのかと思っていたのですが、そればかりということではなくて、その中にこういうものがあるんですね。理解されぬままに労苦を捧げ、仕える、欺瞞の中でこそ果たしうる種類の忠誠。影の中で仕える者──シャドウ・サーバント」

「しかしそれならそれでいいじゃないか。理解されぬままがんがん働いてもらおうじゃない」

「ところが今回このディレクターはですね、こういう欺瞞は嫌いな系の人柄なんですよ。こういう欺瞞と矛盾、倒れながら寝技で勝者にからみついていっての経済的勝利なんて、美しくないと感じている。欺瞞の中で仕事をしているような人々は美しくない。矛盾を解消し、立ち上がる、これが美しい国だ。そうすることで国民自身がこの国を理解できるし、ディレクターとしても理解してもらうことができる。彼は理解してほしい系の人柄なのでしょう。輝く日の光を浴びて表舞台に堂々と立ち、国家の指針を指し示す人物。それこそが立派な政治家だ」

「若々しい」

「でしょう。そこだから、自民党の元幹事長元総裁が安倍首相に苦言を呈しているという面がありそうに思うんですよね。光の中に輝こうとする光の政治家の流派と、闇の中で仕えようとする闇の政治家の流派。闇の政治家たちが力の源にしていた闇の呪文のページを、光の政治家が取り除こうとしている」

「光と闇のバトルだな」

「そうそう。そしてこの光のディレクターなんですが、自分のオリジナル企画が流れてしまったことでがっくりと落ち込んでしまいましてね。もうすっかりすねてしまっているんです。あーもう俺の考えた最高のオリジナル企画がと。なんだよこの連中、俺がせっかく奮戦して、オリジナル企画でお前たちをお前たち自身から救ってやろうとしてきたのにと。オリジナル企画を進めたかったのにそれはポシャってしまって消えて、それを進めるための取引材料だったはずのスポンサーの企画のほうだけが残ってしまった。自分に周囲が聞いてくるのはスポンサーの企画の話ばかり。打ち合わせが次々開かれて、そのたびにここが仕様不足だ、仕様のここに大きな穴があるのは明白なのに、なぜ今日まで埋められていないのだ、してあるべき仕様策定業務がされていない、と糾弾される。なんだよそれは俺の企画じゃねえよ知るかよ、スポンサーから言われたからやるんだよ、と、言いたいけれど言えないから胸の内にずっとためこんでいる。ごっそりモチベーションが落ちていて、それを周囲に隠す努力もしたくない。打ち合わせを欠席して他所のプレゼンに出るなんてのはそんな気配がある。本当の自分の夢は失われてしまって、なぜか他人の企画を守るために糾弾を受けなくてはならない、そういう夢やぶれたディレクターです」

「んーああ? わからないでもない気もするが、ああ、ありがとうございます。これ同じ米焼酎をください、ストレートで」

「僕も同じで、お願いします」

「いただきますか」

「いただきます。主観的にはすごくストレスフルで不条理な立場でしょうね。もう早く終われ、この企画1つ通したら下りるから、あとは知らんよ、この呪われた企画は次からのディレクターが背負え、いい気味だ、といったところでしょう。もうこの企画自体に愛は無くて、むしろ嫌悪感を抱いているから、それを守り育てるために自分から新たに企画の仕様を太らせるコミットメントなんかもしたくない。具体的な仕様を付け加えたらその箇所は自分の責任ということになりますからね。『私は総理大臣なんですから』という発言なんかはそのあたりでしょう。字面の強そうな言葉で、具体的な仕様のコミットメントをしないで打ち合わせを押し通りたいと思っている」

「なんでそんなことになったの」

「なぜ……と経緯と問えば、スポンサー側の都合としては、黒人大統領が当選したことですかねえ? 黒人男性が大統領が当選したことで、アメリカの中でいままで手広く世界に介入してきたツケを、いまあるていど手仕舞いしよう、というタイミングができた。『ごめんあれこれやりすぎてたかもしれない。予算も使いすぎていたし、手を引いていくわ』と言うにしても、白人男性がトップだったなら、それが理屈だとしても、よくもまあほざいてくれるじゃん感が出る。黒人男性が看板はっている間なら、『お、おうまあ大変だったな。気をつけろよ』になる。そこでアメリカはこの破産管財人のもと、各所であるていど手をたたみ始めたんですが、介入の旨みをおぼえてしまったおじさんたちもいて、その人たちはアメリカ内の予算が減ってもまだ中東あたりで火遊びがしたい。そうした遊びたいおじさんたちが、下請けのあの会社、座布団の下に一揃い隠してるだろ、ちょっと揺すってみろや、出せるもん出せるだろ、というのがひとつ。もうひとつはフィリピンから米軍戦力を減らすうえで、南沙諸島の資源争いでの対中圧力の穴埋めがほしい、これがもうひとつ。このふたつといったところかと思います」

「うーん」

「それでもうひとり、この物語の中に登場人物が出てくるんですが、聞きたいですか」

「まだキャラ増えるの。誰それ」

「それはプログラマーです」

「何それ」

「先日、防衛省の内部資料いくつか共産党が『独自に入手』して、その存在を防衛大臣が知らなかった、いや知っていたなんて問答があったでしょう」

「あーあったかな」

「あれはですね、怒り狂ったプログラマー、現場の作業部局の中のひとりのしわざなんです。どういうことかというと、こういうふうにディレクターとゆかいな仲間たちがぜんぜん資料を太らせないでいる場合、現場の作業部局は手待ちをさせられる。待っても待っても資料が太らず、仕様書が降りてこない。だが、スケジュールはずいずい迫ってくる。実際に実装作業をすることになるのは作業部局のプログラマーたちであって、そのとき実装できませんでしたとは言いたくないから、そういうとき作業部局はどう動くかというと、たいていは実装仕様書を書き始めるんですよ。本来はディレクターとゆかいな仲間たちが書くはずのものなんですが、もう職分をおかして書こうと。そうしてあるていど手を動かし始めよう、だって待ってたってあいつら書かないじゃんと。この場合、作業部局というのは防衛省です。そこで実装仕様書を書き始めちゃっていて、来年1月のKeenEdge16演習は新ガイドラインに沿ってやるかも、とか、2月からの南スーダンPKOは新法制に基づく運用をするかも、とかいった見込みスケジュールも並べてみてしまっていて、現場レベルでのスケジュールの握りもとりはじめてしまっている」

「ディレクターの仕事が遅いから、プログラマーがディレクターより先行して資料を書いて動き始めちゃうわけね」

「そうそう。そこでさ、そのプログラマーたちの中でひとり、怒り狂ったプログラマーがいるんですよ。資料を直接書いているか、あるいは書いた資料を回覧した中に、静かに胸の中で怒り狂っているプログラマーがね」

「何それ」

「今回のこの企画はさ、非常にきなくさい企画なわけですよ。現場で運用作業をするプログラマーがすごいでかいバグを発生させるにおいがぷんぷんするわけ。兵站線を警護してたら奇襲されて、相手を撃ち殺してその勢力と戦闘状態に入ってしまった、とか、その中で民間人を射殺してしまった、とか、そのとき国連だか他国だかの指揮下にあったとかなかったとかいって、そのプログラマーがひどいトラブルにわが国を巻き込んだではないか、住所と個人情報と家族さらし、嫌がらせのネットサービス大量登録、作業部局へのアンチまとめ記事もふだんの何百倍乱立する。そのとき、この仕様を書いたのは誰だ、という話が出るはずで、調べてみると基本的な軍事法典とROEの噛み合わせも準備できていないことが判明する。それでこの現場の作業規定の資料、この作戦任務書の資料、この国際なんとか活動の実施方針資料、と資料から資料へさかのぼっていって、さかのぼった資料の行き止まりの原点、それはプログラマーたちが先走って書いたこの資料だ、ということになる。ディレクターの職分をおかしてプログラマーが先行して書いていった資料だ、こいつらが自分で進み始めたんじゃん。ディレクターたちが抽象的な議論をしていたときに、先に進み始めたのはプログラマーたちでした、それがいま大きなバグにぶつかった、じゃあ自己責任ですよね、文官の責任でも政党の責任でも国民の責任でもないですよね、となる。責任のボールを受け取る親役に誰も名乗り出ないからプログラマーたちはボールを抱えさせられたままぼっこぼこにされる」

「それはひどいね。そんなんなったらおこだわ」

「だからげきおこですよ。ディレクターが資料を太らせないくせに、バグって大炎上したとき、そのケツはわれわれプログラマー自身が持たされる、そんなのあるかよと。『いいじゃんどうせ実装するんだろうし仕様を書こうぜ進もうぜ』という多動的で楽観的なプログラマーたちの中で、その未来の大炎上を確信して怒り狂ったひとりのプログラマーが、内部資料のパワポファイルをひそかに野党に横流しするわけですよ。『先を考えないプログラマーたちがこんなん書き進めててまじおこだわ、いま炎上しろ、ディレクターとゆかいな仲間たちが炎上しろ』とね」

「正義の怒りだ!」

「Scales of Justice, Conductor of the Choir of Death ですわ。もちろん、資料を表に出された作業部局もげきおこで、この怒れるプログラマーを捜索中。まあ大変です」

「大変です、ねえ。好き勝手ほうだい言っておいて」

「ああ、それはまったくあるんですけれどね。言うじゃないですか、ねじまわしを持つ者にはすべてがねじに見える」

「ねじ?」

「下請け開発会社仕事をちょっとかじった人間には、すべてが下請け開発仕事のラインに見えるんですよ。それも、ラインのごく一部の限られた視界のね。首相はディレクターに見えるし、自衛官はプログラマーに見えてくる。だからこうやってべらべらしゃべって言った理屈も、たぶん15%言い得ていられればいいところ、この安倍首相と安保法案まわりに100の事情があるとして、そのうちの15をとらえているかもなあ、といったところです」

「15%ねえ。自信がないんだかあるんだか」

「かなりあるんじゃないですか? 15%ですよ15%」

「さあね。そんなところ?」

「そんなところですね。おかわりいきます?」

「もらうか。すみませーん。それで君は国会前に行ったりしていたわけだ」

「まあ一応、2度ほど。金曜夜のやつは、学生なり、手ぶらの都民たちってかんじでしたけれど、30日の日曜のやつはリュックサックに帽子、のぼりばたで、地方のおじさんおばさんが来てる、アニメ的にいうと『小僧ども、よく頑張ったな』て言うやつ感あったですね」

「えー、この米焼酎をストレートで、2つ。お願いします」

「あ、お冷やをひとつ。はーい」

「なるほどね。ふむ。じゃ話変わるけどマッドマックスの話でいいかな」

「いいですよ、やっと見ましたか!」

「最高だね。素晴らしい」

「だから言ったでしょう。まったくもう」

「あれさ、ストーリーのない、頭からっぽにして見る映画だ、なんてコメント見ていったけれど、どうしてどうして、ストーリーみっちりみっしりあったね」

「ほほう?」


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2013-04-21 僕の考えた最高の翠星のガルガンティアその2 このエントリーを含むブックマーク

「おいす。何、ガルガンティア?」

「こんばんはー」

「なんで海賊を皆殺しにしたのかって話をしてました。3時間で第5点まできました。」

「レドは海賊が敵だって思ってるんでしょ。そういうシーンあったじゃない」

「え?」

「どこ?」

「2話のさ…Bパートの、貸して。ほら、ここでさ」

『海賊とは、敵か』

『まあ…そうね』

「ああ、はい、ここか。これは違うよ。第6点、この少女は銀河なんとかの命令系統のどこにも属していない」

「んー、第6点始まっちゃいましたか。」

「少女は銀河なんとかの兵士に対して命令権、兵権を持っていない。この兵士に敵を定義して与える権限がない。ひっくりかえしていうと、この兵士にも、少女の発言に基いて敵を新たに設定する権限がない。たとえば仮に連絡が回復して、本部から『なにに基いてその海賊という集団と交戦したのか?』と聞かれた時、『船団の代表者から敵だと言われたから』と説明したらアウトだ。」

「アウト?」

「その説明じゃあ、命令系統外の人物から指示を受けて、未定義の集団を敵と定義しました、という話になってしまうからね。そもそも、ある集団を敵と定義する権利、交戦対象を選ぶ権利こそが、一個の武装組織を支配しているということ、兵権なんだからさ。兵士は兵権を持っていない。兵権を持つ者に使われるように訓練された者こそが、兵士だ。その訓練の重要性にくらべたら、戦闘能力の訓練などは、兵士にとって二次的三次的なものと言ってもいい…」

「ああ、そうか! ここで『海賊とは、敵か』『まあ…そうね』という会話で、『兵士に新たな敵が定義された』と読む読み方があるのか!」

「なるほど、あー、そういう読み方か… なるほど… 僕の脳内エスパーによるとそれは違うね。兵士に敵を定義するというのは、そんなにちょろいものではない。なるほどな…」

「何だ、急に、ひとりでに納得したぞ」

「例のごとしです」

「兵士に命令するというのは、そんなセキュリティのちょろいものではない。たとえば、ある命令系統に中尉、少尉、曹長がいたとして(ホワイトボードに図を書く)、

少尉は『中尉が定義した敵と戦いました』と言える。   中尉 ─○→ 少尉

曹長は『少尉が定義した敵と戦いました』と言える。   少尉 ─○→ 曹長

逆に少尉が『曹長が定義した敵と戦いました』とは言えない。   少尉 ←×─ 曹長

この中尉と曹長との間には非常に大きな権限の違いがある。   中尉 ←(超えられない壁)→ 曹長

そうだね?」

「そうですね」

「あの場面で少女が兵士の敵を定義したのだとしたら、連絡の一時途絶と食料くらいのものが、すくなくとも中尉と曹長の間にある階級差をひっくり返すのに相当する効果があるということになってしまう。いったいそりゃどれだけ脆弱な階級差なんだと。きみらの権能の差は蒟蒻並みかと。そんな階級システムはありえない。」

「言い換えると、兵士というのを、なにか盲目的に命令に従うお稚児のようなものだと思っていてもいいかもしれないけれど、それならそれで今度は、その命令を与える立場になるのがそんな簡単なことじゃない。武装組織というのはそんなちょろい仕組みではない。」

「あーでも、そう読めるような、そう読み取らせられるような演出なわけだなー これは巧みだな。やるなあ」

「また納得し始めましたよ」

「なるほど」

「第7点、本隊から連絡途絶した兵士が、民間人に助けられ、言語や文化の違いからくる相互の誤解、摩擦を経ながらも親密になっていく、という筋のお話は繰り返し語られてきた。けっこう皆、その筋をマインドセットにして見ていて、あのシーンもその線で読めるように、演出を組んでいるわけだな。ちょっとした一言の表現が言葉と思考の違いから誤解となりトラブルを起こしてしまい、近づきかけた兵士と少女の距離を離してしまう…という、テンプレートイベントだと読めるわけだ。ははあ。なるほど。」

「たしかに、それは誤読するかもしれないな。上手いなー。いやさ、このロボットの補佐AIいるじゃん」

「チェインバーですね」

「第8点、ロボットにこのAIを付けた配役がすごい上手い形だと思ってさ。これ、御意見番というか、軍人的論理でもって主人公にあれこれ口を出してくるやかまし屋みたいなポジションに見えるじゃない。だから、いいデコボココンビだよね、という絵面で、

主人公は本来良い奴で、少女や船団に好意と恩義を感じていて手助けをするつもりなのだけれど、AIの軍人的口出しや誤翻訳によってそれが思うようにならず、誤解や過失もあってトラブルが起きていく…

といったふうに見える配役になっている。これからこの話は、そういう作劇をしていくんでしょう」

「まあそうかもしれませんね」

「実は、そういうポジションではない。この狂ったAIは滅び去ってもうない本部に忠実なだけの存在でまだマシで、それを百も承知で行動していくこの少年のほうがはるかにあさましい。すまなかった、このAIが軍人的思考で翻訳したもので勘違いしてしまった、申し訳ない、と言いながら、相手の半信半疑の半信の部分につけこんでいくんだからね。」

「ゾーンに入ったな。まるきり妄想状態だ」

「仮定の過重積載からの崩落事故ですよ」

「実際これから何度も、少年はAIに、自分はあくまでただ本部に忠実な兵士なんだ、その範囲をふみ越える目的は何も持っていない、とだけ語るだろう。自分の行動すべてをその線に理由づけて説明し続けるだろう。視聴者はそこで語られる言葉を聞き、そうかそうなんだと受け取る。あのAIはかなり賢いから、それを言い抜ける言葉や行動もそれだけの説得力を持つことになる。実に巧妙な、見事な人物配置だ。気の狂ったワトソン役、偏執した聞き手を主人公の脇に用意して、主人公がそいつに虚偽の説明をし続ける。そうすることで、頭が固く民間人を蔑視している融通のきかない軍人AIを、少年がなだめすかしながら不器用ながらなんとか人々の役に立とうとしているんだ、と読み取れるようになっている。」

「これから周囲の登場人物たちも、この少年を、信じよう、いや信じないぞ、と言い合い、あれこれ揺れるんだろう。そしてテンプレートパターンでは、信じる奴が良い登場人物で、信じない奴は疑心が強すぎるのだがいずれ和解していく登場人物だ。この第1話第2話でもそれに沿って、少年を信じようとしていく少女とその弟が夢や希望を持っている良い人物に描かれ、一方、信じない奴には金髪の兄ちゃんが配役され、考えの足りない浅い人物だ、と演出されている。これは確かにそう読むよな…その様式美は完全に実装されているもんな…いや、まてよ、そんなに『誤読させるのが上手い』が続くと、どんどん僕が間違っている可能性も増えていくぞ」

「やっと何かに気づいたようだ」

「お忙しいことです」

「なんだよー じゃあベットするかー? 25%、昼飯でいい?」

「まーいいですかね」

「5%ぐらいじゃないの」

「なら当たったら昼飯3回奢られ、外れたら1回奢りね。そっちは19回と1回でいいの?」

「あーそういうこと? 待って、まず、当たり外れの判別をどうするかだろう。例えばハッピーエンドになるかどうかを…」

「ハッピーエンドなんて定義が緩いですよ」

「誰にとっての、とか、どうとでもなるじゃん」

「ふむ、そうかな。では、それなら、さしあたり…」

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